真は自分の両親が元々、いた世界に来て、特に名前を隠す事はしていなかった。
まさか、世界を管理する女神が自分以外に転移させた者の中に自分の知り合いがいるとは思わなかったからである。
だが、実際に自分の高校の先輩で生徒会長であった音無響は世界を救う勇者として転移させられたのだ。
そしていよいよ、自分が活動している『学園都市ロッツガルド』にやって来た。変異体襲撃事件によって英雄となった以上、この都市での家の事も人に聞けばすぐに分かってしまう。
なのでこれまでは姿を隠してはいたが、いよいよ姿も隠さない状態で響と会う事にしたのだ。スムーズに話をするべく、響と交流していた澪も連れてだ。
接触してみると流石に驚かれたものの、ともかく真は響を家へと招待したのであった。
「女神からはこの世界に召喚した勇者は私とあの礼儀知らずで最低な岩橋智樹の二人だけって聞いてたけど、実は三人だったって事よね?」
響は澪がお茶を出した事に礼を言いながら、話を切り出した。
流石にというかなんというか、『ステラ砦』の会合にて色々と礼儀知らずな態度に言葉遣い、更には彼女とチヤの二人には聞かなかったが他の仲間を洗脳とも思えるような魅了をした事に怒りはあるようで智樹への言及にはかなり怒っていた。
これもあって、彼女は個人的な面においてもグリトニア帝国に借りを作りたくはないのだ。借りを作れば、絶対に岩橋智樹は増長して舐めた態度をとる事が分かり切っている。
「そう思うのも無理はないですが、僕は勇者として召喚されたわけでは無いですよ」
こうして真は実は自分の両親がこの世界から地球の日本に女神との契約で転移した事から説明する。
「成程、確かにこの世界に召喚する力があるならその逆もあって、しかるべきよね」
「そうです、で、その契約の内容が女神の管理する世界が危機に陥った際、両親の子供の誰かを勇者として召喚するという内容だったようですよ。で、僕が選ばれたわけです」
「じゃあ、やっぱり勇者じゃない?」
「ところが、この世界に来てある程度住んでいるなら分かると思うんですが、僕の顔は女神の美的基準に合わなかったようでこの世界の果ての荒野にさっさと落とされたんですよ。別の神の加護のお陰でこの世界でやっていけたのですが……。で、女神は僕の召喚の際に地球に多少、干渉出来る状態だったので響先輩と岩橋智樹を勇者として選んだんです。なので響先輩がこの世界に転移させられたのは僕のせいです。すみません」
「真君は何も悪くないじゃない。でも、やっぱりあの女神、信用しちゃいけないようね」
「この世界が危機になっているのも女神が仕事サボって寝ていたからだ。絶対に信用や信頼はしてはいけない部類ですよ」
「そうね……どうやら、真君は色々と大変だったみたいね」
「まあ、それなりに」
そうして自分の事を話し、謝るべき事を謝った真は響に受け入れられながら、更に話を進めていくのであった……。