ギターヒーロー、人理修復へと旅立つ   作:ヘル・レーベンシュタイン

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年内生に会えるとは思わなかったです……新章スタートです!


第三特異点 封鎖終局四海 オケアノス
第十六話


 

 

 

 第一特異点、オルレアンの修復を終えて私達は暫くの休息の後に第二特異点へと向かった。

 時代は西暦60年、薔薇の皇帝ネロ・クラウディウスさんが治める古代ローマ帝国。

 

 この時代における異変は“連合ローマ帝国”を名乗る軍勢による侵略が行われており、私達はネロさんと共にその軍勢へと立ち向かった。

 また、この特異点でも多くの現地の英霊と出会い、特にエリザベートさんとも再会したのは驚いた。

 

 そして多くの戦いを経て、連合ローマ帝国の首魁“神祖ロムルス”を打倒し、最後には召喚された『文明の破壊者アルテラ』を私達は打ち倒し、第二特異点の修正を果たしたのだった。

 二つの人類史の修正ーそれでもなお、私たちには拭いきれぬ不安があったのだった。この特異点においてもまた、レフ・ライノールが姿を現すことはなかったのだった。

 

 

 

 そして、第二特異点を終えてから数ヶ月が経ってから……

 

『ぼっちちゃん、ぼっちちゃん!返事をしてくれ、状況はどうなっている!?観測上の高度がおかしいぞ!?』

 

 私は“落下”しながらロマンさんからの通信を聴いていた。

 

「そ、そ、そ…空、です……」

『空!?な、なんでそんなこと__』

「先輩!先輩!今、そちらに!」

 

  私はもはや何もできず、そのまま落下をし続けており、マシュは必死に私の方へと近づいていた。

 そして暫くすると雲を突破し、私の目に大きな青い景色が広がっていた。ただ、それは初見のものではなく、私にはよく見覚えのあるものであり……

 

「海ーーーーーーッ!?」

 

 大海原が、私の目に映っていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 三度目の聖杯探索、私たちの未来を取り戻す旅も今回で三度目となった。

 

 視界に広がる大海原、ここで私たちは多くの出会いと別れを経験していく。だけど、ここでの旅で得たものはそれだけじゃなかった。

 

 曰く“最果ての海(オケアノス)”と呼ばれるこの海の終焉で、出会うこととなる。

 

 倒すべき本当の“敵”と____

 

 

 

 

 

 

 

【今日も 同じ時間に目が覚めた】

 

 体温を確認する、互換を確認する、客観的にわかるよう私の名前を口にする。

 

『○○○、○○○』

 

 深呼吸をして、眠るたびに消える可能性があると言われた自意識を確認する。

 

【わたしはわたしだ 私は今日も存在を許された】

『おはよう、今朝は特に冷え込んでるね。この部屋にいる限り、関係のない話だけど。』

 

 それは大変ですね、と。思ったことを口にした。綺麗で快適な部屋に私はいる。彼はとても辛そうな顔をしていた。そして

 

『○○○ 5110回目の覚醒おめでとう。』

 

 といった。

 

【ありがとうございますと返答する__心からの気持ちだった】

 

 私はとても幸せだ、今日も1日、この綺麗な世界を見ていられるのだから__

 

 

 

 

 

 

 

 

「………夢?」

 

 そんな誰かの記憶を見ていた。そして私、後藤ひとりの目が醒めたのだった。

 

「今のは……」

「た……ぁ……起きてくださいませ……」

 

 誰かの記憶?だとしたらそれは一体……と深く考えようとした時、声が聞こえた。それは……

 

「ま す たぁ」

 

 ベッドで寝ている私の体に、覆い被さる形で私の体を覗き込んでる清姫さんの姿だった。

 

「きぃやああああああああァァァァァッッッ!!」

 

 

 

 

 

 

 そして、暫くして……

 

「そ……それで、なぜいらっしゃるのでしょうか?清姫さん。」

「何故って……」

 

 私の悲鳴を聞いたマシュが飛び込んできてくれて、清姫さんに問い詰めていた。しかし当の本人は、まさにキョトンって音が出そうな顔で受け答えをしている。

 

「わかりません?」

「わかりません!第一特異点で退去したはずです、なのに何故カルデアに!?」

「ええ、英霊とは役目を終えれば消滅するもの。ですがら消滅せず、現世にとどめられるとしたらそれはきっと“愛の力”なのです!」

 

