ギターヒーロー、人理修復へと旅立つ 作:ヘル・レーベンシュタイン
「ハァハァ………ハァハァ……!」
走る、走る、只管に走りまくる。汗を拭わず、振り返らずとにかく足を動かし続ける。
「こっちだ!遮蔽物が多い!」
オリオンさんの声を聞いて、そちらへと軌道を変えた直後に……
「ッ!」
ヘラクレスさんの殺気が一気に迫る。
「く、うゥゥゥッ!!」
それをすかさず、マシュが盾で防ぐ。この作戦で、一番ヘラクレスさんとの距離が近いのはマシュだ。
(だから……マシュの敗北がこの作戦の失敗に直結する………)
デミ・サーヴァントなのに一番負担の重い役割を背負って……何一つ嫌な顔をしてなかった。そんなマシュが報われる為にも、私は何が何でも生き延びて、作戦を成功させないと……
そう考えながら只管走り続け………
「………ハァ………ハァ……」
私達は休憩ポイントに到着し、私は敷設された治癒の魔法陣で横たわっていた。
『ようやく5合目という所だね、マシュ達が後退しながら足止めしている。5分もすれば、再びヘラクレスが追いつくだろう……』
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……」
『今のうちに、出来るだけ休んでくれ』
私の返事を待つことなく、あくまでダヴィンチちゃんは淡々と状況を説明してくれてた。正直助かる、今はもう“はい”と言うことすらしんどい、とにかくしんどすぎる。
『………ぼっちちゃんのバイタルは?』
『だいぶ消耗してますね……礼装の身体強化といっても限度はありますし、先の戦闘での傷や令呪のダメージも残ってます。それらを術式で無理矢理治癒してるのが現状ですが、いつ限度を超えるのか……筋断裂や骨折ならまだマシですが、最悪は切断の可能性もありますよ。』
なんて、カルデアのやり取りが聞こえて来る。ところどころ不穏な言葉が聞こえるものの、それだけ必死に状況を見ているってことだ……
「……ヘラクレスというのは、本当に勇者なのね。私を殺すことで世界を救おうとするなんて。」
「………え?」
不意に、近くで座ってるエウリュアレさんがそう呟いた。直後に……
「私を見捨てて逃げなさい」
「!?」
なんてことを口走る。
「私、弱いし。死んだって後の戦いに何の影響もないもの。ヘラクレスを倒す機会を逃すのは、勿体無いかもしれないけどね。」
彼女の言ってることは、もしかしたら正しいのかもしれない。だけど……
「……ダメです、そんなこと私には出来ません。」
そんなのは嫌だ、だから私は拒否する。
「それに、私はどうしても走らないと、いけない理由がありますから。」
「……知らないわよ、そんなの。」
そう呟くエウリュアレさんは、何処か寂しそうで……辛そうな視線をしていて……
『ぼっちちゃん、エウリュアレ!』
と考えてたら、ロマンさんの通信が差し込まれた。
『ヘラクレスが来るぞ!』
直後、マシュとヘラクレスさんの姿が私の目に映る。
「マスター達がこんな近くに、させません!」
すかさずマシュが、盾での刺突を放つ。しかし、ヘラクレスさんは難なく片腕で受け止めて……
「………え?」
『マ……』
すかさず返しの刃が、マシュの脇腹を裂いた。
『マシュウウウゥゥゥッ!!』
まずい、マズイマズイマズイマズイマズイ!!!
