亜空の王はここにあり   作:自堕落無力

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四話

 

 

 深澄真は支配契約を交わした蜃こと巴が有し、真の存在が影響して日本の自然界の如き性質を持つ異界と化した『亜空』を活動拠点にする事にし、其処へエマ達ハイランドオークを巴の力によい、霧を介して村ごと移転させた。

 

 そうして次は武具や防具、国に必要な施設の建設などを考えて鍛冶の技術に優れるドワーフという亜人を『亜空』へ迎え入れるために移動していた。

 

 活火山付近でドワーフの一族が暮らしているようなのだ。真と巴はオルトに乗って移動しながら、この果ての荒野は昼夜の寒暖差が異常に大きく、まともな水が手に入る場所もほとんどないため移動が困難な状況になると『亜空』に転移して休憩しながら生活するようにしていた。

 

『亜空』ではハイランドオークたちが働き手として『亜空』内の開拓や果物の研究、巴に言われて衣服の裁縫をするなどしていた。

 

 真は真で巴の記憶を見る能力は霧に写すようにして他の者も見る事が出来るため、それを利用してヒューマンが使う共通語の読み書きと発音と聞き取りを『界』と魔法による脳機能の強化によって異常な速度で習得した。

 

 やはり、共通語に関しては真の言語理解は効果を成さなかったがある意味、反則な方法の勉強で数日で習得したのだ。

 

 その間、巴は真の記憶から時代劇の記憶を楽しんでいる訳だが……。他にも魔法の練習をして魔法の呪文には共通する式があったり、詠唱の組み換えで性質を変化するなどの特性を見つける。

 

 また、真は全属性、全系統の魔術も使えた。属性で言えば特に適性がある属性が何かと言えば、水属性であった。もっとも他の属性も効果が弱いとかそういうものは無い。

 

 

 

「真様は神になるべく、生まれた方のようですね」

 

「実際に女神から神の座を奪い取って神になるつもりだと言ったら、どうする?」

 

「それこそ、喜ばしい事です。是非そうしてください」

 

「ああ、そうさせてもらうよ」

 

 エマに協力してもらいながらの魔法の研究中にそんな会話を交わしたりした。

 

 また、魔力においては真だけがやれる鍛錬法を発見した。

 

 真は弓を射る際、精神内で的を射るイメージを組み上げるのだが、一度精神を落ち着けて無とし、的まで意識を伸ばし的と自分の間にある全ての存在と同化する感じで意識を再構成している。

 

 なんとこの異世界においては己の意識を周囲に拡散させるのは死ぬときのみであり、そこから意識を再構成するのは生き返ったに等しい。

 

 本来、魔力はどうやっても増大しないのだが、死の淵から生還すると魔力の最大値が上昇するという事があるのだという。

 

 この異常な精神制御を鍛錬法として真は意識を拡散、再構成する事でこの異世界において何度も疑似的に死の淵を彷徨っては生還する状態になって魔力量を増大させていった。

 

 勿論、『界』における鍛錬に研究や肉体と戦闘術の鍛錬もしたが……。

 

 更に装備にも変化があり、オークから粗雑な作りの弓に明らかに業物な短剣を貰った。透明度が異常に高く、柄も刀身も同じ材質、装飾のついた柄と紋様が刻まれた刀身を合わせた全長は四十五センチ、刃部分は三十センチ前後の儀礼用短剣である。

 

 

 そんなこんなで数日を過ごした真は……。

 

 

「主~、ドワーフが襲われていたようですぞ」

 

「そうか……で、襲っていたのも連れてきた訳だ」

 

「流石、鋭い。では後は任せます」

 

 先に外に出ていた巴が傷だらけな小柄な男を抱えており、真はファンタジー知識により、ドワーフだと確信。そして、更に常に何かあれば対応できるように広範囲に『感知の界』を展開しているそれに反応があった事でこの『亜空』へ侵入しようとする存在の気配を感知した。

 

「ああ、巻き込まれないように離れていろ」

 

 言いながら、真は粗雑な作りの弓に魔力を混ぜた『強化の界』を施しながら魔術によってかなり太く異常な速度で旋回し続ける矢を形成し、番えた。

 

『GYAAAAA!!』

 

 そして、真の前で空間に亀裂が広がり、その闇の奥から伸びる数本の脚、更に妖しく光る二本の牙、頑丈な外殻を有する巨大な黒き蜘蛛が出てきた。

 

「しっ!!」

 

『AAAAAA!!』

 