 と、なんとも要領を得ない答えしか聞けなかった。なのでロマンさんに相談してみたら……

 

「え、それを僕に相談?なんだろう、三十路独身に対するイヤミはやめてもらっていいですか?」

「違いますけど!?」

「先輩が、困っているんです!」

「うーん……ほら、フランスで退去する前に彼女とぼっちちゃんが指切りしたじゃない?」

「あ、はい……やりましたね。」

「その時に契約したんじゃないかな?で、どうにかしてカルデアまで来たと。わかんないけど。」

(凄い雑な考察だ……)

 

 なんともゆるふわな回答しか、ロマンさんから出なかったけど……

 

「まあ安心してくれ、レオナルドに念入りに調べてもらったところ、清姫は間違いなく僕たちの味方だ。怪しいところはないよ。」

「で、ですがフランスの時と全然性格が違いますけど……」

「あー、それは……」

「そこは私から説明いたしますわ。」

「あ、はいィ……」

 

 ダヴィンチちゃんの診察から戻ってきた清姫さんが、私の背中に引っ付きながらそう言ってきた。

 それは喜多ちゃんが登校の時によくやってくることと似てて、懐かしさと恐怖が並行疾走しててなんとも複雑な気分になっちゃう。

 

「確かに私は、フランスの時とは一つ違う点があるのです。お気付きではないでしょうが__私、さる方に“情”を抱いてしまったのです」

(凄いこっち見てるので気付いてます……)

「その方は私の宝具を見てカッコいいとい“ひ”

嘘ではなく心から“と”

そんな方は私、初めてでした“り”」

(最後の語尾特に変なのでは!?)

「ですので私、安珍様にも勝らずとも劣らないひとり様に深い想いを抱いてしまいました!」

(結局私に直接言うんですね…)

「いやぁ、バーサーカーって理性を失うと言うけど、こう言う形もあるもんなんだねぇ」

「ドクターなんか全体的に投げやりになってますよ!」

「何にせよ味方が増えるのはいいことさ、今回から彼女にも同行してもらおう。ほらぼっちちゃんも、顔面整えて真面目な話をするから。」

「あ、はい……」

 

 そう言いながらロマンさんが片手を上げると、そこにモニターが映し出された。そこには海の上に黒い点が映し出されており……

 

「今回の特異点、でしょうか?」

「その通り、1573年のとある海域だ、だがどうにも地形的な変化が起きてる。」

「なら、その海に行くんですよね?レイシフトはできるのですか?」

「もちろん!レイシフトは日々進歩している!少なくとも海の上には出ないはずさ!!」

 

 

 

 

 なんてやり取りをレイシフト前にカルデアで私達はやっており……

 

『はい……海の上ではなかったんですけど……』

「………」

 

 その直後に私達は大海原へと投げ出され……

 

『まさか雲の上に出るとは思わなくて……』

「……」

『えーと……ごめんなさい……』

 

 陸地にたどり着いた後に、ロマンさんは通信越しにマシュと清姫さんに問い詰められていた。

 

「私が着水の際に、宝具で衝撃を緩和して」

「私が変化して近くの島まで皆さんを運ばなければ」

先輩(ひとり様)が!死んでたんですよ!」

『悪気はなかったんだよぉぉぉ!!』

「あ、あの……怖かったですけど、私は大丈夫ですので気にしないでください。それよりも、今私達はどこにいるのかわからないので……」

 

 実際、私達はまず海で漂流するのを避けるためにこの島に辿り着いたけどどんな場所なのかわからない。なのでカルデアの方で調べてもらうしか方法が無い。

 

『そ、そうそうその通り!この島からは生体反応が確認されている。この特異点のことを知ってる人物と出会えるかもしれないぞ。』

 

 しかしロマンさんが都合よくそう言った直後、マシュと清姫さんから冷たい視線が刺さった。ロマンさん、すぐ調子乗るから……

 

『あ、すみません……まぁでも、真面目な話になるがぼっちちゃん。君は特に慎重に動いてくれ。礼装のおかげで多少の怪我は平気だが、帰還してそれが一気に開いたりもする、心当たりはあるだろう?』

「あ……」

 

 その話を聞いて、フランスで帰還後に包帯だらけになった体のことを思い出した。今でも思い出すと、二重の意味で痛い思い出だ。

 

