ギターヒーロー、人理修復へと旅立つ   作:ヘル・レーベンシュタイン

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あけましておめでとうございます!仕事が修羅場ってて中々更新できませんでした……


第十七話

 

 私達とドレイク船長が相対し、目線を交える。その最中、ロマンさんの通信が挟み込む。

 

『分かってるね、ぼっちちゃん。彼女を倒し聖杯を奪取すれば、特異点は修復できる。相手が生身でもためらわないでくれ。』

「あ……躊躇うつもりはないですけど、倒すつもりもありません。あくまで話を聞いてもらう、その為に戦います。」

 

 そして私は、意を決して指示を下す。仮にも私はカルデアのマスターだ、サーヴァントに指示を下さないと始まらない。それは何度も特異点を超えたことで固まった私の意志だ。

 

「マシュは前衛で、アーチャーさんを突破して船長さんに接近!清姫ちゃんは後衛、船長さんの攻撃の対処のマシュの援護をお願いします!」

 

 そう指示を下したら、通信先からカルデアの職員さんとダヴィンチちゃんの声が聞こえた。

 

『ぼっちちゃん、指示できるようになってきましたね……それに結構正確な内容な気がします。』

『そうだね、清姫は炎を扱うから中距離型の戦闘スタイルだ。あの炎は範囲防御に使えて弾丸を防ぐことができる。

一方で近接に長けたアーチャーなんていかにも隠し球を持ってる可能性がある、なら防御に長けたマシュが対応するのが適任だ。』

『2つの特異点を修復した故の成長、ですかね?』

『当然!だが、今回からのぼっちちゃんはそれだけじゃあないぜ?』

 

 そう、この特異点に挑む前に私はとある事をロマンさんから教えてもらった。今回の戦闘でそれを試すことができるかもしれない。

 そう思った直後に……

 

「そらそら行くよォッ!」

 

 ドレイク船長の握る拳銃から、弾丸がマシュと清姫ちゃんに向けて連射される。

 

「下がりなさいマシュ!」

「はい!」

 

 二人がそう言葉を交えれば、マシュが下がり同時に清姫ちゃんが弾丸を吹き飛ばすかのように扇子を大きく横薙ぎに振るう。

 すると業火が発生し迫る弾丸全てを焼き払った。

 

「ヘェ、銃弾を灼き払うかい!!」

 

 そう感心の言葉を漏らす船長さんの頭上に、跳躍し迫るマシュが現れる。

 

「命を取るつもりはありません、全力で峰打ちします!」

 

 マシュは船長さんに向けて、盾の先端を刺突のような形で放ち込もうとする。

 

「……え?」

 

 だけど、目の前に現れたアーチャーさんがまるで風車の様な杖の動きでマシュの盾の進む向き(ベクトル)を逸らされてしまった。

 

「やぁキャプテン、無事でよか……イタイ!?」

「スカしてる暇があるなら追撃しな!」

 

 爽やかな笑みを浮かべてたアーチャーさんを、船長さんは蹴り飛ばしながらそんなツッコミを入れていた。なんだかんだ余裕がある二人、と判断すべきなのかな?

 

「魅せなよアーチャー、受け身ばかりじゃ私も部下(ギャラリー)も退屈するってもんだ。」

「横暴だなぁ、だけどそうせがまれちゃ嫌とは言えないね。」

「!」

 

 そんな不本意さをセリフを言っておきながら、アーチャーさんがマシュに向かって攻撃を放ってきた。

 アーチャーさんは杖を使った棒術を扱っており、まるで鞭のようなしなやかな動きでラッシュを放っていた。その爽やかな雰囲気とは違った、苛烈な攻撃を前にマシュは防御しかできない状態になっている。

 

(なんて手数の多さ……刃先がないからと侮っていました。それはつまり、どの部分でも打撃点となり得るということ!!

それを存分に活用しているこの人、凄く強い!)