真は矢を放つ事で蜘蛛の頭部から内部、そして後ろまで旋回によって滅茶苦茶に抉りながら貫く。

 

 悲鳴を上げて倒れ伏す蜘蛛……しかし……。

 

『AAAAAAA!!』

 

 再生しながら、恍惚とした様子で身を震わせる。

 

「あれで死なんとは流石じゃな」

 

「これなら、どうだ!!」

 

 巴が呟き、抱えられているドワーフが絶句する中、真は今度は旋回しない矢を魔術で形成すると放った。

 

 矢は刺さり……。

 

『GYAAAAAA!!』

 

魔力を超凝縮した矢が蜘蛛の身体に突き刺さると凄まじい閃光の爆発を引き起こした。

 

「……それでこいつはなに?」

 

「知りませぬ、ただ古から常に何処かに在り、そしてただ喰らう者じゃ。飢えが収まるまで目に入ったものを喰らっては移動をして同じことを繰り返しているのですよ」

 

「……災害の黒蜘蛛と我らは呼んでおります」

 

 真の問いに巴とドワーフが答える。

 

「成程……それにしてもしぶといな」

 

 真の目の前でほぼ肉片と化していたそれが再生を始めていた。

 

 

 

「巴、ドワーフを早く治療できる場所に運んでやれ。用があれば呼ぶ」

 

 そう呼びかけながら念話によって、『(仲間に出来るかどうかやってみる)』と巴に伝えた。

 

「承知しました主、御覧の通り厄介ですので気をつけて……」

 

 『(契約が出来そうならお呼びください)』と念話で伝えながらドワーフが戸惑う中、この場を去っていった。

 

 

 

「さて、まずはお腹いっぱいにしてやる」

 

『GYA!!』

 

再生し、真へ襲い掛かろうとした蜘蛛だが自分と蜘蛛を『界』で覆うと蜘蛛の頭部へと転移し、強化魔術を付与する事で突き刺した。そして、短剣を媒介に魔力を蜘蛛の体内へ流し込む。

 

『GYAAAAA!!』

 

 蜘蛛は流し込まれる魔力にもだえ苦しみながらも段々と喜び、震え……。

 

『み、満たされる。き、気持ち良いぃぃっ!!』

 

「理性が戻ったか」

 

 蜘蛛が言葉を介した事で魔力を流し込むのを止めた真は短剣を抜き、蜘蛛から少し離れた場所に転移する。

 

『ああ、美味しい……最高、貴方最高よぉ、お腹いっぱい、こんなの初めてぇぇぇっ!!』

 

「それは良かった。なら僕の力になれ。そうすればまた飢えてもその度に満たし続けてやる」

 

『んふふふ、勿論よぉ。ずっと、ずっと一緒にいるって決めたわ』

 

「良し、なら契約を結ぶぞ」

 

 

 そうして真は念話で巴を呼び……。

 

 

 

「ではこれより、一生お仕えいたします。ご主人様」

 

「よろしくね。名前は澪で良い?」

 

「はい、素晴らしい名前を付けていただきありがとうございます」

 

 真は蜘蛛と巴のように自分を主とし、蜘蛛が下僕となる支配の契約を交わすと蜘蛛は艶やかな黒髪に色気のある肢体を女物の着物らしき衣装の端から覗かせた女性の姿に変化した。

 

 そんな蜘蛛に真は名も無かったという事で零からのスタート、それだけでは味気が無いので女性らしい名前、得意属性である水を表す部首を加えた澪と名付けた。

 

「むぅ、主よ。私も黒髪が欲しかったですぞ」

 

「竜としての巴のどこにも黒色無かったからなぁ……人間の姿になったからってどうにもならないよ。僕は綺麗な巴の蒼髪好きだけどね」

 

「ぅ……ふふ、ありがとうございます主」

 

「どういたしまして……」

 

 その後、澪に襲わていたドワーフは治療所にて治療はされていて、現在は消耗から眠りについている。そのドワーフへの看護や世話をオークの女性に頼みつつ、オーク一同に澪を紹介する。

 

 因みに澪については災害の黒蜘蛛の姿は呪いでなっていたという事にした。古来の存在であるが詳細は謎な危険生物であったために適当なバックストーリーでも大丈夫なのだ。

 

 そうして……。

 

 

 

 

 

「んふ、く……主ぃ……」

 

「ふく、んん……また満たされていきますぅ」

 

「ああ、俺も満たされているよ」

 

 夜の就寝時、自分の寝床で巴と澪の二人と主と下僕、男と女として真に繋がりながら、心身ともに満たし合うのだった……。

 

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