ニュータイプ研究所所長の奇行   作:スターリー

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 被検体とされた子達は適切な治療を継続的に行いつつ、責任を持って私が引き取ったり雇うことにした。

 

 辛い目に遭った場所で暮らすのは精神的に苦痛を伴うかもしれないが、これから楽しい思い出を増やしていくと誓うので許してほしい。

 

 そもそも帰してあげようにもこの子達は先の戦争での戦争孤児。

 当然保護者はいなく、ほぼほぼ違法に連れてこられたために拠り所も帰る場所も逃げ場もない。ここで放り出すのは色んな意味でナシだろう。新たな厄介ネタになるのでここはしっかり面倒見ます。

 

 だが、幼いが皆優秀。スカウトたちは見る目だけは良いらしい。

 だったらもっと別なマシな使い方しなさいよ! んもう! 

 

 公的にあれこれやるとまた資金難に直面するので私が個人的にやることにした。ふっ、ブラックカードが火を吹くぜ! 

 

 まあ、みんな良い子たちだけど子育てとかしたことないし、私は自分が何でもできるスーパーマンではないと自覚しているので家族を含めた色んな人にヘルプ・ミー! と協力して貰っている。

 

 今の時代、衣食住はポチポチっと手配するとすぐに用意できる。

 かがくのちからってすげー! 

 

 さあ、みんな―! 朝御飯の時間ですよ―! 

 

 よっしゃあ! 食べ終わったらみんなで鬼ごっこじゃあ!! 

 

 はっ! 今日仕事やん! 

 

 ごめんみんな無理だったわ! ちょっと仕事してくるー! 

 

 

 私のお偉いさん(中途半端)の仕事とはなんでせうか。

 それはもっと上の人に頭下げつつ、最低限のお金で横のつながり広げながら、部下に虚勢を張ることである。ふんぞり返って座ってるだけでお金が入って来れば良いのに。

 

 私、ついこの前まで学生やってたクソガキやぞ。

 誰か止めろよな? ほんとにー。

 でも、世の中にはほぼほぼ年若い十代の民間人だけになった宇宙戦艦で激戦の最前線を戦い抜いた十九歳の艦長がいたとか……私なんてまだマシだな。うん。

 

 

 オーガスタ研究所は資金難に陥っていたが、実はそれはどこも同じだったりする。

 この戦争での被害は甚大。連邦が疲弊してるのは間違いない。戦争が終わったことで連邦の軍事予算も厳しい目で見られてる。

 

 そうなるとお金を集めるのは難しそうに見えるが、お国の予算はなくとも、あるところにはあるのだ。

 

 例えば、歴史がお長い動かぬ資産をお持ちの名家や見えない予算から懐に集まるような仕組みをお作りのどこまでも真っ黒な政治家のオジイサマとオバアサマ、税で徴収される程度ではどうということはない各大企業のお重役の皆様がた。

 

 あとは需要があるところに上手く売り込むこと。

 何かあれば絶対に資源と技術者と金は動かざるを得ない。私の独自の情報網からアナハイムでは新たなガンダムが造られてるとか、月でジオンと連邦の特殊部隊が小競り合いをしているとか色々流れてくる。

 

 そこに繋がりを持てれば希望が見えてくる。

 

 お金を出してくれるかわからない? 

 そんなことはない。

 

 一年戦争を終えて、地球連邦はジオンに勝利し、ジオンから様々な資源とデータを手に入れることが出来ただろう。そこから見えるのは敵の全容だ。

 

 ミノフスキー粒子というこれまでの戦場を一新した物質。モビルスーツという新しいオモチャ。ニュータイプという新人類。

 

 聞こえてくるのは、まだまだ続く戦争の足音。

 

 モビルスーツ産業にはこれから莫大な資金が注ぎ込まれる。

 目聡い連中だ。すぐに嗅ぎつけるだろう。それを見逃すはずがないのだ。奴らには奴らの情報源があり、ニュータイプのように未来を見る。いや、予測するというのが正しいか。それも限りなく正確に。そういう、化け物どもだ。