「マ……ぐぅっ!?」
駆け出そうとしたら、襟首を誰かに掴まれて後ろへと放り投げられた。
「そんな暇はない」
見れば、ダビデさんが前にいた。
「走っ……」
そう告げる直後、容赦なくヘラクレスさんがダビデさんへと迫ってた。
「!」
振り下ろさせる一撃、それを棒で受け止めるもひび割れる音が聞こえる。
「……っ!!」
その直後に蹴りがダビデさんのお腹に突き刺さり、鈍い音と共に森林の海へと飛ばされた。
「まずい、前衛が崩されたぞ!アルテミス、アタランテ!お前達で足止め……っ!?」
続いて追いついたオリオンさんとアルテミスさん、そしてアタランテさんが参戦した。
だけど、一番最初にオリオンさんが狙われ……
「ダーリン!!」
アルテミスさんがすかさず飛び込んで、オリオンさんを庇って一撃を刻まれた……
「バカヤロウ!」
「ヘラクレスゥッ!!!」
オリオンさんの嘆きの声、すかさずアタランテさんの怒りの狙撃が放たれるも……
「____」
掠りすら許されない。その巨体に似合わない速度で回避され、無傷という非情な現実が目の当たりにされる。
(夢なら覚めてよ……)
『そんな…‥.一瞬でこっちの戦力を半分に……』
マシュ、ダビデさん、アルテミスさんが瀕死になった。それも、ヘラクレスさんたった一人で……強い、あまりに強すぎる。
「どう、すれば……」
そう呟いた直後、ヘラクレスさんが私の前に現れる。
「アタランテ!」
その間を、船長さんが滑り込んできた。
「二人を連れて逃げな!」
「狙いが悟られるかもしれんが、やむを得んか……」
「アタシはできるだけ足止めする!」
「そ、そんな船長さん!」
「いいえ、皆さん全員でお逃げください」
「……清姫、ちゃん?」
清姫ちゃんが、凛とした声で最前に出てきた。
『この魔力量の上昇、まさか……宝具を使う気か?ダメだ、ぼっちちゃんとの魔力供給をカットされてるんだ、消滅のリスクがあるぞ!?』
そうだ、そんな無茶したら……清姫ちゃん、消えちゃう………
「ひとり様を守れず悔しかったのは、マシュだけではありませんから。」
「そ、んな……」
「ますたー、ご武運を」
直後、火柱が伸びてヘラクレスさんへと放たれる。
「清姫ちゃ…….っ!」
「退くよ!清姫の心意気を無駄にするな!」
船長さん、アタランテさんに無理矢理腕を惹かれて私とエウリュアレさんは次のポイントへと逃げた。逃げざるを得なかった。
そして……
「なんとか距離を稼げたが……」
「……あっ」
私の意思を無視して、膝が折れて倒れてしまった。
「ぼっち!?」
「だい、じょうぶ……です。は、は、走り……ます。ちゃん、と……走らないと、アステリオスの勇気が……マシュだって……頑張って……私、だって……」
「………いい加減にして!」
直後、エウリュアレさんが爆発したかのように叫んだ。
「皆して私を守る為に必死になって、誰もそんなこと頼んでないわよ!
仲間意識のつもり!?私は女神よ、人間如きが調子に乗らないで!
私はアナタ達のことなんて何とも思ってない、アステリオスにだってそう!アレに近づいたのは打算だったのよ!?」
そう語るエウリュアレさん。言葉はまさに、神らしく傲慢で、毒々しさがあるのかもしれない。だけど……
「名前を呼んだだけなのよ……私はあの子に何もしてあげられてない……なのに、それだけで……自分の命を投げ出して……」
本心じゃないと、頭の悪い私ですら分かる。だって、アステリオスさんが、自分の命を犠牲にして、ここまで頑張れたのはエウリュアレさんが居たからって語った時……
「そんなこと、頼んでないのに……!!」
(私と一緒で、涙を流していたのに……何も感じてないなんて、嘘だよ……)
私たちを切り離して、ヘラクレスさんの脅威から逃す為にそんな事を言ってるんだ……
「アンタらは、キレイだね」
「え?」
直後、今度は船長さんが話し始めた。
「真っ正面からあいつの死を受け止めてさ。だけど海での別れは、いつだって唐突だ。砲弾喰らって、波に攫われて、果てには行き先を見失って……それとは逆に、ダチを殺す判断に迫られることもあるだろうよ。」
(それって……そういうのを、目の当たりに?)