「そうでした、私あの時気づかなくて……」

「い、いえマシュは気にしないで。私だって、痛いのは嫌ですから気をつけます。」

 

 マシュの心配そうな声を聞いて、私はつい苦笑いを浮かべながらついそう言ってしまった。するとマシュは一変して表情が変わり……

 

「が、頑張ります先輩!敵性体には指一本触れさせません!では早速、探索を行いましょう。前衛は私が、やーーーーっ!!」

 

 と、まさに気合の入った声を出しながらマシュは茂みの方へと前進していった。元気な姿を見せてくれたのは良いけど、と思った時だった。

 

「嘘吐き。」

「☆→4:°¥:\%7!?」

 

 ニュル、という音が聞こえてきそうなほど不意に後ろから清姫さんのそんな声が聞こえた。

 

「あ、いえあの、清姫さん!?」

「“清姫”とお呼びをひとり様。」

「あ、で、では清姫ちゃんで……」

「まったく、意外と強情ですわね。そこも素敵ですが……それよりも、痛いのは嫌でもそうしなければならぬならそうする。そんな嘘、すぐにわかります。」

「あ、えっとそれは……」

「私の逸話は覚えておいでで?」

 

 それは確か、本人がフランスでも話してたことであり………

 

「嘘を吐いて逃げた想い人を、灼いて殺しました。なので、私には嘘を吐かないでくださいましね?ひ・と・り・さ・まぁ❤︎」

「あ、はいぃ……気をつけます、清姫さんさ……ちゃん」

 

 コミュ症なので、その癖でつい嘘や誤魔化しをしがちな私が、過去一戦慄した瞬間だった。

 

 

 

 

 そんなやり取りの後、私達はマシュを先頭に茂みの先を深く進み始めた。今のところ、深いジャングルがあること以外特に変化はなく……

 

「あの光の輪、ここにもあるのですね……」

 

 上空を見上げながら私はそう呟いた。

 

『そうだね、正体はまだ不明だがそれは置いておこう。それよりもこの時代の異変だ、レイシフトして観測の精度が上がってわかったことだが、かなりメチャクチャだ。

海竜と風が異常で、ジャングルがあったり温暖な海域があったり、何よりどこまでいっても“大陸”らしきものが見当たらない。』

「大陸が無いって、そんな異常が起きてるということは……」

『ああ、間違いなく“聖杯”による異常だろうね。正確には、この時代にも聖杯があって手に入れた何者かの手でこの異常を引き起こしている。つまり、この特異点においてぼっちちゃんのやるべきことは……』

「聖杯の回収。聖杯の持ち主を見つけ出し、聖杯を回収して特異点を修復する、そういうことですよね、ロマンさん?」

「……ああ。」

 

 始まりこそ魔術や聖杯戦争のことは素人未満の私だったけど、二つの特異点を経て流石に流れは掴めてきた。

 

「だけど、まず誰が持ってるのか分からないですけど……」

「やはり、この時代に関係のある人物でしょうか?フランスのジル・ド・レェと同じように。」

『1573年の大海原に関係する人物がぁ……』

 

 清姫さんの問いかけに、ロマンさんはそう答える。すると今度は、マシュの声が聞こえてくる。

 

「だとすると、大航海時代の人物ではないでしょうか?」

「誰か、代表的な方でも?」

「有名なのはフランシス・ドレイクではないかと。人類史で最も長く、生きたまま世界一周を成した航海者。またの名を“海の悪魔(エル・ドラゴ)”」

「な、なんか凄く物騒な二つ名な様な……」

「はい、何しろ彼は“海賊”でしたから。イギリス公認の海賊である私掠戦の船長で、世界の海を制覇し『沈まない太陽』と呼ばれていたスペインを撃破。『太陽を沈めた英雄』としてイギリスの繁栄に寄与しました。」

「その、ドレイクさんが聖杯を持ってたりするのでしょうか?」

『そのぐらい話が早ければいいけど。』

 

 などと、そんな話をしていた時だった。

 

「ひとり様、アレをご覧ください。」

 

 清姫さんからそう声が掛けられ、彼女の視線の先へと見る。

 

「……生体反応なんて話じゃなかったですね。」

 

 そこには町と、大きな船が止まっていた。

 

 

 

 

 

 

 そして、その街へと私達が入り物陰から街の中を見れば……

 