 

 奴らは今日も未来を予測しては何に賭けるかという遊びをしている。

 

 その選択肢の一つになるだけでいい。

 

 

 オーガスタ研究所で働く人たちは実に優秀である。

 彼らの仕事を見るに要求されたスペックをその通り、あるいはそれ以上に仕上げて応えているのだ。

 私なんかよりよっぽど優秀な技術者と研究者が揃っている。

 

 ならばそこから先は私の仕事、私の役割、私の役目。我々に必要なのは宣伝! 知名度! 影響力! 

 

 ということで現在父の代わりに『お金持ち達のとても優雅なパーティ』とやらに出席している。

 

 そこはまさに魔王城。影響力と財力と権力という魔力が天元突破している連中がうろうろしている。

 

 さあ、お仕事の時間じゃあ! 

 フフフ、最初から私にプライドなんてものはないのだ! ヒャッハー! 今日も全力で胡麻を擂っていくぜ! 

 さあ! さあ、さあ、さあ! 

 次は誰の靴をお舐めいたしましょうかぁぁぁあ!?!? 

 

 まもののむれが あらわれた! 

 

 ひぃぃぃぃ! 

 

 

 一通り挨拶と媚を売りまくった。

 疲れたので壁の飾りになってちょっと一息だ。ネクタイを緩めて肺に溜まった空気を全部出す。

 

 今のところ奴らは二種類の反応に分かれている。

 浮かれている連中と浮かれていない連中。つまり、利益を得たか、得ていないか、だ。

 

 片目を閉じる。

 

 だが、注目すべきは浮かれていない連中。

 その中には単純に利益を得られなかった人間とこの程度では浮かれるまでもない飛び抜けた人間にまた分かれている。

 

 両目を閉じる。

 

 つながりを持つべきは飛び抜けた人間。その人間の懐に飛び込み更に上のステージへ案内してもらう。それを繰り返して、上り詰めるのだ。

 

 ただ研究所を再建するだけならそこまでする必要はない。だがそうするには理由がある。

 

 私がするべきと定めた目的は三つ。

 

 我がオーガスタ研究所を黒字にするために需要がある場所に適切に売り込むこと。

 同じ状況で同じ轍を踏まないように連邦から独立した繋がりを持つこと。

 

 

 そうして、それら全てをベットして。

 

 

 ニュータイプ、アムロ・レイくんを我が研究所のテストパイロットとして迎え入れること。

 

 目を開ける。

 見るべき現実を。戦うべき世界を。進むべき道を再確認する。

 

 彼は今、政府の監視下で軟禁されているのだという。

 彼は一年戦争時、民間人でまだ子供で守るべき側の存在だった。そんな彼が戦ってくれなければ連邦は今も最悪の殺し合いの真っ最中だったはずだ。

 

 それをまるで囚人のように。

 

 それならば我らが貰う。

 ニュータイプとして無駄に怖がるから新たな悲劇を生み出すことになるんだ。

 

 科学はそういう恐怖を失くすためにある。

 

 だがそれまでに数年は要するはずだ。最低でも、三年……か。

 

 いや、それでは遅すぎる。

 

 ネクタイを締め直す。

 休憩はこれで終わりだ。これからずっとお仕事の時間なのだ。

 

 一年だ。

 

 一年で収益を黒字にして、お金がじゃぶじゃぶ使えるタイミングでアムロ・レイくんを手に入れる。

 

 やってやる。

 

 やってみせる。

 

 末席の末端とはいえ私とてマーセナス家の名を背負う男だ。

 

 私の持ちうるすべて。

 カリスマ性、心理学、人心掌握術、人間力、交渉力、言語力、運命力、財力。

 

 ありとあらゆる全てを使って目的を達成する。

 

 見せてやろう! 

 

 私の人間としての底力を! 

 




見せてもらおうか! 連邦軍のモビルスーツの性能とやらを!
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