ギターヒーロー、人理修復へと旅立つ 作:ヘル・レーベンシュタイン
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ヘラクレス
おそらくギリシャ神話における最強の英雄。主神ゼウスと人間の娘との間に生まれた半身半神の英雄。女神ヘラとの確執で数多の冒険を繰り広げ、その全てを乗り越えた超人
あらゆる武芸を修めた彼は“
「先輩!先輩!」
狂化によって高められた凶暴性は卓絶した技量の多くを失わせたが、その能力と本能による戦い方はさながら“
「ドクター!先輩が!」
『攻撃はギリギリ君達が防いだ、余波で気絶しただけで命に別状はない!』
「でも先輩から血がこんなに……」
「傷口はスクロールで防ぎました、しっかりなさい!前衛の貴女がそれでは全滅ですよ!」
清姫の叱咤の声にマシュは戸惑いながらも、立ち上がって盾を構える。
「は、はい……!前に出ます……!」
しかし、その表情は焦りで満ちている。
(怖がるな、怖がるな、怖がるな!私は“
その考えに問われ、ヘラクレスが距離を詰めて獲物を振り上げているのに気付くのが遅れる。
「あ……」
ヘラクレスから下ろされる斧剣、それをマシュの前に割って入ったアステリオスが強引に防ぐ。
「ぐあ……っ!」
「ア、アステリオスさん!!」
「が、ぁ、あぁああ!!」
そして強引にアステリオスは両腕を広げ、斧で強引にヘラクレスを弾き、船外へと飛ばした。
「船から剥がした!一斉射!!」
ドレイクがそう言い放てば、カリヴァン砲とアルテミスからの矢が雨のように放たれてヘラクレスのいる場所へと襲いかかる。
暫くして、海上の白煙が晴れる。
「……無傷!?」
晴れた先の光景に、ドレイクは驚愕の声を上げる。ヘラクレスが海面に立ち、その体には傷一つついてない。その結果をイアソンは笑い声を張り上げ、当然かのように語り始める。
「ハハハハ!そいつの宝具は強力でね、並の攻撃じゃ傷も付けられないのさ!」
「なんだいそりゃ……つか待てアイツ、水の上に立ってるじゃないか!?どうなってんだい!?」
「ありゃスキルでもなんでもねぇよ、足と水面の間に魔力障壁を張ってんだ……」
オリオンのその言葉を聞き、ドレイク達はアルゴノーツの船にいるメディアへと視線が集まる。
「はい、私が手伝いました。キャスターですので。」
「内助の功という奴だね、流石は我が妻メディア。
で?今ので打ち止めかい?なら反撃だ、やれ、先ずは寝ているカルデアのマスターだ。」
イアソンがそう言い放った直後、ヘラクレスは水面から跳躍しマシュ達のいる方面へと迫る。
「マシュ、ぼっちを守れ!絶対に死なせ……?」
しかし、ヘラクレスはイアソンの指示通りに後藤ひとりではなく
「え……」
(なんでエウリュアレを!?)
なんとエウリュアレに、獲物の矛先を向けて迫っていた。
(駄目だ、間に合わない!!)
振り下ろされるヘラクレスの一撃、その破壊音が轟く。その光景を前に、イアソンは唖然とした表情となった。
「…………は?おい、ヘラクレス……エウリュアレを殺したら、オレの夢は……」
「……ス……」
「!!」
ヘラクレスの攻撃によって生じた白煙が晴れる。するとそこには……
「……テリオス!アステリオス!アステリオス!貴方、どうして!!?」
ヘラクレスの一撃をエウリュアレから防ぎ、背中から血を流すアステリオスがそこに居た。
「ハ、ハハハハハ!よくやった牛頭!ヘラクレス、私の命令はちゃんと聞けぇ!」
「ぐぅ……」
「駄目よ動いたら、あんなのに勝てないわ!」
「………わかってる でも だれか が やらなきゃ……
それならおれがいい……だって……
なんにんもころした なんにんも しらないこどもを なんにん も おれは
こどもをころした かいぶつだから」
己の罪を独白するアステリオス。その最中、気絶する後藤ひとりの意識がとある記録に向けられていたを見ていた。
(なつかしい だれかの
その子供は、初め被害者だった。父親が神と交わしたか約束を反故にしたが故に、怪物として生を受けた彼はその名前以外、愛情すら与えられず、迷宮に閉じ込められた。やがて迷宮に子供が捧げられるようになった、父親は息子に子供達を殺して食うように命じた。
彼は父親に従った。怪物として生まれた以上、そうすることが怪物として正しい振る舞いだと思ったから。
【うまい うまい うまい】
殺したくなかった、美味しくもなかった。ただその時だけは、自分が怪物だと思えて、嬉しかった。
それが三度続き、彼は『テセウス』という英雄に倒された。彼が悪くない、なんて言えない。しかし彼だけが悪いとも……だからだろうか、英雄が最後に彼にかけたことばがいつまでも私の耳に残っていた。
【僕は君を助けたかったよ】
そして
「がぁああああ!!!」
アステリオスは果敢にヘラクレスに攻撃していた。振り下ろしで再びヘラクレスを海上に飛ばし、しかしそれで終わらず続けて頭上からの追撃を放って海の中へと沈め込んだ。
「アステリオスが圧してる、これなら!」
「う う ぅ うッ!!」
自由に動けない海面ならば、オリオンはそう考える。しかし……
「バカだなぁ、付き合ってやってるのもわからないのか!?」
海面を瞬間的に破ったアステリオスの一閃、しかしヘラクレスには直撃していなかった。鉄拳がアステリオスの顔面に突き刺さり、船上へと飛ばされる。
「アステリオス!」
