ギターヒーロー、人理修復へと旅立つ   作:ヘル・レーベンシュタイン

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続きです
ようやく折り返しまで来たかなーと思います


第二十五話

 

 

「………ハ!ハハハハハハ!アルゴノーツを倒すだと!?そんな戯言を抜かしたのか、あの小娘は!

人類最後のマスターというのは、全く無知だなぁ!」

 

 私の宣言を聞き、イアソンさんはまさに嘲笑に満ちた表情と共にそんなことを言い放った。

 

「まぁいい、ならば教えてあげよう。」

 

 そして彼は指先を、さっきアステリオスが倒したヘラクレスさんの体を指す。

 

「見たまえ、君たちがたった今“殺した”ヘラクレスを」

「ッ!」

 

 そう、アステリオスの一撃によって砕けたはずの上半身が徐々に元に戻り始めていたのだ。

 

『き、傷の再生……違う、これは!蘇生しているのか!?』

「その通り、一回殺したくらいじゃ“死なない”のさ!

ヘラクレスが生前、神に与えられた十二の試練!それを踏破したコイツは、それだけの生命が報酬として与えられている!」

 

 イアソンさんが語る真実の本質に、私たちは悟って全員が息を呑む。それは……

 

「つまり、あと11回倒さなきゃいけないってことさ!」

「そんな……11回、なんて……」

(先輩とアステリオスさんが奮起してようやく一回倒せたのに、こんなの勝てるわけ……)

「そうだと、しても……」

「かんけい ない」

「え……」

「……あ?」

 

 だけど、私とアステリオスがそう言い切る。マシュ達は唖然とした顔をし、イアソンさんはまるで気に入らないと、言いたげな顔をする。それでも、私とアステリオスの気持ちは変わらない、変わっちゃいけないんだ。

 

「ますたー が みんな で いきのこるっていった

ぼくは たたかう!」

「先輩、アステリオスさん……」

「……悪い、アーチャー」

 

 直後、船長さんが決断する。

 

「撤退の提案は却下だ、今回ばかりは少しだけ諦め悪くいく。」

「……構わないよ、僕はキャプテンに従う。」

 

 アーチャーさんがそう言い切ると、それをきっかけにオリオンさん達も抗う姿を見せる。

 

「仕切り直しだ!連携次第じゃ凌ぐ目もある!!」

「アナタ達、アステリオスも……!」

「うん、でも えうりゅあれ も いなくなったらだめ だから……

いあそん! えうりゅあれ は わたさない!」

「……マスターとサーヴァント、二人して勇ましいじゃないか。

何も知らんガキと、哀れな牛が調子に乗りやがって!手加減はここまでだ、ヘクトール!メディア!加勢してこい!」

 

 ついに、イアソンさんの傍に控えていた二人もまた動き始めた。

 

「では、私は使い魔の竜牙兵を」

「おじさんは、ヘラクレスに当たらないよう動きますか」

『敵の使い魔が殺到する、これは__』

 

 ヘクトールさんとメディアさん、二人が私たちの船に飛び移る。同時に、骨の姿をした軍団が殺到してくる。数だけで言えば、こちらが不利だが……

 

「こちらはお任せを」

 

 清姫ちゃんのその言葉と同時に、巨大な火球が竜牙兵の軍団を大きく焼き払った。

 

「……あら?」

「こうして燃やすだけなら楽なものです」

「ありゃあ、姫様の使い魔とじゃ相性が悪そうだね。で……俺の相手はアンタかい?謎のアーチャー」

 

 その一方で、ヘクトールさんはアーチャーさんが相手するようだ。

 

「君に引っかき回されると厄介だ、相手してもらうよ“兜輝くヘクトール”」

「その名を放って相手するとか、煽りがうまいねぇ。もしかして政治家?」

 

 互いに口調自体は爽やかさを感じるけど、どこか裏を探り合ってるような恐ろしさを私はなんとなく感じた。

 そして……

 

「来るよ、マシュ!」

 

 蘇生が完了し動き出したヘラクレスさんを、マシュと船長さんが相手していた。

 

「させません!」

 

 振り下ろされる斧剣を、マシュはしっかりと防ぎ……

 

「アステリオスさん!」

 

 直後、反撃にアステリオスが動き斧を振り下ろす。ヘラクレスさんは、その巨体のイメージからは思い付かないようなアクロバットな跳躍で回避するものの、僅かな流血が見える。

