イルムガンドの手による妨害から闘技大会に参加する自分の講義の生徒であるジンにアベリア、ダエナ、ミスラ、イズモにシフとユーノを守った真は今日、巴に澪の二人とジンたちの試合を観戦するために会場へと向かった。
「若の教え子たちがどのような戦いをするか、楽しみですな」
「若様が教えたのなら優秀に決まっています。不甲斐なければ若様に代わって私がお仕置きしてあげますわ」
観客席にて巴は言葉通りに楽しみな様子で言い、澪はなにやら決意していた。
「しなくて良いぞ、澪……あ?」
澪に軽く言葉をかけながら、真は席に着く前に配られたトーナメント表が書かれているパンフレットに目を落としたが、直ぐに表情を歪めた。
「どうしたのですか、若?」
「何か、気に入らない事が?」
巴と澪が問いかけると……。
「あいつ、こんな土壇場でトーナメント表まで弄りやがった」
昨日も真はトーナメント表を一目程度とはいえ、見たのだがその時と内容が明らかに変わっていたのだ。
この大会では戦士部門と術師部門で分けられていて、戦士部門としてはジンにミスラ、ダエナとユーノが参加しており、術師部門としてはアベリア、シフ、イズモが参加していた。
そして一回戦でジン対ミスラ、ダエナ対ユーノという組み合わせでそれぞれの勝者同士が次回でぶつかるようになっており、術師部門でも一回戦がアベリア対シフ、勝者がシードのイズモとぶつかる組み合わせだったのだ。
確実にイルムガンドが自分の家の力を使った証である。
昨日の所業でも不快になったのにこんな真似までされたので真は不快になった。
「(この分じゃ審判まで買収してるな)」
あまりに酷い様なら手を出すかと考えつつも大会の始まりを待つ真。
そうして、闘技大会は始まり……。
『……』
ジンとミスラの試合が始まろうとしていたがそれぞれ、何ともよろしくない顔をしている。手に持つ得物が選手のレベル差などを考慮としてという建前で二人の武器は一般的な片手剣と同じサイズの木剣であるからだ。
他の選手は愛用の武器が許されているのにもかかわらず……また、この大会のルールとしては試合時間は十分、ダメージはドールが肩代わりするものとなっており、計三体のドールを破壊した時点で試合終了となるとの事だった。
更に戦士部門の試合では攻撃術、回復術は使用禁止となっているので使えるのは自己支援系統の術のみになるとの事である。
回復術の使い手で持久戦を得意とするミスラにとってはかなり不利なルールであった。
そうして、試合は始まり……。
「ほう、これは中々……」
「まあ、動きとしてはそれなりでしょうか……ただ、観客たちの理解が乏しいのには呆れますが」
ジンとミスラの戦いは技と駆け引きの応酬になっており、演舞や型の競い合いみたいな静かなものとなっている。激しい打ち合いを期待している観客にとってはつまらないものでブーイングの嵐であった。
ともかく、最終的には時間切れであり判定でジンの勝ちとなる。ただ、技と駆け引きの応酬の内容としてはミスラの方が上回っており、実際勝ったジンは悔しそうでミスラの顔には達成感が出ている。
「まあ、スペックの力任せで戦うのが主流だから仕方ないと言えば仕方ないだろう」
真はそんな事を言いながら、大会の観戦を続けていき……。
『はははははは』
術師部門において自分の講義に参加していない他の選手の試合を見ていた真に巴、澪はあんまりな内容で爆笑し始めたのだった……。