「いいぞアーチャー!あの戦い方カッコいい!ありゃモテるぜ!」

 

 ふと周囲に耳を傾ければ、観戦している海賊の人達からそんな声が聞こえる。そして私の方へと向ければ、一変した声が向けられる。

 

「おいあの小娘何もしてなくないか!?恥ずかしくないのかよアーン?ただ突っ立ってるだけじゃサボりと一緒だぞッ!」

「ハァ……ハァ……」

 

 心臓の鼓動が早くなり、聞こえた声の影響で体も震えてくる。本音を言えば恥ずかしいし、あんな大人数の男の人たちに囲まれてて押し潰されそうな気持ちになる。

 だけど、だからと言って焦って余計な行動するのは禁物。寧ろここで焦って行動したら、それこそ必死に闘ってる二人に迷惑がかかる。ライブと同じ、常に演奏すればいいってものじゃない。重要なのは周りと合わせること、まだ苦手なことだけど結束バンドで重ねた経験を活かすときだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

【……魔術礼装、ですか?】

 

 それは、レイシフト前にロマンさんとした会話の記憶だ。

 

【そっか、説明してなかったか。一口に魔術礼装と言っても色々ある。ただ、君の場合はあの制服が礼装であり、どうやらギターも連結しているらしいんだ。】

【あ、あの服と私のギターが?】

【ああ、驚いた事にね。ひとまずギターのことは一旦置いておく。まずはあの服についてだがカルデアの技術を結集したもので、それを着ると魔術が使えない者でも使えるんだ。】

【え、魔術を!?】

【更に制服は着るだけで君の身体機能を強化してくれる、ただし前借りという形でだ。潜在能力の一時的な引き上げに過ぎないから、仕様には注意が必要だけどね。】

【あ……】

 

 その話を聞いて、私はフランスから戻った直後に身体中に開いた傷のことを思い出した。

 

【察しの通り、身体機能の強化が切れたからだね。普段は礼装に頼らない方がいいからね。痛いのは申し訳ないが……とにかく、そうした魔術を使うための、あるいは魔術による強化を行うための特殊な道具を“魔術礼装”と言うわけさ。

で、ここからが本題で、合わせて君のギターについてだ。まだ詳細は不明な部分が多いが、どうやらそのギターがキーになってる様だ。】

 

 そう聞いて、私はギターを握る手が強くなるのを実感する。私のギター、そんなことになってるんだ。

 

【君の着装する礼装に備わってる機能の多くは、自動で作用している。だが、ある“3つ”魔術は装着者の意志が必要であり、そして君の場合はその意思を乗せたギターの演奏が必要となる。】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その記憶を振り返ってた最中、不意に弾丸の嵐が迫っていた。

 それをすかさず清姫ちゃんの炎が灼き払ってくれた。

 

「つぅっ!」

「いい反応だねぇ、炎の嬢ちゃん!」

「卑怯者!戦えない人を狙うなんて!!」

「……戦えない人?そんなの寝言以下の理屈だね。この世にいるのは“戦う奴”と“戦わない奴”だけだろ?嬢ちゃんはどっちだい?」

 

 清姫さんの言葉を、船長さんはそう言って一蹴しつつ私と目線を交えていた。まるで推し量るような、品定めするような意思を感じつつ。

 

(あくまで話を聞いてもらう、その為に戦います。)

 

 なんて言葉を思い出せば、それが如何に甘い見積もりだったか痛感した。

 

「……そんなんじゃ、ダメだッ」

 

 私はギタリストなんだから、想いは言葉ではなく“ギター”で表現しなきゃいけないんだ!!

 

「隙を狙うなんて小賢しいのはやめです、無理矢理にでも突破しましょう!」

 

 そう言いながら、私は礼装を起動する意思を捻り出し、同時にギターの弦を弾いた。

 

(先輩、礼装を……)

「了解です、マスター!」

「いいねぇ、やっぱ薮は一発ぶち込むにかぎる!

だけど忘れんじゃないよ、私を守るナンパな騎士(ナイト)をッ!」

 

 アーチャーさんが俊敏な動きで、マシュとの距離を一気に縮めてきた。だけど、その間を清姫さんが乱入しその進撃を阻害する。

 

「行きなさいマシュ!」

 

 その刹那に思い出す、ロマンさんの言葉。

 

【使うべき時が来たら奏でるんだ、君の意思をギターの演奏と共に言葉に込めて。】

「私に力を、マスター!!」

【それがきっと、“ぼっちちゃん”が奏でる魔術の“呪文”となる。】

 

 私の脳裏に浮かぶのは、情熱的に曲を奏で歌い上げる“喜多ちゃん”の姿。その印象、そのイメージがきっと、私にとって“瞬間だとしても、更に一歩進む”意思を乗せるのに凄く最適だと思ったから。

 そしてその意思とイメージを、私は演奏と共に言葉にする!

 

「“礼装起動(プラグセット)”ー“瞬間強化(ブーステッド)”!!」

 

 私がそう叫んだ直後、マシュは赤いオーラに包まれれば超加速をして一気に船長さんとの距離を詰めたのだった。

 

(……おいおい、どんだけ離れてたと思ってんだい。それを一瞬で?なるほど、仲間を強くする魔術かい!)

