ギターヒーロー、人理修復へと旅立つ 作:ヘル・レーベンシュタイン
ようやくジルさんとの、最後の戦いが終わった。周囲を見渡せば、ワイバーンも次第に消えていっていた。空に向かって多くの光が登っていって……
『二人ともお疲れ様、時代の修正が始まる……帰還の準備をするから、もう少し待ってくれ。』
「あ、はい…了解です。」
ロマンさんからのそんな通信と、その背後から聞こえる歓声がオルレアンでの戦いに終止符を打ったのだと改めて思った。
「ぼっち、マシュ〜」
「あ、エリザベートさん」
すると横からそんな声が聞こえ、そちらへと向くとエリザベートさんと清姫さんの姿があり……
「あ、え、消えかかって……」
「そりゃそうよ、もう敵もいなくなったしお役御免ってことだもの。」
「お役って?」
『なるほど、聖杯に与えられた役目が終われば君たちも退去しなければならない、長く現世に留まれば混乱を生みかねないからね。』
「そういうこと!」
するとエリザベートさんは手を振り、華やかな笑顔を私達に向けた。
「それじゃ消えちゃうけど、次また会ったらまたライブしましょう。ぼっち、貴女のギターの演奏最高にロックだったわ、また新しい曲があれば歌わせて頂戴!」
「あ、は、はい!エリザベートさんの歌声も、とても素敵でした!」
消える直前に私がそう言うと、エリザベートさんは照れ臭そうな顔をしながら消えていった。
「あのドラ娘ったら全く、根拠のない事を……聖杯戦争において同じ人間に出会うことなんてほぼあり得ないのに……さて、私もお別れですね。ただ、最後に醜い姿を見られてしまったのは残念ですけど……」
「え、醜いってもしかしてあの炎の、ですか?」
「も、もう!皆まで言わせないでください…」
つまり清姫さんが宝具を発動させた姿で本人はあまり良く思ってない様だ。そんな事ないと思うし……
「わ、私は綺麗でカッコよかったと思いますけど……」
「……」
私がそう言った直後、清姫さんは私の顔をじっと見ていて……
「……ッ!」
「あ、あの、なにか?」
「こ、小指をお出しになって……」
「え、あ、は……」
顔を真っ赤にしながらそう言って、私はつい小指を出してしまった。するとすかさず清姫さんも小指を出して私の指と交わり……直後に消え去った。
「あ、え、えぇ!?清姫さん!?」
何が何だかわからないまま消えてしまった……何がしたかったんだろう?そう困惑しながら周囲を見渡す。
すると視界の端に、ジークフリートさんとゲオルギウスさんの姿が見えた。なのでそちらへと向かうことにした。
「あ、ジークフリートさん……」
「ちょうど良かった、君達に挨拶しようと思っていたところだ。」
「おや、それはナイスタイミングだった。なら僕も、ご相伴に預かろう。」
横からモーツァルトさんの声が聞こえ、そして私達の場に混ざった。
「まったく働きづめでケツが痛い、っていうのはマリアに止められていたな、失敬失敬。」
(あ、そうか……)
「君のおかげだ、後藤ひとり。望む戦いができた。」
「僕もそれなりに、マシュという素敵な女性に出会えたし、遥か未来に最高の後輩がいることも知れたしね。」
「ジークフリートさん……」
「アマデウスさん……」
二人が最高の笑顔でそう言ってくれるものの、私もマシュもココロに陰りがあった。だって……
(二人とも……消えてしまうんだもん……)
「………やれやれ。」
すると直後、モーツァルトさんが私とマシュの頬を摘み上げたのだった。
「あ、ふぇ?な、なにふぉ?」
「全く、二人してお別れってのを分かってないな……」
「すまない、本来は止めるべきだが、君たちとそんな顔で別れたくないからな。」
苦笑しながらそういうジークフリートさん、私達は頬を撫でながら彼らの言葉に耳を傾ける。
「後藤ひとり、マシュ。特異点への旅はまだ始まったばかりだ、君たちはこれからも多くの出会いと別れを経験するだろう。」
「そう、だからこそ覚えておいてほしいことがある。簡単な様で、難しいんだけどね。」
「そう」
「つまりは」
「“お別れの時は、笑顔が一番!”わかったかい?二人とも。」
ああ、そうだ……例えいつか永遠のお別れが来るんだとしても、笑顔ならとても素敵だと思えるんだ。だから、そう問いかけられた私達の返答は決まっていた。
「はい…!ありがとうございました。」
「偉大なる
「偉大なる
そう言って私達は消えゆく二人を見届けたのだった。
「……あ。」
