ギターヒーロー、人理修復へと旅立つ   作:ヘル・レーベンシュタイン

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最終決戦、開始


第二十九話

 

 

現れた肉柱へと接近する最中、ロマンさんからの通信が差し込んできた。

 

『カルデアよりゴールデン・ハインド!解析結果が出た、聖杯はあの巨大敵性体の中にある!

レフを始め、様々な妨害が予測されるが……あの肉柱を倒し、聖杯を手に入れれば特異点は修復される!』

 

 やはり、あの魔神と言われた柱を倒すことが必須だと分かった。直後、煌めきが発生し……

 

「周りに魔力が集まってるわ!」

「前に出ます! 仮想宝具……展開!」

 

 最初に察知したアルテミスさんの声に反応し、マシュが即座に宝具を展開した。それで発生した爆風を防いでいく。どうにか被弾を防いだものの……

 

「マシュの負担がデカい、もっと機動できないのかい!?」

「漂流物が多すぎなんです!やってみますがぁ!」

 

 船長さんが操縦士の方にそう言ってることから、何度も防げる攻撃ではないと理解できる。

 すると、アタランテさんが私の横に立ちながら言い放つ。

 

「マスター、打撃力が足りてない。魔力を回して欲しい。」

「あ、はい!」

 

 ギターを鳴らし、アタランテさんへの魔力を供給する。直後、アタランテさんの体が黒く染まっていった。

 

「恩に着る、今ならばコレも使えよう」

【宝具纏饒 “神罰の野猪(アグリオス・メタモルフォーゼ)”】

 

 アタランテさんは、さっきまでの弓兵のような姿からまるで黒い獣と融合したような姿へと変貌した。

 

「その姿、貴女そこまで…!!」

 

 メディアさんが驚いたような表情をした直後、アタランテさんはその横を一瞬で駆け抜けてそのまま肉柱へと激突した。

 被弾箇所に大穴が空いたものの、それが即座に穴が塞がる。

 

(再生が早い、メディアの魔術か!)

「肉柱は我らで抑える、清姫!」

「わかっております! “転身火生三昧(てんしんかしょうざんまい)”!!」

 

 清姫ちゃんが宝具を展開し、火の蛇が肉柱と激突する。この調子で攻め続けて、肉柱が撃破してくれれば良いけど……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「派手だねぇ、おじさんはどこを攻めようか?」

 

 アタランテと清姫が攻める最中、その様子を眺めながらヘクトールはそう呟く。

 

「と……おっと」

 

 直後、地震に迫った狙撃を弾く。そして狙撃元を見れば、アルテミスが視線に映る。

 

「アルテミス様……警戒はしてるってか。オリュンポスの神がしっかり使い魔してるの笑えるねぇ。こっちは戦争屋の人殺しとして喚ばれたってのに。」

 

 そんな皮肉を込めたセリフを言った直後、今度はドレイクへと視線を移す。

 

「まあ仕方ないさ、その健気さに応えないと。覚悟しろよ夢見る海賊達、オジサンがらそこにたどり着いた時にそれで全て終いさ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ロマン、応援してあげよう!情報を渡せる!』

『ああ』

 

 ゆっくりとエウリュアレさんと移動してる最中、通信機からそんな声が聞こえた。

 

『なるほど、マシュが船体を防衛しながら点での打撃力の高い清姫とアタランテで肉柱に攻撃。

アルテミスとドレイクは、周囲の警戒と随時牙兵の対処。今の所上手くいってるが……』

『問題は二つ、一つは岩礁と漂流物だ。航行の妨げだけでなく、怨念めいた魔力が偏在している。レフが何か仕込んでいるかもだ。

そしてもう一つ、あの肉柱は全てが未知数。今は凌げているが防御をいつ破ってくるか……加えてメディアの魔術によってすぐに再生する。

実に厄介だ、なし崩しで始まったのも相まって色々足りない。戦術も“紅蓮の聖女(ラ・ピュセル)”のような切り札も無い。』

『ぼっちちゃんに令呪を使わせるかい?』

『無理だ、満身創痍よ今に使えば今度こそ神経が灼き切れる。

そもそも契約サーヴァントの内、三騎が宝具を展開している。とてもじゃないが、彼女に他の働きはさせられないよ。』

「っあ………ハァ、ハァ……」

 