「やるじゃないか嬢ちゃん!」

 

 船長さんの反応を見るに、どうやらこの奇襲は成功したようだ。なら、あとは船長さんを無力化さえできれば……

 そう、思ってたけど。

 

(なんだい、後ろからえらく嫌な感じ……あぁクソ、今は前を……)

「マシュ!」

 

 私は直感のまま指示した、そうせざるを得なかった。

 

「防御を、何かおかしい!」

 

 直後、船長さんとマシュの頭上からギロチンのような旋風が不意に落ちてきた。それを咄嗟にマシュは盾で防いだ。

 

「マシュ!!」

 

「く、う……これは、斧!?森の、方から……」

 

 マシュの盾には赤黒い斧が直撃しており、それは私たちの戦っていた場所の近場からその持ち主と思われる人物が現れた。

 

「コ……ロ……ス、コ……ロ……スゥゥゥ!!」

『あ、新たなサーヴァント!?』

 

 どうやらサーヴァントらしいけど、一体何者なのか少なくとも見当がつかない。そしてそれをじっくり考える時間があるわけもなく……

 

『マ、マズイ!』

 

 そのサーヴァントが、船長さんに向かって跳躍した。

 

『アイツ、ドレイク船長を狙っている!』

 

 その巨大なものと船長さんが激突する、そう誰もが思っていた。

 だけどその直前で、謎のサーヴァントの姿が消えていった。

 

「……き、消えた?一体何が……」

「気にしなくていいよ」

 

 そんな私たちの疑問を、アーチャーさんはまるで見透かしていたかのように答えてくれた。

 

「“アレ”はああいうモノ、全く引き際を良く弁えてる男だね。さて、キャプテン。掛けてもいいけど君、この娘達に命を助けられたよ?」

 

 アーチャーさんは、さっきからずっと沈黙している船長さんにそう問い掛けた。すると、数秒の間が経った後に、彼女の言葉が聞こえた。

 

「………………決まってる、呑むぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、それから少しの時間が経って酒場にて……

 

「負けた負けたー!そら持っていきなこの聖杯(お宝)をね!」

 

 船長さんがその大きなお乳を晒し、聖杯を私達へと出した。あまりに豪快だし、同じ女性としてもなかなかに目に余る光景なので色々と感じる部分があり……

 

(い、色々大きい……)

「ひ と り さ ま ?」

 

 思わずそれに目を奪われていると後ろからスッと私に接近し、肩に手を伸ばす清姫さんからの声に恐怖を感じて心の芯から冷え切っていった。

 その一方で、マシュが相手をしてくれており……

 

「えと、本当に受け取っていいのですか?」

「命の代わりに差し出すものとしちゃあ、安いくらいさ!」

「で、では失礼して……」

 

 何はともあれ、聖杯を回収したことで特異点も修復される……私達全員がそう思っていたけど特に変化は感じられなかった。

 

「あの、ロマンさん。なにも変化が起きてないような……」

『そ、そうだね……聖杯を手に入れれば特異点の修正が始まるはずなんだが……』

「もしかして、聖杯ではなかったのですか?」

「いや、それはまぎれもなく聖杯だ。ただ、君たちの求めているものとは違うだけって話だよ。」

 

 背後から現れたアーチャーさんが、そんな風に背後から現れつつそう答えてくれた。

 

「あ、アーチャーさん……あの、それってどういう?」

「聖杯が2つあるってことさ。」

(同時代に聖杯が二つ、そんな事あり得るのか?いや、そもそも時代を乱す聖杯はどこから……)

「あ、あの、なぜそういうことを知ってるのですか?」

「それはね、僕が主のいないサーヴァントだからだよ。」

(あ、それって確かフランスでモーツァルトさんも言ってたような……)

「そう、察しの通り聖杯から呼ばれたのさ。だな、それは船長が持ってたものからではない。なら“僕を呼んだ聖杯”がどこかにあるはずなんだ。」

「……嘘は言ってないですね。」

 

 清姫さんがそう言ってる以上、アーチャーさんの言葉が真実であることが証明された。つまり、本当にもう一つ聖杯があるのだと。

 

「なら、今後の方針は……」

「もう一つの聖杯を探す、ということになりますね…」

「話はわかった、ならアタシ達もついて行くよ!」

 

 と、今度はドレイク船長が私の背後から現れながらそう言ってきた。さっき見た豊満な胸を私に押し付けながら……このままだと溶けそうになってしまう……

 

