ギターヒーロー、人理修復へと旅立つ   作:ヘル・レーベンシュタイン

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今回は少し短めです


第二十二話

 

 

 私達が黒ひげさん達と対面している最中、ロマンさんからの通信が差し込む。

 

『ここからは小細工無しの総力戦だが、油断できないぞ。どんなにふざけた形振りをしていても相手は黒ひげ、世界に名を轟かせた最強最悪の海賊なんだから。』

 

 私は頷く、実際奇抜な人という印象が強いが同時にあの船長さんを圧倒した人なのだから油断してはならないと私も思う。

 そして、マシュから聞いた話。曰く海賊の黄金時代に駆け抜けた大悪党、それは人類史に刻まれるほどの大きな活躍だったとか。そんな恐ろしい人物が敵として立ち塞がる。

 

「さて、待たせたね髭。あのアーチャーが厄介だったが、ようやくここまでこれたよ。」

「あのアーチャーだと?………アン氏の事か……」

 

 船長さんがそう言った直後。黒ひげさんはまるで、私が臨時収入でバイトを辞めれると確信した私の様な黄金の輝きを放ち……

 

「アン氏のことかーーーーーッ!!!」

 

 そんなどこか見たことある様な叫びをしていた。

 

「あの……なんで悪名高い人が、あんなノリしてるんでしょうか?」

『気にしない方がいいんじゃないかなぁ……』

 

 とロマンさんと話をしていた後に、黒ひげさんの首元にカトラスの刃先を小さな女の子が突きつけてきた。

 確か、倒されたアーチャーの人とよく一緒にいた様な……とにかく、その子が黒ひげさんに語り掛けている。

 

「ふざけないで船長、じかんがないんだ。」

「メアリー氏は心配性ですなぁ……安心しろ、テメェの命はちゃんと使い切ってやる。」

(ッ!?)

「……そう、ならいいけど。」

 

 

黒ひげさんは、表面上は余裕の感じさせる笑みを浮かべながらそう言っていた。だけど、メアリーという女の子に語る言葉の後半が、どこか悪感があって私は全身震えてしまった。

 

「では拙者はBBAとタイマン張りますんで、メアリー氏と“ヘクトール”氏は他の奴らの相手をお願いします。」

(……ヘクトール?)

「おっと船長、まいったね……」

 

 あのランサーの人、そんな名前なんだ。なんていう私の感想は、どうやら呑気なものだったとマシュの反応が明らかに動揺を生んでいた。清姫ちゃんがマシュへと問い掛けている。

 

「ヘクトール?あのランサーの真名はヘクトールなんですか!?」

「有名なのですか?」

「ギリシア神話における英雄で、トロイア戦争におけるトロイア側の総大将です。そしてあのアキレウスのライバルにして、アキレウスの死のきっかけを作った人物でもあります。」

「失敬、つい口が滑ってしまったでござる。」

「いいですよ、いずれバレてた。」

 

 真名が判明したのに、どうやらまだ余裕は失われてない様子だ。

 

「船長後ろに、タイマンに乗る必要はありません。」

「かまいやしないさ、マシュ。タイマンってなら話が早い、お前達に大英雄様は任せるよ。」

「ドゥフフフ、ノリが良くて助かりますなァ!」

「じゃあ早速、おっぱじめるとするか!!」

 

 そしてついに開戦、両者の攻撃が炸裂し互いの船上に余波が届く。

 

「ひっ!?」

「始まったな。巻き込まれ様に端に移動するぞ、マスター。」

 

 ビビる私にオリオンさんがそう言い、同意して移動しながらマシュ達の様子を見る。

 

「やぁあああ!」

 

 マシュとアステリオスが、同時にヘクトールさんへと突撃する。しかし、迫る盾と斧を一切慌てる様子もなく、槍を旋回させてその矛先を逸らしていく。

 

「怖いねぇ、怪物のは喰らえない。」

(二人同時にいなした!?なんて技量……)

 

 ならばと、その背後から清姫ちゃんからは炎を、エウリュアレさんが矢を放つ。流石にこれならば……

 

「おおっと」

 

 そんな甘い幻想は、ヘクトールさんの槍捌きで砕かれる。槍を回転させる、それだけで迫る炎と矢を無傷で捌いていた。

 この攻撃には、私とマシュ達ですら言葉を失っていた。

 

(槍の回転でかき消した!?これが、大英雄ヘクトール!!)

