亜空の王はここにあり   作:自堕落無力

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二十六話

 

 『ステラ砦』を奪還すべくリミア王国とグリトニア帝国は総力戦でもって挑もうとした。よって、国の大半の兵力を当然、割いている。

 

 つまり、守りは手薄だ。

 

 よって、魔族側は女神の呪いに対する対策や『奈落』という大掛かりの罠、そして何より、女神の加護を一時的かつ範囲も限られてはいるが無効化できる指輪という切り札をもって相手しつつ、音無響という放っておけば脅威になる勇者を擁するリミア王国を滅ぼそうと別動隊を派遣した。

 

 しかもその別動隊を率いるは魔族に協力を申し出たヒューマンにおいては最強と言っても過言ではないソフィア・ブルガに彼女の相棒となっている『御剣』こと上位竜の一柱、ランサーだ。

 

 そして、ソフィアたちにも女神の加護を無力化する指輪を渡した。

 

 間違いなく、この戦略は成功するとロナは確信していた。実際、作戦は上手くいきかけていた。

 

 ステラ砦を攻めたリミアとグリトニア両軍の大半を『奈落』で呑み込んだのだから。そして、指輪の効果も上手く発揮して、戦闘においては魔族の中でも最強であるイオが相手にしようとしていた音無響たちに通じたのだ。

 

 これは幸先良いと思ったのもつかの間……謎の鎧戦士、そして古くからの知り合いであるリッチのラルヴァが介入して全てをぶち壊しにしてくれやがったのだ。

 

 鎧戦士は魔王すらも超えているのかと思う程の強大な魔力を有しているだけでなく、勇者たちの無力化された加護もあっさりと復活させて逃がしてくれやがった後、イオを圧倒できる程の戦闘能力を有していた。

 

 そして、鎧戦士が主になったというラルヴァの魔力も自分が知るそれよりも遥かに強化されてもいたのだから。そして、掻き乱すだけ掻き乱して瞬時に消える始末。

 

 そうかと思えば、リミア王国へと出した別動隊の魔族が急にステラ砦に現れ、ソフィアとランサーは連絡を絶った。

 

 

 

「いったい、なんだってのよっ。どうしろってのよ本当にぃぃぃぃぃぃっ!!」

 

 自分の策略を盤外から机をひっくり返すようにぶち壊した鎧戦士とラルヴァにロナは激怒を超えた怒りをもってその怒りが収まるまでイオに八つ当たりした。

 

 

 

「……」

 

 それに対し、イオは甘んじて受け止めてやるのであった……。

 

 

 

 

 

 魔族側ではそんな事が起こっていた裏側で……。

 

 

 

「……という訳だ」

 

「危ないところだったわね」

 

 リミア王国に国境近い場所にて魔族の別動隊が来ているという情報を響達から聞いたリミア王国は斥候を派遣する。そして、その斥候は響が助けてもらったという騎士とそして、冒険者で『竜殺し』と名高いソフィアに出会った。

 

 騎士はイオを相手取りつつ、時間稼ぎをすると魔族の別動隊を相手すべく向かえば、ソフィアがスパイとして潜り込んでいてそうして、二人で魔族を倒したのだという。

 

 実際、激しい戦闘が行われた形跡はあった。

 

 是非ともお礼がしたいと申し出たリミア王国に対し、それより失った兵士たちの弔いやその家族へ色々と世話をしてくれと二人は言って、そうして消えたのである。

 

 無論、これは真と彼を主とするソフィアが打ち合わせたものであるが……。

 

 そうして、今回の戦の後処理を終えると……。

 

 

 

「では、先にロッツガルドに行ってきます」

 

「はい、行ってらっしゃいませ、マコト様」

 

 ツィーゲに帰還した真はレンブラントの妻であるリサ達にロッツガルドに向かう事を言った。実際、リサとユーノが通う学園に通えるようにパトリックに推薦状を書いてもらった。

 

 しかしだ、封蝋を透視の魔術で確認したところ、正に字面通りのヒューマンエラーをパトリック、というより推薦状を書いたモリスがやってしまっているのが発覚した。

 

 生徒として通うための試験を受ける事になっていたはずなのに戦術全般の教師として働くため、試験を受ける事になっていたのだ。

 

 とはいえ、識に確認すればもう生徒として試験を受ける期間は過ぎていて、しかも途中で生徒を受け入れる学園は相当特殊との事、真の能力を考えればむしろ、教師として動く方が良いというアドバイスを受けたので良しとした。

 

 それはそれとして、ミスはミスなので後でパトリックとモリスには軽く責任は取ってもらうつもりだが……。

 

 ともかく、リサからはそう送り出す言葉を送られ……。

 

 

 

「マコト様、向こうでまたお会いしましょう。その時は精一杯、お力にならせていただきます」

 

「私も精一杯、支えさせてもらいます」

 

 シフとユーノからは誓いの如き言葉と共にそれぞれから口づけされ、送り出された。

 

 そして、更に……。

 

「トア、リノンと共に俺と一緒に来てくれ。俺にはお前が必要だ」

 

「はい、マコトさん」

 

 トアにこれからも含めて傍にいてもらうように告げると彼女は喜び、感動の涙を流しながら頷いた。

 

 こうして、真は識だけでなくトアにリノンの姉妹を連れてロッツガルドへと向かうため、ツィーゲを出発したのであった……。

 

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