と、考えてたら、大きな振動がこちらに届いた。
「も、もう来て……」
「………アイツは笑って、アタシらを守ってこのうちを生き抜いた。そう、『生き抜いた』のさ。海の上で立派に……だからアンタらも、ちゃんと答えを見せなきゃいけないんだ。アステリオスに、テメェがどんな面でこの海を戦うのかっていうことをさ。」
船長さんは銃を構えて、私たちにそう告げる。その顔には、命を賭ける覚悟に満ちていた。
「じゃあね、二人は任せたよアタランテ」
そして、ヘラクレスさんの方へと船長さんは向かう。
「さぁ、闘ろうかヘラクレス!!」
駆け出す船長さんを、私は止めることができない。
(こんなに、こんなに、悔しくて心が苦しくて世界から音を失っていく気がする。)
どうすればいいか、どんな顔をすればいいのかもうわからない。
(アステリオスが、マシュが、そして船長さんまでいなくなってしまう。)
振り翳されるヘラクレスさんの鉄拳、それが船長さんへと放たれて炸裂した音が響き渡る。
「ドレイクゥッ!!」
悲痛なエウリュアレさんの叫びが、私の鼓膜を揺らす。
(おわっ……た………)
そう、絶望した。
(え、令呪が……)
だけど、掌から感じる輝きがその絶望を打ち払うかのように……眩しく痛いほどに光る。
「………マシュ?」
そう、さっきまで瀕死になってたはずのマシュが、無傷の姿で船長さんの前に立っていた。
「アンタ、その格好……」
それも船長さんのいうように、身に纏う装束が変わっていた。そして、その表情は今まで以上に凛々しさを感じる。
『マシュと英霊との融合係数が上がってる……戦闘経験の積み重ねによるもの?それとも英霊自身がそれを……?
いずれにせよ、マシュの霊基は今その限界を超え、本来の英霊の力をより引き出せるよう再構築された……言わば、霊基の“再臨”……!!』
ロマンさんの分析が聞こえるが、正直な所正確にはわからない。だけど、私に分かる範囲で答えを出すなら、マシュがサーヴァントとしてのレベルアップ、みたいなことが起きてるんだと思う。
だって、さっきまでとは別人のようなヘラクレスさんの攻撃を捌き……
「やぁああああああ!!!」
ダイナミックな動きで蹴りを放ち、吹っ飛ばしたのだから。
「マシュ、生きて……」
「行ってくださいマスター!私は、負けません!!」
「……」
力強い言葉を聞けば私は頷き、エウリュアレさんを抱えて次のポイントへと走り出した。
「おかえりマシュ、やれるってことだね?」
「はい!私の中に眠る英霊が、力を貸してくれました。それに、皆さんも!」
背中から聞こえる、聴き慣れた狙撃音、射撃音。それが何を意味するかは、言うまでもない。
「ハハ……良い格好だ、男前が上がったじゃないか。」
流石にみんな、ボロボロなんだろうけど……スッと胸の絶望感が晴れる気がした。
「よぉし、運がこっちに向いてきた。さぁ、もう一勝負だ…….ぼっちには追いつかせないよ!」
そして、ようやく最後の休憩ポイントに着いた直後。
「イアソンさんが騙されてる、ですか?」
「だって、アイツの言ってること筋が通らなくない?
自分のこと、海の王とかいってるくせに、私をアークに捧げようとしてるのよ?海が無くなるのに。」
「やはり、そうですよね……私も思ってました。でも、誰がイアソンさんを騙して……」
と、エウリュアレさんと話してると通信から声が入った。
『最後の休憩も終わりだ。君たちは今、アークのある墓地の入り口手前にいる。合図と共にアークへと走ってくれ、現在ヘラクレスとの距離は約1kmだが、すぐに追いつかれる。礼装で身体強化を施しても、逃げ切れるかは駆けだ』
背後から轟音が聞こえる。もう近くに、ヘラクレスさんが居ることが伝わる。
「戦いの衝撃がここまで、どれだけ激しい戦闘が行われてるのかしらね……怖い、ぼっち?」
「……はい。」
「そう、私もよ。でもそうね……貴女、妹いた?」
「え、あ、はい」
不意に、こんな緊張感の中でエウリュアレさんがそんは事を聞いてきた。
「そう、どんな子だったの?」
「えっと、ふたりって名前で、凄く明るくて、お話好きで、友達もたくさんいて……」
「貴女とは真逆ね…」
「あ、はい………だけど、一度だけ友達とすれ違うことがあって、凄く泣いちゃったことがあって。演奏会、凄く楽しみにしてたのに、もう楽器を持つ自信も無くしちゃって」
「……」
「だけど、前夜に私一緒に練習して自信を取り戻して、ちゃんとやりきったんです。」
「へぇ、その子の演奏はどうだったの?」
「はい、ふたりの星が一番輝いてました。」
「………ふぅん」
そう呟くエウリュアレさんは、不思議と誇らしげで、何だか嬉しそうな顔をしていた。
「ドレイクは言ってたわね、私達の姿をアステリオスなら見せなきゃいけないって。」
「はい」
「なら……折角ならアステリオスにも、そして私と貴女の妹にも、かっこいい所見せたいわね?マスター?」
「……はいッ!」
エウリュアレさんにも妹が……そういえば、ロマンさんが三姉妹って言ってたっけ?なら、尚更だ……私とエウリュアレさんで、この作戦を最後までやり切る姿を示すんだ!