「い、良いんですか?確か先ほど、この海を気に入ってると……」

「あぁ、気に入ってるよ?」

 

 と、マシュが船長を私の背中から剥がしながらそう聞くとシレッとそう答えてくれた。

 

「だけど私達は海賊だ、いつまでもこの地にいちゃ締まりがない。だから本当は、明日にでもここを出航する予定だったんだよ。」

「あ、え、じゃあ本当に私たちと協力してくれるということですか?」

「わ、訳がわかりません!だったら何故私達と戦うことにしたのですか!?」

「そりゃ面白そうだから!さっきはアンタ達と戦うのが面白そうだったから、今は仲間になるのが面白そうだと思ったからさ!」

(か、完全に思いつきで決めている!めちゃくちゃだ、この人……)

 

 本当にこの人達と手を組んでいいのかと、一抹の不安が浮かび上がってきた。実際の問題として、船がないと海に出られないから凄く助かるけど……と、悩んでると船長さんが肩を掴んできた。

 

「迷ってるなら酒を飲もう、な?気が付けば大体話が進んでるからさ!」

「いやあの、私未成年なので……」

「飲み仲間が増えたぞ、呑むぞやろうどもー!」

「オォォォォォ!!!」

「は、話を聞いてください!?」

 

 まるで意思疎通なやり取りができず、私達は担がれて飲み会の強制参加を強いられそうになってきた。

 

「ま、待ってください!一つ疑問が、なぜドレイクさんは聖杯を!?何処で手に入れたのか……」

「それ以上は聞かない方がいい、それをみんなに聞いてしまうと日が何度も傾いてしまうよ。」

 

 マシュのその疑問に、アーチャーは静止の声を差し込んできた。

 

「だから僕が掻い摘んで話すとね、彼女がこの時代に来た時点で既に世界は滅びの危機にあった。その危機を彼女は人の身でありながら解決した。

それ故に彼女は、この時代に元々あった聖杯に選ばれた。その後また、もう一つ聖杯が現れて僕達が呼ばれた訳だけど……ともかく、彼女達は僕や君たちが来る前に既に一度、この特異点を“救っていた”というわけさ。」

「……」

「……」

 

 そのあまりに荒唐無稽、出鱈目な武勇伝を聞いて私とマシュの脳内は無間大紅蓮地獄(時の止まった世界)に染め上げられたが、とりあえず共通の認識だけはあった。

 

(メチャクチャだなぁ、海賊!!)

 

 私達はそう思わずにはいられなかったのだった。

 

 

 

 

 

 そして、2日が経ち……

 

「オロロロロロロロロロロ………」

 

 私は海岸沿いで口からオーロラ(吐瀉物)を流れ出していた。その様子を見て、船長さんは鼻で笑いながら言った。

 

「なにしてんだい、情けない。初めて酒を飲んだ餓鬼じゃあるまいし。」

(いやその通りなんですが!?)

「早く酔いを覚ましな、今から出航なんだから。」

「今からって、当てもないのにどこへ?」

 

 私とマシュのその疑問に、アーチャーさんが答える。

 

「あてはあるよ、一昨日のサーヴァントを覚えているかい?彼が来た方向を探ったら船があってね、そこになんと海図があったんだ。

しかもその海図には、この島とは違う島への航路が載っている。」

「それと聖杯に何の関係が?」

「大アリさ、何せあの男は“聖杯の所有者”サーヴァントだからね!」

「え!?」

 

 まさかあの突然現れたサーヴァントが、まさかの聖杯との関係があるとは驚きだった。だけど、アーチャーさんの様子を見るに前から見当がついていたようだ。

 

「あのサーヴァントは何度も船長を狙ってきてね、勝てないとわかればあんな風に消えていく。それがどういう意味か君ならわかるんじゃないかな?

ねぇ、顔の見えない魔術師君?」

『……あぁ。』

 

 などと、アーチャーさんはロマンさんにそんな風に問い掛けてきた。そのやりとりはまるで、身内に対するノリに近い雰囲気があった。それこそ、ふたり(妹)がお父さんに絡んでくるような感じなのだけど……

 

(まさか、ロマンさんは前に三十路って言ってた。現代人なんだから、そんな訳ない……)

 

 私はそう考えを改める、実際ロマンさんの方は淡々と対応しているから単にアーチャーさんの悪ノリみたいなものなんだろう。

 なので、考えを改めてロマンさんの言葉に耳を傾ける。

 

