亜空の王はここにあり   作:自堕落無力

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二十三話

 

 魔族に奪われた『ステラ砦奪還』のため、リミア王国とグリトニア帝国の連合軍は月夜の時間帯(グリトニア帝国の勇者である岩橋智樹が不死状態になれるため)に進撃を開始した。

 

 女神の加護もあってヒューマンの実力は倍に跳ね上がり、勇者の存在もあって士気も高揚している連合軍は魔族を蹴散らし続けた。

 

「流石に女神の呪いの対策はしているようだな……十年もあれば一つや二つは出来るか」

 

「ですな……弱くなるのを放置する道理もありませんし」

 

 自分のせいもあって、この世界に転移された音無響と岩橋智樹の二人が死ぬ事が無いように離れた場所で識と共に様子を見ている真は魔族がまったく弱体化していない事に対し、識と話して意見を出す。

 

 そして、連合軍が『ステラ砦』に辿り着き、進攻しようとした瞬間――地面に大型の魔法陣が出現し、そして地面は『穴』となって、大勢の連合軍を底すら見えない暗黒へと誘った。

 

「落とし穴とは中々古典的だな。だが、だからこそ効果的だな」

 

「『奈落』とは……女狐め、相変わらず陰湿な手を使うものだ」

 

「だが、おかげでこっちの手駒が確保できる」

 

 真は底の見えない暗黒へと引きずり込まれている連合軍の兵士たちに対し、奥底に巴が本来、使う異空間の『亜空』へと続く霧の門を出現させてそのまま、ご招待した。

 

 後は精神操作でも誘導でも使って手駒にするのである。

 

 因みに響は罠の気配を感じ取っていたため、事前に仲間の浮遊魔術で落下死を逃れ、智樹は神器の効果で空を飛んでいたために穴には落ちなかったし、彼にとって大事な女性の仲間たちは智樹の神器のレプリカとドラゴンサモナーがドラゴンを呼ぶ事で窮地を脱していた。

 

 そうして多くの仲間を失った連合軍は『ステラ砦』を守る魔将が連合軍に陣形を組む猶予を与えたため、陣形を組んでいく。

 

 響は魔将と戦う事を決め、智樹は撤退することを決めながらも一応は道を切り開く事を響との話し合いで承諾した。

 

 しかし話し合いこそはしたのだが、なんと未だ陣形を整えている最中に智樹が独断行動していたずらに混乱させてしまった。

 

「あの勇者は愚かにも程がありますな」

 

「とはいえ、逃げてくれるならそれに越した事は無い。智樹君は恩を仇で返すタイプだろうし」

 

 識は呆れ、溜息すら吐き、真は智樹が逃げる事に対し呟いた。

 

そうして、智樹が『ステラ砦』を守る魔将であり、巨人にして筋骨逞しい肉体、四つ腕の魔族に攻撃し、片手を吹き飛ばしながら撤退した。

 

 そうして、響は魔将と対峙し名乗り合う。巨人の魔将の名はイオと名乗った。イオは再生能力を持っており、智樹の槍が放った攻撃で失った腕を再生する。

 

そして、指輪を見せ……。

 

「ghjkop/kkjjgf」

 

 呪文を唱えて指輪が崩れ去ると共に響たちが受けていた女神の加護が全て消えた。指輪の効果範囲は意外とあるようで智樹たちの加護も消失。これに智樹は焦りまくり、更に撤退するスピードを速めたのである。

 

「とんでもない切り札を持っていたな。本当、来て良かった」

 

 言うと真はイオと響たちの下へと向かった……。

 

 

 

 

 

 

 

 まさかの女神の加護を短時間ではあっても消し去る効果を有した指輪を魔族側が有していてイオに使われた響達。とはいえ、戦おうとしたところで……。

 

「ちょっと待った」

 

『ッ!?』

 

 響達とイオはそれぞれ、突如として現れたフルフェイスの兜に全身鎧姿の戦士に驚愕する。

 

「俺は最果ての荒野から来た冒険者だ。悪いが、戦況で見るならあんた達の負けだよ。だから早く撤退すると良い……リミア王国に魔族の別動隊が差し向けられているぞ」

 

『なっ!?』

 

「今から急行すればある程度はましな防備も出来るだろう。殿は務めてやる。それと……」

 

 戦士は語りつつ、指を鳴らすと響たちの体が光に包まれる。

 

『戻ったっ!?』

 

 打ち消された加護が復活したのである。

 

「次に指輪を使われても問題無いようにもしている。とりあえずはこれで信用してくれるとありがたい、それと勇者様」

 

 戦士は背中に背負っていた大剣を抜き、響へと投げ渡す。

 

「神器には及ばないかもしれないが性能は保証する。使うと良い」

 

「あ、ありがとう……この借りは必ず返すわ」

 

「当然だ、だからこそちゃんと自分たちの国を守るんだな」

 

『はい!!』

 

 そうして、響達は撤退を開始する。

 

「くく、作戦が滅茶苦茶どころか、まさか苦労して用意した指輪すら無力化されるとは……本当に貴様は何者なのだ?」

 

「最果ての荒野から来た冒険者と言っただろう、魔将イオ」

 

「っ、我らの言葉を!?」

 

「荒野の魔族とはそれなりに親しくしていてな、だから覚えた……さて、そろそろ始めようか。あんたは弱くなった相手と戦うより、強い相手と戦う方が好きだろう?」

 

「ふふ、私より強いと言うか……だが、どうやらそのようだな」

 

「ああ、そうだ」

 

 そうして、戦士こと真にイオは構え合い……。

 

『ふっ!!』

 

 次の瞬間、気合と共に相手へと向かっていったのだった……。

 

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