ギターヒーロー、人理修復へと旅立つ   作:ヘル・レーベンシュタイン

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今回から本格的なストーリーが始まります。思ったより長い内容になりそうで、分割しての投稿になりそうです。


10/12 一部修正しました。


特異点F 炎上汚染都市 冬木
第二話


「____」

 

 暗転から視界が晴れ、私の目に映ったのは暗がりの街並みだった。

 

「………っ!!ぐうぅっ!」

 

 まるで長い滑り台から降り立った様な急降下、私の身体にはあの白い謎の生き物がいて、咄嗟に両腕に包み込んで衝撃を軽減した。

 危なかった、このままだったら私の下敷きになるところだった。

 

「フォウ……」

「ハァ……ハァ………ハァ……」

 

 肩で息をする私に、心配そうにそう鳴き声を出す。そして周囲を見渡せば、まるでさっきの管制室の様に半壊した街並み。だけど錆びれた看板の表記は日本語で、よく見れば建物もどこか見慣れた様な構造の建物が幾つかあり、ここが日本だとすぐに理解出来た。だけど私の地元ではない……いや、それ以前になんで?

 

「さっきまで、カルデアにいた筈なのに……」

 

 そう呟いた直後、腕についてあった通信機から音が鳴ってロマンさんの声が流れた。

 

『もしもし!こちらカルデア管制室だ、聞こえるか!?』

「も、もしもし!ロマンさん、聞こえますか!?」

 

 通信機に向けてそう返事する私、直後に近くから小さな瓦礫が落ちる音が聞こえた。

 

『もしもし!その声、ぼっちちゃんか!?』

「は、はい……」

 

 返事をしながら、音が聞こえた方へと向く。

 

『僕の声が聞こえるかい?聞こえるから今すぐに……逃げろ!!』

 

 ロマンさんの声を聞きながら見上げれば、そこには全身が黒い髑髏の仮面をつけた“ナニカ”が私を見下ろしていた。

 

「ッ!?」

 

 殺される。脳裏にその言葉が浮かび、恐怖が全身を包めば、即座に謎の白い生き物を抱えながら全力でそこから距離を取った。

 背後から跳ぶ様な音が聞こえたが、振り返る余裕なんてない。直後、背後から爆音が聞こえた。何これ……工事現場でたまに聞こえる音でも、これほどの衝撃と音なんて聞いたことない。さっきの髑髏の人が攻撃してきたのはなんとなくわかるけど、こんなのアリ!?

 

「ロ、ロ、ロマンさん!何が起きてるの!?訳がわかりません!!」

 

 助けて欲しい、その一心で通信機の先にいるだろうロマンさんに向けて私はそう叫んだ。

 すると、音と同時に通信機の画面にマップが浮かび上がった。

 

『今、安全なルートを表示させた。その通りに進めばあの敵性生物(エネミー)から逃げられる筈だ。そして、状況説明だね。走りながらで良いから、よく聞いて欲しい。』

 

 私は即座にそのルートに従う様に走り、そしてロマンさんの話に耳を傾ける。エネミーと言ってたことは、やはり私の命を狙う存在なのだと察した。

 でも、そもそも何で命を狙われないといけないの?私自身には少なくとも心当たりはない。なら、やはりカルデアという組織に原因があると思う。

 

『さっき部屋で話した通り、カルデアは国連承認の組織だ。そして、何を目的とした組織であるかというと『人類の未来を観測、そして保証する』ことだ。』

「そ、そんなこと…‥できるわけ……」

 

 常識的に考えれば不可能なんだろうけど、ふと偶然見つけた陰謀論系のサイトを暇つぶしで眺めたときに、政府には秘密裏に確実に未来を当てる預言者がいるとか書かれてた気がする。

 流石にそれと全く同じということはないだろうけど、国のトップであれば世界規模に未来を知れることは大きな利点になるのは確かなのは流石に私でもわかる。

 

『できるんだよ、科学と魔術を使うことでね。魔術の存在は君にはあまり身近ではないから、俄には信じられないだろうけどあるという前提で聞いてくれ。』

 

