亜空の王はここにあり   作:自堕落無力

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九十六話

 

 真は巴に識と共にグリトニア帝国の『帝都ルイナス』を転移陣で訪れ、冒険者としての仕事であるグリトニア帝国への支援物資を届けた。

 

 そして、リリ皇女へと挨拶(先に万が伝えてくれているが、グロントへの接触の打ち合わせも含めて)があるので真一人でリリ皇女への挨拶へと向かった。

 

 現在、真は応接室でリリ皇女が来るのを待っているが『界』にてリリ皇女の他にグリトニア帝国の勇者をしている岩橋智樹、そして彼が魅了する事で虜にしながら、戦士として鍛えた『ワルキューレ』の女性たちが三人いた。

 

 リリ皇女が扉前に近づいてきたので真は席から礼儀正しく立ち上がりながら待機し……そうして、扉が開く。

 

 

 

「良く来てくれましたマコト殿、ロッツガルドと言い、今回ここまで支援物資を届けてくれた事と言い、貴方には本当にお世話になりっぱなしですね」

 

「この度はお招きいただきありがとうございます、そしてお久しぶりですリリ皇女」

 

 真は礼儀正しく頭を下げながら、礼をした。

 

「この深い雪の中でもこれ程に大きな街を繁栄させる帝国の力、凄まじい物だと感動しました。そんな帝国の力になれた事は僕にとって光栄です」

 

「帝都をお褒め頂いて嬉しいわ。残念ながら短い滞在との事だけどもっと帝国の良さを伝えられるようエスコートしますね」

 

「ご厚意感謝します」

 

 真はリリ皇女に礼儀を尽くしたやり取りをする。そんな真とリリ皇女の様子を面白くなさそうに岩橋智樹は見ていた。

 

「リリ皇女、そちらの彼が噂の?」

 

「ああ、そうね再会を喜んでばかりはいけないわ。はい、マコト殿。貴方の言うように帝国に尽力してくださっている勇者、智樹様です」

 

「岩橋、智樹だ」

 

「これは初めまして、智樹殿……僕は冒険者をしているマコト・ミスミです」

 

「白々しい。あんた日本人だろ、で、名前はみすみまことか……顔つきですぐに分かる」

 

「でしょうね」

 

 智樹は真の自己紹介に対し、ぶっきらぼうに言い、真は苦笑した。

 

「と、智樹様、どういうことでしょう?」

 

「こいつ、俺と同じ異世界人だ。顔立ちは日本人そのもの、つまり、俺と同じ国の人間ってわけ」

 

「智樹様と同じ……勇者!?」

 

 リリは智樹の言葉に動揺しつつ、真が智樹と同じ国の人間と聞いて動揺する。

 

「それはどうか分かんねぇ、女神から三人目がいるなんて聞いた事もない。それにこいつ自身、冒険者をやっているようだし。なぁ、真……あんた、学生だよな?」

 

「ええ、そうですよ。僕は高校二年の時にこの世界に来たんです。智樹殿、貴方の二個上です」

 

「なんで俺の歳を知っている?」

 

「リミア王国の勇者である音無響先輩は僕と同じ高校でしてね。貴方の事は聞いていたんですよ」

 

「じゃあ真は響と同じ中津原高校ってところの生徒なのか」

 

「はい、そうです」

 

「ふぅん、あんま面白くないなそれ」

 

 真が頷くと智樹は本当に面白くないといった感じの表情で呟く。

 

「あの、智樹様……この場は挨拶のみですのでこの者達の紹介をして、続きは後ほど……」

 

 皇女は気を利かせたのだが……。

 

「いや、リリ。こいつが日本人なら少し俺に話させてくれ。その方が早いと思う」

 

「ですがそれは……この方は私がお招きした客人でもありますし、別件で頼まれている事もございますので」

 

「悪い、それは後にしてくれ。こいつには部下が二人いるんだからそっちに伝言しておけばいいだろう」

 

智樹はどこまでも自分本位に話を進めようとしていた。

 

「マコト殿、ファルス殿から預かった件についてなのですが、実際に行かれるのはマコト殿とあの二人のどちらなのでしょう?」

 

「僕が向かおうと思っていますので、お話は僕が……」

 

「そうとは思っておりました。ロッツガルドでもあれだけの力を発揮していたのですから……まさか、智樹様と同じ異世界の方だったとは……本当に驚きましたし、納得です。分かりました、我々は席を外しましょう」

 

「リリ、席を外すのはリリだけにしてくれ。他の女にはここにいてもらいたんだ」

 

「では、私は少し失礼します。お連れの方ともお話がありますので、そちらに行って参ります」

 

「ああ」

 

「どうぞ」

 

 リリ皇女が応接室から出るのを智樹も真も見送りつつ、巴と識に対してリリ皇女へ自分達、女神打倒の目的に関して協力者となるように持ち掛けるよう、念話で指示を出した。

 

 そして、リリ皇女が部屋から出て少しすると……。

 

「さて、と」

 

 智樹は真の向かいのソファに豪快に身を投げて寛いだ姿勢で座った。

 

「まさか、日本人の男に会うとは思わんかったわ。あ、座れよ」

 

「どうも……それにしてもこの異世界では随分と幸せな生活を送れているようで良かったですね、智樹殿。日本では学校で虐められて引き籠り生活でしたから」

 

「   は?     」

 

 真は智樹に促されて礼儀正しく座りながら、智樹の触れられたくない部分を突いた。

 

「(散々、こっちはいらいらさせられたんだ。お返しをしてやるからな、智樹君)」

 

 真は先程から、智樹の横暴な態度に凄く怒っており、だからこそ密かに『界』で彼の記憶を読みながら、詳しいところまで把握しているが故に彼のトラウマなどまずは精神的に蹂躙してやろうとしているのだった……。

 

 

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