学園都市ロッツガルドでの夏休みは一か月であり、後半において真はツィーゲへトアにリノン、シフにユーノ等と戻って本人なりの穏やかな時間を過ごした。
「響先輩も順調に勇者として活躍してるようで何よりだ」
真がロッツガルドで教師としての生活をしている間、修行としてツィーゲに寄り、荒野にて修行をしていた響達。
それを進めたのは響に料理を教わった澪である。ともかく自分の仲間とレベル上げという修行に励んだ響は当たり前だが、自分がいる事に気づいたようだ。
そのうち会いに行くなどと言ってたりしたらしい。後、荒野においてもカリスマを発揮してツィーゲの冒険者の多くを自分の仲間に引き抜いていったらしい。
あの人らしいなと言いながら、真は冒険者としての依頼をこなしていったのである。
そうして……。
「それじゃあ、ロッツガルドに帰るか」
『はい』
トアにリノン、シフにユーノ等とロッツガルドに帰還をしたのであった。
そして、ロッツガルドであるが夏休みは確かに一か月ほどだ。
だが、学園の創立祭という行事があり、その準備期間として一か月休みのような期間がある。
だから、結局は日本の学校の夏休みのようなものである。
名目上、準備期間においては学園は再会しているものの通常の講義は行われないのだ。
そして、ロッツガルド学園の創立祭の期間自体も一週間もあり、催し物も多くあるのだ。
そんな準備期間の中で……。
「この度は時間を設けていただき感謝する」
「いえいえ、神殿のお偉方とあればこのくらいは当然です」
真がレンブラント商会に提供している薬品を用意している情報を掴んだ(真が掴ませたのだが)この世界を管理する女神を信仰するための神殿から接触したいと申し出があったのだ。
そして、その相手は準司祭だという身分証代わりの首飾りをした細い体つきの男だ。
「お初にお目にかかります。僕は冒険者兼ロッツガルド学園の非常勤講師を務めるマコト・ミスミです」
「私はシナイという。それで単刀直入に聞くが、マコト殿がレンブラント商会に薬を提供しているのだとか……」
「ええ、そうです。優秀な仲間が頑張って作り出しましてね。レンブラント商会には良い値で取り扱ってもらっているんですよ」
シナイの問いに答えた。
「そうか……物は相談なんだが薬の製法を明かしてもらえないだろうか。神殿が保証すればさらに薬の信用は上がるだろう。そうなれば荒野以外でも安心して売れるようになる助けとなる筈だ。レンブラント商会からはマコト殿の許可を得るように言われてもいてね、どうだろうか?」
「良いですよ。これで良い関係を築けるようになるなら……ただ、高性能故に材料も製法はなかなか難しいものになりますが」
「うむ、それは当然だろうな」
真が用意している薬については材料となる薬草は幾らでも育てているし、アルケーたちも優秀なので高性能な薬を大量生産が可能だ。
だが、こういう時のために薬は高価なものであり数も限られているように装っているのだ。
そうして、真は翌日に識と共に神殿へと向かう。
「この度は薬の技術提供感謝します」
「いえいえ、シナイ様にも言いましたが神殿関係者と良い関係を築けるならばお安い御用です」
長い髪であるが頭にフードのようなものをして顔を隠しており、ダブついた余裕のある露出の少ない服装をしている司教から艶のある大人の女性の声で感謝を示され、真は頷いた。
その後、識が手間取る製法を実演する中で真はシナイとレンブラントについての話をするなどして時間を過ごした。
「(いつか、お前の信仰も潰して月読様を信仰させるようにしてやるからな)」
神殿から去るとき、女神へ内心で中指を立てながらそんな事を誓いつつ……。
『マコト・ミスミには下手な干渉はしないようにね……接し方次第ではこちらの得になるように出来る筈よ』
遠くから『遠視と遠聴』の効果を有した界を広範囲に展開して女司教がそんな事を言うのを真は見ていた。
「(怖い怖い、振る舞いからして油断ならないとは思っていたが……まあ、こういう一面が無けりゃ司教は務まらねぇか)」
苦笑を浮かべながら、真はそんな事を思うのであった……。