亜空の王はここにあり   作:自堕落無力

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六話

 

 

 真が異世界で活動する上で本拠地としている『亜空』はなんと、真の魔力の増大に応じて領域が拡大される法則を持つことが判明した。そして、強力な従僕との契約で山や川など新たな地形、夜空に星々が出来るなど新たな法則が加わる事も判明している。

 

 そう、澪との契約で亜空は進化しており、真だけが出来る魔力増大法で領域を拡大し続けているのだ。

 

 そんな亜空では住人であるハイランドオークにリザードマン、エルダードワーフにアルケーがそれぞれ開拓や衣食住の発展、戦闘に備えた鍛錬や手合わせ、国建設のための施設や設備の建設、武具に防具の鍛造、希少物質の創造や錬金などをしながら国力を増大させ続けていた。

 

 因みにこの亜空では魔力を大地や植物が大気から吸収して蓄えているが故か自生している植物に果物、野菜などが異常な速度で育つし、無論、外の世界から持ってきた植物などを植えても異常な速度で育つ。

 

 山においては鉱石が採取できる場所もあり、総じて生活するにおいては理想郷のような世界であった。

 

「そろそろ、ヒューマンと関わってみるか」

 

 亜空での生活環境がある程度、順調となった事で真はヒューマンと関わる事を決めた。そう、真が女神に放逐された荒野でもヒューマンは居住地を築いている。

 

 大体は野営地のようなもので『ベース』と呼ばれているとの事。

 

 荒野に居住しているヒューマンは生活環境がまず厳しく、生息している魔物も強大という事で修行や資源探索を目的としているのだとか……。

 

 更に絶野においてはヒューマンだけでなく、亜人に獣人、ヒューマンと戦争している魔族ですら集まって暮らしを共にしているとの事。

 

 ともかく、『絶野』というベースに行く事を決めた真は身分としては傭兵で冒険者への転職をするためというのを絶野を訪れた理由にする事にした。

 

 装備としてはハイランドオークに献上されたものをエルドに最近、見てもらった結果、『神器』で間違いないという短剣、巴の要求によって研究しながら鍛造されている刀を巴の分もそうだが、ドワーフより贈られた。

 

 更にエルダードワーフたちによる高性能な長弓に短弓、矢筒に矢も送られていて荷馬車には傭兵であるそれを証明するため、槍にハルバードなど様々な武器を積んでいて、当然水や食料も積んでいる。

 

 その荷馬車を引く馬は魔獣のバイコーンである。

 

 それと自分の顔は亜人顔と判断されるそうなのでこれもドワーフによる戦闘用の仮面で覆い、重傷でとても見せられる顔じゃないというのを仮面で覆っている理由にした。

 

 更にドワーフからもう必要ないからとそれぞれの貨幣価値を説明された上でこの異世界においては一枚、十万円の金貨を百枚旅費として献上されてもいる。

 

「ふむ、最初としては悪くない。どうですかな、若?」

 

 絶野に行く供として巴に澪も同行する。身分としては真の妻であり、側近だ。

 

 巴はオークによって作られた着物とドワーフによる刀を帯び、見回すと真へと様子を問いかけた。

 

「うん、凛々しい女侍って感じで良いと思うよ」

 

「ふふ、やはり若はお上手ですな」

 

「若様、私はどうでしょうか?」

 

 澪もまた、武器としてドワーフから鉄扇を贈られていて、服装も蜘蛛の巣を意匠とした着物をオークより渡されていて、それを着ている。

 

「大和撫子を体現していて、良いよ。似合ってる」

 

「ありがとうございます」

 

 巴も澪も照れ臭そうにしながら、真の誉め言葉に喜んでいた。

 

 

 

「じゃあ、行ってきます」

 

『行ってらっしゃいませ、若様。良い旅を』

 

 皆に見送られながら、真は巴に澪と共に亜空より外の世界へ転移したのであった。

 