 しかし構わず、すかさず再接近し始める。

 

「……!」

 

 その途中で、船長さんとアルテミスさんの狙撃がヘラクレスさんに直撃し接近が止まる。

 

「やっぱりね、傷はつけられなくても動きの邪魔はできる!」

(それに……)

 

 ヘラクレスさんの瞳には、何故がエウリュアレさんが映っている。マシュから聞いたものの、本当にエウリュアレさんを殺そうとしているが私にも伝わる。

 だから、彼女の近くにマシュを添えることにしている。

 

(エウリュアレさんを執拗に狙うなら、行動が私にもわかるレベルに分かりやすい!これなら凌げるかもしれない!)

「何をやってるヘラクレス!私の命令が聞けないほどとち狂ったか!」

 

 実際、イアソンさんの予想外な動きなのがこの言葉からわかる。この調子で進めていけばどうにか……そう思った直後、ヘクトールさんの声が差し込まれた。

 

「令呪使えばいいじゃないですか?アレを狙うのを止めますよ。」

(ッ!それは……)

 

 令呪の効果は私も実感している、それでヘラクレスさんが正確な動きをするようになるとまずい!

 

「オレがアイツを従えるのに令呪などいらない、二度と言うな」

(え?)

「___そいつはすいませんでしたね」

 

 イアソンさんの意外な返答に、私は思わず困惑した。ヘクトールさんも予想外だったようで、すかさず引いた。

 この人、そんな熱意の籠ったこと言うんだと。

 

「いいさ、確かにアイツの暴走には困りものだ。頭を冷やさせる必要がある。そこでだ、ヘクトール。その槍(宝具)で“ヘラクレスを殺せ”」

「………いいんですかい?」

「構わない、あと“11回”ある。」

「了解」

(ヘクトールさんの宝具が来る!?)

 

 それはなんとしても止めないといけない、どんなものか分からないけど直感的に私は感じ取った。それは、アーチャーさんも同じようで……

 

「宝具撃つには、アンタをなんとかしないとねぇ!」

大英雄(ヘクトール)の宝具なんて、マズいに決まってるからね……!」

 

 すかさず攻撃をして、宝具の発動を防いでくれている。これなら……

 

「大層な評価してくれちゃって、だけどねぇ!」

「!?」

(アレは、メディアさんの使い魔が!?)

 

 アーチャーさんの周りに、いつの間にか竜牙兵が囲んでいた。

 

「オジサンより怖い“魔女”を忘れちゃいけない」

(そんな、清姫ちゃんが相手してたはずなのに……)

 

 そう思い、清姫ちゃんの方を見ると

 

「ハッ、ハッ……」

(息が!それに、あの数……まるで無尽蔵に出てきているような……)

「王女メディア、魔術が日常の神代ですら“魔女”と恐れられた魔術師さ」

「いっぱい燃やされちゃいました、でもたくさん作ったので問題ありませんね」

 

 清姫ちゃんもアーチャーさんも、竜牙兵に行く手を阻まれてしまった。それじゃ、ヘクトールさんを止める手段が無い。どうしよう、どうしようどうしょう!?

 

「ふぅ、じゃあ。撃たせてもらいますか。

 

標的確認、方位角固定」

 

 直後、ヘクトールさんは肩に担ぐように槍を構えれば、肘先からジェット噴射が放たれる。

 

「“不毀の極槍(ドゥリンダナ・ビルム)

吹き飛びなぁ!!!」

 

 そして投擲された大槍、それが天空に飛び一条の光となり。そしてそれが、私達の方へ向かって墜ちてくる。

 私、オリオンさん、エウリュアレさん、マシュ、アステリオス、そしてヘラクレスさんが巻き込まれてしまう。

 

「こっちに来るぞ!」

「宝具で防ぎます!皆さん私の後ろに……」

 

 マシュが宝具を発動させ、防ごうとした。だけど…

 

「!!」

「グゥ!!」

「マシュ!」

 

 ヘラクレスさんの一撃で飛ばされてしまい、発動することができない。

 

『駄目だ、間に合わない!誰か!!』

 

 このままヘクトールさんの宝具に巻き込まれる、みんなやられてしまう。そう思った時だった。

 

「みんな ぼくのうしろに」

 

 今、私たちに現れたのは……

 

「アステ……」

 

 直後、大爆発。それ以外何も分からず私達はそれに巻き込まれてしまう。痛い、立ってられない。

 だけど船も、私たちもまだ死んでいないようで……

 