「私達の体も……そろそろここから離れる様ですね。」
マシュと私の身体が透け始め、オルレアンからの退場が始まりそうだった。
「お二人の方が先の様ですね……」
「あ、ジャンヌちゃん……」
するとジャンヌちゃんが私達の元へと現れて……
「とても……とても長い間、とても旅をしてきた様に思えます。不思議ですね、たった数日のことだと言うのに……」
そう言った直後、ジャンヌちゃんが私達の肩を抱き寄せてきたのだった。
「あ、え、えぇ!?ジャ、ジジジジジジャンヌちゃん!?」
「Dr.ロマンの話では、この特異点で起きたことは全て無かったことになる。母の死が無かった事になるのは喜ばしい反面、貴女やマリー達と出会い共に戦い抜いたこと、それも無かった事になります。それは、私には少し悲しい……」
「………」
それは確かに私も思う、悲しく辛いことも多かったけど、それだけじゃなくて素敵な思い出もたくさんあったから。それこそ、叶うなら家族や結束バンドのみんなにも話したいことで……
「しんみりは良くありません、笑って別れましょう。」
「あ、はい……」
「それにマシュとひとりちゃん、お二人にはまた会える気がします。私の勘、結構当たるんですよ?」
「え、それはどういう……ッ!」
ジャンヌちゃんのその言葉をもっと詳しく聞こうと思った直後、私達の体が浮き始めた。
『レイシフト開始だ、これ以上は歴史の修正に巻き込まれる。』
なら、せめて最後に!
「ジャンヌちゃん!」
これだけは言わないといけない!
「会えてよかった、助けてくれてありがとうございます!」
手を振りながらお別れの言葉を言えば、ジャンヌちゃんも笑顔で応えてくれた。
そして
目を開けば見慣れたカルデアスの姿が見え……
「先輩」
マシュが手を差し伸ばす姿が見え、私はコフィンから立ち上がった。
「ぼっちちゃーん!マシュー!」
直後、背後からロマンさんのそんな声が聞こえた。
「ハァハァ……」
「あ、大丈夫ですか?」
「……っ、お帰り!」
ロマンさんの絞る声に対し、私達は目を合わせ、そして声を揃えて答えた。
「ただいま!」
こうして、私達の初めての聖杯探索は終わりを迎えたのだった。
ただ、その日の消灯時間に……
私は、マシュの部屋にノックした。
『はい、どちら様で…』
「あ、私ですマシュ。」
『先輩でしたか、今すぐ開けます!』
「いえ、大丈夫ですこのままで。」
ドア越しで私達はそんなやりとりをする。
「その、身体の具合はどうですか?マシュは大丈夫なのか、気になったので……」
『はい、問題ありません。デミ・サーヴァントの肉体性能は破格ですので。』
「それなら良かったです……」
私はほっと胸を撫で下ろした、私みたいに包帯まみれじゃないなら良かった。
「それだけです、ではおやす……」
『あ、先輩!』
「あ、はい、どうかしましたか?」
『……』
急に呼び止まれ、数秒の間の直後に…
『先輩は…….どうしてあの時にジル・ド・レェを肯定したのですか?』
「……」
そんな質問が来たのだった。
「あ、その……全てを肯定したつもりはありません。あの人の所業は非道だと思いますし、怒ってるかと聞かれればそんな気もします。ただ、大切な人を愛した気持ちや、穢した人を憎む気持ち……それが間違ってるとは私は思えなかったからです……」
そう、それは私が家族や結束バンドに対して抱く感情と同じだと思ったから。もちろん、ジルさんと同じ様に世界の破壊に向かうなんて道を外す真似はしないけど。
『すみません、私にはまだよくわからないです……』
「あ、え、あ、そそ、そそそそうですよね!ごめんなさい、ああ私は何を言って……」
『えぇ、ですから……学んでいきたいと思います、少しずつでもわかる様に……』
「……はい。それじゃ、そろそろ戻ります。おやすみ、マシュ。」
『はい、おやすみなさい先輩……どうか良い夢よ。』
そうして、私達は就寝したのだった。
聖女の祝福が、私達にあらんこと____
A.D.1431
第一特異点 邪龍百年戦争 オルレアン
定礎復元
ようやくオルレアンを終わらせられて、ホッとしました。正直いつ挫折するかビクビクしながら書いていたので、ちゃんと駆け抜けれてしまった我ながら成長したなと実感してます。特にジャンヌはお気に入りの鯖の一人ですし、それを踏まえてしっかりとぼっちちゃんを活躍させないとと意識して、ちゃんと反映させたつもりです。
次回はコミカライズ原作同様、オケアノスを予定しています。どうぞお楽しみに!