亜空の王はここにあり   作:自堕落無力

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二十七話

 

 自分が原因でこの異世界へと転移させられた音無響と岩橋智樹が魔族との大戦争に参加させられるのを知った真は月読から頼まれたのもあって、窮地に陥った時は助けるために介入した。

 

 実際、魔族は女神の加護を打ち消すアイテムを開発していたので、介入しなければ危なかっただろう。

 

 もっともその裏側で『奈落』という罠にかかったリミア王国とグリトニア帝国の兵士の大半を密かに確保しつつ、意識改変によって私兵に変えた。

 

 また、リミア王国を滅ぼそうと動いていた魔族の別動隊を率いていた協力者で、冒険者の中では真に巴に澪たちを除けば最強に近い実力を有するソフィアと彼女の相棒である上位竜のランサーこと『御剣』を仲間にしていたりとやることは、やっていたりはするが……。

 

 その後、真はこの異世界の更なる情報を得ようとなんなら、元はこの異世界の住人であった両親のルーツを探れるかもとレンブラントの姉妹であるシフとユーノの提案に乗っかる形で『学園都市ロッツガルド』へと向かう事にした。

 

 そこにある学園にて生徒ではなく、戦術全般の教師として通う事にしたのだ。もっとも試験を受けなければならないが……。

 

 自分がロッツガルドに住んでいる間、巴と澪には再度別方向からこの世界を探らせつつ、亜人の勧誘をしてもらうようにしたり、凪には亜空の管理、ソフィアと御剣には亜空にて亜人の戦士や私兵となったリミア王国とグリトニア帝国の兵士の鍛錬を務めてもらっている。

 

 因みにライムも又、ソフィアたちの鍛錬を受けてもらいつつ必要があれば密偵として動いてもらうようにしていた。

 

 そして、真は識にトアとリノンの姉妹を連れてロッツガルドへと旅立つ。

 

 行き方としては『黄金街道』を使った。

 

 黄金街道とは南端をアイオン王国の辺境都市ツィーゲ、北端をグリトニア帝国の交易都市ロビンとし、道に接する四大国によって整備が行われ、維持されている街道だ。

 

 この道を介して繋がっている各都市は例外なく高い壁に守られている。

 

 商人が大量の物資を安全に運ぶため、国の重要人物が安全に移動するためである。

 

 外敵から道を守るために壁が築かれ、都市自体への侵入者を防ぐための強固な外壁へと発展していったのだ。利用するのはかなり高価だが、安全性においては保証付きである。

 

 そして、黄金街道の中継地となっている街には転移魔法用の魔法陣が設置されており、街道で繋がる隣接都市への移動が可能である。

 

 だが、この転移魔法陣を使うのは欠点があり、物品の転移の成功率が低く、破損も日常茶飯事なのだ。故に黄金街道を渡る商人たちは多い。

 

 もっとも真は転移魔法陣を乗り継いでいく方法で遠方の学園都市ロッツガルドを目指す事にしたが……。

 

 そして、真達は今、黄金街道の中継地の一つであるオビットの街へと来ていた。

 

 

 

「お、中々良いな。これ」

 

「ええ、不思議な触感ですが、味も含めて悪くないです」

 

「本当、美味しいですね」

 

「癖になるよ」

 

 食堂にて真達はお勧めの食品を頼めば、色は青いが硬めの蒟蒻みたいな食感に旨味のある肉汁が溢れて美味しい食品に舌鼓を打った。

 

「お、こいつはな……この辺に生息するスライムだ」

 

 店主はどこか悪戯するような表情で食品の素材を明かした。

 

『へぇ~』

 

「もうちょっと驚いてほしかったんだが……お兄ちゃんたち、冒険者か?」

 

「ああ、ツィーゲで活動していた。今はロッツガルドに向かう途中だ」

 

「ツィーゲからロッツガルド!? そりゃまた随分と長旅だ」

 

「転移魔法陣を利用しているから、それほど大変じゃない」

 

「随分と稼いでいるんだな……そんなお方がどうしてウチなんかに入ってくれたのか、聞いても?」

 

「美味そうな匂いがしたからだ。食べ歩きが好きなのもあるけどな……店主、本当に美味しかったぞ」

 

「へへ、ありがとよ。それはこの街の名物になる予定だからな」

 

