亜空の王はここにあり   作:自堕落無力

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六十一話

 

 『闘技大会』の来賓席にはロッツガルド学園の学園長は勿論、グリトニア帝国皇女であるリリ、今はギルドマスターのファルスとなっている『万』、リミアの大神殿である女司祭、ローレル連邦のサイリツ、リミア王国の国王に中性的な容姿であるヨシュア王子、ホープレイズ家の当主、つまりはイルムガンドの父親など重要人物たちが集まっていた。

 

 

「緊急事態のため、失礼させてもらいます」

 

「む、お前は非常勤講師の……」

 

「はい、マコト=ミスミです。こっちは冒険者仲間のトモエです。皆様、どうかお見知りおきを……」

 

 学園町の言葉に応じながら、巴と共に頭を下げる。

 

 

 

 そんな巴に以前、接触した事のあるリリが何とも言えない表情で視線を送った。因みに『万』は真に会う前から、リリと交流していたのでそれとなく、次に何かをすれば潰されると忠告させておいた。

 

 なので巴の次に警戒するようにリリは真に視線を向けている。

 

「安全な場所への避難を手伝いに来ました」

 

 そうして、巴が持つ刀の効果でその人が思い浮かべた場所へ転移出来るというように装い、万が試しにやってみたいと言わせ、そうして一つの芝居を成立させた。

 

 無論、本当は巴の力による霧での転移なのだが……。

 

 そうして、次々と重要人物たちに貸しを作りながら、転移させていった。

 

「余はここで全てを見届ける義務がある」

 

「では、私も……なにせあそこにいるのは他でもない我が子なのですから」

 

 国王が言うとイルムガンドの父親も同じく残ると言い、それならとヨシュアとお付きの騎士らも残った。

 

 

 

 学園長らを巴に転移させると……。

 

「王としての誇り……見事でございます」

 

「うむ、そなたの教育の程もな。マコトよ……学園教師としての実力に冒険者としての実力、どちらも注目しておった。お前もだろう、ホープレイズよ」

 

 真が頭を深々と敬意を表した礼をすれば、リミア王は応えつつ、イルムガンドの父親を見る。

 

 

 

 

「っ!?」

 

「お前が何やら、マコトを調査している事は確信しているぞ」

 

「貴方が今回、闘技大会で色々な細工をやった事もです。今回の事態を含めて説明願えますか、ホープレイズ殿」

 

「っ、陛下……確かに息子の願いに応え、その講師を調べましたし大会に細工も致しました。しかし、此度の事態、いつ当主になるやも知れぬ大事な息子を怪物に変えてまで何かを企てるなど断じてございません!!」

 

 イルムガンドの父親は王と王子からの問い詰められると必死に弁解した。

 

 

 

 

「では、イルムガンドは何故、マコトに興味を持った?」

 

「それは私から説明しましょう。とは言っても話は簡単……ゴテツ亭という店のとある店員にイルムガンド殿が取り巻きと共に話しかけていたところ、何があったのか険悪な雰囲気となり、まずいと思ったので私が止めました。それが納得いかなかったようでそれ以来、イルムガンド殿に睨まれてしまったという訳です。つまらぬ諍いと言えば、つまらぬ諍いではありますが……後で魔術で証拠となる記憶を見せても構いません」

 

「ふむ、そうか……ところでイルムガンドを元の姿に戻す事は出来るか?」

 

「姿を戻すだけなら……ああなると精神は蝕まれているので廃人同然は確定でしょうが……」

 

「……そ、それでも良いっ、息子を、息子を元の姿に戻してくれぇっ!!」

 

「では、その代わりに後で私の望みを叶えてもらいますよ?」

 

「ああ、息子を戻してくれたらなんでも叶えよう、絶対にっ!!」

 

「言質は取りました」

 

「余やヨシュアもいざという時は証人になろう」

 

 こうして、真はイルムガンドの父親と交渉を済ませると……。

 

「(後は俺がやる)」

 

 変異体と化したイルムガンドと戦っているジン達に念話で伝え、巴から貰った転移能力を持っている事にしている刀で転移。

 

 

 

 

「色々と役に立ってくれたな、姿は戻してやる」

 

『オオオオオオッ!!』

 

 そして、即座に薬品が入っている注射器を首元に刺し、薬品を注入すると突如、悲鳴を上げながら悶えていき、変異体の姿から元のイルムガンドの姿へと戻ったのであった……。

 

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