亜空の王はここにあり   作:自堕落無力

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亜空の王は最果ての地にて準備する
一話


 

 日本の高校生であった深澄真は実は異世界出身者であった両親と異世界の女神との契約により、異世界へと転移させられる事となった。

 

 日本の神である月読が仲介を務め、何も知らなかった真に事情の説明や異世界にある程度の筆記用具と本を持っていけるようにし、両親に姉妹、そして真の彼女である温深への手紙を届ける事を約束してくれたり、更には与えられるだけの加護まで真に授けるなど様々な便宜を図る。

 

 しかし、異世界の女神は月読への挨拶も無く、いきなり自分の下へと呼び寄せた挙句、真が自分の美的感覚に合わない見た目だという理由で異世界の人間以外の言語理解だけを与えて荒野へと放逐した。

 

 更に真を呼び寄せる際、世界が繋がっていたのを利用して勝手に勇者としてちゃんとした二つの国へとかなりの加護を与えて転移させた。

 

 この所業に月読は激怒し、他の神々に女神の行いを報告。真に対しては無事に荒野へと降り立てるようにしたうえで月読の名を以って異世界で自由に暮らす許可を与えた。

 

 女神によって転移させられた二人の様子を見るように頼みながら……自身は数百年は眠る程の消耗をしてだ。

 

 こうして、真は異世界で自由に生きる事を決めながら、女神に対して復讐する事を誓う。

 

 ともかく、真は今、荒野を旅していた。

 

 

 

 

「あの、糞女神……本当に世界の最果てに飛ばしやがってぇっ!!」

 

 荒野を歩いている真だが異世界転移してから三日経った。

 

 地球の者が異世界転移すれば厳しい環境である地球から脱した事で負荷をかけられていた肉体、魔力が解放され超人の如くなれると言っていたように真は超人と化していた。

 

 元から地球でも超絶的な身体能力と運動神経を有していた真は更に進化したのである。元に三日飲まず食わずでも凄く余裕があった。もっと言うなら古流武術の師匠たちによる訓練で一か月、山奥でサバイバルも経験してもいるから慣れもあったが……。

 

 ともかく、まったく人間は勿論、魔族や魔物にも会わないので真は日に日に女神への憎しみを爆発させている。

 

「月読様には本当に感謝だな」

 

 対して最大限、自分に対して力の限りを尽くしてくれた月読への感謝や敬意、崇拝と言ってもいい感情も増していた。

 

 月読から与えられた力に解放された魔力を真は古流武術にて習った瞑想法によって自覚した。月読の力は神秘的な雰囲気を有していてそれを解放すれば、真を中心にして範囲は自在に拡大に縮小できる半球形のエリアを創造できる。

 

 そしてその内部に自分が思うありとあらゆる効果を発生させられるのだ。例えば気配や地形などといったものの把握、俯瞰視点で内部の全てを見渡したり、音の聴き取ったといった事や身体能力や物体の性能強化なども出来た。

 

 更に膨大な魔力があったので制御を練習しつつ、イメージのままに魔法、あるいは魔術が発動できるか試したがそれは無駄だった。呪文が必要なようだと判断すると魔力と月読の力の融合をやってみる。

 

 すると融合前では無理だったエリア内での瞬間転移、発火等の魔力染みた現象を起こす事が出来るようになった。そうして、ともかく異世界での戦闘にいつでも対応できるように練習しながら真は荒野を進んでいた。

 

 無論、エリアを広げての遠視及び生物の気配や音の感知をやりながら……そして……。

 

 

 

『キャアアアッ!?』

 

『エサメ、ニゲルナァァァッ!!』

 

 どこか気品を感じさせる豚を人とした女性が二つ首を有する巨犬に襲われていた。

 

「言語理解ってのはこんな感じか……ああ、助けるとも」

 

 真は豚の女性、二つ首の巨犬どちらともの言語が理解できるのを自覚しつつ、豚の女性を助ける事にした。

 

 自分を包む膜のようにしたエリアを形成し、発揮する効果は高速移動。

 

 そうしてあっという間に巨犬の方へと接近しながら、その巨大な後ろ足の一本を掴むと走る勢いを利用して跳躍する。

 

 

 

『ウオオッ!?』

 

「そりゃあああっ!!」

 

 そうしてそのまま、巨犬の身体を振り上げ、地面へと振り下ろす事でクレーターを作りながら巨犬の身体を叩きつけ、意識を失わせたのであった。

 

「危ないところだったな。お嬢さん……えっと、僕は深澄真……お嬢さんはオークで合ってるかな?」

 

「ハ、ハイ。ワ、ワタシはハイランドオークのエマとイイマス……ッテ、ナンデ、私達の言葉を!?」

 

 自分のファンタジー知識から聞いてみると頷いたエマはしかし、時間をおいて言葉が通じる事に驚愕した。因みに言語理解の調整がされつつあるのか、片言のようだったエマの言葉が段々流暢にも聞こえるようになっていった。