「ヒャハハハ!ぶち殺せー!」

「オラァ!酒が足りねぇ、火薬も足りねぇ!早くもってこい!!」

 

 酒気に酔いどれだ海賊たちの乱痴気騒ぎが街中で行われていた。

 

(す、凄い物騒だなぁ……)

「こ、この時代の海賊でしょうか?なんとか協力者を得られればいいのですが……」

 

 マシュからのそんな不安な声が挙がるが、正直なところ厳しそうだなと思わずにはいられなかった。まともな会話すら厳しそうな気しかしない。

 

「誰かお探しかな?美しいお嬢さん方。」

「!」

 

 すると背後からそんな声が不意に聞こえ、私達は即座に振り返りながら構えた。声の主は緑色の髪をした細身の男性で、どこか爽やかさを感じる雰囲気とを声をしていた。

 

「構える必要はないよ、僕は敵じゃないからね。」

「マスター、この方はサーヴァントです!」

「その通り、でも言った様に敵じゃない。先にクラスを答えるなら“アーチャー”だ、ここまで言えば信用できるだろう?」

「……」

「あれ?まだ怪しいとでも?おかしいな……まあとにかく、人探しなら手を貸そう。この島を仕切っている人に合わせてあげるよ。ついておいで。」

「あ、えっと……どうしますかロマンさん?」

『……ついていこう』

「……?」

 

 私の問いかけに、ロマンさんは短くそう答えた。不思議とその声には影を感じたけど、その疑念を一旦脇に置いて、私達は緑髪のアーチャーさんの導きのまま海賊達の街へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

そして。

 

「今呼んでくるから、ここで待ってて。」

 

 とある店の前で、アーチャーさんに待つ様に言われた。

 

「おいおい、別嬪なねーちゃんが3人もいるぜ。」

「折角だ、酒でも注いでくれやへへへ……」

「あ、あわあわ……」

 

 まるで江ノ島でサーファーのお兄さんに声を掛けられた様な圧を感じて体全身が弾けそうになる。こんな調子で大丈夫なんだろうか、色々と不安が込み上がった時だった。

 

「グヘェ!?」

「げ、ヤッベ!」

 

 お店の入り口から何かが飛んできて、それが海賊の人だと気付いたのは囲んでいた海賊の人たちが逃げ出した後だった。

 

「乱暴だなぁ、船長(キャプテン)

「危ないからって止めるからさ、危ないかどうかはアタシが決めるんだ。」

 

 アーチャーさんの前をあるてくる人、その声は女性のものであり……

 

「で、アンタらがマスターとサーヴァント?ずいぶんときてれつあなナリをしてるじゃないのさ。」

 

 その人は海賊の身なりをしていて、顔の傷がとても特徴的な女性だった。

 

(この女性の人を、アーチャーさんはキャプテンと言ってた……つまり、この人がトップなんだ。)

「わ、私達はカルデアという機関の者です!」

「カルデアぁ?星見屋が何の用だい?」

(ッ!しかも、カルデアの事も知ってる感じなの?)

『………二人とも、慎重に交渉して。』

 

 ロマンさんも何か不安を感じるのか、そんなふうに私たち言い放った。そして、マシュが頷いて話を進めた。

 

「……ミズ・キャプテン。この海の状況はご存知ですか?」

「もちろん、何ともおかしいね。こんな海は見た事ない。」

「私達はその状況を修正するためにやってきました、協力をお願いできないでしょうか?」

「………」

 

 すると女性は私達をじっと見て、片手に握るジョッキを口に傾き恐らくお酒を一飲みしたら……

 

「ヤだね。」

「!?」

 

 お酒の滴を吐き捨てつつ、まるで反吐が出ると言わんばかりに私たちの申し出を切り捨てられた。

 

「な、何故ですか!?船長もこの海の状況はおかしいと!」

「ああ、確かにおかしい。だけどそのおかしいは異常って意味じゃない!こんな“面白おかしい”世界は他にはないってことさ!」

「な、な……!?」

「この海はおかしい!そして誰も、こんな海は見たことがない!!

だったらアタシ達が最初にこの海全てを奪い尽くす!それが海賊ってもんさ!

