亜空の王はここにあり   作:自堕落無力

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七話

 

 真が女神に放逐された最果ての荒野にもヒューマンたちが居住している集落は存在した。もっとも過酷な環境が故に希少性が高い資源を得るためや強力が故に素材として優れていたり、価値が高い魔物を倒すためなど冒険者による前線基地の意味合いが強く、ベースと呼ばれていたりする……。

 

 そんな荒野のベースである『絶野』に真は巴と澪を伴って入り、冒険者ギルドで登録したが自分のレベルは1、巴は1320、澪は1500であった。

 

 

 因みにこの絶野内での冒険者のナンバー1はレベル444のミルス=エースである。ナンバー2はレベル280で普通の名前の者でもある。

 

 巴と澪がこの絶野内どころか今までの全冒険者内のレベルの記録を更新したため、冒険者ギルド内の全員から注目を受け、必然目を付けられる事となった。

 

 

 実際、絶野内を馬車で移動している時も尾行されていてしかも物価の相場も中々、狂っていて誰か絶野内に悪代官のような者が居ると真は確信。敢えて自分たちが宿泊する宿を尾行者に見せたりした中……。

 

 

 

「おお、来てる来てる」

 

 現在は夜中、自分たちの動きを見ている者たちが動きやすいよう巴と澪には宿から出て絶野内を散歩に行ってもらい、真は部屋を出て宿の上で姿と魔力や気配を隠蔽する『界』を展開し、それとは別に広範囲に展開した領域内の様子を俯瞰視点で見、領域内での音を集音する『界』も展開する。

 

 そうして、宿に預けている馬車の物資を狙いに来た黒装束の者四人と少し離れた場所で見張りの黒装束が二人、潜みながらやって来たのを確認した。

 

「それじゃあ、対処させてもらうか」

 

 ドワーフ特製の長弓を構えながら魔法で矢を形成すると刹那、流麗な体捌きと弓捌きが連動しながら魔法の矢が超速連射され……。

 

『っ!?』

 

 高所から放たれた魔法の矢が次々と黒装束の者に炸裂すると共に内部から爆発するようにしてその身を呑み込み、消滅させる。

 

 

 

 「ぅ……あ……」

 

 ただし、一人だけ足を射抜かれるだけに終わっていた。

 

 そして……。

 

「それじゃあ、記憶を覗かせてもらう。手っ取り早いからな」

 

「なっ!?」

 

 わざと足を射抜くだけに留め、生き残らせた見張りの一人から指示を出した者を突き止めようとその者の下へと界を展開し、転移するとそのまま巴から教えられた記憶を覗く魔法を使う。

 

「おいおい、なんとまぁ……」

 

 そうして、絶野内でのナンバー1冒険者であるミルスとナンバー2の冒険者を中心として大半の冒険者と傭兵たちが徒党を組んでかなりあくどい事をやっているのを知った。

 

 優しく金を貸したかと思えば、利子は高く、返せないとくれば女性なら薬を用いて娼婦をやらせたり、男性なら人体改造など好き放題やっているようだった。

 

 無論、ミルスは英雄を気取るために悪事を直接やらず、ナンバー2と手下などがやっているのだ。

 

 そしてミルス達の犠牲者の中には……。

 

「なっ、温深!? いや、違う……だが、よく似ている……」

 

 ミルス達がいる屋敷内の牢屋に薬で心身の自由を奪われている女性冒険者で髪の色が赤という事以外、髪型も顔もスタイルも真の彼女であった深温と同じで生き写しとも言える者の姿を発見した。

 

「……ちっ」

 

 精神を乱されながらも記憶を覗いた黒装束の者を魔法を放つ事で消滅させる。

 

 

 

『若、若……』

 

「巴、すまない少し予想外の事があって動揺していた。そっちは何かあったんだな?」

 

 深呼吸をしながら精神を落ち着けていると巴が念話を送っているのに気づいた。

 

『はい、実は姉を見つけてほしいというリノンという名の少女が接触してきましてな。離れた所では保護者とは思えない者、見張りもいます。リノンは十中八九、私達のスパイでしょう』

 

「だろうな……どこまで連中は腐ってやがるんだか……とにかく、リノンという子を連れて宿に来い。後で情報共有と相談だ」

 