 

「ま、まぁ僕の特技みたいなもんだ。見聞を広げようと旅をしていたら最果てまで来るなんてうっかりやらかして困ってたところなんだ」

 

「それじゃあ、助けられた事ですし集落に案内しますね」

 

「ありがとう、エマ……とその前に」

 

 そうして、真は自分が倒したリズーという巨犬の魔物へと近づき、エリアを発生させて治癒効果を発現させる事で治療すると……。

 

 

 

「僕に飼われるのと討伐されるのとどっちが良い?」

 

「……貴方に従います」

 

 リズーは真に対して従う事を誓うと真は新しい名前として由来は二つ首の犬であるオルトロスに因んでオルトと名付け、エマと共にその背に乗って移動を開始する。

 

「リズーと会話が出来て、手懐けるなんて真様はテイマーなのですか?」

 

「別にそういう者じゃないよ」

 

 エマはリズーを飼い馴らした真に驚愕し、真は苦笑する。

 

 エマの案内によって集落へと向かう道中、会話を交わす事でエマは神山と崇める山の主であり、この世界の生物の中でも凄まじい力を有する上位竜こと蜃の生贄となるため荒野を移動していたところ、群れからはぐれたオルトに襲われてしまったのだという。

 

 エマは優秀な術師であるが杖を失ってしまったため、どうにも対応できなかったとのことだ。

 

 ともかく、集落に着くと集落にいるオークたちへ事情説明の為、真とオルトは待機しエマから許可が下りるとオルトに餌を持ってくる事を言って待機させながら集落の中へ……。

 

 

 

「ひゅ、ヒューマンがこの集落に……」

 

「本当にヒューマンか、ほぼ亜人だぞ」

 

 オークたちは真の姿を見ると言い出す。

 

 エマからも言われたが、真の顔はこの異世界の人間であるヒューマンという種族より亜人に近い顔つきなのだという。この事からおそらく面食いな女神が生み出しただろうヒューマンは美男美女であると予測した。

 

 因みに加護もヒューマンにしか与えておらず、それもあってこの世界のヒューマンはオークを始めとした亜人に対して差別的な傾向が強いのだとか……。

 

「(あの糞女神の世界がまともなわけは無いか)」と真は思う。

 

 とはいえ、エマを助けた恩人という事で真は受け入れられ、食事と水も与えられもてなされたのである。

 

「では概要だけですが……」

 

 そうしてエマからオルトによる移動の中で約束した魔法を教えてもらう事とする。

 

 この世界では自身の持つ魔力に様々な属性や変化を加える言葉である呪文を唱え、魔力で魔法を発現させるための鍵を生み出す。そして呪文の詠唱を終えると魔力が鍵になって世界にある扉を開け、世の理に干渉し魔法を発現させる事が出来るとの事。

 

 そして、あらゆる属性の攻撃魔法の基礎である『ブリッド』を習う事となり……。

 

「『ブリッド』」

 

 エマと同じように呪文を唱え、かなり出力を制限した魔力の放出により、極小の火が真の手から出た。

 

 

 因みに呪文はオークの言語とは違うらしいが、真は普通に理解出来た。

 

「(あいつ、面倒くさがって人間の言語以外の言語理解能力を僕に与えたっぽいな)」

 

 女神の性格からして女神の言葉通り、魔獣や魔族、亜人といちいち制限するのを面倒くさがって人間以外の言語理解能力を大雑把に与えたのだと確信した。

 

 正直、この件に関しては感謝しても良いとは思った……儲けものと言えば儲けものである。

 

 

「まさか、一度で……真様は天才なのですね」

 

「かもしれないな、ありがたい事だ」

 

 そしてさっきのは初期状態で炎を弾にするようなイメージを頭に描く事で火弾を目標にぶつけるように飛ばす事が出来ればブリッドの完成というエマの指示を聞き、例を見るとそれと同じことをやって用意された的に当てたりした。

 

 そうして、真の実力であり才能に興味を示し、ヒューマンが落としたという実力を、レベルを測る紙を渡されると言われたとおりに掴む。そうして紙は水色に光った。

 

 

 

「え、嘘……レベル1!?」

 

「多分、僕の実力が規格外過ぎるんだろうなぁ」

 

「……ああ~、そのようですね。先ほどからこっちの常識外の事ばかりですし」

 

「ははは」

 

 お互い苦笑し合うとエマが使える魔法の呪文を纏めた紙を渡されながら、魔術の研究やら月読の力との併用やらを鍛錬する事を決めながらもオルトに飯をやったりして集落で真は一晩過ごし……。

 

 

 

 

 

「それじゃあ、頼むぞオルト」

 

「はい、真様」

 

 真はエマ達より早起きすると一宿一飯の恩としてエマが、そして今後オークの生贄が用意される事の無いよう、上位竜である蜃と交渉すべく、蜃のいる神山へとオルトの背に乗って移動を開始したのであった……。

 

 

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