 そして、私の予想を肯定するかの様にロマンさんは食い気味に話を続ける。科学と魔術、前者はともかく後者はあまりに荒唐無稽で動揺してしまう。

 だけど、ロマンさんの言う通りその疑問に囚われると話が進まないから耳を傾け続ける。

 

『カルデアはそうやって未来を観測し続けていたが、突如2016年を境に未来の観測できなくなった。その意味は即ち“人類の滅亡”だ。』

「____」

 

 私は言葉を失った、それはさっきまでカルデアスがアナウンスしていたことの裏付けとしてほぼ確定的なことだから。

 

『当然、我々はその原因を探り一つの異変を見つけ出した。その異変は11年前、西暦2004年日本のとある地方都市。名は「冬木」、君はその異変の中にいるんだ!』

 

 

 

 

 

 

 暫くして私は、半壊している大きな屋敷に身を潜めることにした。冬木……あまり馴染みのない地名だ。

 正直、実感が湧かない。だってその話が本当なら、私は2004年と言う過去に戻ったと言うことになるのだから。いや、それより……

 

「人類の、滅亡………」

 

 その言葉を出すと、胸がチクリと痛む。それを和らげる様に、そして誤魔化す様にギターケースを胸に抱き寄せる。

 もうこれだけでお腹いっぱい、こんな絶望的な状況に陰キャな女子高生に何か出来るわけもないのに、神様は何を考えてるの?

 

『我々はその場所を“特異点F”と定め、その調査を行うために、霊子転移(レイシフト)と言う実験を行うことにした。具体的には人間を霊子化して“過去”に送り込んで調査を行うことだ。だが、君も現場を見た様にあの爆発が起き、結果としてぼっちちゃんだけがレイシフトしてしまったんだ。』

「………過去に送り込むと言うことは、タイムスリップしたと言うことですよね?正直、実感湧かないです。可能なんですか、そんなこと?なんか、ネットでの情報で科学的に過去の遡りは不可能と聞いたことある気がするするのですが……」

『難しい話になるが、君のいる冬木は通常の時間軸から切り離されている。その事象を特異点と言ってね、通常の時間旅行よりもだいぶ簡単なんだ。それでもコフィンなしで、よく意味消失に耐えてくれたよ。どうだい?ここまではわかってもらえたかな?』

「…………ご、ごめんなさい、ほとんど理解できてません。」

『…………』

 

 通信機越しで、ロマンさんがポカンとしているのが容易に想像できる。多分、精一杯、素人以下の私にも理解できる様に砕きに砕いた説明なんだろうけど……

 重ねてごめんなさい、だって私学校の成績悪いし……喜多ちゃんに教えてもらってようやく赤点回避できる程度の学力しかないので………ううっ、自分の頭の悪さに自己嫌悪しちゃう。

 

『いやしかし!ここは理解してもらわないと……』

「………あっ」

 

 戸惑ったロマンさんの声を聞いた直後、ふと思い出した。さっき私だけレイシフトしたと言ってたけど……

 

「ロマンさん、マシュさんはそこに居ますか?」

『え?いや、そういえばマシュの姿は見当たらないな。』

「………なら、レイシフトして此処にいるかもしれませんよね?助けに行かないと……」

 

 ただでさえあんな致命傷を負ってたんだ、例え手遅れだとしてもせめて確認に行かないと。戦える力なんてないけど、自分勝手に管制室に来たのだから私にはその責任があると思ってそう決意した。

 

『…………その通りだ。』

 

 ロマンさんは、少し砕けた口調でそう返事した。ひとまず、この意見は承諾されたと思っておこう。

 問題は、どうやって外に出るかだけど……そう思った時だった。外から足音が聞こえた。

 

「!!」

『敵性生物が近付いてる!ぼっちちゃん、今すぐに……』

「ロ、ロマンさん!?」

 

 通信が切れ、同時に玄関の扉が壊される音が聞こえる。床が軋み、死が近づいてくる。私は口を塞ぎ、身を丸めて部屋の端でジッとする。

 

「____」

 

 瞬間、私の背後からデカい影が揺らめいた。だけど、それは想定の範疇。振り下ろしと同時に私は髑髏の仮面の振り下ろしとすれ違う形で回避し、逃げ出した。

 

「プハッ!」

 

 よし、このまま逃げ出そう。そう思った直後、私は絶望した。

 

(もう、一体?)