「バカ!お前は前に出るな!」
「潮時だキャプテン、最悪彼女を……」
「く……」
血染めのアステリオス、全身から痛みを感じながらも体を起こし戦線へ戻ろうとする。
(こいつ は つよい から… だれか が ぎせいに ならない と
それ なら ぼくだ… ぼくは かいぶつで わるい やつ だから……)
その最中に、横たわる後藤ひとりの指が僅かに動いた
それは、黒ひげさんと再戦する前の宴会での記憶だ。
【アンタらさ、このゴタゴタが終わったらどうしたい?】
船長さんがそう私達に問いかけてきた。
【何の話よ?】
【やりたいことさ、アタシだったら世界一周?肴代わりにアンタ達の想いを聞かせとくれよ】
【サーヴァントに聞いてどうするのよ、ぼっちアンタ答えなさい。】
【あ、え?えぇ!?】
エウリュアレさんから不意に振られ、視線が私に集まる。私は戸惑いながらも、とりあえず思いついたことを片っ端から口に出す。
【え、えっと……まずはやっぱ、家族やバンドメンバーと再会して、ちゃんとバンドを成功させて、しっかりと高校中退して……あ、あとギターヒーローアカウントの登録者数をさらに増やして、あわよくば百万人に増やして、それから……】
【多すぎ多すぎ、何言ってるのかわからなくなってきたわよ。】
【ダハハハ!ぼっち、やっぱアンタ私の見込んだ通り強欲だねぇ、けど嫌いじゃないよそういうところ】
【百万人!そこまでいけば、今以上にさらに先輩のギターヒーローとしての輝きが増しますね!】
【ぎたー ひーろー?】
不思議そうに私を見るアステリオス、すると船長さんが私の肩に手を回しながら言う。
【要はギターヒーローと名乗りながら演奏してたら、いろんな奴が惚れ込んだらしいってことさ。ぼっち、何人くらい魅了させたんだい?】
【あ、はい……登録者は十万人くらいです。】
【ヒュー♪結構な人数じゃない】
【へぇ、やるじゃないぼっち】
【うん すごい すごい かっこいい】
【ウへ、ウヘヘヘへ……百万人達成したら、今度は一千万人目指しちゃいましょうかね〜?】
【すぐ顔に出るし調子に乗るわね、ぼっちは】
【んで、アステリオスとマシュは?】
船長さんが二人に問いかけると、まるで思考を巡らせるように何処かを見ながら答える。
【ぼくは ない】
【私も……すみません、思いつきません】
【なんだい二人ともないのかい?こりゃ、宿題だねぇ。】
すると船長さんが立ち上がり、私たちの前で手を広げながら言い放つ。
【この海での旅が終わるまでに見つけるんだ、自分の“望み”ってやつを】
【………】
【………】
【で、見つからなかったら連帯責任!アンタら四人まとめてさ、アタシの“
そんな、とびっきりな笑顔で言っていたのだった。
「ぐぅあぁああああ!!」
絶叫と共にアステリオスは斧を振り上げる、しかし……
「あ……」
「アステリオス!」
ヘラクレスさんはその一撃を弾き、同時に斧がアステリオスの手から離れた。そしてすかさず追撃が放たれようとする。
「
その刹那に、私は片膝を立てながらギターの弦を弾く。その瞬間に思い浮かべるのはするのは虹夏ちゃんの、ドラムで堅実で優しく支援するイメージ。
【“
直後、アステリオスは黄色い輝きと共に不可能だったはずの動きでヘラクレスさんの一撃を回避することに成功する。
「!? からだがうごいて……ますたー?」
(わたしは、嫌だ)
彼の記憶を見て思ったのは、そんな気持ちだった。多くの子供を食べてしまった罪は、決して軽くないのかもしれない。その罪を贖いとして、ここで犠牲になろうとしてるのは、もしかしたら正しいのかもしれない。
(それでも、私は嫌だと思う。だって、船長さんがあの夜に語った後、私は見てしまったから。
アステリオス、貴方が確かに“夢”に憧れる顔をしていたと、私は確信したから。)
それはきっと、私が初めてギターを手にした時とよく似た顔をしてたのかもしれない。だから、私は見捨てない。虹夏ちゃんが私の手を掴んでスターリーに招いたように、今度は私がアステリオスを外の世界に導くんだ!
「
だからかき鳴らせ、限界突破し私のギターを!!
「
打ち鳴らせ、貴方の光を目指す雷鳴の一撃を!!
先ずは驚愕、避けられぬはずの一撃を避け、なお己を倒さんとする戦士の姿に。だが反応する、斧剣を握り直し、そこで気付き感嘆する。
「間に合わぬ」と、二人の男の渾身の一撃。故にその疾さは“
「オオオオオオォォォォ!!!」
雷光の一撃ーーー!!!
アステリオスの一撃が決まり、ヘラクレスさんの身体から血飛沫が舞った。
『へ、ヘラクレス撃破ぁ!!』
ロマンさんのその声が聞こえた直後、私はじんわりとくる痛みに体を震わせる。
「先輩!」
『礼装の連続起動……さっきまで気絶してたのに、ぼっちちゃん、君ってやつは!』
ロマンさんのいう通り、私はあまりに無茶なことをした。我ながら自覚している、だけど……それでも私は成し遂げたい、と思った。
「ア、アステリオス……」
「ますたー……」
うつむきながら、言葉を紡ぐ。猫背のまま、それでも声を張る。
「ごめんなさい、私はやっぱ皆で生き残りたいです。だから、力を貸して、ください。」
「____ますたーが そう いうなら」
「ありがとう、ございます」
視線を逸らしながら、アステリオスはそう答えてくれた。それだけでも充分、あとは成し遂げるだけだ。
「倒しましょう、アルゴノーツを」
あとはそれを、成し遂げるだけだ!