『あれは空間転移、一種の瞬間移動で魔法の域に近い。大量の魔力を消費して初めて起こせる現象だ。』

「それを何度もとなると……」

『聖杯による魔力と考えるのが妥当だね。』

「アーチャーさんは何者かご存知で?」

 

 マシュがアーチャーさんにもう問いかけると、彼は頭を横に振った。

 

「だけど船長は既に会ってる、なかなかその時の事は話してくれないけどね。船長とは違う時代の男らしく、だから名前はわからないけど特徴が一つ。

“カギ爪の男”だそうだ。」

「カギ爪……」

『では当面の目標は“カギ爪の男”の捜索、そのためにまずは海図が示す島へ行く。ということになるか。

ぼっちちゃん、今後の方針はこれで決まりだね。平気そうなら、船に乗ってくれ。』

「あ、ぁ……はい、わかりま……」

 

 ロマンさんからの通信を聴き、そう返事しようとした時だった。両肩から船長さんと、乗組員の手が伸びてきた。

 

「……し、た?」

「船員がたりな〜い♪」

「具体的には水夫が足りな〜い♪」

「野郎共!水夫見習いが増えたよ、しっかりしごいてやりなー!」

「ええぇぇぇ!?」

先輩(ひとり様)!?」

 

 そんな鼻歌しつつ、私は全員の人達に担がれて船へと連れていかれそうになる。しかも、それは私だけでなくマシュと清姫ちゃんまでそれに巻き込まれている。

 

「勘違いしちゃいけないよ、働くのはアイツだけじゃない。」

「いやぁゴメンゴメン、船長には逆らえないんだ。」

「そうとも!人間だろうがサーヴァントだろうが、この船に乗る以上はアタシの命令は絶対だよ!」

 

 などと言われながら、私達はこれから乗る船の前へと連れていかれる。

 

「見な!これがこの海でのアンタ達の新しい家!

アタシ達の“黄金の鹿号(ゴールデン・ハインド)”さ!!」

 

 船長さんの指した先には、赤く美しい海賊船がそこにあった。その姿に、私達は目を完全に奪われていた。

 

「ゴールデン・ハインド、フランシス・ドレイク伝説の___」

 

その圧巻した姿に、マシュも思わずそんな言葉を漏らしてしまい……

 

「見たね?気持ちアガったね?じゃあ、働こっか?」

「え?」

 

 船長さんがニタニタと笑いながらそう言うと、すかさず船内へと私達は運ばれた。そして一室を蹴破り……

 

「まずは船室の掃除だ!男所帯だからクセェぞぉー?」

「………」

 

 その部屋の中は、まさに何一つ掃除がされてないと一目見てわかる様子だった。スターリーでバイトしてた時によく掃除はしてたけど、ここまで酷いことになった事はない。

 そしてすかさず、マシュは口を開けて抗議の声をあげる。

 

「私達はこんなことのためにいるわけでは……」

「オイオイ、同じことを言わせるんじゃないよ。新入りは下働き!それがこの船でのルールされ船室が終わったら次は甲板ね、頑張るんだよ〜」

「そ、そんな…………」

 

 抗議の声が通る事なく、船長さんはそう言い残して船室から出ていった。まあ、少なくとも私的には船員の人達と面と向き合う必要のない作業だから、比較的やりやすい作業だけど……

 

「あ、ひとまずやれる事をやりましょうか……」

「ハ、ハイ!」

 

 そう言って私は、吐き気を抑えながら床に捨てたれている衣類の一つを摘み持ち上げる。すると鼻にまゆで唐辛子を突っ込まれたような悪臭に襲われ、それが限界だった。

 

「オロロロロロロロロロロ………」

「先輩ー!?」

「ひとり様にこの仕打ち、もう許しません!!」

「き、清姫さん炎はダメですー!!」

「船が動くぞ、荷物抑えとけー!」

 

そんな声が聞こえた直後、床に散らばってた衣類が私達に津波の如く襲い掛かり、まさに現場が修羅場と化した。

 

「む、無理ですドクター!強制レイシフトをー!!」

『が、頑張るんだ三人ともー!』

 

 こうして、私たちの初めての航海が始まった。二つの聖杯、協力者が海賊という今までにないケースで戸惑いだらけ。こんな調子でどうなるのか……私の胸の中は不安と同時に、何処かワクワクするような心地が走っていたような気がする。

 と、衣類の海を掻き分けた先に、フォウさんが衣類に鼻をつけて嗅げば……

 

「___」

 

口をパックリと開け、煌めく星々と同化しているかのような表情に変わったのだった。

 

 

 

 

 

 

 




今回はここまでです、次回をお楽しみに
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