 

 目の前から、もう一体の髑髏の仮面が現れた。動揺する私に避ける余裕なんてなく、サッカーボールの様に蹴り飛ばされた。

 

「ガハッ、ゲホッ!」

 

 私、まだちゃんと生きてるのかな?お腹が無くなった気がするし、口から血が止めどなく出て苦しい。ああ、そうだよ。ただでさえ運動音痴な私が、避けたりするのだって精一杯なのに、二体から逃げ出すなんて無理に決まってる。

 何にせよ、もう体に力が入らない。二体の髑髏が私に近付いてくる。

 

 

【マシュ、さん……なんで私のことを先輩と呼ぶんですか?】

 

 その最中、私の記憶に過ったのは所長さんの説明を受ける前のあの会話だった。

 

【ああ……気を悪くしたらすまないね。彼女にとって君くらいの年頃の人間は、みんな先輩なんだ。】

【は、はぁ……そうなんですね。】

 

 レフさんの説明を聞いても、やはりよくわからない。別に気分は悪くしたなんてことはないけど……

 

【でもはっきりと口にするのは、初めてじゃないかな?私も不思議に思っててね……マシュ、なぜ彼女が先輩なんだ?】

【理由……ですか。そうですね……後藤さんは今まで出会った人の中で、すごく影を感じます。ですが、不思議とそれを全く脅威に感じません。なので、敵対する理由が皆無です。】

【え、えぇ……】

 

 ……改めて振り返っても、変な理由だと思う。

 

「フォウ!フォーウ!」

 

 髑髏の巨腕が振り上げられる姿が、ぼんやりと見えた。ああ、マシュさんの言ってたことは正しいと思うよ。脅威なんて感じるわけない。

 

「………」

 

 こんな陰キャに、何か奇跡を起こせるわけないんだから。

 

 

 

 

 

 

 

「ヤアァッ!!」

「ッ!?」

 

 巨腕に潰されると思った刹那、聞き慣れた声と共に鉄の轟音が鳴り響いて髑髏の仮面を吹き飛ばした。直後、もう一体も盾から伸びている刃で弾け飛ばされていた。

 突如そこに現れたのは、盾を持った騎士の様な女の子だった。いや、正確には私の見覚えのある女の子がそんな格好をして現れたのだ。

 

「ま……マシュ……さ……」

「ご無事ですか、先輩(マスター)?」

 

 呼びかける私の声を遮る声、それはとても凛として美しさすら感じた。

 

「今なら、印象的な自己紹介ができると思います。」

 

 その姿をよく見たい、私は血で沈む体をゆっくりと起こし、片膝をつきながら彼女を見上げた。

 まるでそれは、運命の出会いを果たしたかのように……

 

「マシュ・キリエライト 貴女の英霊(サーヴァント)です。」

 

 

 

 

 

 

 あの時、手を握った時のマシュさんは弱々しい儚い姿だった。だけど今の彼女は、生気に溢れていて、盾も鎧もまるで自分のものの様に振るっている。

 まるでそれは、架空の物語に出てくる様な『英雄(ヒーロー)』の様だったから。

 

「さ、さーゔぁんと?マシュさん、それって一体……それに、その格好……」

「はい、先輩。私はサーヴァントになった様です。」

「ご、ごめんなさい、私その言葉聞くのは初めてで……」

「そうでしたか。ですが、説明よりまずは傷の治療を行いましょう。」

 

 マシュさんはそう言いながら、盾の中……え、盾の中?とにかくそこに手を突っ込めば、タオルの様なものを取り出して私の体を包み込んだ。

 

「治癒魔術の巻子本(スクロール)です、これで先輩の怪我が治るはずです。」

 

 そこから発する光が、私の体から生じる痛みを鎮静させた。これが、もしかしてロマンさんが言ってた魔術なのかな?ひとまずこれで、出血死からは逃れたみたい。

 

