ニュータイプ研究所所長の奇行   作:スターリー

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 先日、遂にオーガスタ研究所(一部)を私物化し、非合法で非人道な人体実験を行わせていたグレイヴと呼ばれていた高官が処刑された。

 

 その内容は汚職や横領等などを複数積み上げたものとされている。つまり研究所関連の、ホントの事は隠された。だが、彼のことを知っている人たちにはおおよそ察しがついていたことだろう。

 彼が主導して動かしていた施設の研究データを極秘裏に回収した後、内部の設備どころか施設そのものを解体、破壊する完全放棄がなされた。

 

 まあ、全部私が指揮したんですけどね。

 

 ただ予想外だったのは協力者の名簿を洗ってく中でオーガスタ基地の軍事部門の人間の関与が確認されたことだ。もちのろん、そいつ等も全員きっちりお縄である。結果、幹部を含めた複数人が拘束された。本当に勘弁してほしい。

 

 もう! 信頼は失えば! その対応から回復までに大変なんだぞぅ! 

 そして何も知らない航空部門。ふっ、君の立ち位置決まったな。

 

 拘束されたアホどもの穴を埋めるためにこの一連の出来事を手土産にクリーンになったぞい! と最大限にアピールして、生存が確認されている一年戦争で関わった様々な有能な人たちにお声がけをして人材確保に奔走する日々である。

 

 最近はペイルライダー計画に関わるパイロットやスレイヴレイス隊のメンバーに対してこれまでの賠償、これからの保証、そして継続的治療を条件に軍事部門に引き抜き、或いはスカウトする形になった。

 

 ただペイルライダーのパイロットはすぐに軍に戻らず、しばらく治療に専念して完治してもパイロットに戻るかは本人の希望に合わせてほしい、と。そう、とある部隊の隊長と事情を知るスレイヴレイス隊のリーダーたってのご希望である。ふむふむ、なるなる、あら察っし。

 

 ほーん? はっはーん? もう娘扱いですかい? ヘッヘッヘ。いーんでねーのぉ? 

 

 別に全然構わないのである。

 むしろあの二人のラブストーリーの行方が気になるまである。

 

 私、気になります。

 

 

 

 

 そんなこんなで無事平和的に爆弾を処理して、ある程度の平穏を手に入れた今日この頃。現在オーガスタ基地の幹部連中を集めて大切な会議の真っ最中である。

 

「アナハイム・エレクトロニクス社は近年死の商人としての色合いが濃く成りつつありますが、彼らの主な事業はコロニー開発を中心とする宇宙産業です」

 

 アナハイムは最近、ジオニック社の半分を吸収したこともあってモビルスーツのことばかりに目が行きがちだが、彼らの主戦力は元々違うところにあり、多彩かつ豊富にて強固。今も一年戦争でボロボロになったスペースコロニーの修復と失った部分の建造に大忙しである。

 

 連邦は自分たちのことしか興味なくて、酷い状況にあるスペースノイドたちを放置するから当然軋轢は生まれるし、どんどん信用を無くす。逆にアナハイムの価値と需要と信頼は高まるばかりだ。

 

 アナハイムはさっそくモビルスーツ開発で手にした情報や技術を転用、あるいは別の形に発展させたものを軍事以外の製品にして莫大な利益にしているのだとか。元々すんごいのに、その総資産は私たちの想像を軽く超えるんだとか。シャレになんねー。

 

「それは当然のことで、所詮兵器は商品という括りの中でほんの一部でしかなく、軍人より民間人のほうが多いのは皆さんもご存知の通りだと思います。取引先の連邦は軍事費からの予算や研究に対する補助金を出してはくれますが限界があります。顧客になり得る私兵を雇えるような人たちも一握りに限られる。私達は公的組織の一部だからこそ、ある程度の安定はありますがその底もまた見えてしまうのです。極端に言ってしまえば、私達は兵器やそれらに関する製品だけではやっていけないという証明に他ならない。……という感じですは〜い」

 

 私達はグレーゾーンの研究をさせられる立場。圧力をかけられた時、また一年戦争時の地獄を領域展開することになる。だから次の戦争までに資金源を複数確保して連邦から独立に近い状態を確立する必要がある。

 

 お上から何言われても知るかバーカと好き勝手出来るくらいの経済力、影響力、権力を持たなければ過去の悲劇と醜態を繰り返すことになる。

 

 そこで実例としてアナハイム・エレクトロニクスはまさに私達の具体的な目標と言えるだろう。連邦政府の上から下までズブズブでジオンとさえズブズブになりつつあるのに何も言えない。まさに理想的! 