「この荒野で傭兵団として活動していたんですが、壊滅してしまいました。幸運な事に妻二人は傭兵団の中で一番強い者達だから、生き残れましたが……なので冒険者に転職しようと」

 

「そうか……この荒野は過酷だからな。というか二人も美人の妻がいるとか羨ましいよ」

 

 荒野のベースの一つ、絶野の門番と会話を交わし中へと入れてもらう。テントが多く、区画によっては木造のきちんとした建物(ログハウス程度)が並んでいて、住居や店舗とは違う精緻な石造りの建物も点在していた。

 

 そんな中を馬車で進みながら……。

 

「さっきの門番もだけど、僕の世界基準じゃ目につく全員、美男美女だよ。あの面食い阿婆擦れ糞女神が生み出した種族だから、この顔面偏差値の高さは納得だけど」

 

「ふむ、私としては普通にしか見えませんな。それに私は身も心も若に夢中です故」

 

「同じく、私も若様以外の者に何も感じません」

 

「ありがとう、二人とも。僕も二人に夢中だよ」

 

 とても甘く温かい雰囲気を醸し出しながら絶野を進み、道行く人に冒険者ギルドの場所を聞いて向かい……。

 

 

 

「え、と、登録ですか……?」

 

 この絶野で活動する冒険者はそれなりに経験を積んでいる者が多いため、登録者の存在は余りに珍しい。しかし、受付嬢はプロとして対応し、まずは冒険者についての説明を始める。

 

 冒険者のランクはE~SSSまである。

 

 そして、どんなレベルであろうと冒険者は最初Eランクから始める事となり、ギルドに対しての仕事の成功率とレベルによって昇格する事、そして各ランクの仕事はマイナス、無印、プラスという難易度があってプラスの仕事のみなら三回で、無印のみなら五回、マイナスのみなら十回でランクが一つ上がるとの事。

 

 特殊ランクという例外もあってこの仕事は達成するとSランク未満なら無条件で一つランクが上がり、Sランク以上でもギルドへの貢献度が大幅に加点されるとの事だ。

 

 そしてギルドに入れば支援組織の援助を受ける事が可能になって主要な施設を割安で利用できるようになる事。

 

 冒険者となった際に配布されるギルドカードには加盟店であればギルドに預けたお金をおろさなくても買い物が出来る機能、ある程度近い場所にいるギルドカードを持つ者へ伝言を送れる機能、魔物や素材各種、鉱石から薬草までかなりの登録情報を検索して閲覧できる図鑑機能(閲覧できる範囲は所有者のランクによる)があると説明を受けた。

 

 そうして、レベル判別が行われる事となり……。

 

 真は亜空でもやったのだが彼が異世界から来た者であるが故か、余りに魔力や身体能力が異常過ぎるが故かレベル判別ではレベル1と出てしまう。

 

 今回も当然、レベル1でEランクである。周囲で窺っていた者は嘲笑し……。

 

「ほうほう」

 

『はぁぁぁっ!?』

 

 巴がレベル判別するとレベル1320と全冒険者ギルドで最高レベルであった。

 

 次点になる冒険者を聞くと『竜殺し』ソフィア=ブルガでレベルは920であり、ランクはSSS。

 

 竜殺しと言われたのでどの竜を殺したのかと聞くと上位竜種の『ランサー』との事で『御剣なぞと驕っておるからじゃ、あの阿呆め』と同じ上位竜種であり、知り合いであるが故か思うところがありそうな表情を浮かべ、吐き捨てていた。

 

「次は私ですわね」

 

 

 そして、澪がレベル判別をすれば……。

 

『……っ!!』

 

 澪のレベルは1500で巴の記録を更新した。巴は納得いかなそうだったが眠り続けていた者と活動し続けていた者の違いだと真は言い聞かせつつ、登録を終えたのでギルドを出る事とした。

 

