亜空の王はここにあり   作:自堕落無力

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六十二話

 

 真は『変異体』の変化を戻す治療薬を製薬している。

 

 もっとも変化を戻すだけなので精神的負傷などそうした症状を回復させたりは出来ない。だが、変異体に変化する前なら変化させないように出来る効果もある。

 

 なんなら精神崩壊し、廃人になった者に対して回復させる薬も別に製薬したりはしているのだ。

 

 今回、イルムガンドの父親及びリミア王国との取引を交わした事で真はイルムガンドを変異体から人間に戻した。更にこの後、精神崩壊を治療する回復薬を与えれば完全復帰も出来るだろう。

 

 だが、散々この闘技大会にてイルムガンドは真が受け持っている生徒達へ汚い事をしてきた。そんな奴にこれ以上何かをしてやる気は全くなかった。

 

 

 それにやはり、こっちが有利の取引を交わす事が出来たのでもう十分である。

 

 

 

「先生、イルムガンドは元に戻ったんですか」

 

「姿だけはな……変異した時点で記憶も精神も崩壊しているだろう」

 

「そんな……」

 

「お前達も肝に銘じておけ……ドーピングとかそういうのは必ず、リスクがあるって事をな」

 

『はい』

 

 ジンの問いに応じながら、真は自分の生徒へとイルムガンドのやったようなドーピングのような事はリスクがある事を教えたのであった。

 

 

 

「良し、今から避難しろ。俺も後で行くから、先に識に澪は案内してやってくれ」

 

『承知しました、真様』

 

 そうして、真は識に澪へジン達の避難を任せ、避難所へ向かう者たちを見送りつつ……姿を隠蔽しながら魔力体を形成。

 

 

 そのまま、魔力体を媒介に魔術を発動。

 

 

『ぐぎゃああっ!!』

 

 街のどこからかやって来た複数の変異体がリミア王たちへ危害を加えようとしたのに先んじて魔術を炸裂させて滅した。

 

 真はこうして、イルムガンドに魔力体の手段を応用して衣服を形成し、着せてやるとイルムガンドを抱えて一瞬でリミア王たちの許へと移動する。

 

 

 

「此処ももう危険ですから避難してください。僕はこのまま仲間たちと避難誘導や救助をしていくので」

 

「お前ほどの力があれば、討伐に動くべきではないのか?」

 

「戦いに住民を巻き込んだりしたくはないですからね。まずは非戦闘員たる市民たちを救ってからです」

 

「……それもそうか。分かった」

 

「約束は果たしました。これからはご子息を介護する事です」

 

「分かっている……イルムガンドよ、どうして、こんな事に」

 

 真がイルムガンドを彼の父親に渡せば、父親は項垂れながらその手にイルムガンドを抱く。

 

 

 

 

 そうして、リミア王たちも真が用意した霧の門を通り、避難をする。

 

 

 

「さぁて、じっくりゆっくりやるか」

 

 真はそう呟きながら、街の方へと向かうのであった……。

 

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