「では先輩、失礼します。」

 

 マシュさんはそう言いながら、私の体を抱えた。そう、まるで結婚式で新郎さんが新婦さんを担ぐ、俗に言う“お姫様抱っこ”というものを。

 それを実行しているマシュさんは、ものすごく誇らしげな顔をしていた……この子、こんな顔もするんだ。加えてギターと謎の生物までいて持ちにくいだろうに、難なく持ち上げている。でも、何でこんなことをわざわざ……

 

「えっと、マシュさん……なんで……」

「申し訳ありません、急いで此処から移動しなければなりません。もう一人、合流しなければならない人がいます。」

「もう一人?」

「ええ、先輩も知ってる人です。」

 

 私の知ってる人?マシュさんも知ってると言うことは、カルデアの人だと思う。

 まさか、ロマンさん?いや、あの人は通信の時に管制室と言ってたはず。それにさっき、レイシフトできたのは私だけと言う話だった筈だし。もしかして、ロマンさんがまだ認知できてない人が居たのかな?緊急事態だからそうなのかもしれないけど……そう考えを巡らせてると、マシュさんの口からとんでもないことが発される。

 

「此処から遠いです、なので飛びます。」

「…………え?」

 

 私がその言葉を発した時点で、さっきまでいた屋敷が黒胡麻くらい見えるくらい小さくなっていた。窓越しに空見上げればふと、空には鳥が飛んでいた。その鳥がいるくらいの高度までに、いつの間にか私とマシュさんは居る。

 

「あ、あ、あのあのあのあのマシュさん一体何がァァァッ!?」

 

 私が動揺している最中、背後にマシュさんの持ってる盾が現れてそこにマシュさんが足を付ける。

 そしてジャンプ台の様に蹴り上げれば、私たちはミサイルの様に空を切りながら発射していく。

 

「アババババババババ!?」

「顔面を整えてくださいマスター、舌を噛みますよ!!一旦建物の屋上に着地します!衝撃に備えてください!」

「や、やり方がわからな……」

 

 最後まで言うことは叶わず、私たちは屋上へと着地した。私は全身筋肉痛となり、横たわることしかできなかった。

 

「先輩、起きてください、先輩!」

「……ムリでず」

「お願いですから、起きて急いであれを見てください!」

「あ、あれを見てって……」

 

 ひとまず死ななかっただけ良しと考え、筋肉痛の体に鞭を打って起き上がる。そしてマシュさんの視線の先に見ると、言ってた様に見覚えのある人物が走っていた。

 

「あ、あれは所長さん!?髑髏の仮面に追いかけられて……」

「ええ、ですのではやく……」

「マシュさん、さっきのもう一度お願いします!」

「……はい!」

 

 マシュさんは察してくれたのか、即座に頷いてくれた。そして、所長さんは髑髏の仮面に追いつかれそうになっており……

 

「はぁ……どうして……どうして……助けてレフッ!!」

「やあァァァッ!」

 

 髑髏の仮面との接触直前に、マシュさんの飛び蹴りが炸裂した。私は流石に2度目と言うのもあって、口をしっかりと防いで衝撃にも耐えた。

 そして、所長さんは私たちを認知できた様で……

 

「………!うそ、マシュ……貴女、その姿……サーヴァントじゃない。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして暫くして、私たちは場所の移動をしつつ状況の整理をしていた。

 

「……そう、つまり。貴女達も冬木(此処)にレイシフトしてしまったのね。よく聞きなさい、後藤ひとり。残念ながら、今の私たちに元の時代(カルデア)に帰る手段はないわ。」

(……やはり、そうなんだ。けど“今の”私たちってことは……)

「だからこそ問題は、これからのことなんだけど……よりによって管制室で指揮してるのがロマニ?レフはどこに行ったのよ……」

(さっきからレフさんの名前を出してるけど、もしかして所長さん……いや、やめておこう。言及したら、また説明会の時みたいに怒られる気がするし……)

「まあいいわ、幸い私たちにはマシュがついてる。」

「私ですか?」

「理由はわからないけど、今の貴女はサーヴァントでしょ?なら……」

「あ、あの……」

 