 ロマンさんとダヴィンチちゃんの通信に耳を傾けながら移動する。おかげで周囲の状況をどうにかしれることができ、自分がどれだけの負担があるのか再確認できる。

 本当に、大量の荷物を背負ってるように体全体が重い。だけど、動かないと……

 

「我慢なさい、自分で言ったんでしょマシュの傍に行くって。近くにいればいるほど魔力供給できるからって」

「あ、はい……申し訳ないです、迷惑をかけて……」

 

 エウリュアレさんに支えてもらいながらそう言われ、謝った直後……

 

「ヒッ、骸骨の化け物!?」

 

 私とエウリュアレさんの前に、無数の髑髏が襲ってくる。それを見ているレフの高笑いが聞こえてくる。

 

「ハハハハ!残骸共が生者に惹かれて這い出たか!」

「ぼっち!」

 

 咄嗟に船長さんが割ってきて、銃撃で迎え撃つ。だけど、一掃は出来てない。

 

「ソレはこの海で死んだ人間の妄念怨念!ソレが人理の修復者に牙を剥く、全く人類とはつくづく救い難いなぁ!!」

「……!!」

 

 思わず私は言い返したくなった。確かにこの人達は、悪人かもしれない。船長さんが前に言ってたことを思い出す。

 

【アレが海賊の最期さ。何でもかんでも欲しがって、最後には惨めに破滅する。アンタが生まれるずっと前、そんな阿呆がたくさんいた。】

 

 船長さんが世界一周を目指していた以上、きっと現代人と違って、地球や海がどこまで広がってるのかわからない人が沢山いたはずだ。

 だから、水平線の先に道があって、そこに希望があるのだと夢を見て、そして多くの犠牲を出して海底に沈んでいった人たちが沢山いたんだろう。だけど、かと言ってそんな一方的に見下すレフの言い種が、気に食わなかった。

 

「可能性を信じて、何が悪いんですか……!」

 

 あの人あの時、ギターを手に取って、そしてその姿に目を輝かせた私のように。その先に希望を抱いて、前に進めた人たちだっていた筈なのに。

 

「マスター!」

 

 マシュが私たちのピンチに気付き、ついこちらへと視線を移してしまう。すると……

 

「良くないなマシュ・キリエライト、君は君自身の心配をするべきだ。例えばほら……」

 

 レフからの嘲笑の声が差し込まれる。

 

「視られているぞ」

 

 肉柱の巨大な瞳が、真正面にマシュを捉えていた。直後、マシュの身体から一人でに火が発生する。

 

「マシュ!?」

(人体発火現象!?まさか、あの眼の一つ一つが魔眼なのか!?)

「くっ、こんな……!!」

 

 このままでは不味い、マシュが燃やされちゃう!?

 

「こちらに気を向けさせる、行くぞ清姫!」

 

 アタランテさんと清姫さんが事態に気付き、支援に入ろうとした。その瞬間だった。

 

【“漂流の時”“来たれり”】

「____」

 

 さっぎで魔力に満ちていた二人が、一瞬にして沈静化した。

 

(この化け物、言葉を……いや、それより魔力を触れた!?まずい、これは……!!)

【魔力充填、完了。その痕跡を消す】

 

 肉柱からその声が発生したと思えば、船の下……違う海面に膨大な光が発生し……

 

【焼却式・フォルネウス】

 

 轟音と共に爆光が、船ごと私達を包んだ。どうなってしまったのか、もう私には認識ができない。

 

『なっ…!?』

『ゴールデン・ハインド直下から閃光、超高出力の魔力を検出!!』

『船は!?』

『信号は健在、ですが閃光で状況が……映像来ました!ゴールデン・ハインドは…』

「う…」

『そ、そんな…』

 

 通信の声が聞こえるさなか、煙が晴れて近くを見れば船の一部が焼き焦がれて半壊している状況が視界に移る。そして…

 

「ぐ、う…無事かいぼっち?」

「あ、は、はい、ありがとうございます船長さん……で、ですが船が…」

 

 私の体の上には船長さんがいて、どうやら爆光からは船長さんが体ごと私を覆って直撃を防いでくれたようだ。

 

「ああ、ちくしょう…これじゃ航行不能だ。しかもマシュが船を守るために…」

 

「え…マシュ!?」

 

 見渡せば、少し離れたがれきにマシュがしがみついて横たわっていた。

 

(どうする?次、もしも喰らえば船が沈む。今までの間隔からして十秒もない。その間に何ができる?何か、何か、何か、何か……!!)

