真は現在、学園都市を襲撃している変異体の群れから、一般市民たちの救助をするために行動していた。
「うーん、この見事な荒らされ具合……仮にも魔族と戦争続けてるんだから、こういうの非常事態は想定しておかないと駄目だわ。全部の想定は無理でも防衛力は保有しておくべきだ」
街の破壊され具合を見ながら呑気に真は言う。ぶっちゃけ、彼が本気を出せばこの変異体の襲撃は全て片付ける事が出来るが、そこまでしてやる義理が真には無いし、そういう気も無い。
なんでも出来る救世主となれば、良いようにヒューマンたちが使い潰そうとしてくるのが分かり切っているのだ。だからこそ、ほどほどな英雄として活躍するレベルで留めるのである。
それに自分にとって重要な存在や大事な存在は避難を済ませてあるので本来なら、市民の救助すらする気は無い。
何故なら、この変異体の襲撃を行なった黒幕の存在にも気が付いているし、目的も分かっていた。
「(ある程度は満足させてやるよ)」
その黒幕の気もある程度は晴らしてやる気分にもなっていた。
更に……。
「ロナも流石だな。上手く、リミア王やリリ皇女とか各国の重鎮を此処に隔離してる。いや、本当、この世界のヒューマン駄目過ぎるだろう。不用心とかそういうレベルでもねぇ」
幾ら今日が学園都市の重要な日であるとはいえ、自分たちの国に帰るための手段やら最低でも身を守り切るだけの武力などそうした物を持っていない事に真は呆れた。
危機感がまるで足りていないのだ……。
「今が攻め時だろう、早く攻めてくれよな……ロナ」
ロナの企みに気づいてそれに乗っかって動こうとしているからこそ、真はそう告げた。
そんなこんなで変異体を適当に処理していると……。
「おっと、此処は娼館通りだな」
娼館通りの方に辿り着く。比較的、建物の損壊は酷くなかったが派手な悲鳴と破壊の音が響いている。
「うん、おいおい……娼館を襲うのが蛸って……いかにもなシチュエーションだなぁ」
『界』によって見てみれば、娼館の中で八本の足でそのうち、二本が異様に発達していて長く、先端は人の手にもなっている灰色の蛸の変異体が娼婦を襲おうとしていた。
それに対抗しているのは戦闘の経験を積んでいるのが窺い知れる者、おそらく元冒険者であろうピンクの髪の女性であった。
「ふっ!!」
『魔力体』を弓型にして具現化しながら、氷の魔力を凝縮した矢に変えた物を番え、弦を引き絞り、そして、変異体に向かって放つ。
『オオォォ……』
矢が突き刺さると同時に変異体の体内で弾け、強烈な凍気が変異体を侵食し、凍結させると共にその体を崩壊させた。
「僕はここで臨時講師をしていて、冒険者でもあるマコト=ミスミです。救助に来たのでら、避難してください」
「避難するのは勿論だよ、私はエステルだ。でもどこに避難を?」
「亜人のスラムですよ。纏め役をしている奴と個人的に交流をしていて、すでに受け入れを頼んでもいます」
「こういう状況なら、受け入れてくれるだけで有難いってもんだ……着いてから問題にならないよう、皆を説得しておくよ」
「助かります。当然の話ですが、学園もすでに動いているので早々、解決はすると思います。僕もいますし……少しの間だけ、耐えてください」
「ああ、それは頼もしい……じゃあ、よろしく頼むよ」
こうして、真はエステルたち娼婦の避難を手助けしたのであった……。