 やはりどうしても気になったので、私は食い気味にそう言いながら手を上げた。

 

「その、サーヴァントってどう言う意味ですか?」

「はぁ?」

「あ、ごめんなさい何でもないです。私のことは無視してください……」

「ちょ、ちょっと自分から口を挟んでおきながら引かないでよ。良いわよ、説明してあげるから聞きなさい!」

 

 そういって、所長さんは仕方ないと言わんばかりの顔をしながらサーヴァントというものについて説明してくれた。

 魔術世界に関してはよくわからないけど、要するに魔術師達の中に“英霊召喚”という技術があるらしい。それによって召喚された過去の英雄達を“サーヴァント(使い魔)”と呼ぶらしい。言うなれば、過去の偉人達を兵器のように使うことを目的としているとのこと。

 

「その、もしかしてですけど卑弥呼やヤマトタケルとかもそのまま召喚可能なのですか?」

「本来なら不可能よ、だから可能にするために英霊を7つのクラスに分類して召喚するの。クラスという一側面に特化させることで、召喚のハードルを下げるというわけ。」

(あ、所長がノってきました…)

 

 所長さんの説明として“剣士のセイバー、槍使いのランサー、弓のアーチャー、騎兵のライダー、魔術師のキャスター、暗殺者のアサシン、そして狂戦士のバーサーカー”に種別が分かれるらしい。

 例外のクラスもあるらしいけど、流石に省略してくれた。正直助かった、これ以上は覚えられる自信がない。あれ、でも……マシュさんはどれに該当するんだろう?7つのクラスのどれにも当たらない様な気がする。いや、それ以前に………

 

「あの、所長さん……なんでマシュさんはサーヴァントになってるんですか?私と同年代なんだから、過去の偉人の枠組みに入るとは思えないのですが……」

「…そうね、流石に疑問でしょう。マシュは“デミ・サーヴァント(半英霊)”よ。」

「……デミ・サーヴァント?それはどういう……」

 

 また新たな単語が出てきて詳しく聞こうとした瞬間、通信機から音が出てきた。

 

『ぼっちちゃん、聞こえる?ロマニ・アーキマンだ、返事をしておくれ!』

「……」

 

 ロマンさんからの通信が入り、そのままマシュさんと所長さんと合流したことを説明した。

 その後、所長とロマンさんの少ししたやりとりを終えれば、所長さんが指示を下してくれた。

 

「それじゃ街の探索を始めましょう。」

「えっと、この異変の原因を探るんですよね?」

「はい、その通りです先輩。2004年の本来の冬木にこの様な壊滅があったと言う記録はありません。その為、本来あり得ない壊滅を引き起こした原因がある筈です。その原因を突き止めれば、私たちが帰れる手段が見つかるかもしれません。」

 

 確かに、2004年にこんな大災害が日本内起きたとかそう言う話はあまり聞いたことがない気がする。ならその原因を見つけるのは道理と言える気がする。

 ……そういえば。

 

「マシュさん、なんだか状況慣れしてますね。」

「……」

 

 私はあんなに取り乱していたのに、マシュさんは動揺する顔を見せることなく髑髏の仮面達を撃退していた。こういう荒事、慣れているのかな?だけど、彼女は顔を赤らめながら答えた。

 

「その、恐縮なのですが……先輩と再会できたので、安心しています。こういう状況になって、実はものすごく怖かったので……先輩が居てくれて、助かってます。」

「あっ、うへ…………うへへへ、そんな。私大したことしてないのに……」

「マシュ、この手のタイプはすぐ調子に乗るってことを覚えておきなさい。」

「で、ですが……先輩のこういうところは可愛いと思うのですが……」

「もう、貴女もこんな状況なのに……後藤ひとり、聖杯戦争の説明するからその腑抜けた顔を正しなさい!」

「あ、は、はい!」

 

 ついニヤけてしまってた私は、所長さんからの鋭い言葉で意識が鋭敏になる。なにやら聖杯戦争という、明らかに穏やかじゃない言葉が。

 

