亜空の王はここにあり   作:自堕落無力

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二十二話

 

 

 リミア王国の勇者として召喚された音無響は、女神より身体能力向上と強大な魔力、人を引き付けるカリスマの付与に、闇を退け魔力を高める銀帯にして狼の精霊を宿した『神器』を与えられた。

 

 元々、日本にて才気煥発であり、要領良く、何より責任感高く真面目な彼女は、勇者として近隣諸国の中小国家へと精力的に訪問し、問題があればそれを解決する事に努めた。

 

 元々、十分なカリスマがあり、女神によってさらに高められた彼女は王道を歩む事で人々を惹きつけ、勇者として慕われていきながらリミア王国の騎士団や勇者としての繋がりで出来た仲間と共に戦っている。

 

 反対にグリトニア帝国の勇者として召喚された中学三年生の日本人、岩橋智樹は魔獣と戦える体、敵である魔族を凌駕する魔力、人を虜にする魔眼に空を駆ける事が出来、疲れを癒す神器の銀靴、更に月が出ている夜の間、不死身となる能力、見た目も高身長に短い白髪、鋭くイケメンな顔つき、オッドアイと多様な加護を女神に与えられた。

 

 そうしてショートボブの銀の髪にスタイルの良い美女にしてグリトニア帝国の第2皇女であるリリ=フロント=グリトニアに勇者として世話をされながら、その裏で色々と改造されたりして兵器のように利用されていた。

 

 本人はそれに気づかず、リリと魅了の魔眼で深い関係となったグリトニア帝国最高位の騎士であるギネビア、ドラゴンサマナーという竜を使役する能力を持つモーラ、研究者のユキナツの四人を中心に勇者として順風満帆な生活を送っていた。

 

 最初こそ智樹は戸惑っていたし、魅了の魔眼による効果も恐れていたがリリがそれを肯定し、かつ巧妙な手管で依存させた事で『覇道』を歩まされたのであった……。

 

「成程ねぇ……あの阿婆擦れ女神の奴……随分とサービスするじゃねえか。響先輩もだが、よっぽど岩橋智樹君の事が気に入ったようだな。まあ、どっちも良い生活しているようでなによりだ」

 

 真はステラ砦を攻め込もうとしているリミア王国とグリトニア帝国の両軍より離れた場所で巴との契約で得た記憶を見る能力を使って勇者二人の人生を見ながら呟いた。

 

 

 

 そんな中、魔族よりステラ砦を奪還せんとするリミア王国とグリトニア帝国の両軍に属するヒューマンたちは勝利を確信していた。

 

 そもそもにして、女神が管理するこの世界においてヒューマンの戦いとは戦いの前に女神に戦いの開始を報告し、互いの軍勢の代表者が口上を述べるという事が重要となっている。

 

 女神が口上を述べた両勢力を確かめ、己が認める側に加護を与えて、そうでない側に呪いを与えるからだ。

 

 加護とは全能力を倍化し、呪いとは全能力を半減させるもの。両軍の間に四倍の戦力差が生じる事になる。余程の事が無い限り、この時点でほとんど、勝敗は確定する。

 

 よって、ヒューマンたちは女神に見初められ加護を得るべく美容関係に力を入れているのだ。

 

そして、ヒューマンと亜人、今争おうとしている魔族の戦いの場合、無条件にヒューマン側に加護を、亜人や魔族側には呪いを与える。

 

 なので女神が眠っている間、女神の加護を当てにしていたヒューマンは魔族に圧されてしまったのである。しかし、勇者が来た以上は女神がまた加護を与えてくれると確信しているのもあって勝利を確信しているのであった。

 

こうして、ステラ砦を攻め込む準備を両軍がする中、リミア王国の勇者とその仲間、グリトニア帝国の勇者たちは智樹が不死となる月夜をステラ砦に攻め込む時間として、それに向けた話し合いを兼ねた夕食会を行なった。

 

「ども!! 仮眠前ですけど、お互い無礼講って事で食事を楽しみましょう!!」

 

「うわ……うっわ、見ろよ識。頭の悪さ全開だぜ智樹君」

 

「幾らなんでもあれはないですな」

 

 そんな夕食会の様子も離れた場所で識と共に覗き見ていた真だが、頭の悪さ全開で礼を失した挨拶に苦笑し、識も引いていた。

 

 直接対面している響は顔を引きつらせているし、ローレル連邦の巫女であるチヤも顔を歪ませている。

 

 しかし、リリを始めに智樹側の仲間である騎士の男、ベルダに魔術師の男であるウーディ、長いアッシュブロンドの髪に褐色肌で女剣士のナバールは彼の態度を咎めないし、響の他の仲間は智樹の魅了の効果で好意的にさせられているのでやはり、咎めない。

 

 響とチヤにだけは魅了が効いていない。

 

 

 そうして夕食会が行われ、智樹が無礼講と言ったとおりに智樹は言葉こそ敬語を意識(ぶっちゃけ、出来ていない)したものだが普通に無礼な発言をしていく。

 

 しかも中ボス戦とこの世界をRPGとしてしか認識していないような発言もする。

 

 挙句に自分がレベル605で響がレベル430だからと智樹君と呼んでいた響にさん付けするよう、マウント取りまでする始末。無礼講が出来るのはこの夕食会では智樹だけらしい。

 

 そして、それを注意する者が誰も居ない。逆に注意すれば揉めるのは間違いないので響はストレスと戦いながらも智樹の態度に応じ、チヤも又同様。

 

 更にとうとう、敬語が苦手と智樹は敬語を使わないようにし、するとその途端、頭の悪さが露呈する軽い口調で話し始めるものだから響は更にストレスと戦う羽目になる。

 

 

「見ろよ、これは酷い……あれが悪い女に誑かされて堕落させられた男の成れの果てだ。響先輩が気の毒すぎる」

 

「地獄の夕食会ですな」

 

 これを見ている真と識は響に同情した。なので……。

 

 

 

 

「っ、どうして私はあんな無礼な者に好感なんかを……」

 

「そうだ、なんで俺はあの勇者に……」

 

「すまない、ヒビキ……私はどうやらどうかしていたようだ」

 

「え、ええ……分かってくれたならそれで良いわよ。多分、智樹かリリ皇女がなにかしたのでしょうし」

 

 響の仲間たちにかけられた魅了を真は解除し、完全耐性もおまけした。

 

「さてさて、戦いの方はどうなるか……」

 

「若様、ところで勇者二人を助けるとの事ですが、どういう範囲になりますか?」

 

「まあ、勇者と勇者の身近な仲間だけかな、助けるのは。……後はヒューマンも魔族も、死にそうな奴を旨いこと延命してこっちの手駒にさせてもらうって感じだ。やっぱり状況に応じた事をする」

 

「そうですか」

 

 真は識の質問にそう活動方針を告げるのであった……。

 

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