ニュータイプ研究所所長の奇行   作:スターリー

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 オーガスタ基地と呼ばれるその場所には、規模の小さい軍事部門、民間への顔役の航空部門、そして我ら技術開発部門がある。

 

 そのパワーバランスは均等ではなく、まさかの技術開発部門が権力の大半を握っている。

 

 一年戦争初期には軍事医療関係が殆どで、確かにこれならジオンが脅威なしと判断して積極的に狙わなかったのも頷ける。

 

 その技術開発部門の中心拠点こそオーガスタ研究所と呼ばれ、そこから更にモビルスーツ開発の施設と表向き医療施設として称されている人体開発のための施設に分かれている。

 

 私は他二部門のトップとの顔合わせと会議を終わらせて…………。

 

 

 軍部の人間を引き連れて、人体開発施設の一斉摘発を行った。

 

 

 地球連邦軍にはすでに内部告発を各方面に大々的にしている。

 施設長および研究員を取り押さえ、証拠となる資料を回収し、被検体とされた人たちを保護していく。

 

 一年戦争の最中で行われた人体実験は庇いきれない立派な戦争犯罪。どんな大義名分であれ、許されないものは許されない。彼らは軍法会議にかけられ然るべき処罰がくだされることになるだろう。その命は、その任務を与えた上層部が握ることになる。

 

 

 ブライアン・マーセナスは薄ら笑う。

 

 

 彼らが行っていたのはただの人体実験ではなくニュータイプの研究とその模造品、強化人間と呼ばれる人工ニュータイプを造るためのもの。

 

 それは連邦政府の上層部から、或いは一部の企業と何かしらの思惑を持った人間からの任務。

 

 恐らく公表は出来ないだろう。

 当然、闇に葬られることになる。それはブライアンにとっても好都合。

 あんな爆弾案件を処理できて、上層部への牽制にもなる。しばらく人体開発系の要求は鳴りを潜めるはず。尚且つ、違法な人体実験を良しとする企業や人間に私に近づくなと警告も出来る。

 

 まあ、喧嘩を売ったようなものだが、こちらとてなんの用意もせずにこんなことはしない。

 

 連邦は一枚岩ではない。企業やそういう思想を持つ人間も同様に。此処に就任するまでに父上と連携して敵の敵を利用させてもらった。今ごろはてんやわんやしていることだろう。

 

 私が権力を握るまで、しばらくは大人しくしてもらおうか。

 

 

 

 早速電話を掛けてきたのは上層部の人間。

 

「はい、ブライアンです。お世話様です。お久しぶりですね」

 

「いいえ? まさか、そんなつもりはございません。私には私のやり方がありまして、そのために少々掃除をさせていただきました」

 

「ええ、別に。隠蔽? お好きなように。これは正義のために行ったのではなく、あくまで私自身の身の安全を守るために行ったに過ぎません。そのためならどんな手段も選びませんとも」

 

「脅し? まさかまさか。首謀者は前所長で貴方がたは何の関わりも御座いません。ですので、他の一派の掃除を行うとき目を瞑ってくだされば貴方がたには何もしないと約束いたします」

 

「いいえ。是非その研究は私にお任せください。任務は引き続き私が継続いたします。ええ、ではそのように」

 

「それでは。失礼いたします」

 

 

 

 薄暗い拘置所の中を進む。

 その先の部屋には今回の件にて、拘束された人々が軟禁されている。

 

「今しがた、皆様の処刑が確定いたしました」

 

 余計なことを言う前の口封じ。上層部は彼らを見捨てた。

 その反応は様々だ。命乞い、悲鳴、罵詈雑言。

 自分たちとて人の命を弄んで使い捨てた人間だろうに。

 

「まったく、ぎゃあぎゃあと」

 

 これくらいの覚悟はしていてほしいものだ。

 

「薬物を投与し、脳を弄り、身体を改造し、マインドコントロールを施す。いつから我々はショッカーになったんですかね? そんなものでニュータイプになれるのだったら、西暦の時代、第二次世界大戦のときにでも進化してるんですよ」

 

 父から嫌と言うほど聞かされてきた。

 科学の積み重ねは未来への礎でなければならない、と。

 

「貴方たちが作ろうとしていたのはニュータイプではない。強化人間と称した人工ニュータイプでもない。兵器のための生体部品。そんなもの造ったところで、その先にどんな可能性があると言うんだ」

 

 この人たちが積み重ねたのはただ命を消費するだけで、なんの価値も発展性もない破滅への一歩。

 

 そんなもの父に言わせれば科学への侮辱に他ならないと言うだろう。

 

「でも、安心してほしい。君たちが血眼になってかき集めた資料は私が大切に利用させてもらう」

 

 今軍部に押収されている資料は事前に用意し、すり替えておいた偽物。

 あれを有効活用しようとすれば痛い目を見ることになるだろう。

 全ては私の手の中に。

 

「我が父上の科学力があれば、脳を切り開くような前時代的な方法など必要ない。命の消費なくとも人類を次のステージへと進められるさ」

 

 クククッと笑うと、両手を広げ、言い聞かせるように声を出す。

 

「君たちの犠牲は無駄にしない! 私が押し広げてみせる! 人間の未来を! 羽ばたかせて見せよう! 人間の可能性を!」

 

 父親に負けず劣らずのエゴイスト。

 宇宙に適応した人類。その存在が確かであるなら、実現は可能だ。オールドタイプとニュータイプ。その差を科学で技術で埋めてみせよう。

 

 たとえ偽りの翼であっても、宇宙を自由に翔けるその姿を見てみたいと心から思うのだ。

 

「科学技術のすべてをもって! 必ず到達してみせる。証明してみせる。完成させてみせる! 何のデメリットも存在しない。完璧で究極の人工ニュータイプ! 強化人間を!」

 

 周囲が何も言えずに飲み込まれる。

 自分たちは悪魔だと散々言われてきたが、目の前にいるのは、その悪魔を喰らう──―

 

 

 

「だから、君たちは」

 

 

 

 蛙の子は蛙。怪物の子は──―

 

 

 

 

 

 

「安心して地獄に落ちると良い」

 

 

 

 

 

 怪物。

 

 

 





まだ先になりそうですけど、どの時期に誰が被験者なのか、把握しきれてないんですよね。
整合性って難しいよぉ……。
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