(体が動かない……衝撃だけで、こんな……)

「……ス……アステリオス……アステリオスは…」

 

 横たわりながらも、どうにか顔を上げて正面を見る。そこには……

 

「あ……」

 

 顔から血の気が引いて、青ざめてしまう。私の目に映ったのは、左腕と脇腹が穿たれ、血を流しているアステリオスの姿がそこにあったから。

 

「ハッハ!牛もろとも死んだかヘラクレス!だが、これで少しは頭も冷えただろう。その間にだ、ヘクトール。

エウリュアレを奪ってこい。」

 

 そんな非道なことを言い放つイアソンさん、それに従い私達の方へとヘクトールさんが歩み寄ってくる。

 

「ッ、逃げてくださいエウリュアレさん!捕まったら何もかもが終……」

「わかって……っ!?」

 

 エウリュアレさんが動き出そうとした直後、彼女の足に何かが発動して阻害してきた。

 

「何これ、足が……」

「全身を拘束しようと思いましたのに、やはり彼女には魔術が効きづらいですのね」

 

 どうやらメディアさんの魔術によるものらしく、本当なら全身を拘束するつもりだったようだ。だけど、足だけでも最悪すぎる。これだけでも逃げ出すことができないのに。

 

「……動けない……いや……!」

 

 ヘクトールさんが無情に歩み寄り、彼女を掴む。このままだと私達の負けだ。どうしよう、どうすれば……!

 

 

 

 

 

 

 

(だめ だった ますたーが ゆうきをくれたけど この ひとたち には かてなかった)

 

 私は痛む身体に鞭を打って、ヘクトールさんの動きを止めようとした。

 だけど、下手にそれはできない。私も巻き込まれて殺されたら取り返しがつかない。

 

(だって このひとたち は えいゆうで 

ぼくはやっぱり かいぶつ で)

 

 かといってまた無茶をして、魔術礼装を起動させたら神経が焼き切れ、もう二度と使えなくなるかもしれない。

 それは私のギターの未来を投げ捨てる行為となる。

 

(かいぶつ は えいゆう に たおされるものだから)

 

 だからエウリュアレさんを連れ去られるのを、黙って指を咥えて見ることしかできない。悔しい、悔しい、何にもできない、私は無力だ。

 

(きっと “かいぶつ(おれ)”は だれも まもれない)

「アステリオス……!」

(それでもーーーー)

「おぉぉぉぉぉぉおおお!!」

「な!?」

 

 そのままエウリュアレさんを連れ去ろうとするヘクトールさんに、アステリオスさんが襲い掛かる。

 

(えうりゅうあれが ますたーが みんなが!

そうよんでくれるかぎり ぼくは___」

「ぐ、あぁあああ!!」

 

 アステリオスの手が、エウリュアレさんを掴むヘクトールさんの腕を握り潰した。

 

「ミノタウロスが生きてただと!?ふざけるな!!

起きろヘラクレス!その“怪物”を殺せぇっ!」

『復活する!?誰か止めてくれ!!』

 

 見ればヘラクレスさんの体はほとんど回復しており、もうすぐ再起するのは間違いなかった。

 

五つの石(ハメシュ・アヴァニム)

 

だけどその言葉と共に放たれた光、のようなものがヘラクレスさんの頭部を弾け飛ばした。

 

「……は?」

「今のは?」

「僕の宝具だよ、キャプテン」

 

 イアソンさんと船長さんの困惑に応えたのは、アーチャーさんだった。

 

「よかったよ、彼が巨体だから神秘を上乗せして殺すことができた。

でも蘇生する、そうなれば終わり。だから……」

 

 アーチャーさんが私達を向いて言い放つ。

 

「分かるね“みんな”、やるべきことをやるんだ」

「ありが とう あーちゃー」

「……どういたしまして」

(まって、それって、どういう……)

 

 だけど無情にことは進んでいく。アーチャーさんと言葉を交えた直後、アステリオスはヘクトールさんを掴んだまま、ヘラクレスさんも腕で巻き込んで進んでいく。

 それを見て私もエウリュアレさんも、みんなも困惑する。

 

「アステリオス……どこへ?何する気なの?」

「……わかったよ……野郎共、準備はできてるね!このまま離脱する、舵を切りな!」

 

 船長さんの指示が下り、海賊人たちが動きを始める。

 

(アステリオスはヘクトールとヘラクレスを掴んで、船から離れる気だ。だったらその間に、アタシら離脱してやらねぇと!

