亜空の王はここにあり   作:自堕落無力

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三十七話

 

 その日、真は識と共に常連となっている『ゴテツ亭』へと向かったのだが……。

 

「あの日、一緒に約束を交わしたじゃないかっ!!」

 

「いつの頃の話だと……あの時とは何もかもが違うんですよ。人は変わるんです。良くも悪くも……」

 

「変わらないものだってあるだろう!!」

 

 店の前でリミア王国の大貴族家系で王家と血縁関係にもあるという『ホープレイズ家』の次男、イルムガンドという男子生徒がルリアと口論をしていた。イルムガンドは熱くなりすぎているのか、詰め寄ろうとし……。

 

 

 

「おっと、店の前で揉め事を起こすのは店の迷惑だぞ……せめて客になるぐらいはしろ」

 

「お前は……確か、臨時講師の……今は大事な話をしているんだ、邪魔をするな」

 

 真がイルムガンドの肩に触れて一旦、動きを止める。それを振り払いながら、イルムガンドは真を睨みつけた。

 

「邪魔はしてないだろう、単に忠告してるだけだ。話を続けるなら、店の中で客になって話をしろよ。それが礼儀ってもんだ……」

 

「私としては貴方に対して話はありません」

 

「なっ!?」

 

 真に続いてルリアがイルムガンドへ拒絶の意思を込めた瞳で見、言葉でも拒絶する。

 

 イルムガンドは怒りの表情を浮かべ始め……。

「ふざけっ「ふざけてるのはお前の方だ。ルリアに手を出そうというのなら、俺が許さんぞ。彼女は俺の友人だしな」」

 

 

 

「う、ぐ……」

 

 また、詰め寄ろうとしたイルムガンドを真は威圧する事でたじろがせる。

 

「くそ、覚えてろ」

 

 表情を歪ませながら言って、この場から立ち去っていった。

 

 

 

「ありがとうございました、マコトさん」

 

「あれくらい、お安い御用だ」

 

「流石です、マコト様」

 

 そんな事を言い合って、真と識は『ゴテツ亭』へと入り、食事を楽しんだ。

 

 そうして、その日の翌日……。

 

「マコト・ミスミッ!! 俺と決闘しろ」

 

 鎧やら大剣やらを装備してイルムガンドは真の講義の場へと乗り込み、決闘を申し込んだ。

 

 

 

『(ええー、なんて無謀な事を……)』

 

 真の実力を知っている生徒たちはイルムガンドの無謀さに驚き、そして呆れた。

 

「おお、良いぞ。活きが良い奴は嫌いじゃない」

 

 真はイルムガンドとの決闘に応じ……。

 

「うおおおおっ!!」

 

 イルムガンドは虚空から鞘に納めた刀を出し、刃を抜いた真へ突撃する。

 

 そうして、剣を振り下ろすが……。

 

「踏み込みが甘いし、力も足りないな」

 

 豪快な一閃を真は軽く刀を動かす事で逸らしてしまった。

 

 

 

 

「くそっ!!」

 

 イルムガンドは次々と力任せに剣を振るっていく。

 

「ちゃんと狙わないと当たらないぞ」

 

 イルムガンドの荒々しい剣撃を受け流し、逸らし、あるいは軽く体を動かす事ですり抜かせるように回避していく。最小最低限の対応であり、無駄が無い。

 

「くそ、くそおおおおっ!!」

 

 イルムガンドはひたすらに剣を振るったが……。

 

 

 

 

「うあつ!? はぁ、はぁ、はぁ……」

 

「これで終わりだ」

 

 疲れ果てて倒れたイルムガンドに真は刃を突き付ける。

 

「う、こ、こんな……」

 

 イルムガンドは愕然としながら、項垂れる。

 

「お前も俺の講義を受けるか?」

 

「だ、誰が……ぜ、絶対にお前を倒してやるからな」

 

 イルムガンドは真の誘いを拒絶するとそのまま、講義の場から去っていく。

 

「ちくしょう、もっと力があれば……」

 

「ふふ、力が欲しいのなら良い物がありますよ」

 

「何?」

 

 呟くイルムガンドに対し、一人の女生徒が近づく。

 

「(おいおい、ロナじゃないか……どんな悪企みをするんだ?)」

 

 真が張り巡らせている感知の界と結界のそれに魔族が引っ掛かったので覗けば、人間の姿に変装する幻術をかけたロナであった。

 

 真は遊び相手が増えた事を喜び、僅かに笑みを浮かべるのであった……。

 

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