真は智樹から読み取った記憶を基に言葉で彼のトラウマも捻じり曲がった本性も彼の精神の何もかもを抉った。
それによって、智樹は怒りや屈辱に身を震えわせながら『ワルキューレ』の部隊に真を襲わせたが……。
「そういうところが小物だってんだよ」
そう、あえて繕っていた態度を止めながら智樹に対する評価を下しつつ、軽く霧を漂わせる。
『っ……』
真はワルキューレの精神に干渉して眠らせる事で倒れさせた。
「なっ!?」
そして更に霧は応接室を埋め尽くし、そうして次の瞬間には白いだけの何もない空間に変わり、いるのは真と智樹の二人だけとなる。
「お前は本当に見下げ果てた野郎だな。力に自信がある割にまさか、他人をまず使うなんて……まあ、自分の強さに自信がないのは当然か。逃げてばかりの虐められっ子じゃあな」
「だ、黙れ黙れ黙れ黙れ黙れぇぇぇっ、お前、一体何をしやがったっ!?」
「なんでお前にそれを話す必要がある? 一つもそうする理由はねぇじゃねえか。ほら、次はどうする?」
「くそ、どこまでも俺を馬鹿にしやがってっ!! 殺してやる殺してやるぞ、お前ぇぇぇぇっ!!」
「ははははは。良いぞ、喧嘩をしようぜ、智樹。特別サービスに左腕一本だけで相手してやるよ」
真は左手を前に出し、右手は下に降ろすという構えで智樹に言葉をかける。
「死ねぇぇぇっ!!」
智樹はどこからか出した投擲用のナイフを複数、投擲する。
「こんなんで殺せるかよ」
真はナイフを左手を素早く振るう事で払いのけた。
「うおらぁぁぁっ!!」
そんな真へと智樹は疾走して接近しながら、右の拳を顔面に放つ。
「なんだこのへなちょこパンチは……勇者どころか戦士としても不合格にも程がある」
左手の人差し指一本を出し、智樹の拳撃に触れるとそれだけで智樹の拳撃は止められてしまった。
「く、くそ……」
「ふん」
「うあっ!?」
智樹の拳を軽く左手でデコピンして弾き退けるとそのまま、一歩踏み出し……。
「そら」
「うぐ……ぶ、げ、が、ばは、ぎゃ」
左でジャブのように軽い拳撃を繰り出し、そのまま智樹の顔面に腹部、頬や顎とラッシュを繰り出していく。それに対し、智樹は一歩一歩、仰け反りながら苦鳴を上げていく。
「おいおい、反撃してこいよ。お前、それでも勇者か?」
「う、うおおおおああああああっ!!」
智樹にラッシュを叩き込みながらつまらなげに言う真に対し、智樹は怒りながら右拳を繰り出すも……。
「技術も何も無いんじゃ、遊びにもならねぇな」
「ぐぎゃああああああっ!!」
その右拳を真は掴むとそのまま、腕ごと無理やり捻じり上げる事で智樹の右手と右拳を折った。
それにより、智樹は右腕を押さえながら激痛に苦しむ悲鳴を上げた。
「ふしっ!!」
「ぎゃば、ぶげ、びぎ、ばが、ぐぼぉ」
そのまま真は智樹へ左拳によるラッシュを繰り出し、痛めつける事でとうとう耐えられなくなり、智樹は地面に倒れる。容赦なく、真はマウントを取ると智樹の顔面を殴っていく。
「や、やべ、ゆ、ゆぶじで……」
「じゃあ、俺の言う事に逆らわないと誓え、そうしたら虐めないでおいてやる」
「……ち、ぢがう、ぢがいますからぁ……」
智樹は涙を流しながら、弱弱しい言葉と態度で真に応じた。
「言質は取った……もし、破れば次はもっと容赦なく、徹底的に虐めてやるよ。智樹君」
「ひ、や、やだ、い、虐めないでくださぃ……」
真が軽く凄みながら言うと智樹は虐められたトラウマがぶり返した事ですっかり弱弱しくなっており、真に対し慈悲を乞うた。
「安心しろ、俺も虐めは嫌いだ……じゃあ、最後にこれで終わりにしてやる。安心しろ、痛みは無い」
「な、や、嫌だ、嫌だぁぁぁぁ!!」
『界』を智樹に対して使う事で痛覚を遮断し、そうして真は智樹に女神が与えた魅了の魔眼へと指を突っ込んで抜き取りつつ、瞬時に普通の目を創造しながら移植する。
「ったく、あの糞女神……性根のくだらねぇ奴に馬鹿みたいに力を与える事が面倒な事になるという事を知らねぇのか」
真は女神に対し、そう愚痴りながら智樹から抜き取った魅了の魔眼を握り潰した。
厄介という点においては明らかに『魅了の魔眼』がずば抜けているからだ。抵抗の無い者なら幾らでも自分の思う通りにしてしまうし、色々と解除が面倒くさい。
ワルキューレの女たちやそれ以外の女にかかっている魅了解除などをしても良いが、智樹は恋人がいる者にも魅了を使っているので、解除したらしたでそうした女性たちが精神的ショックを受けたり、自殺とかしそうなのとそこまでする義理も何も無いので止めた。
「次からは自分の実力で女を口説くんだな。まあ、お前には無理だが」
そう言うと体の傷は治療してやりながら空間を元いた応接室に戻す。
「ああ、そうそうお前はとうとう、リリ皇女にも捨てられたぞ」
巴に識からの念話でリリ皇女は真達と女神打倒に向けての計画に協力すると誓ったと伝えられたので意識を失っている智樹に対し、なんでもない事のように残酷な事を告げて応接室を出るのであった……。