亜空の王はここにあり   作:自堕落無力

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十九話

 ツィーゲから少し果ての方向にある森が秘薬アンブローシアの原料となるアンブロシアの花が咲いているとあって、それを守るのも含めて管理者となりながら森鬼は村を形成し、暮らしていた。

 

 そんな森鬼の村を訪れた真は現在、森鬼の長老の一人となっているニルギストリに乞われて村に結界を張った上位竜蜃こと巴を交えて話をした。

 

 無論、実質的な異世界となっている『亜空』で暮らさないかという話だ。他種族が暮らしている記憶を巴が見せながらだったので自然に溢れるその風景に森鬼の長老たちは惹かれ、そうして『亜空』で暮らす事を了承したのである。

 

 とはいえ、森鬼の村に不穏な存在がいるのを把握していた真は、それを解決してからと巴の主とあってもてなしの宴をすると言われたので、用意された部屋で界を使って探索していた。

 

 そんな時、アクアとエリスから自分たちの師匠に会ってほしいと言われたので承諾して連れてくるまで待機し……。

 

 

 

「失礼」

 

 すると病的な肌の白さの森鬼の青年が現れた。

 

「どうも……僕はミスミ・マコト。自分で言うのもなんですが、ツィーゲや最果ての荒野で名を馳せている冒険者です。貴方は?」

 

 明らかに異様な雰囲気を放っているので界による読心によって青年の心の内を把握する。

 

「(魔族の協力者か)」

 

 青年は魔族と手を組んでいる者であり、邪魔になりそうな真の様子を探りに来ていた。

 

 

「これは失礼致しました。私、アドノウと申します。長老の一人の身内……有体に言いますと息子です」

 

「これはどうもご丁寧に……よろしくお願いします」

 

「ええ、こちらこそ」

 

 真は握手を求めるとアドノウはそれに応じる。そして握手をした瞬間、真はアドノウに対し『服従能力』の界によって服従状態にさせると共に念話で自分が訪れるまでアドノウの家で待機するよう命じ、アドノウはそれに応じて自分の部屋に戻っていくのであった。

 

「よう、お前……とんでもない魔力を有している奴なんだって……大したもんじゃねえか。とりあえず俺と握手だ。握手しようぜ」

 

そうしてアクアとエリスと共にやってきた長い白髪のオールバック、強面で筋骨逞しく、大柄な男が真に握手を求める。

 

『師匠っ!?』

 

 アクアとエリスが動揺する中……。

 

「良いですけど、貴方の力は通じませんよ」

 

「何……っ!?」

 

 真はアクアとエリスの師匠の握手に応じると何も起きない事に握手をした者は驚愕する。

 

 実はアクアとエリスの師匠ことモンドには触れた相手を樹木に変える力が備わっている。昔は他の森鬼にも備わっていた能力だが今ではモンドだけの能力となっているもので『樹刑』とも呼ばれている。

 

 それは真には通じなかった。因みにあらゆる状態異常系の魔法が通じない事は巴や澪などそうした魔法が使える者達の協力の下、確認済みだ。

 

 

 

「ついでに魔力だけじゃありませんよ」

 

「ぐおおおおっ!? 細い体してるくせになんて力だ。抵抗出来ねぇ」

 

 握手している手に力を少し込めると折れるかと思うほどの痛みにモンドは呻いた。

 

「さてとそれじゃあ……次はこっちの用件に付き合ってもらいますよ」

 

 そう言うと共に霧を放ちアクアとエリス、モンドを幻覚の世界に意識を引きずり込んで幸福に浸らせると共に……。

 

「なっ、なんだここは……馬鹿な、一体何がどうなって……主は何者なのだ!?」

 

 真は界を使い、モンドの身体に憑依していた骨だけの身体に黒を基調に金をあしらった高級そうなローブを纏い、禍々しい赤黒い輝きを放つ眼窩をフードから覗かせている存在で幾つもの宝石がはめ込まれた杖を有するリッチを自分と共に本来の異空間である『亜空』へと転移させた。

 

「僕はミスミ・マコト……この世界で言う人間だよ。そっちはリッチで良いのかな?」

 

「正解だ。まさか、我の事を知っているとはそれにヒューマンの祖であるニンゲンを名乗るとは……だが、異常な力を有している事も含めて我が知識の糧にするに相応しい」

 

「やってみろ」

 

「言われなくともっ!!」

 

 そうしてリッチは人魂のようなものを集め、杖の先端で融合させて巨大なものにして真へと放つ。

 

 

 

「はあっ!!」

 

「んなっ!?」

 

 真は只、膨大な魔力を解放する事で人魂を吹き飛ばしてみせ、リッチを驚愕させる。

 

「な、なんだ……このバカげた膨大な魔力は……精霊どころか……これでは、まるで……」

 

 リッチは激しく驚愕しながら、そうして絶望していく。

 

「さて、次は僕の番だが最初に言っておくと僕は本来なら術ごとに決まっている出力限界を取っ払う事が出来る。つまり、何を使ってもお前は死ぬ……どうする? 死を選ぶか、あるいは僕に従うか……僕に従うなら、求める知識の答えを得られるように協力もしよう」

 

「……なぜ、我を求める」

 

「少しでも優秀な奴は仲間にしておく方が得だろ。死を拒みながら蓄えてきた知識と魔法の数々、僕のために使ってくれ」

 

「……良いだろう、我は答えを得たい。そのためなら主の配下になろう」

 

「言っておくが、答えを得ても僕に従うんだぞ?」

 

「勿論です」

 

「良し、なら契約だ」

 

 そうして真は界と魔術の複合による契約を用いる事で本来なら格や力量がかけ離れているリッチと支配契約を交わし……。

 

 

 

「今日からお前の名前は識だ。よろしくな」

 

「はい、真様」

 

 真は赤い長髪の貴公子とも言うべき美青年の姿に変化したリッチに識という名を与えたのであった……。

 

 

 

 

 

 ヒューマンと敵対している魔族が住む場所にて魔将と呼ばれる女性がいた。彼女は森鬼の一人、アドノウと繋がり森鬼たちを魔族側に引き込む工作をしていた。

 

 

「アドノウからね……」

 

 アドノウから念話による連絡が来たので応じると……。

 

(残念な報告だ。お前が引き込もうとしていた森鬼と最果ての荒野にいるハイランドオークは俺の下に引き込ませてもらった。早いもの勝ちってやつだ。悪く思うなよ)

 

「っ!? 貴方、誰なのっ!! どうやってアドノウの念話を!!」

 

(念話を偽装するなんて難しいものじゃないだろう。それと念話で名乗り合うのは風情が無いからやめておこう。男と女の物なら猶更だ。心配するな、近いうちに会う事になるだろう)

 

「じゃあ、その時にたっぷりとお礼をしてあげるわ」

 

(それは良いな、会う時の楽しみが増えたというものだ。こっちも贈り物を考えておくから楽しみにしていてくれ……じゃあ、その時までごきげんよう。魔将ロナ)

 

「私の事を知ってっ!?」

 

 長い金髪に魔族特有の青白い肌、魔性という言葉が似合う美貌にスタイルを有する魔族の女性にして策謀に優れるロナは念話の相手が自分の名を知っている事に驚愕する。

 

「(い、いったい何者だというの……)」

 

 得体の知れない恐怖にロナは身を震わせるのだった……。

 

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