亜空の王はここにあり   作:自堕落無力

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二十九話

 

 

 学園都市という都合上、様々な土地から人が集まるロッツガルド。

 

 真は中央都市にあるこの国と同じ名前を持ち、学園としても最高位であるロッツガルド学園の戦術全般を指導する講師となるため、試験を受けにやってきた。

 

 試験日は受付を済ませた三日後であり、当日までのんびりと学園都市全体を観光していた。

 

 因みにであるが、ツィーゲや最果ての荒野、俗に『絶野』周辺ではその環境もあってヒューマン、亜人、魔族らは種族関係無しに共存している。そうしなければならない程に絶野での活動は過酷であるのは前提だ。

 

 それとは別に共に活動していく中で関係が深まるというの勿論あるが、しかしこの世界の常識では魔族は敵対する者であり、亜人においては差別されている。

 

 女神が直接、そういうふうに造ったがゆえに美形で固まっているヒューマンとは違い、女神が世界の管理者となる前からこの世界で暮らしていた亜人たちは、真の価値観では普通の見た目でも醜いと蔑まれているし、亜人はヒューマンができるまでの失敗作であり、神の慈悲により世界に存在しているだけなのだからヒューマンに尽くすべきという事になっている。

 

 根本からどうしようもないのである。

 

 そのうえ、この世界のヒューマンではない真の見た目はコボルトに似ていると評されていて、ヒューマンが見れば『亜人に似るなんて可哀そうに』、『呪いでも受けたのか』、『なんて醜い』と憐れんだり、同情されたり、侮蔑されたりした。

 

 少なくとも何かしら表情を歪められるのだ。当然、トアが自分の妻である事を公表すれば……。

 

「はぁ?」

 

「まさか、洗脳を」

 

 驚愕されるし、疑われたりするので真はその怒りを女神にぶつけるための怒りとして蓄積しながら深く深く、沈めていた。

 

 そんなこんなで三日後に真は試験を受けに行った。戦術全般担当である事や講師としてのある程度のステイタスは必要と思い、最高難易度で過去数例しか合格者がいない実技の試験をだ。

 

「この異世界に来た時を思い出すな」

 

 試験の内容は試験会場に設定された山あり谷ありのフィールドで三種類の球状のターゲットが相当数放たれているのでそれを三日以内に三個捕獲して学園に戻るというもの。

 

 球状のターゲットはハチドリのように高速で飛行しており、種類に分けると魔術をぶつければ破裂する赤い球、受験者がある程度接近すると破裂してしまう青い球、物理的な衝撃を受けると破裂する黄色い球となっている。

 

 戻り方は試験を諦めて帰還するためのベルの形をした道具と試験を終了して帰還するための小さな羽の形をした金属製の道具を使う事になっている。

 

 試験としては単純だが、このフィールドには魔物もいるしなにより、合格条件を達成するまで三日間、このフィールドで野宿をしなければならない。

 

 戦術全般の実技なので最低限の条件を満たせなければいけないのは当然だが……真は女神にポイ捨てされるように最果ての荒野という過酷な環境に落とされた事を思い出しながらも試験に臨み……。

 

「まさか、試験中に受験者狙いの暗殺者が来るなんてな」

 

 一日で三種類の球を三個捕獲しながら、今後の方針などを考えながらの野宿生活をしていたが、最終日の朝、暗殺者ギルドから派遣された凄腕の暗殺者が襲い掛かってきた。

 

 もっとも接近する前から感知していて、すぐさま無力化して洗脳し手駒にすると暗殺者ギルドなど全ての情報を吐かせた。ただ、依頼については真がしたような方法で漏れないようにするため、仲介者を通してのものとなっていたので依頼者については分からなかった。

 

 ただ、暗殺も最終手段で基本はあくまで脅しという事にはなっていたようだが……。

 

 

 

「今の時期に新参に入られたくない奴がいるって事かもな……明らかに厄介事だな……後で指示を出すから、それまで待機していろ」

 

「はっ!!」

 

 暗殺者に待機命令を出すと真は帰還するための金属製の小さな羽の道具を使う。

 

「ああ、マコトさん。集め終わりましたか? それとも棄権ですか?」

 

「勿論集めてきた。おまけも含めてな」

 

 羽の道具を使ったというのに何故かその目的が伝わってない事で結局、嫌がらせのようなものだったと思いながら職員へ布袋を渡す。

 

「なっ、三種類の球を三つずつ!?」

 

『!?』

 

 この試験の目的は受験者が一番得意な方法でターゲットを三個捕獲するというもの。三個集めるのは一種類だけで十分なのだ。なので三種類を三個ずつ持ってきた真はオールラウンダーの超スペシャリストという事になる。

 

 当然、職員も真以外の受験者でヒューマンで魔術師風な男とエルフと獅子顔の獣人も驚愕し、戦慄した。

 

 真以外の受験者は全員が棄権したのだ。獅子顔の獣人は真を襲った暗殺者に脅迫された事によるものだが……。

 

 

 

「大変、お見逸れしました。マコト様……学園都市は貴方のような方を待っていた。是非、臨時講師として歓迎させてください」

 

「光栄です」

 

 こうして真は試験に合格し、ロッツガルド学園の臨時講師として働く事になったのであった……。

 

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