亜空の王はここにあり   作:自堕落無力

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三十三話

 

 ロッツガルド学園では学生が学科ごとに決められた単位の講義を受け、残りは学科に関係なく自分が受けたい講義を選択して受ける。

 

 時間割をある程度各々が自由に作成できるシステムになっているのだ。

 

 固定された講義や自分の所属する学科毎に必須となる講義はともかく、選択して履修するタイプの講義は開講する側の立場が凄く弱い。選んだら半年とか通年変更できないならまだしも、学生の意思しだいで直ぐに変更できてしまうのである。

 

 故に学生側の立場の方がはるかに強いのだ。

 

 そして講師は自分の講義を履修する生徒の数で給料が決まるため、様々な方法で学生を集める事になる。

 

 例を挙げるなら、人気のある講義の時間帯を避けて違う場所で開講したり、試験内容を甘くしたり、酷いのになると出席を金で買うなんて講師までいるのだとか……。

 

 

 

 この学園では講師は学生に舐められる可能性が非常に高いのだ。

 

 特に()()()()()()()()()()()()()ならばもっとその可能性は高くなるだろう。

 

 そう、今日は真が臨時講師として戦術全般の講義をする最初の日である。

 

 

 

「新しい実技講師はこの学園の最難関の試験を圧倒的な実力で合格したらしい」

 

「実際、どうなのかは気になるけど強くなれるなら何でも良い」

 

「でも亜人らしいわよ」

 

「亜人ですって!?」

 

「年齢も俺たちと同じぐらいだってよ」

 

「ええー、まじかよ」

 

 ブライトの指示で真の講義を受ける事になった学生たちが、講義が行われるフィールドへと軽口を叩き合いながら移動する。

 

 

 青い髪の男で剣士志望の男子学生であり優秀な成績を示している奨学生のジン=ロアン。

 

 白髪の上にカチューシャをした大柄でガタイの良い男子学生であり、ジンと同じく奨学生、両親は神殿関係者というミスラ=カズパー。

 

 黒髪だが前髪の一部に白のメッシュを入れている飄々として雰囲気の男子学生であり、奨学生。更に学生でありながら既婚者でもあるダエナ=セブルス。

 

 ブラウンの髪を後ろで結っている男子学生でやはり、奨学生。かつローレル連邦出身で国に複数の許嫁を持つイズモ=イクサベ。

 

 そして紫の髪を後ろでロール状にしている女子生徒であり、一般出身の奨学生であるアベリア=ホープレイズ。

 

 他にも数人の学生含めて十人前後が真の講義を受ける事になる。

 

 

 

 そして、実際に講義をするためのフィールドに到着すると……。

 

 

 

 

「ようこそ、僕の講義へ……これからお前たちに戦術の全てを講義するミスミ=マコトだ」

 

「私はマコト様の補佐をさせていただく識と申します」

 

 真と識が自己紹介をし、軽く礼をした。

 

「うっわ、コボルトじゃん」

 

「よく言われるが、僕はヒューマンだぞ」

 

「そんな、どんな呪いを……」

 

 このロッツガルドに来た時のような対応を真はされたが、もう適当にあしらった。

 

「とりあえず、自己紹介と剣士や術師というように自分が何の戦術を求めているかの要望を頼む」

 

 そうして生徒たちから色んな事を聞き出す。

 

「よく分かった。とはいえ、僕はお前たちと同年代でだからこそ、色々と疑っているだろう……まずは軽く、僕達の実力を見せようと思う。いくぞ、識」

 

「はい」

 

 

 そうして、生徒達を観戦者として真と識は彼ら、彼女らから自分たちの戦闘に巻き込まない距離まで離れ……。

 

「さあ、いつでも来い」

 

 真は刀を虚空から出現させながら識に先手を譲る。

 

「遠慮なくっ!!」

 

 識も又、ドワーフたち特製の杖を虚空から出すと構え、そして杖の機能により、先端に刃が生まれ槍のようになったそれと共に瞬時に真へと接近。

 

 そうして、識の槍閃と真の刀閃が激しく空間中を舞い踊りながら激突していく。

 

 伴って識は縦横無尽に移動しているが、対する真はその場を軽く動くのみで対処していた。

 

そして、突如真の刀が槍へ、あるいは槌……様々な武器に変換されながら識と切り結ぶ。

 

 そんな中……。

 

 

 

 

「ふっ!!」

 

「はあっ!!」

 

 壮絶な近接戦闘を繰り広げながら、様々な属性の魔法を幾度も行使し、応酬していく。

 

 

 

 

『……』

 

 生徒たちは真と識の伝説の英雄たちの戦いが如き戦闘に、驚愕と共に目を奪われた。

 

 そうして……。

 

 

 

 

「ふふ……流石です、マコト様。全力の半分すら引き出せないとは」

 

「いやいや識もちゃんと実力を上げている。これからも精進してくれ」

 

「当然です」

 

 激しく息を吐きながら、片膝をついた識に対し、息を全く乱していない真が刀を突き付ければ、識は降参をする。

 

 真と識の戦闘は観戦者たちにとっては長く感じたが、時間にしては短い間で終わってしまった。

 

「とまあ、これが僕たちの実力だ……因みに僕はまだまだ本気じゃないからな。で、次の講義から本当に強くなりたい人だけ来い。ちゃんと強くしてやろう……強くなる気はあるか?」

 

『はい、よろしくお願いします!!』

 

「気合は十分だな。じゃあ次の講義から指導していく……今日は解散だ」

 

「では」

 

 学生たちの真剣な表情と気合の入った言葉に真は頷きながら、指示をするとフィールドから去っていき、識も又軽く会釈をすると真に続くのであった……。

 

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