そうだな、野郎ども!」

「オォー!姉さん最高!!」

「よーし、飲み直すぞー!!」

「な、な、な……」

 

 船長と呼ばれる女性が周囲の海賊達にそう呼びかけたら、そんな歓声が響き渡る。そしてそんな様子を見て、私もマシュも思わず絶句してしまった。

 

「この人たち全く話が通じません!!」

「あ、その、待ってください船長さん!この海を直さないと、世界が滅んでしまうんです!信じられないと思いますけど、もう少し私達の話を……」

「うるさいねぇ」

 

 私がそう呼び止めた直後、船長さんの周囲の空間から砲身が伸びた。そしてそこから火が吹き、砲撃が私に向かってきた。

 爆破し直後に白い煙が立ち込める。

 

「海賊相手に世界がどうのなんて話してどうすんのさ。しかも長いし……だけど」

「……」

 

 煙が晴れれば、私の前には盾を構えるマシュと戦闘態勢となってる清姫ちゃんがいた。

 

「へぇ、いいね。頑丈じゃないか。」

「せ、船長さんの周り空間から、大砲が……もしかして、サーヴァント!?」

「失礼だね、足があるだろ?人を幽霊扱いするんじゃないよ。アタシはちゃんと生きてるし“フランシス・ドレイク”って名前があるんだ。」

「………」

 

 え、今この人が言った名前って、確かマシュが言ってた……

 

「ええぇぇェェェッ!!??」

「な、なんだい?」

 

 私もマシュも、思わず驚きの声を張り上げてしまった。だ、だってマシュから聞いた話が本当なら……

 

「お、男の人じゃないんですか!?」

「あ?ブチ殺すよ?」

「驚いてる場合ですか!」

 

 驚愕して固まってしまった私達をよそに、清姫ちゃんが前に出る。

 

「あの女性、まだ私たちに敵を……」

「やっちまいな、アーチャー。」

「アイ・キャプテン。」

 

 しかしそれも想定内なのか、船長さんがそう指示した直後に風切り音と共に清姫ちゃんの前にアーチャーさんの棒が襲い掛かる。

 

「き、清姫ちゃん!?」

 

 単なる棒振りとは思えない破壊と威力、足場に破壊痕を刻みながら清姫ちゃんは弾け飛ばされた。

 幸い、大した損傷は負ってない様ですぐさま瓦礫を払いながらアーチャーさんを睨みつけていた。

 

「……『敵じゃない』は“嘘”ですか?」

「本当さ、でもしょうがない。僕は彼女の船の船員(クルー)なんだ。大丈夫、殺すつもりは無いよ。ただ……船長がどうかは知らないけど。」

 

 船長さんが前に出ると、その両手に拳銃が現れた。そう、取り出したのではなく船長さんの意思に呼応する様に現れたということは……

 

「フランシス・ドレイクから再び魔力が…!」

「人間の筈なのに、なんで…?」

『……彼女は確かに人間で、フランシス・ドレイクなのだろう。つまりは“この特異点に関係する人物”……ぼっちちゃん、彼女は『聖杯』の所有者だ!』

 

 船長、即ちドレイクさんの胸元に金色の結晶、聖杯が現れた。

 

「ド、ドレイクさんが本当に聖杯を!?」

「聖杯?アーチャーが言ってたアタシのお宝のことかい?

 

何だい。つまりはアンタらも、このお宝狙いなんだね。いいねいいねぇ!話が早いじゃないかい!」

 

 まるで遊び場に入った子供の様に、ドレイクさんの声に楽しさが帯びていた。

 

『ぼっちちゃん、ある意味チャンスだ。彼女がこの時代を狂わせてる元凶なら、倒して聖杯を回収するまでだよ。』

「そ、そんな!ドレイクさんは人間で……」

『どっちにしろ、フランシス・ドレイクはやる気だ。戦う以外に道はない。』

「……」

 

 やるしかない、ロマンさんの言うように他の手段が思いつかない。それを察したのか、ドレイクさんが笑みを浮かべる。

 

「お、いいね。それなりに覚悟が決まったみたいだ。

 

さぁ、じゃあ殺し合おう、奪い合おう。都合よく弾も砲弾も、わんさか出てくることだ。

 

始めようか、海賊しかいないこの(おか)で。海賊だらけのこの海で、さぁ!!

 

勝つも負けるも、派手にいこうじゃないか!!」

 

 この特異点における最初の戦闘が幕をあけた。

 

 

 




ひとまず今回は此処まで、次回は来年に。
みなさん、良いお年をお迎えください。
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