 そうして自分たちの部屋にて真はリノンという少女と対面、ミルスの屋敷に捕らわれている温深に似た女性冒険者とよく似た姿をしていて明らかに姉妹だった。

 

「マコトお兄ちゃん。お願い、私のたった一人の家族で大好きなお姉ちゃんを見つけてください」

 

「ああ、任せてくれ」

 

 リノンと自己紹介(真は名をミスミ・マコトとこの世界に合わせた形式にしている)をし合い、彼女が似顔絵が得意というので姉のそれを描いてもらえばやはり、屋敷内に捕らわれている女性冒険者で間違いなかった。

 

 名はトアというようだ。

 

 そうして今日はもう遅いからとリノンに運ばれた食事の一つを渡しつつ、自分たちが宿泊の為もう一つ、取っている部屋に行ってもらう。

 

「さて、実はな……」

 

 真は巴と澪に自分が得た情報を伝え……。

 

 

 

「巴と澪にとっては面白くないだろうけど、僕は元の世界に残した温深に似たトアという子を助けたい。これは僕の未練で我儘だから巴と澪がしたくないというなら、此処に残ってもらって構わない」

 

 自分の気持ちを巴と澪に真は伝える。

 

因みに巴に澪には元の世界で温深という彼女がいた事は既に伝えてあったりした。

 

「……まったく、そこはただ命令してくだされば良いものを……しかし、その若の誠実さが私は大好きです」

 

「ええ、そしてたとえ、元の世界の事が無くとも捕らわれている者がいれば救出するのを迷わない優しさも……」

 

「ありがとう、二人とも……それじゃあ行こうか」

 

 巴と澪はそれぞれ微笑みながら、そして愛おしさに満ちた目で真を見て頷く。因みに澪は薬物の知識や薬に対する浄化魔法も有している。

 

 

 なので巴と澪にはトアと他にもミルス達に捕らわれている冒険者がいればその者達の救出を任せつつ、ミルスの屋敷を絶野内の全てを覆う『界』を展開して探り、見つけると屋敷の近くに自分と巴、澪の三人で転移し、そのまま乗り込んで別れ……。

 

 

 

「ふっ!!」

 

 ミルスの屋敷内を堂々と進みながら、立ちはだかる者へエルダードワーフから提供された将来的には刀としての完成を目指し、研究中の過程で鍛造された片刃剣による斬閃を振るい、解体する事で肉片にしていく。

 

「調子に乗り過ぎだぞ、お前っ!!」

 

 そうして身なりの良い恰好をしたこの絶野内にてナンバー1の冒険者であるミルスと彼に付き従うナンバー2の冒険者と他の冒険者と傭兵たちによる集団が真の前に立ちはだかった。

 

「馬鹿な奴だ「シー」」

 

『づっ!?』

 

 何事か言おうとしたミルスに対し、真は左手の人差し指を口元に立て、静かな息を吐くと共にミルス達を『界』で包み、彼らを対象に『停止能力』を発動した。

 

 よって、ミルス達は動きを停止させられ喋る事も出来なくなってしまう。

 

 

「悪いがそのまま、何もせずに死んでくれ」

 

 そう言うと片刃剣を両手で持ち……。

 

『(や、止めろぉぉぉぉぉぉっ!!)』

 

 精神内で絶叫するミルス達に対し、剣閃が縦横無尽に乱舞しながら彼らを元の姿が分からない程に切り刻んだのであった。

 

「良い剣だ、流石はエルダードワーフ。良い仕事をするな」

 

 真は剣の切れ味を絶賛しながら、剣を鞘に納めた。

 

『こちらはトアという方以外にも牢屋にいた数人の救出、終わりましたわ。若様』

 

『ちゃんと確認したので手抜かりは無いです』

 

 

「お疲れ様。巴、澪……この屋敷の応接間に救出した人たちと共に移動して待っていて」

 

 真は澪と巴の念話に返答するとそのまま、ミルス達が部屋などに置いていた財産を奪いながら、巴から教えられた亜空に繋がる霧の門を開く魔法を使って亜空内の自分の天幕へと運び、そして霧の門をまた出してミルス達の屋敷へと戻り、待たせている巴と澪の下へ移動したのだった……。

 

 

 

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