亜空の王はここにあり   作:自堕落無力

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九十七話

 

 真はグリトニア帝国の帝都ルイナスの城の応接室で支援物資を届けたのでリリ皇女に挨拶し、巴や万、御剣と同じ上位竜の一体でグロントこと砂々波に接触するため、バニラ砂漠にいく話をしようとしていた。

 

 無論、事前にリリ皇女へは万から話は通っている。つまりは真もリリ皇女もやるべき事をやろうとしていたのだ。

 

 だが、あくまで帝国の勇者として紹介だけしようとリリ皇女は岩橋智樹を連れていたし、智樹が魅了しながら鍛えた女性貴族の戦士であるワルキューレの部隊も連れていた。

 

 そして、智樹は真が自分と同じ日本人だとばらしながら、同郷だから自分が話をした方が早いとし切り出し、リリ皇女を部屋から出しながらワルキューレの者達は残した。

 

 智樹は話をするとは言ったが、実のところ考えている事は明白だ。真から巴を奪おうとしているのである。真が断ってもワルキューレを使って、真を人質にして巴を操ろうとしているのだ。

 

 そんな考えが真を見てからずっと出ていた。そして、それだけでなく自分の立場が上だと傲慢に思い上がっているのでため口は勿論、真が名乗ってもこいつだのなんだのと年上だと言っているのに無礼をかましまくっていた。

 

 真はリミア砦で響に対しての態度を見たりしているのである程度、そういう奴だと認識はしていたが実際にやられると腹はたつもの。なのでまずは精神的に甚振る事にしたのである。

 

 智樹が来てから、密かに真は智樹の記憶を『界』の力で見ているのでまず、絶対に触れられたくない部分から触れた。

 

 

 

 そう、日本では智樹は虐められて引き籠りになった者だという事を告げたのだ。

 

 

 

「お、お前っ、出鱈目言ってんじゃねえぞぉっ!!」

 

 一瞬、思考停止していたが何を言われたのか理解すると動揺しながら怒って、真へ叫ぶ。

 

「いや、出鱈目ではありません。世界というのは狭いもの……僕の遠い親戚の子が智樹殿と同じ中学で同級生でしてね。色々と話は聞かせてもらっていたんですよ。智樹殿、貴方は父親の手伝いでモデルのバイトをしていますよね?」

 

「っ!?」

 

 真は記憶を探っての情報を言ってやった。実のところ、親戚云々は全くの嘘であるが人間というのはある程度、根拠を出してしまえば多少出鱈目が混じっていようと信じてしまうものである。

 

「モデルのバイトを出来るくらいには貴方は容姿が優れていた……だからこそ、女子生徒に好かれたが、それで同級生の男子生徒達に嫉妬されて虐められるように……だから、女子を寄せ付けないようにしたがそれで更に男達の虐めにあうようになった」

 

「そ、そうだよっ!! 俺はなにもしてないんだ。なんか勝手に女が寄ってくるし、それであいつらが嫉妬しやがったんだよ。俺は女に寄ってきてほしくなかったのにっ!!」

 

真が情報を話せば、智樹は自己弁護するように話し始めた。

 

「でも、そんな貴方に転機が訪れる。一人の同級生の男子生徒とゲームという趣味を通じて友達になった。少しの間、仲良くしていたがある日、その友人が好きだった女子生徒の一人に告白される。それを断ったが女子生徒は友人のせいで振られたとトラブルになる。だが、実のところ貴方が友人に成績を合わせていたのを知られた事で仲たがいしてしまった。そうして貴方は友人の女を取ったと虐められ、家に引き篭もるように……」

 

「ああ、そうだよ。ちくしょうっ、なんだってんだっ!! 俺は只、仲良くなれるように成績を合わせただけだったのにっ!!」

 

 真から告げられた自分の情報に対し、智樹は叫びを上げた。

 

「確かに虐めはするほうが悪いというのは大前提ですが……智樹殿、貴方は貴方で自分は他人より優れていて上だとそういう態度が出ている。端的に言うと鼻につくんです。だから虐められたんだ」

 

「俺は別に……本当に女子生徒には言い寄られたくなかったんだっ、好かれたくなかったんだ」

 

「でも嫌われたくなかったんでしょう? というか言い寄られたくない、好かれたくない人間が『魅了の力』を望んだり、貰ったりしないでしょう。たとえ、無理やり渡されたとしても今のようにやたらめったら使ったりはしない。本当は好かれたかった証拠だ。ただ、虐められるから寄せ付けないようにしていただけで……で、改めて言いますが、良かったですね。女神様に摩訶不思議な力を幾つも恵んでもらい、自分の事を知らない者がいるこの世界に来れて……今まで幸せだったでしょう、楽しかったでしょう」

 

「それの何が悪いんだっ、俺は勇者として呼ばれたんだぞ。幸せになって何が悪いんだよっ!!」

 

 真の言葉に智樹は激昂する。

 

「悪いとは一言も言ってないですよ。勝手に思い込まないでください……しかし、そんな貴方は勇者だというのにまた逃げましたよね? 『リミア砦』での魔族の戦いで魔族のとある道具で女神からの力を封じられた時に……実に無様でした」

 

「っ、な、なんでそれを……お前、あの場に……」

 

「さぁどうでしょうねぇ……良いですか、智樹殿。幾ら幾つもの力で自分を取り繕おうとしても貴方のその未熟で弱く、脆く、醜悪な精神はどうにもならない。そして、今まで何かを成そうとせず、何者かになろうとしていなかった者が強い力を手にしたからといって、何かを成したり、何者かになったりなどは出来ない。貴方は結局のところ、勇者など分不相応の只の哀れな道化であり、負け犬であり、小物でしかないのです」

 

 動揺し続ける智樹に対し、真は断じてやった。

 

 

 

「っ……お……お……お前……よくも……よくも言いやがったなぁぁぁぁっ、もう良い、お前ら、そいつを殺せぇぇぇっ!!」

 

 智樹は身を震わせながら、ワルキューレ達に真を殺すように告げ、ワルキューレの女性たちは懐に忍ばせた刃物を抜いて動き出す。

 

「そういうところが小物だってんだよ」

 

 真は嘲笑混じりに言い放ったのであった……。

 

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