だけど、このままじゃ……)

「ぐ ぅ……」

(アステリオスは吐血している、もう限界だ。霊基が保たない、だから……)

「ぼっち、令呪を使ってアステリオスに魔力を!」

「___え?」

 

 船長さんの言葉で、私の頭の中がまっしろになる。言いたいことはわかる、やらなきゃ全てが無駄になることもわかる。

 そう、わかる。わかってる。

 

(令呪を、使う?)

だってそうしないと私もみんなも生き残れない

(アステリオスはどうなるの?)

使わなくてもそのままだと彼は死ぬ

(そんなのわかってる、だけど)

使え、使うんだ、令呪を使うんだ、ひとり(わたし)

(それは つまり 私は、アステリオスに死ねって命令するの?)

そうしないと、彼の意思が無駄になるんだから

 

「…………ぃゃだ」

「……マスター、アイツの気持ちを汲んでやれ、そうしないと__」

 

 オリオンさんのその言葉が聞こえた直後。

 

「ま す たぁ」

 

 すかさずアステリオスの言葉も聞こえた。

 

「ます たぁ ますたぁ! ますたー!」

「アス、テリオス……」

「……ぼくは そとに でたく なかった……

でも そと に でて よかった……!」

 

 それは、初めて虹夏ちゃんにスターリーに連れてこられた私とよく似ていて……

 

「みんなが ぼくを なまえで よんでくれて

かいぶつ だと きらわ なかった」

 

 誰もギターヒーローじゃない私に興味ない、そうではないと知れて

 

「うまれて はじめて うまれて はじめて たのしかった」

 

 初めてのバイトで駄目駄目だったのに、『またね』と言ってくれたのがすごく嬉しくて

 

「ますたー ぼくは うまれて うれしかった!!」

 

 だから私は、アステリオスを光あるところに連れていきたかった。楽しいことはたくさんあるんだと、伝えたかった。

 

「_____」

「お願いぼっち、アステリオスを止めて……私が、行くから…!」

 

 懇願の声をエウリュアレさんが言う、私も止めたい。

 

(とめよう)

やれ

(いやだ)

やるんだ

(彼を見捨てるな)

やらないと、終わる

(だけど)

それでも

 

「ぁ、あ、あアアアアアアアアアァァァッ!!!」

 

 熱くなる()、ちぐはぐになる想い。それを断ち切るかのように私は叫び、ギターを掴む。

 みんなが私を見てる、だけどそんなことはもう関係ない。私は令呪を掲げ、未確認ライオットの時に奏でた曲でギターソロをしながら叫ぶ。

 

「令呪を以って命ずる!

 

“私達を守って”

 

アステリオスッッ!!!」

 

 もう 後戻りはできない

 

「ありがとう ますたー

まけないで ぼくのぎたーひーろー」

 

 そう言い残して、アステリオスは跳んでいく。もう私の手の届かないところへ。

 

「ヒッ!!ミ、ミノタウロスが…メディア!」

「竜牙兵……な、これは……霊基の再臨!?」

 

 アルゴノーツの船に到着すれば、アステリオスは竜牙兵を寄せ付けないエネルギーの奔流と共に、私から受けた令呪によって変化が起こっていた。

 

「……せん ちょう…」

「アステリオス…?」

「いっしょに たびできなくて ごめん」

「……!!何、言ってるんだい……」

「ましゅ……のぞみ を みつけて

ますたー とえうりゅあれ を よろしく」

「はい……はい…!必ず!」

「ますたー ぼくは ますたーの さーゔあんとになれて よかった」

「………っ!!」

 

 私も、貴方と出会えてよかった。だけど、アステリオスのそんな眩しい姿を見れない。私のダサい影が、より色濃くなってしまうから。

 

「えうりゅあれ……ぜんぶ、ぜんぶ、えうりゅあれが いてくれたから…!」

 

 隣を見れば、エウリュアレさんが

 

「ぼくは えうりゅあれが だいすき だ!!!」

 

 その瞳から、涙を流していた

 

「さよなら エウリュアレ」

 

 

 

 

【宝具 展開】

【“万古不易の迷宮(ケイオス・ラビュリントス)”】

 

 

 直後、アステリオスを中心に見覚えのある城壁などが現れるのが見え、それにアルゴノーツの船が巻き込まれていく。そして、その中がどうなってるか私には判らない。

 

「これは、空間の上書き……違う、空間が迷宮へと“墜ちていく”!!」

「オレ達を閉じ込める為にかぁ!!

