今回は狐の住む場所、及び狐がどんな存在であるかが一部明らかになります。
活動報告用のX(旧:Twitter)アカウントを作成しました。
>このキャラ(複数あり)とこんな遊びをして欲しい!
みたいな、ハーメルンのアンケート形式ではやりずらい物をこちらで行っていこうと思ってます。もし良ければフォローお願いします。
https://twitter.com/ringoame_hameln
──イブキが眠りについた後、イロハはこの場所はいったい何なのかという疑問を狐に投げかけた。
「ふむ……ここが何なのか、か」
「はい。……建物の様式を見る限りだと百鬼夜行のものっぽいですけど……」
「うむ、イロハちゃんの予想は当たっておるよ。……
「……元は?」
一呼吸おいて、狐は答える──"ここは、譲り受けた土地を切り出し創った、キヴォトスとは位相の異なる世界である"と
想定外の答えにイロハは驚き固まり……そんな彼女を置いて語り続ける。狐曰く──
◇◇◇◇◇
──もとは己も、イブキやイロハたちと同じ世界にいた
──しかし、長い時を生きる狐の力は次第に強大になっていき、一時は自身ですら抑えることが難しくなった
──故に、万が一にも自身が原因でキヴォトスが滅ぶようなことにならないようにと、当時の己の力の大半を使いこの世界を創り出した。その際に基盤となる土地が必要だったため、当時の百鬼夜行の長との契約によりこの土地を譲り受けた
──そして己は、自身の創り出した世界に住むことにした
「──まぁ、そんなところじゃよ。今となっては力も制御できるようになったでのぉ、時折扉を開いては、外の世界を見て回っておるんじゃ」
なんてことのないように語る狐に対し、イロハは開いた口が塞がらなかった。……"次元の違う"存在だとは思っていた、しかしまさか、世界を創り出せるほどだとは思ってもいなかった。
……あまりにも規格外すぎて頭の痛くなってきたイロハは、深く考えることなく質問を投げかけた過去の自分を殴りたい衝動を抑え──"今の話を自分なんかが聞いても良かったのか"と、訊ねた。
「まぁ、問題ないじゃろ。百鬼夜行の子らは知っておるだろうしの」
「……そうなんですか?」
「うむ。どうやら昔話として、細部は違えど話が伝わっておるみたいでな?……前に百鬼夜行に買い出しに行ったときは、絵本も出ておったのぉ」
"あれは流石に、ちと恥ずかしかったわい"と、照れるように前足で耳の後ろを搔く狐を横目に、イロハは"はぁー……"と、大きくため息をついた。
◇◇◇◇◇
その後は、もういっそ聞けるだけ聞いてしまおうということで、イブキが話していた"時間を変えれる"というのはどういうことなのかという質問を投げかける。
「ふむ…?儂は時間を操作したりは出来ぬが……」
「え?そうなんですか?イブキはおじいさんが"気分で道の横に植える植物や、時間を変えたりしてる"って言ってたんですけど」
イロハにそう言われ、狐は思案するように下顎をポリポリと掻き──"あぁ、そういうことか"と得心がいったかのような表情を見せる。
「さっき、この世界は儂が創ったといったじゃろ?……毎日同じ景色ばっかりでは儂も、遊びに来てくれる子も飽きてしまうでの、時折天蓋に写す空模様や植える植物、気温を変えておるんじゃよ」
"そういう意味では、この世界限定ではあるが時間を操作しているともいえるかの?"という狐を見据えながら──イロハは"あ、そうだったんですね"とひとつ頷くだけだった。十分驚くべきことなのではあるが、流石に世界を創り出したと言う事に比べれば衝撃は小さく……端的に言うなれば、彼女の感覚は麻痺していた。
その後も幾つか質問を投げかけ、狐が答えるというのを繰り返していると、イロハは不意に"ふぁ…"とあくびをもらす。珍しく脳を回転させすぎたことで、イロハも眠気に襲われてしまっていた。
そんな彼女を視界に捉えた狐は彼女を招き入れるように、イブキの隣のスペースに入り込めるように尻尾を持ち上げる。
「眠たいときは寝たらええ。……他の子もよくこうして寝ておるし、遠慮はせんでもいいよ」
「……じゃあ、遠慮なく」
イロハは、イブキの隣に入り込み──包み込むような温かさに感嘆の息を漏らす。
(──柔らかそうな毛並みだなとは思ってましたけど、まさかここまでとは……)
自身を包み込むふわふわとした毛並みに、狐の暖かな体温、"トク…トク……"と一定のリズムを刻む心音、その全てがイロハを眠りへと誘っていく。
「……時間になったら起こしてやるでな、それまではゆっくり眠っておくとええ」