『作戦を最終段階に移行、カウントダウン開始します』
「スー………フー………」
『3、2、1………0!!』
爆音、同時に私は入り口へと駆け出す。
暗がりの墓地内を、私は駆け出していく。ヘラクレスさんが私達の元へと迫り、私はエウリュアレさんを抱えながら走り出す。
「ゼェ……ゼェ……!」
『ヘラクレスとの距離500!いいぞ、このままなら逃げきれる!』
ロマンさんからのそんな通信が聞こえ、長かった鬼ごっこももう直ぐ終わりを迎えそうだった。そして、ついに私達の目の前に……
「ぼっち、アークまで後少しよ!頑張りなさい!」
『ヘラクレス接近!視認距離に入る!』
ついにヘラクレスさんの視界に私の後ろ姿が映る、その恐怖がお腹の中に急に虫が発生したかのように駆け上がる。
『振り向くな!気圧される!そのまま走りヌケ…』
「____」
瞬間、ロマンさんの通信が聞こえなくなる。同時に私は時が止まったかのように身体が動かなくなった。違う、それだけじゃない……
(い、息が、身体が動かな……だけど、これ、わたし知って……)
そう、これほどではないけどライブ前の緊張感とよく似ていた。
何となく察する、これはヘラクレスさんの殺気だと。このオケアノスで初めての純粋な殺意だ。
「ぼ……ぼっち!しっかなりさい、ぼっち!!」
サーヴァントのエウリュアレさんですら体を震わせ、青ざめる威圧。それを数ヶ月前まで単なる学生だった私が耐えれるわけがない。その恐怖から逃れようと私の本能は、楽になろうと意識を手放し、私の無価値な命に幕を閉じようと……
(まけないで ぼくのぎたーひーろー)
「ッ〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!」
その刹那に、私はギターを全力で演奏するときのように脚を神殿の石畳に渾身を振り切って叩きつけた。
太もものうちで爆発する痛み、そんなものは振り切ってやる。そうだ、このまま終われない、終われないんだ!
「わ、たしは……」
どうか、きいて
「私、は……」
ちがう……聞けよ
「私は“
「____」
私にとって、生きるとは此処にいる事の証明だ!その為に何度もギターを鳴らしてきたし、これからもそうあり続ける。ギターヒーローとして貫きたい、カルデアのマスターとして全うしたい。筋肉痛の痛みすら振り切って、そんな想いを抱えたまま再びアークに向かって走り出す!
「■■■■■■!!!」
一瞬止まってたヘラクレスさんの咆哮が、肌で感じるほどに響き渡る。
『アークのは目の前だ、一気に飛び込めギターヒーロォォォッ!!!』
「行きなさい、後藤ひとり!!」
ロマンさん、エウリュアレさんのそんな声が耳に入る。そうだ、今までもこれからもそんな思いに応える為に私は死なない……
違う、生き抜くんだ。死なないことと、生き抜くことは違う。なんとなくだけど、きっと生きるとは誰かのためにあるものだと思う。結束バンドを、そしてカルデアを決して無価値にしないために、みんなの想いに応える為に、私は生き続け、此処にいるんだとギターと共に叫び続けるんだ!!