テメェ、ミノタウロス!!怪物のくせにぃ!!」

「ぼくは あすてりおす ぼくは ぼくだ」

 

 だけど、アステリオスが宝具で彼らを閉じ込めたのは確かだった。

 

 

 

 

 

 

 

そして

 

「……消えた?ア、アステリオスがやったのか?」

「………っ」

 

 私たちの目の前にあった、アルゴノーツの船はこの瞬間は居なくなっていた。

 

「転進するよ、アイツの心意気を無駄にするな!」

「ア、アイ、キャプテン!!」

 

 船長さんのその指示によって、海賊の人たちが動きを始める。その中、エウリュアレさんは……

 

「好きよ、私も。

さよなら、アステリオス。」

 

 大海原に向かってそう呟き、彼女もまた動き始める。だけど…

 

「………」

 

 私はまだ、動けなかった。

 

「……ぼっち……私は先に行く、ちゃんと来るのよ?」

 

 エウリュアレはそう言い残して、先に向かった。直後、マシュが近くに座り……

 

「皆さんもういません、先輩」

 

 そう言われ、私の押し留めていた心が溢れる。ああ駄目、私はカルデアのマスターなんだから……

 

「……ぁ……あ、ぁ……」

 

 だけど、この気持ちだけは誤魔化せなくて

 

「あ、ぁ、あ……あぁぁぁぁぁ……!!!」

 

 目から溢れる涙を止めれなくて、マシュの胸を借りて顔を埋めながら泣いてしまった。まらできっと、幼い子供のように。

 

「わたし、わたし、アステリオスを助けたかったのに……ちゃんと一緒に、最後までこの特異点に居て欲しかったのに……」

 

 私とよく似た、臆病な男の子。だけど外に出て日の光を浴び、夢の冒険に出たかったはずなのに……

 

「わたし、何も出来てない!」

 

 そんな惨めな自分に情けなくなる。

 

「いいえ、お言葉ですがそれは断固否定させてもらいます、マスター。」

「……え?」

 

 だけど、そんな私の手を掴み上げてマシュは否定した。

 

「アステリオスさんは、先輩のサーヴァントになれて嬉しかったと、そして先輩がこの特異点で勝つことを信じていました。

負けないで、僕のギターヒーローって……」

「あ……」

 

 確かに、私が令呪を使った後にそう言って……

 

「だから、何も出来てないなんてことはありません。先輩は、マスターとして、そしてギターヒーローとして勇気ある行動をしてくれました。」

「……」

 

 それを聞いて、私は顔を上げて涙を拭う。

 

「だから、行きましょうマスター。私は、アステリオスさんの意思をちゃんと継いでいきたいです。」

「はい……私も」

 

 私も同じだ、彼に誇れるギターヒーローになるために、また歩き出そう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 暫くして、アルゴノーツは

 

「クソがぁ!」

 

 アステリオスの迷宮が解除され、海原に戻っていた。しかし、イアソンは怒りを爆発させて壁を殴る。

 

「奴らを逃した上に、ヘラクレスをもう一度殺すだと!!怪物風情がぁ!!」

「…………怪物、怪物ねぇ……アイツが、アステリオスが本当に怪物なら、あんな顔で死ねますかね?」

 

 ヘクトールはそう呟きながら、迷宮だった場所へと目を向けた。

 

 

 

 

 

 

【僕は君を助けたかったよ】

 

 神話にて、アステリオスを討ち取った英雄テセウスは、彼がただの少年と気づき、痛切な想いを込めて、そう投げかけた。

 

 その祈りは、遠い未来、この果てのない海にてようやく届く。

 迷宮で醜いものしか見ることができなかった少年は、確かに見たのだ。

 

世界の美しさを

人間という生物の、図々しさを、滑稽さを、気高さを

そして生きることの、喜びを

 

 少年はここに得たのだ、この旅で、仲間との語らいで。

 宝石のように輝く、大切な記憶を、夢のような日々を

 

 ああ___そのためならば、その命を賭すことにも、躊躇わないほどに

 

 

 

 その胸裏に抱いた喜びの雷鳴と共に、満ち足りた思いを抱いた少年は海底に沈んでいったのだった。

 

 

 

 

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