「あり、がとう…ござい、ます……」
──"おやすみなさい、おじいさん"
イロハが眠りについたことを確認した狐もまた、前足を顔の下で組んで枕にし、瞼を閉じた。
◇◇◇◇◇
──二人と一匹が眠りについてから暫くして、"シャアン…シャアン……"という鈴の音が辺りに鳴り響く。
「──ほれ、そろそろ起きる時間じゃぞ」
狐は二人を起こすように身体を揺らしながら、声を掛ける。イブキとイロハは揃って"うぅん……"と目を擦りながら起きる努力をして……また狐へと身体を埋めた。
揃って同じような行動をとる二人はまるで年の離れた姉妹のようであり、狐もその様を微笑ましく見ていたが……"いかんいかん"と、絆されかけそうになる気持ちに喝を入れ、二人を己が神秘で持ち上げ、起き上がらせる。
流石にそこまでされれば二人も目を覚ましたのか──未だ目をしぱしぱとさせているものの、しっかりと自身の足で立ち上がって二人揃って大きく伸びをする。
「おはよー…おじいちゃん……」
「ふぁ……自分で言うのもなんですけど、ぐっすり寝れました……」
"持って帰りたいんで、尻尾一本くれませんか?"と冗談めかして言うイロハに、流石の狐も尾を切り離すのは厳しいのか、"流石にそれはちと厳しいかのぉ……"と苦笑いを浮かべる。
「……うむ。随分と緊張も解れたようじゃの」
「えっ?……あ、そういえば……」
狐の言葉を受けてはたと気づく。当初抱いていたはずの警戒心や緊張感は気付けばなくなっており、自然と冗談が言えるようになっていた。その事に気付いたイロハは、少し恥ずかしく思いつつも──
「あの……」
──"またここに来ても良いですか?"と、元はイブキに連れられてここに訪れた彼女は訊ねる。
短い間ではあったが、ここで過ごした時間は──驚くことも多々あったが──心地よいものであったため、"もし許されるのならばまた来たいな"と、イロハはそんな感情を抱いていた。
そんな彼女の言葉に、狐は"きょとん"とした様な表情を見せたあと……"もちろん、何時でも遊びにおいで"と優しく微笑みかけ、イロハは気恥しそうに、"ありがとうございます"と礼を告げる。
「イロハ先輩もまた来たいの?……なら、また一緒に来ようね」
"今度はお昼寝だけじゃなくって、色んなことして遊ぼうね"と、寝ぼけ眼でふにゃりとした笑顔を見せるイブキに釣られ、イロハも笑みを浮かべる。
「そうですね、またここに来る時は誘ってください。……おじいさん、今日はありがとうございました」
「こちらこそ、遊びに来てくれてありがとねぇ」
"それじゃあ、今から扉を開くでな"──そう言って狐が念じると、少し離れたところに、ここに訪れた時に潜った扉が現れる。
「おじいちゃん、また来るねー!」
「……また来ます、おじいさん」
二人は扉をくぐり抜けるまで狐へと手を振り、狐もまた扉が閉じるまで、二人へと前足を振っていた。
◇◇◇◇◇
──気付けば二人は、あの場所に訪れたときに最後に立っていた場所にいた。
(……まさか私があんな経験をすることになるなんて……昨日までの私が知ったら鼻で笑いそうですね)
そんな感想を抱きながら──"帰りましょうか、イブキ"と手を差し伸べる。
「はーい!……あれ?何かかばんからはみ出してるよ?」
「ん?……ほんとですね、何でしょうかこれ」
イブキの言葉を受け、イロハは自身の鞄からはみ出していた二つの小包を確認する。一つには中には多種多様な野菜チップスが入っており、もう一つには──
「イロハ先輩いいなー、イブキのかばんの中にもはいってないかなー……」
鞄をがさごそと漁り、少しして──"あったー!"とイブキは満面の笑みを浮かべながら、小包を両手に持って掲げる。
「良かったですね、イブキ」
「うん!帰ったら一緒に食べようね、イロハ先輩!」
「……そうですね、どうせならマコト先輩も呼んであげましょうか」
二人はこの後の楽しみについて思いを馳せながら、手をつなぎ、笑みを浮かべながら自らの学校へと帰っていく。
──お揃いの、狐の飾りを身に着けて
※狐のいる世界は、原作で描かれているようなキヴォトスの外の世界ではなく、一応キヴォトス内に存在しています。
先生の元居た外の世界とキヴォトスが別の円だとすると、狐のいる世界はキヴォトスという円の中にある円というイメージ。故に、キヴォトス内であればどこにでも扉は開けますが、外の世界やプレ先時空のようなパラレルワールドへの干渉はできません。
……ただし、ある一つの場所だけは、色々と制限や条件はあるものの干渉可能です。この設定がいかされるのはかなり先ですけどね。