【行ってください、マスター!】
「アァァァッ!」
ヘラクレスさんの齎す破壊を飛び超えて、ついにアークの部屋へと辿り着いた。
「………!」
私はアークを飛び越えた勢いで、背中を壁面に激突してしまう。ヘラクレスさんはそのまま進もうとしたが、目の前のアークを認識すればすかさず止まった。
「流石だね、理性を奪われてもその異質さは気にかかるか。」
直後、船長さんのその声が聞こえれば、ヘラクレスさんの背後からマシュの盾を構えながらみんなが迫り激突した。
「み、皆さん……」
「このまま触れさせる!押せえェェェッ!!」
これで無理矢理ヘラクレスさんに触れさせて終わり、この激闘もようやく終止符を打つ。
『え?』
そう思った直後、ヘラクレスさんの放った斬撃が横の壁面を切り裂いた。
「うわぁ!?」
「な、これ以上押し込めない!?」
『斬撃で地下墓地全体が崩れかかってる……まさか、自分諸共、ぼっちちゃん達まで生き埋めにする気か!?』
「そ、そんな……」
最後の最後に、そんな抵抗をするなんて予想外だった……だけど、何でそこまでしてエウリュアレさんを殺そうと……
「ヘラクレス、汝まさか!」
「そう……そうなのね……」
「エウリュアレさん?」
アタランテさんとエウリュアレさんが、何かに気付いた様子を見せる。それは、これまで暴走していると思われていたヘラクレスさんの真相だった。
「彼は
アークにエウリュアレさんが捧げられたら世界が滅ぶ、ヘラクレスさんはそれをさせない為にエウリュアレさんを殺すことで防ごうとしていた。
だけど、それだけじゃない。ヘラクレスさんには守りたかった“人”が居たんだ。そう考えてふと、私はヘラクレスさんの顔を見る。
どれほど狂気に塗れようと拭い去れぬ
【ヒィッ、解った!讃えよう!王の名をもって貴様を讃える!】
「
【だ、だからそれ以上私に近寄るな!化け物めェッ!】
生前に彼と相対した人々は彼に、畏怖と羨望の瞳を向け“化け物”と心無き者は彼をそう呼んだ。
しかし
【だが安心してほしい……私は君を優遇し使ってみせる】
決して、それだけでは無かった。
【私………コホン、オレと共にいる間だけ君は化け物じゃなくなるよ。】
傲慢で愚かな男がいた。
【つまり英雄……いや、この未来の王を護し大英雄だ!】
その男が、そう言って笑った。
【あははははは……】
その記憶を、彼は忘れない。
【オレがアイツを従えるのに令呪などいらない、二度と言うな】
勇者ヘラクレス、例え理性を奪われようと時代の消滅などに加担しない。
例え
そんな彼を、ましてや世界の消滅なんて度し難い過ちを
“
(アレは……見たことある……)
狂気に塗れていたはずのヘラクレスの瞳を見ると私は違っている事を悟り、既知感を覚えた。
【皆に見せてよ】
そうだ、それは……秀華祭でギターの弦が切れて演奏できなかった私の代わりに
【本当は後藤さんは、凄くかっこいいんだってところを!】
ギターソロをしてくれた時の喜多ちゃんの瞳と、よく似ているんだ!
【宝具 “
「く、ウゥゥゥッ!!」
放たれるヘラクレスさんの連撃、私は戦闘技術についてはよくわからない。
だけど、不思議と思った。この連撃、この技は狂気に呑まれてるヘラクレスさんでは使いないはず。だけど、イアソンさんに世界を殺さないただ一つの意思だけでそんな不条理を通してるなんて気がした。
「だめです、ヘラクレスの攻撃を止められません!!」
「い、いやです……例え、ヘラクレスさんがイアソンさんに罪を犯さないことが理由だとしても、ここで止まりたくは……」
直後、落石が直撃する。
「うぐっ!」
『………っ!』
魔術礼装の加護で致命傷にはなってないけど、それでも厳しい状況に変わりない。
『ぼっちちゃん、マシュ、清姫。30秒後に強制退去を行う』
「え…….なにを、ロマンさん!?」
『異論は聞かない、ぼっちちゃんもマシュも、誰もが死力を尽くした。それでもヘラクレスの猛攻には敵わなかった、それが現実だ。』
「それ、は……」
確かに、もうヘラクレスさんに抗う術はない。アークに押し付ける方法がもう無い、確かにそうだけど……
『たった一度の敗北で、君達を失うわけにはいかない。』
「待ってください!ここで私たちが居なくなったら、皆さんが……」
「お願いです、嫌です、やめてくださいロマンさん!」
その理由をわかっていても、私達は引きたくなかった。諦めたくなかった、だから叫ぶ、ひたすらに。
『退去の準備を』
『し、しかし……』
『早くするんだ!』
『はっ、はい!』
だけど、私たちの想いは届かなかった。
『……僕達の、負けだ』
その無情な決断が下され、私達は退去となった。
「いいや、まだだよ」
しかし、それを制止させた人がいた。
「……え」
それは、その爽やかな声をした人は……
「ダビデ、さん?」
アーチャーであり、アークの持ち主のダビデさんが私達の前に出た。
ちょっと中途半端かもしれませんが、一度ここで区切らせて頂きます……