二十一話
世界に激変が巻き起ころうとしている。
何故なら世界の覇権を巡って長きに渡って争い続けているヒューマンと魔族がまた大きな戦争を開始しようとしているからだ。
十数年に渡って絶えていた女神の祝福が復活し、更にリミア王国とグリトニア帝国の二国にそれぞれ、この世界のヒューマンより凄まじく高い力と魔力を有し、女神に選ばれたが故かなりの女神による恩恵を与えられた勇者二人が送られたからだ。
故にリミアとグリトニア、ツィーゲが属しているアイオン王国とローレル連邦含めた四大国総意の下、対魔族戦争最大の要所であるステラ砦奪還戦をしようとリミアとグリトニアは準備をしているのだ。
そう、間違いなく勇者二人はこの戦争に投入される事になる。それは必然、危険地帯へと自ら飛び込む事であり……。
「(流石に行かないとな。響先輩と岩橋智樹がこの世界に飛ばされたのは僕のせいだし……月読様からも気に掛けてやってほしいと頼まれているし)」
真はステラ砦奪還戦に介入することを決めた。
何故なら、そもそも勇者の二人が召喚されたのはこの異世界を管理していた女神が真の両親との契約でその子供たちのうち、自分の価値観に合わない者が来た場合を考えて身勝手にも地球の日本との繋がりが出来た時に自らの世界へと勇者として二人の日本人を勇者として選んだからだ。
そして、その二人の勇者というのが同じ高校に通っていて先輩である音無響と、全く知らない少年である岩橋智樹である。
この事に対して責任感を真は持っている。出来るなら元の世界へ返してやりたいとは思っていた。
もっともそれはかなり難しい事であると分かってしまったが……。
その責任感とは別に自らに加護を与えたり、可能な限りの事をしてくれた月読によって勇者として呼ばれてしまった二人を気に掛けてやってほしいとも頼まれているのもある。
因みに月読へ恩返しとして他にも真は自分にとっての本拠地であり、もう一つの世界である『亜空』にて月読を自らの恩神だとして『亜空』に住まわせている亜人たちに信仰するようにしていた。
「そういう事で僕もステラ砦奪還戦に参加する。勇者の一人、響先輩は僕の知り合いだし月読様からの頼みもある。とはいってもやる事は援護とか支援程度だ。全体的な戦力の偵察も兼ねてるからな」
まず、自分の行動方針を『亜空』にて巴達に言った。主目的は勿論、勇者二人を助ける事だがリミア王国とグリトニア帝国の戦力、魔族の戦力の偵察も兼ねている。
「そして、その間……巴と澪は別方面からこの世界を渡って色んな事を調査してほしい。そして、亜人がいるならこの『亜空』に勧誘してくれ。それと並行して凪と協力して『亜空』の管理も頼む。凪、巴に澪と協力しながらこの亜空にいる皆の統括を頼んだ」
更に巴に澪と凪へと指示をし……。
「識は魔族のロナと知り合いだったよな。ある程度はロナの策も読めるだろう……護衛も含めてアドバイスを頼む。新人としての大仕事だ」
識がリッチであった頃、彼曰くロナに何度も利用された事があるらしい。
必然、手口を知っているのでステラ砦や他にも張り巡らせているだろうロナの策をある程度、読めるので護衛も兼ねて真は識を伴う事にした。
「だが、予想外の事態とかでヤバくなった時は必要に応じて巴も澪も凪も亜空の皆も呼ぶかもしれないからその時はよろしく頼む」
『はい、若様』
真の指示に巴たちは頷き、こうしてそれぞれが果たすべき事に励む事となった。
そして、真もステラ砦へと攻め込む二大国に介入できるように準備を整えつつ……。
「そういう事でステラ砦奪還戦に参加してくる。ヒューマンの存亡がかかっているからな、力を尽くしてくる。活躍すれば名も上がるってのもあるが……」
「ふふ、そんな事言って……そうしてまた、色んな人を助けるんですね」
「まあ、見殺しにしたりはしないし、手が届く範囲ならだけどな。僕は完璧じゃない」
「それでもマコトさんは優しくて強いです。私にとってはマコトさんこそ勇者ですよ」
「光栄だな」
トアへステラ砦奪還戦に参加する事を告げると、見つめ合いながら話を交わす。
「それじゃあ、行ってくる。帰りを待っていてくれると嬉しいな」
「当然、待ちますよ」
「愛してる、トア」
「私もです、マコトさん」
そう言葉を交わすと真とトアの二人は深い口づけを交わした。
そうして、更に……。
「リサ様、シフ嬢、ユーノ嬢……少しの間、ステラ砦奪還戦に参加してきます」
真はレンブラントの妻であるリサに娘で姉妹のシフとユーノの三人の見舞いをしつつ、報告した。
見舞いとは言ってもすっかり、リサにシフ、ユーノは完全回復しているが……。
因みに真は呪病に侵されて醜悪な姿になってしまった三人の詫びも兼ねて、この異世界では醜い対象になっていて、亜人のコボルトと酷似している自分の素顔を少し前に見せていた。
リサにシフ、ユーノはそれぞれ『恩人に対してどうして醜いなどと思えるのか?』と真の素顔を受け入れていた。
「そうですか、マコト様の参戦は二大国にとって大きな助けになりますね。武運をお祈りさせていただきます」
「二大国への助力、よろしくお願いします。そして私もご武運をお祈りさせていただきます、マコト様」
「私もマコト様のご武運をお祈りしています」
三人は真に対し、武運を祈ると告げ……。
「リサ様たち三人にお祈りされれば心強い。ありがとうございます。帰ってきたら学園都市ロッツガルドに行く予定ですのでその時はよろしくお願いしますね」
学園都市とは教育機関を多数有している中立都市であり、今は休学しているがシフとユーノはロッツガルド学園に通う生徒である。真がツィーゲに留まる気は無く、時を見て世界を回るつもりである事を告げた時、シフとユーノからそれなら様々な国の情報が集うロッツガルドに行ってはどうかと提案されていた。
その時は考えると言ったのみだが、今回、答えを言ったのだ。
「そうですか、それは嬉しいですわ」
「はい、本当に嬉しいですマコト様」
「私も嬉しいです」
リサは微笑んだが、シフとユーノはこれ以上無く、幸せとばかりの笑みを浮かべた。
「それは良かった。じゃあ、帰りを待っていてください。それでは」
『はい、行ってらっしゃいませ』
部屋を出ようとする真に対し、リサとシフとユーノはそれぞれ見送ったのであった……。