亜空の王はここにあり   作:自堕落無力

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五十三話

 

  真は『創立祭』が開催されている学園都市ロッツガルドにて、生徒たちの社交界での態度を評価する事を目的としたパーティでローレル連邦からの賓客であるカハラ=サイリツから話をしたいと言われ、それに応じた。

 

 実はローレル連邦では真に響、智樹のような地球からこの異世界にやって来た者に対して『賢人』と呼ぶ文化があった。更に漢字まで『賢人文字』として使われている事をサイリツによって知った。

 

 また、ローレル連邦では賢人は本当に慕われているようでその賢人と同じような韻の名を持つに至っているとの事。

 

 

 

 因みにカハラ=サイリツを賢人文字で表現すると『華原彩律』になるとの事だった。

 

 

「成程、確かに俺がやってきた世界の文字や読み方を使っているんですね……」

 

「はい、慕われようも含めて是非、早いうちに我がローレルへといらしてほしいですわ」

 

「そう、出来るようにしますね。では、今日はこの辺で」

 

「はい、少しとはいえ真様と話が出来て良かったです」

 

 真が言えば、彩律がにこやかに微笑む。因みに改めて彩律には『深澄真』という自分の名前とその呼び方を教えている。

 

 

 

「僕もですよ、彩律さん」

 

 そう、最後に語り合うと真は彩律と握手を交わし、先にサロンからパーティ会場へと戻った。

 

 

 

「先程の方とは良いお話でも出来ましたか、先生?」

 

「先生自身も女性との対応、上手ですしね」

 

「授業は厳しいですけれど」

 

 シフトユーノ、アベリアたちの下へ戻ればそれぞれ、口を開いて真へと言う。

 

「まあ、それはそれ。これはこれだ……あの女性とは良いお話が出来た。もっとも国の文化についての話も出たから、おいそれとは話せないが……因みにローレル連邦からの賓客だったよ」

 

「ああ、確かにローレル連邦は独自の文化があると聞いた事があります」

 

「そんな国の人に声をかけられるなんてやっぱり、先生は人を惹きつける何かがあるんですね」

 

「先生は雰囲気が独特ですもんね」

 

「お褒めいただき、ありがとうございます。お嬢様たち……まあ、アベリアのは褒めてるのか微妙な気がするけどな」

 

 三人からの称賛に応じる真、その後は近づいてくる他の客などと話を交わしつつ、自分は冒険者でもあるから困った事があれば、依頼してくれれば応じるなどとアピールなどをしたりして時間を過ごすのであった。

 

 

 

 そうして、まだパーティは行われているが早めに帰路につく事にしたレンブラント夫妻の護衛のため同行する。

 

 

 

「今日はありがとう。おかげで娘の晴れ姿を堪能できたよ……ああ、リサにシフ、ユーノの『呪病』が治った事も含めてまるで夢の中にいるようだ」

 

「安心しろ、夢じゃない。良かったな」

 

「ああ、改めてありがとうマコト殿」

 

「うふふ、そんな恩人にシフとユーノに関しての無理を言ったり本来、嫌がらせのような事をしたのはどこの誰でしたかね?」

 

「そ、それを持ち出さないでくれよぉ。あれはモリスも悪いんだ。モノクルの調子が悪いなら悪いと言えば……」

 

 涙を流しつつ、真へ感謝するパトリック。

 

 だが、リサは真が気にもしないし、臨時講師の試験に合格したから良いものの、本来は難易度の高すぎる試験を受けさせた事に対して苦言を呈した。

 

 

 

「そういう事を把握するのも主の役目だとも思いますが……」

 

「仲睦まじいようでなによりだ……ん?」

 

 パトリックとリサの夫婦だからこそのやり取りを見ながら苦笑する真は二人の前に出て、立ち止まる。一瞬、二人は驚いたものの察し良く、意図に気づいて歩みを止めた。

 

「おい、ミスミ!!」

 

「これはこれは……リミア王国の王族であらせられるイルムガンド=ホープレイズ様じゃないですか、こんなところで奇遇ですねって、そんな訳も無いですよね?」

 

 真の目の前にイルムガンドとその取り巻きたちが姿を現した。

 

『ホープレイズ家!?』

 

 パトリックとリサは意外な王族の家名に驚く。

 

「ち、わざとらしい態度取りやがってっ!! 良いか、俺は絶対にお前を許さない。俺に手を出した事を絶対後悔させてやるからな。まずは明日組み合わせが決まる討議大会でお前の講義を受けている連中を潰してやる。どんな手を使ってもだっ!!」

 

「いやいや、貴方様が私に決闘挑んで勝手に負けただけでそもそも、私の友人であるルリアにしつこく言い寄って仕事の邪魔してたのが悪いんじゃないですか。全部、逆恨みですよね。そういうの王族の対応としては拙いと思うんですが?」

 

「うるさい、俺に逆らうのが悪いんだ!!」

 

『そうだそうだ』

 

 イルムガンドは真の正論に対し、唯々激昂し取り巻きは賛同する。

 

 

 

「(精神にも異常を来たし始めているな……ロナが用意したあれの効果が大分進行しているか)」

 

 真は冷静にイルムガンドの状態を内心で判断する。実はロナがイルムガンドに渡したとある薬を真は没収しておらず、そのまま服用させていた。

 

 それがどういう効果をもたらすか知ったうえでだ。

 

「(僕は僕で利用させてもらうだけだ)」

 

 無論、そうした方が利用価値があるからである。

 

 

 

「なんだ、今更後悔したのか? もう手遅れだが」

 

「……そうですか、それはそれは……ともかく、今の私は学園が招いた賓客と一緒なんです。いくらイルムガンド様とはいえ学生である貴方たちが手をあげれば問題になります。それはわかりますよね?」

 

 そうして、釘をさせば顔色を変えた。夫妻へと合図を出して歩かせれば、手を出す者もいない。

 

 真も脇を抜けていくと……。

 

「良いか、絶対に思い知らせてやるからなぁっ!!」

 

「……」

 

 背中へイルムガンドがかける言葉を無視しながら、夫妻と共に歩く真。

 

「安心しろ、シフとユーノには絶対に手を出させない。それは僕の講義を受けている生徒達も同じですが……」

 

「いや、それは心配してないが……マコト殿を敵に回すなんてホープレイズ家とはいえ、終わったなと」

 

「まさか、潰したりはしない。むしろ、仲良くなりたいからな」

 

「仲良くですか」

 

「ああ、仲良くだ」

 

 パトリックの同情するような視線と声に対し、真は応じつつ、リサの声にも不気味な物を感じさせる表情と声音で応じるのであった……。

 

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