 

「幸い、私達のモビルスーツ開発とニュータイプ開発は医療技術方面と相性が良く、これまで培った違法合法全部の技術が転用可能です。これなら戦災という第二の戦争でこれまでとは違った"命を救う"という形で大きな活躍が期待できるでしょう。それをきっかけに世界中で注目と関心が集まれば、研究、発展が進み、より多くの人々の希望になる筈です。あとついでにお金もガッポガッポ、おっと……コホン、失礼☆」

 

 技術は人の使いよう。命を奪う技術だって命を救う技術にもなる。

 戦争という悲劇は皮肉にも科学を発展させるという側面があるのは否めない。ならばそれを前向きに活かさなければ犠牲になった人々に失礼というもの。

 

 これを使えば大義名分は十分だろう。権力者に強い企業連の方々のおかげで法律的な抜け道は幾つもあるし、賄賂とコネで上手くよろしくすれば邪魔を抑えつつ時間稼ぎしてるうちに出し抜ける! 

 

「お試しとして実際にいくつかの企業と協力して複数の商品を開発、販売してみたところ、その売上はどれも好調も好調で。右肩上がりにじゃりんじゃ……推移しています。ほかの企業さんからも次は是非うちにも、と問い合わせがひっきりなしに来てるような状況なのですよ。いやぁ~、ありがたいことですねぇ」

 

 ええ。誠に嫌らしい話ではございますが、超順調なんですねぇ。売上は右肩上がりでございますとも。ええ。ヘッヘッヘ……。

 

 いや、まあ、それだけ戦火の大きいってことだから素直に喜べはしないんだけどさ……。

 

「ただ懸念点があるとすれば先の戦争のこともあり、我々が軍に属する組織というところで、そこに対するマイナスイメージが利益にも影響を与えてしまう可能性があるというところでしょうか」

 

 実際、そういう企業はキレイな思想を持つ投資家に避けられるのはよく聞く話だ……多分、知らんけど。まあ良いイメージにすることに越したことはないよね。イメージは影響力、信頼、ブランドになるのだ! なーんちて。

 

 

 さて、パンッと手を叩いて一区切り。空気を変える。

 フッフッフ、ここからが本題なのだ。

 

「と、いうわけで! 新商品の医療製品紹介動画の他に私達のイメージを払拭し、更新するために一般の人にもウケるorバズるプロモーションをとりたいと思ってまーす!」

 

 これまで資料とにらめっこしていた部下たちが、顔を上げては見合わせる。話の内容が変わりすぎて置いてけぼり。口を開けて「はあ……?」と困惑しているのが一目瞭然である。すまんすまん。

 

「つきましては皆様からのありがたーいご意見とかこうしたらええんじゃないか? というご要望とか超エキサイティングなアイディアとかをですね。伺いたいと思ってまーす。イエーイ! ……はい。できれば、圧倒的技術力で全力でふざける動画を撮りたいので何々やってみた、みたいな軽い感じで!」

 

 まあまあ。とはいえ、だ。突然そんなこと振られても無茶振りも良いところだろう。そこで議論を加速させるために仕込んでおいた技術開発の施設長の一人にアイコンタクト。手を上げ、指名し、元気よく発言する。

 

「ガンダムで踊ってみたとかどうでしょうか!!!」

「いいね! 採用! 行ってみよう!」

「いやいやいや」

 

 軍事部門より回答とその要約。

 

 できるかばーか! 今からだと時間も技術も諸々足りんわ! 

 

「じゃあ来年までに練習しといてください」

「ええ!?」

 

 嘘だろっ! とリアクションしている軍事部門トップを尻目にブライアンは「お! アムロくん迎え入れたら、ガンダムでブレイクダンスしてもらお!」と心に決めていた。ちなみにまだ迎えられるかは未定である。

 

 特に意味のない理不尽がアムロを襲おうとしていた。

 

「はい!」

「どうぞ!」

「ガンダムで大気圏突入してみたとかならいいんじゃないですか? 地球に降下するときの景色は最高でバエますよぅ!」

「おお! パないのォ! 採用ォ!」

「ちょいちょいちょいちょい」

 

 航空部門より回答とその要約。

 

 情勢的に勘弁してぇ! 撃ち落とされるぅ! 

 

「じゃあ落ち着いたら積極的に狙っていく方向で」

「なん……だと?」

 

 ほ、本当に? と固まる航空部門トップを放置してどんどん先へ進めようとするブライアンに恐怖を感じた他部門ツートップがアイコンタクトする。

 

『全力で止めるぞ!』

『応!』

 

「じゃあマグマダイブ」

「「死ぬわァ!」」

 

 ジオンの開発部の亡霊たちが心配してオロオロするような内容ばかりで会議は難航し、この日は持ち帰ることになるのだった。

 

 

 

 

 その後日。

 

「はい! イチッ! ニッ! サンッ! シッ! イチッ! ニッ! サンッ! シッ!」

 

「〜〜♪ 〜〜〜♪」

 

 何処ぞやの軍隊の訓練内容にダンスが追加された。

 






前に書いていた在庫を放出しました…。
はたして読んてくれる人はまだいるだろうか…?

ブレイクダンスするガンダムNT-1に乗ったアムロ……。
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