二十八話
『学園都市ロッツガルド』へと転移魔法陣を利用して向かっていた真は、中継地であるオビットの街の冒険者ギルドにて、オビットも含めた幾つかの地域で活動をしていた盗賊団こと『荒城の月』に村を襲われようとしているラナという娘が助けを求めている場面に遭遇した。
よりにもよって、自分が好きな日本の曲と同じ名前を盗賊団が使っていたのもあって放置する選択肢はなく、真はラナから依頼を受け、『荒城の月』を壊滅させるとそのアジトにて保管されていた今まで彼らが奪った財宝やら金やらからラナの村が再起するに十分な分を渡しつつ、残りはちゃっかり、自分のものにした。
また、盗賊団と繋がっている領主がいたので面倒にならないようにするため、しっかり、報いを与えて始末したのである。
その後の移動は順調に進んでいき、先ずは試験を受けられる状態にしようという事でトアたちには待機してもらい、真と識が現地入りした。
ただ、ロッツガルドは沢山の都市の集合体であり、中央都市を中心に周辺にも多くの街が点在していてそれぞれ特徴ある教育機関を有しているという構造だ。
真が教師として働こうとしているのは中央都市であり、学園都市と同じ名前を持つロッツガルド学園である。
ロッツガルドの中でも最高位の学園であり、一番優秀な学生だけを入れる学園だけあって、教師も一流が求められる。
ただ、勿論教師として受かれば名誉となり、ステイタスになるのだから真以外にも教師となるための試験を受けようとする者は大勢いる。
つまり、試験の受付をするだけでも滅茶苦茶人が多い。
「これは……仕方ねぇ」
「幾らなんでも酷すぎますね」
余りの人の多さに受付の処理をしてもらうまで数日待たなければならない事を察すると真は魔術と『界』の併用でその場の人々の意識やら記憶に干渉して三日後に試験を受けられるようにしたのだった。
その後はトアとリノン姉妹を迎えに行き、先ずは一時的な宿を借りつつ、巴に澪らとの合流も出来るように多くの者が住める物件を探したりなどするため、ロッツガルドの中央都市を探索する事にしたのだが……。
「おい、なんとか言えよっ!!」
往来のど真ん中、金髪で見た感じ、生真面目に過ぎる雰囲気のある学生服を着た男を中心に取り巻きだろう男の男子学生たちが、肩を隠すくらいの長さでウェーブのかかった水色の髪で顔もスタイルも抜群で給仕の恰好をした女性に詰め寄った。
年齢としては誰もが真と同じぐらいである。もっとも真自身、高校二年生なので当たり前ではあるが……。
「(ちょっと、不味いか)」
見た感じは男たちに苛められている訳でも乱暴されている訳では無い。
金髪の男は女性とは知り合いのようだがなにやら納得いかない事があるらしく、それを正そうとムキになっているようだった。だが、女性はそれに応じない。
「失礼だろ」
取り巻きが女性を手で押した。
「おっと、それ以上は止めておこうか」
これ以上は洒落にならない状況になりそうなので真は止めに入った。
「……なんだ、お前ら」
「おいおい、この服見えないの? お前ら馬鹿なの?」
真の言葉に対し、取り巻きの二人が見下したような対応をする。
「生憎と僕らは今日、この都市に来たばかりの余所者でね……」
「だったら、余所者は余所者らしく関わってくるなっ!!」
「往来のど真ん中で目立つ事をやっておいてか? 例えばだが、飲食店で飯を食っている時に店長が店員を怒鳴りつけているのを見たら食う気が失せるくらい不快になるだろ、それと同じだよ。流石に女性一人に対して大勢で詰めたり、乱暴したりするのは見過ごせないしな」
「なんだ、やるってのか?」
「いいや、そんな面倒な事はしない。こうするだけだ」
真は指を鳴らして『精神干渉の界』を発動すると男子学生たちの意識を一時的に失わせながら記憶も改竄し、この場から去るようにしたのだった。
「私、助けてなんて……」
「ああ、僕が勝手にやった事だから気にしなくて良いし、恩に着せるつもりもない。ただ、その恰好どこかの店の店員だろう? 飲食店なら案内してくれないか、ちょうど食事をしようとしていてな」
「それなら、私が働いている『ゴテツ亭』に案内します。一応、お礼も」
「ありがとう。僕はミスミ=マコトだ、よろしく」
「私はルリアです」
自己紹介を交わすとゴテツ亭に入り、そこで出されていた鍋料理を食べた。
「おお、美味い」
「中々、美味ですね」
「大勢で食べるのに向いてますし、鍋料理……良いですね」
「とても美味しいね」
全員が舌鼓を打ち、食事を楽しんでいたのだが……。
「おお、これは更に美味しいです」
「お、おぅ……それは良かったな」
「ぁ、あはは……識さんって意外に……」
「ま、まぁ……食べた本人が美味しいと思うものを食べるのが一番良いからね」
識が文字通り、クリームを入れた鍋料理にハマり……それを少しだけ食べた真や漂う甘い香りと見た目だけで躊躇ったトアとリノン姉妹はなんとも言えない表情で見るのであった……。