リミア王国王都は衝撃に包まれていた。何故なら、ステラ砦から魔族が王都へと侵攻を急に開始してきたからだ。
元々、リミアの王都は魔族の勢力圏との境界に近い位置にある。なので魔族の侵攻に常に不安を抱えているのだが、その境界を越えた場所であり、数時間も進めば王都に到達できる場所へと魔族の軍隊は転移してきたのである。
リミア王国の勇者である響は何度か王都、もしくはその機能だけでも別の場所に移転する案を出した。
だが貴族たちの反発もそうだが、歴史的な問題があるとしてそれらが聞き届けられる事は無く、こうして今日であり、今夜、魔族に侵攻されてしまったのである。
しかも最悪なのは王都に絶対的な命令を出せる王族がいない事だ。
何故かと言えば、学園都市ロッツガルドの行事に参加しているが故である。
一年に一度の学園祭で都市においては重要なものではあるものの、ステラ砦奪還のために前線に部隊を送っているこの時期に王自らが出向く程の行事では無い。
だが今回はグリトニア帝国からリリ皇女が学園祭に参加するという情報があった。
リミア王国とグリトニア帝国はともに魔族相手に前線を構築する同盟国だが同時にライバル関係である。
帝国の勇者に最も影響力があると思われる大物の不可解な行動は王国としても看過できなくなり、学園祭に王族が出向く事になってしまった。
「(魔族と戦争しながら、人間同士で足を引っ張り合うなんて……それに魔族に対して楽観的過ぎるのよ。だから、裏をかかれるのに)」
響はこの世界のヒューマンが魔族に対してあまりにも下に見ている事に呆れざるを得ない。だからこそ、今夜の様にその隙を衝かれる手を打たれるというのに……。
こうして……。
「まさか、貴方が来るなんてね……イオ」
「お前たちの相手をするのなら当然、こうなるさ……私達の目的はお前を討つ事なのだからな」
ステラ砦で響たちが実質的に敗北した魔将にして強者のイオが響たちの前に威風堂々と現れる。
「そう……でも、ステラ砦を空っぽにして良いの? 私達が砦を攻めれば帰る場所を失う事になるけど」
「ハッタリにしては下手だな。ステラ砦に向かったそちらの部隊は既にこちらに戻るべく、慌てて動き始めているようだが?」
「大した情報収集能力だこと……そして、そこから来たって事は私の仲間を……」
イオがやってきたのは響たちが退路に使おうとしていた場所であり、ツィーゲから同行してくれた冒険者達に守らせていた。しかし、イオがやってきた事を思うと彼らは当然……だからこそ、響は怒る。
「戦争をしているのだから当然だろう、それにツィーゲから連れてきたのはお前たちだ」
響に対し、イオは指摘した。ともかく響は今までの間にツィーゲでの修行で得たホルンとの合体能力(何故か獣皮の水着を纏った姿になる)やツィーゲにある『レンブラント商会』でエルダードワーフが作った武具などを使って戦ったがしかし、負けてしまい……。
「では、とどめだ……」
(悪いな、選手交代だ)
その声が響き渡ると同時……次の瞬間、一瞬にしてリミア王国を攻めていた魔族にイオたちの全てが姿を消したのであった……。