学園都市ロッツガルドでは一週間に渡って学園の創立祭が開催されている。
色んな催し物や学生たちの勉学の成果である研究の発表や実演、実技の披露などが行われるものであり、それを見に各国から人が訪れる。
当然、そうした人々を見越して露店も含めて商売だって盛んになる。
「いやぁ~、大勢での鍋というのは良いものですなぁ~」
「ふむふむ、こうした料理の仕方もあるのですね」
「うん、良い味。店の雰囲気も良いし」
ロッツガルドにある料亭、『ゴテツ亭』の一部屋を貸し切って鍋料理を楽しむ者たちがいた。
創立祭をとことん楽しむ方針を決めた真たちであり、今楽しんでいるのは真にトアにリノン、識に巴と澪、そして基本的にはギルドマスターのルトとしてこの創立祭に招かれているが、彼は今、『万』として鍋料理での食事に参加している。
「気に入ってもらえて良かったよ。此処の鍋料理は最高だからな」
「ありがとうございます、マコト様」
真の言葉に追加で注文された品や酒などを持ってきたルリアが感謝を告げた。
「しかし、創立祭の時期とあって人の数が全然違うな、今も満員なんだろう?」
「はい、おかげ様で……忙しいですけど、嬉しい悲鳴を上げています」
「そうか、でも無理はするなよ?」
「心配ありがとうございます、でも大丈夫ですよ、お姉ちゃんも手伝ってくれていますし」
「へえ、エヴァは接客業もこなせるのか。騒がしいのは苦手なイメージがあったんだが」
「……いえ、厨房で洗いものとお野菜を切るのを手伝ってくれています」
「向き不向きはあるからな。でも、手伝うのは良い事だ」
「はい、毎年私がお世話になっている場所だからと毎年、来てくれているんです」
「良い姉だな」
「はい、自慢の姉です。ではまた、ご注文があれば呼んでください」
自分の姉を評する真の言葉にルリアは笑みを浮かべながら、頷きそうして部屋から退出していった。
そうして、真は食事を楽しみながら……。
『巫女様を国へお返しください』
学園都市の中央に位置し、最も優秀な学生を集める象牙の塔ロッツガルド、その中でも学内で来賓を迎える一角の更にその中で厳重な警備を施された部屋の一つで、リミア王国とローレル連邦の者たちが穏やかではない話をしていた。
リミア王国の勇者である響の仲間としてローレル連邦の巫女であるチヤが行動しているのだが、その期間が長いからなのかローレル連邦側は不満らしい。
人質をとるのかと思わずといった形で暴言が出てしまう程、リミア王国の国王は寛大な態度で流したが……。
「(やっぱり、国の経営は大変なんだな)」
『界』の力で様子を見ていた真は将来的にはケリュネオンやエリュシオンなど国を経営する事になるので色々と交流など気を配ろうと思った。
「(まあ、ローレル連邦は絡んできそうだがなぁ)」
今日は主にトアにリノンと創立祭を楽しんでいた真は『界』の力で周囲を見ていた時、実は自分がロッツガルドで住んでいる家の表札に真は出来心により、日本の漢字表記で自分に識と更にトアとリノンも漢字変換にて名前を刻んでいる。
その漢字をどうやらローレル連邦の者たちは読めるらしい。
『何故、我がローレルが秘して伝えてきた文字がこのような場所に……』
とても驚いたようにローレル連邦の者たちは反応を示したのである。
「(まあ、その時はその時の対応をするだけだ。冒険者としての売り込みをしても良いしな)」
真はそう、方針を考えつつ鍋料理を楽しむのであった……。