「この街の破壊は、噴火や土砂崩れみたいな災害ではなく人為的なもの。なら、聖杯戦争が原因と考えるのが妥当だわ。」

「聖杯戦争って、もしかして文字通り戦争ですか?戦争なら確かに、この被害は納得ですけど……」

「マシュ、貴女のイメージしてる戦争はおそらく国家間や世界規模のものでしょ?他国ならともかく、2004年の日本にそんな戦争が起きてたかしら?」

「あっ……確かにあり得ませんね。それなら……」

「ええ、聖杯戦争はさっき説明した七騎のサーヴァントを召喚し戦わせる魔術儀式よ。」

「何のために闘わせるのですか?」

「当然、聖杯を獲得するためよ。ねぇ後藤ひとり、聖杯くらいは知ってるでしょ?」

 

 突然所長さんから問い掛けられ、ついビクビクと身を震わせながら私は答えた。

 

「………名前は、一応、聞いたことある気はします。」

「はぁ……貴女ね、歴史のテスト何点取ってるのよ?」

「あ、赤点ギリギリです………」

「よくわかりました、貴女はカルデアに帰ったら私直々にみッッッちり世界史の補習を行います。マシュ、メモしておく様に。」

「は、はい!」

 

 あ、終わった。カルデアにもどっても地獄になるのが確定した。

 

「聴いてください 新曲 【行き着く先はどこまでも地獄】」

「あ、先輩の演奏を聴くの楽しみにしてました!」

「何勝手に演奏を始めようとしてるのよ!聖杯の説明するからギターをしまいなさい!」

「あ、はい……」

 

 私とマシュさんは、しゅんとした表情をしながらギターをしまった。そして所長さんが一度咳払いをし、聖杯の説明が始まる。

 

「聖杯とは、かの救世主(キリスト)が持っていたとされる聖遺物のこと。流石に聖杯戦争に使われるものはそれとは別物だけど、この二つには共通点があるの。それは“願いを叶える力を持つ”というもので、その力を掌握するために召喚されたサーヴァント達は闘うわけ。」

「……ということは、もしかしてこの冬木に?」

「ええ、2004年の冬木に聖杯戦争があったことは確認されてるわ。」

「っ!まさか、冬木に異変をもたらせたのは聖杯が原因ですか!?」

「ええ、おそらく聖杯の力によるもの。つまり聖杯の所有者を見つけ、そいつから聖杯を取り上げればこの特異点は消滅し、私たちは元の時代に戻ることができるわ!」

「おぉーー!!」

 

 私とマシュさんは、所長さんの力説に感心して拍手してしまった。すると所長さんも、誇らしげな顔を浮かべる。マシュさんもだけど、案外所長さんもいろんな表情をするんだ……

 

「このくらい当然よ、伊達に……」

 

 誇らしげな顔のまま話を続けようとしたら、突如音が鳴り響いた。

 

「キャッ!な、何の音よ!?」

 

 その音に驚いて、所長さんが私の背中に隠れて腕を掴んできた。

 

(あ、案外怖がりなのかな?なんか意外と、この人は小動物的可愛さがある様な気が……)

 

 私がそう思い始めてきたら、今度はドラムを叩いたような音が背中から聞こえてきた。どうやらマシュさんが、盾を叩いた様だ。

 

「ただの瓦礫が崩れる音です、出発すべきかと。」

「は、はひ………すみません。」

 

 笑顔でマシュさんはいうけど、そこには陽キャらしい輝きが無くて怖い。笑顔は本来攻撃的云々って、ネットで見た気がする……

 と、思った直後にふと気になることが浮上してきた。

 

「あ、あの……そういえば、髑髏の仮面の人たちもサーヴァントなのですか?人間業とは思えないことを結構してたと思うのですが……」

「確かにサーヴァントの反応はありましたが、断定はできませんね。本来のサーヴァントは……」

 

 などと、マシュさんと話しているときに……

 

「あら、まだいたのですね生き残りが。」

 

 背後から、女性の冷たい声が聞こえた。

 

 

 




今回はここまでです、次回から本格的な戦闘開始となります。
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