 

 本当に私たちでこの人をどうにかできるのか?そんな不安が、私の胸裏にジワジワと染み込んでいた。

 

 

 

 

 

 

 その一方でアーチャーさんとメアリーさんは対決しておりこちらはあまり大きく目立ったところはない。少しメアリーさんから不安な動きはあるものの、順調にアーチャーさんが勝てそうな流れをしていた。

 そして、船長さん。カリヴァン砲を展開し、黒ひげさんへと放つ。

 

「オウ、盾になって死ね。」

 

 だけど、その砲撃を前に黒ひげさんがそう言い放つ。その直後、人型の様な影が蠢き現れる。それはよく見たらところどころ海賊の様な風貌をしており、その人たちが砲撃を受けていた。

 つまり、人を盾にした防御ということでありまさに黒ひげさんの非情さをよく表したやり方だけど……

 

「ハッ!」

 

 船長さん、黒ひげさん互いにそれを歯牙に掛けることなく再び激しい砲撃、銃撃戦を繰り広げる。

 思わずその圧倒的な破壊と、煌めきに唖然と口を開けてしまう。同じくその光景を見守るオリオンさんも口を開く。

 

「あいつら本気だな、船の損傷お構いなしだ。ただ、気になるが髭の使ってるアレ()はなんだ?サーヴァントじゃねぇだろうが……」

『部下の亡霊だろう、無限に湧き出る亡霊が彼の武装。船長の無限の弾丸の様に……もはやこの戦闘はタイマンなんてものとは言えないね。鉄火と亡霊、物量のせめぎ合い。一対一の海戦だ……』

 

 と、ロマンさんが言った後に……

 

「……それだけじゃ、ないです。」

『えっ?』

「ッ!!」

 

 船長さんと黒ひげさんが、額同士をぶつけ合ってた。更に続けて、黒ひげさんが握り拳を作って、それを船長さんの顔面にぶつけた。

 

「うわぁ……」

 

 そんな血まみれな応酬の繰り返し。顔面から鼻血を垂らしながらも笑みを浮かべ、そんな雑で非合理的なぶつかり合いが繰り広げられる。そんな光景に、アルテミスさんとオリオンさんがドン引きな声をあげる。

 

「野蛮ねー」

「ギリシャも、もうちょい上品だったよ……まあ、でもいいもしれんな。」

「ダーリン?」

 

 私は、気がついたらそんな野蛮な船長さんの戦闘に注目し続けていた。

 

「周りには目もくれず、鉄火を撒いて手段も自分の損傷すら顧みず。欲しいものを奪おうとする、それが海賊の闘い……」

 

 そんな常識外れ(ロック)な大激突に、私のロックンローラーな魂が共鳴しているような気がしていて、目が奪われてた気がしたのだった。

 そして、二人は血塗れながらも笑みを浮かべながら言葉を交える。

 

「人間の割にやりますな、スペイン船を襲いまくってる経験は伊達じゃない」

「は?なんで知ってるの?キッショ」

「べ、別にBBAのことなんて知らないですぅぅぅ!!」

「……ハ、ハハハハ!でもよかったよ。タイマンなんて楽でいい!」

「へ、へへへへ!同感さ、話が早くて助かるぜ!」

「まったくさ、テメェをころせば」

「お前の死体から獲っちまえば」

「お宝が!!」

「手に入るからなあ!!」

 

 二人のそんな叫びが交差し、直後に船長さんの頭上に数多の砲身が現れる。

 

【カリヴァン砲 全門展開!!】

 

 そしてすかさず火が吹きあれ、船上に爆風が広がる。

 

「ウォッ!?自分の船なのに、本当におかまいなしですなぁ!!」

(だけど、これだけの砲撃の嵐だと船長さんも動けないんじゃ……)

 

 おそらくそれは、黒ひげさんも同じ考えのはず。船長さんは何を狙って……

 

 と私が思った直後、煙幕を突き破って黒ひげさんに接近する船長さんの姿が現れた。

 

「え、せんちょ……!?)

(__この女、テメェの砲弾で死ぬかもしれねぇのに……)

(死ぬかもしれないリスクを背負ってまで、黒ひげさんの隙を作ったんだ!)

「カトラァス!」

 

 船長さんが叫べば、その手にカトラスが握られる。その剣先が黒ひげさんへと迫る、ついに決着がつくとそう思った。

 

「自由なる嵐の王が命じる」

 

 だけど、その更に上をいかれた。

 

「盾になれ、メアリー・リード」

 

 それはまさに文字通り肉壁、メアリーさんの小柄な身体そのものが、血を吹き出しながらもカトラスを無理やり止めたのだった。

 

「……やられた」

「い、良い使い方じゃないか……勝てよ船長、僕達に勝利を……」

「…………やるね」

「…………だろう?」

 

 メアリーさんの姿が消え、黒ひげさんの鉤爪が船長さんに向けられる。それを前に、もはや逃げられないと悟った船長さんが目を閉じた。

 そんな、船長さんが諦め……

 

「ダメです船長さん!逃げ……」

 

 だけど私の声は届かず、そして血飛沫が舞ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……え?」

「やっと隙ができたよ」

 

 だけどその血は船長さんのではなく、ヘクトールさんの槍によって穿たれた、黒ひげさんの胸から溢れる血なのだった。

 

 

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