亜空の王はここにあり   作:自堕落無力

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五十七話

 

 闘技大会一日目もいよいよ終わりが近づいており、試合数も残り三試合となっていた。

 

 本来、戦士部門の決勝戦であるユーノ対イルムガンドの試合が行われる筈だったのだが急遽、変更となり、シフが参加している術師部門での決勝戦が先に行われる事になった。

 

 それも数分という短い間に終わったが……。

 

 髪をオールバックにしている男の学生は試合が始まり、少しするとシフの魔術により、足元に空いた穴に落ち、すると首から上を残して塞がれる。

 

 

 

 拘束され、一瞬で杖も障壁も無い無抵抗であり、無防備状態。

 

 シフは邪悪な笑みを浮かべながら近づいていき、一メートル程まで近づくと杖の先端を相手に向ける。正直、相手はどうしようもない状態なのにプライドが高すぎるのか、降参をしない。

 

 

 

 シフは杖の先端にある珠で男の顎を軽く持ち上げ、審判を見る。

 

『判定は?』と言いたげなのだが、シフの対戦相手は明日の団体戦においてイルムガンドのチームの一人である。故に買収されてる審判がそんな事をする訳が無い。

 

 シフは溜息を吐き、そして短く詠唱して魔術を発動。

 

 

 

 収束した赤い光が男の目の前に静かに放たれ、男の眼前で熱と炎が炸裂すると十分に明るい会場を更に明るくした。

 

 発動地点を地面から少し下に設定し、発動までに一瞬の溜めを作り爆発力を増加、相手の足元から斜め上方に噴き上がる炎と溶けた土や石の奔流を発生させるというシフのアレンジが入った魔術が発動したのである。

 

 

 ドールが一瞬で三つ弾け飛ぶほどのダメージであったが、加減とドールの肩代わりの性能によってシフの相手は頬に火傷を負い、髪の一部を焼かれるので済んだ。

 

「勝者、シフ=レンブラント」

 

 審判がシフの勝利を宣言すると生首状態の男の眼前で膝をつき、シフは首に片手を添えてシフが立ち上がるのに合わせて埋まっていた学生を持ち上げ、拘束状態から解放した。

 

 解放された学生は怯えた顔で立ち尽くしており、シフは目を合わせる事もせず、それぞれの方向から観戦する客に向けて何度かお辞儀をして舞台を後にしたのだ。

 

 

 

「お姉ちゃん、容赦なさすぎだよ」

 

「あれでも加減したほうよ。彼、明日はホープレイズのチームみたいだし、なによりマコト様を馬鹿にしたんですもの」

 

「それは許せないね」

 

「でしょ、それと分かっていると思うけど……」

 

「うん、任せて」

 

 そういう会話を控室に戻ろうとするシフを待っていたユーノは交わし、イルムガンドの下へと向かえば……。

 

 

 

 

「随分と準備に時間がかかったようで」

 

「これは俺の家に伝わる由緒ある武具だ。このような格式ある場所や戦場へは必ずこの装備で出向くのが我がホープレイズ家のしきたりでな。ルールでも認められているんだから、文句言うなよ?」

 

「(だったら、最初から装備しなよ)」

 

 明らかに準決勝までのものより強力になっているイルムガンドの装備に内心で毒づいた。

 

 

「文句なんてありませんよ、良い試合にしましょう」

 

「ち、気にくわんな。早々に勝負を諦めて来賓の皆様を退屈させるなよ。マコトの講義を受けているのがお前の不運だと思って、必死に足掻くんだな」

 

「お互い、全力でやりましょう」

 

 そうユーノが応じるとイルムガンドは剣を握っている両手、右手で一層強く剣を握っていた。

 

 

 

 それが合図だったか、審判が手を大きく上げる。

 

 そうして、戦士部門の決勝戦が始まり……。

 

 

 

 試合内容は完全にユーノが圧倒していた。

 

 

 

 大剣よりリーチの長い槍で機先を制しながら、翻弄しつつ手足を攻撃していく。

 

 

 

「ふっ!!」

 

 そうして剣を落とし、体勢も崩れたイルムガンドに強烈な一撃を炸裂させた。

 

 

 

「ユーノだったな、ユーノ=レンブラント。貴様、貴様許さんぞぉ」

 

「許さないのはこっちだよっ!!」

 

「があっ!?」

 

 大剣を拾い上げ、激昂するイルムガンドに突進しながらの強烈な突きを炸裂させる事で舞台の上に大の字に倒れさせ、ドールも三体を破壊したのであった。

 

「審判、ドール全部壊れましたけど?」

 

 そうしてユーノが戦士部門にて優勝し……。

 

「いくよ、お姉ちゃん」

 

「来なさい、ユーノ」

 

 戦士部門と術師部門の優勝者どうしの試合となり、シフの魔術の前に敗れる事となったユーノだがそれでも相当な頑張りと粘りを見せた。

 

 

 

「どっちも良く頑張った。闘技大会での二人はとても美しく、魅力的だったよ。流石は俺の女だ」

 

『(ありがとうございます)』

 

 シフとユーノに真は特別な言葉を念話で送ると二人は嬉しそうに返答するのであった。

 

「あいつもそろそろって感じかな」

 

 そして更に真は何らかの容器に入れた薬を出し、弄りつつイルムガンドの今日の様子を見て呟くのであった……。

 

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