「ああ、確実になるよ。こいつは」

 

 嬉しそうな店主とそんな話をしながら、食事を楽しむと食堂から出て街内を探索していると冒険者ギルドを見つけたので手ごろにこなせそうな依頼があれば、小遣い稼ぎに受けてみようと思って寄ってみれば……。

 

「だから、時間が無いのっ!! 『荒城(こうじょう)(つき)』が攻めてくるのよ!!」

 

 真と同じくらいの背の少女がぼろぼろの恰好で必死な形相でギルドのカウンターにいる受付の者に叫んでいた。

 

 口ぶりからして『荒城の月』とは盗賊団の名前なのだろうと認識しながら……。

 

 

 

「(なんで僕の好きな曲と同じ名前をつけてるんだよっ!!)」

 

 思わず、怒った。とはいえ、聞いた以上は放置はしないし、なにより事態は急を要するようだ。

 

 

 

「なら、僕たちが討伐依頼を受けよう」

 

「っ、本当ですか!? ありがとうございます」

 

 少女は真の言葉に笑顔を浮かべながら頭を下げる。

 

「ちょ、おいあんた……『荒城の月』はここら六つの町や村から指名手配されている凶悪な賊の集団で冒険者崩れだぞ。しかも構成員の総数は百をも超えると言われている。これまでに潰した村は十五、城壁を備えた街も二つやられてるんだぞ」

 

「絶野にいる魔物を相手にする事に比べれば、全然温い相手だ」

 

「違いないですね」

 

 驚愕しながら、受付の者が言ったのに対し、真は苦笑しトアも同意する。

 

「じゃあ、行こう」

 

 そうして、依頼主で荒城の月に村を狙われている少女のラナと彼女の連れであるワーウルフの亜人でラナと同い年くらいのエトと共に飛行魔術で移動しながら、村の案内をしてもらうと手前で降り、そうして村へと行けばラナの動きは知られていたようで賊に村の数人ほど、見せしめとばかりに殺されていた。

 

 埋葬を手伝うとその後はリノンを村に預けながら、探索の界によって『荒城の月』が潜んでいる村から程近い山へと自分と識とトアの三人で攻め込み……。

 

「こいつを試すか」

 

 消音の界を周囲に展開しながら、真はドワーフ特製の長弓を出し、それ専用の槍の如き太さの矢を番え、遠くから数人纏めて射抜き、頭部も肉体も関係なく破壊していく。

 

 トアは闇盗賊の能力により、自らの気配を消し接近も悟らせずに忍び寄って暗殺を続け、識も自らの魔法によって蹂躙。

 

 そうして……。

 

「お前で最後だ」

 

「うぎゃああああああっ!!」

 

 『荒城の月』の人数には尾ひれがついていたようで八十人ほどであった。そして、最後の一人で賊の頭目の顔を真は掴むと記憶を魔術でわざと乱暴に無理やり覗く事で脳にダメージを与えて破壊した。

 

 その後、頭目からのぞいた記憶を基にアジトへと転移して、ラナの村が再起するのに十分な金だけ渡しつつ、残りの『荒城の月』が貯め込んでいた財宝やら金は全て真が入手した。

 

 その後、恩を返したいというラナとエトに状況が落ち着いた時に要求を言う事にすると、皆でオビットの街の周辺へ転移する。隠蔽の界で姿を隠しながら中へと入って、物陰にて隠蔽を解除し、宿へと戻っていく。

 

 更にその後、真は転移をし……。

 

 

 

「ひ、ひいいいっ、な、何をするつもりだ」

 

「報いを与えに来た」

 

『荒城の月』と繋がっていた領主の下へ転移し……。

 

「う、うぎゃあああああ、も、もう止めてくれぇぇぇぇぇっ!!」

 

 領主に対し、荒城の月が蹂躙した者らの苦しみを追体験させ、それを繰り返す幻術を見せる。こうして、領主はどんどん精神錯乱し、数日後、死んだのであった……。

 

 

 

 真は宿の部屋に帰ると……。

 

「お帰りなさい、マコトさん」

 

「ああ、ただいま」

 

 マコトと一緒の部屋に泊まっているトアが出迎え、二人は風呂場や寝台の上で愛を交わし合ったのであった……。

 

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