 自分たちに対し、面白くないという冒険者達の視線を受けながら……そうして、真たちは絶野を馬車で探索しつつ……。

 

 

 

 

「明らかに物価がおかしい、きな臭いにも程がある。ギルドにいた冒険者の何人かも含めて、尾行してきている奴もいるし」

 

 そう、この絶野における物価はナイフよりも水が高価、水よりもモンスターの牙や爪が高い。ここでしか手に入らない物が相場とはかけ離れた値段でやり取りされ、その次が手に入りにくい日用雑貨、最後が一般の武具防具という歪んだ価値価格で不自然すぎるため、この絶野に例えるなら悪代官のような存在がいると確信した。

 

 それに冒険者ギルドから出ると直ぐに冒険者の何人かと彼らの手下か、協力者か……真たちの行方を監視するための尾行者がいた。

 

 領域を創り出せる界による俯瞰視点での監視、集音で尾行者たちが真たちの隙を窺い、襲撃しようとしているのを真は把握していた。

 

「ふふふ、これは正に勧善懲悪のし甲斐がありますな」

 

「私としては即座に始末したいですが……」

 

 そんな会話をしながら、絶野を見回りそして……。

 

 

 

 「さっきからどの宿を巡っても部屋が空いてませんでしたよ。部屋を2つ取りたいんですが、空いてますか?」

 

「ええ、お客様は運が良いです。空いておりますよ……ただ一番高い部屋になりますが」

 

「それは運が良いとは言わないんじゃ……いくらになりますか?」

 

「その前に馬車のお世話は割高で積み荷の盗難などがあった際、こちらでは責任を負いかねます。それで構いませんか?」

 

「良いですよ……で?」

 

「では三名様馬車お預かりで、一泊金貨六枚になります」

 

「はははははは。良いですね、可愛い顔してしれっとふんだくろうとしてくる抜け目無さは嫌いじゃありませんよ。ただ、此処の宿に来るまでに全ての宿の相場は聞いていたんですよ。すると三人で一泊金貨一枚でした。ねぇ、巴、澪?」

 

「はい、そうでしたな」

 

「間違いなく」

 

 真は先にギルドカードを見せていたが、真の目配せに巴と澪はギルドカードを宿の受付である少年に見せた。

 

「ひっ……し、しかし、一番高い部屋と先程、申しましたとおり、ですね……」

 

「それにしたって、ふんだくり過ぎって言ってるんですよ」

 

「うぶっ!?」

 

 真はビクつきながらも値段を訂正しない少年に対し、空間を歪ませるほどの魔力を漏出させ、それによる威圧に少年は倒れ込んでしまう。

 

「大丈夫か、調子が悪いようだな。値段も思い違いするなんて休んだ方がいいぞ」

 

「……は、はい」

 

 真は乗り越えるようにして少年に近づき、肩を優しく叩く。

 

「それで一泊幾らだ?」

 

「金貨三……「ん、幻聴か?」……一枚、一枚でどうか……」

 

「素晴らしい対応だ」

 

 震えながら懇願する少年の言葉に満足した様子で優しく肩を叩いた。

 

 こうして十日間宿泊で金貨十枚という支払いで真たちは部屋を取ったのだった……。

 

 

 

 

「くくく、若様からふんだくれると思うなどあの少年も身の程知らずでしたな」

 

「まったくですわ。愚かにも程があります」

 

「実際、びっくりはしたよ。でも、舐められたら終わりだし……勿論、尾行者たちに対してもだけど」

 

 部屋の中で会話を交わす真達。尾行者にもわざとこの宿に入る姿を見させているので少しすれば、何らかのアクションを起こすと真は確信している。

 

「まずはこの『絶野』から始めようか。そのためには掃除が必要なようだけどね」

 

 真が冒険者になった理由……それは自分の力になってくれそうな者を集めるためでそのために冒険者として成り上がろうとしているのであった……。

 

 

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