 

 瞬間、突如として海面から船が現れて何故か追撃を防いでくれた。その現象に誰もが、レフですら眉をひそめていた。

 

『な、なんだ…船が突然現れて…盾になった?』

【その聖杯は大切に___】

 

 その瞬間、船長さんの顔に痺れが走った様に見えた。

 

「野郎共!アタシを守れぇ!」

 

 直後に、船長さんはそう叫んだ。言葉だけ聞けば、まるで自分の身を守るためだけの言葉に思える。

 だけど違う、私はそう確信している。これはあくまで逆転をするために溜め込む気だ。だって船長さんは、リスクを承知で黒ひげさんと正面から殴り合える人なんだから。だから……

 

「アイツを打ち倒す準備をする、その為に時間を稼いでくれ!!」

 

 事実、その確信を裏付ける言葉が出てきた。ならば、それを支援する為に私たちは立ち回らないといけないけど……

 

「なるほどね」

 

 それを阻止すべく、既にヘクトールさんが船長さんの懐へと距離を詰めていた。

 

「やっぱりアンタが一番危険だ、そいじゃあ……ここで滅びな人類史。」

 

 彼の握る槍が、船長さんの心臓へと伸びるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【一番気をつけなきゃいけないのは、ヘクトールなんだよ。】

 

 これは、少し前の時間の記憶。不意にオリオンさんが私とエウリュアレさんに向かってそんなことを言った。

 正直最初は、普段はおふざけな雰囲気の強いオリオンさんが急に真剣なことを言ってなにか血迷ったのかと思ったほどに。

 

【君たち二人、失礼なことを考えてるのわかるからな?】

 

 どうやらエウリュアレさんも同じだった様で、そう指摘される。そして直後、一度咳払いをしてオリオンさんが再び話を続ける。

 

【今までの感じでわかるだろう?アイツは一番嫌なタイミングで、一番嫌なことをしてくる。それを止めなきゃ、俺たちは敗北だ。】

 

 何処かで聞いたことがあるけど、スポーツといった対戦系で一番求められるのは“相手の一番嫌なことを実行すること”なんだとか。

 本当かどうかはわからないけど、ヘクトールさんがやってるのがまさにそれで私達は確実に翻弄されてるのだから、その説の説得力を感じる。

 

【………それを私達に言ってどうするの?】

 

 そう、だけど疑問点はそれだった。脚に拘束をされてほとんど動けないエウリュアレさん、そしてヘロヘロで足が筋肉痛な私にそれを言ったところでヘクトールさんを阻止できるとは思えない。闘えるマシュや船長さんに、言うべきだと思う。

 

【……俺達は全員足手纏いだ。ほぼぬいぐるみの俺は戦力にならないし、お前ら二人は足が機能してないに等しい。

たけど、だからこそだ。ヘクトールは俺達を見ない。そこにきっと、俺がつけ入る“隙”がある】

【……】

 

 そうか、逆転の発想だ。客観的に見れば、戦力外な私達はどう動いたところで影響力がないから、おそらくヘクトールさんの優先順位が下だ。

 そんな私達だから、後ろから狙える可能性があるんだ。

 

【ただぼっち、ヘクトールも言ってたがお前の礼装はどうしても大きな音が鳴る。そのワンテンポが、アイツの動く隙を生んでしまうからな……瞬間強化も緊急回避も、どちらもヘクトールに聞かれてる。】

【うぐっ……】

【それは仕方ないでしょ、ぼっちは音を通して魔力を注ぐんだから無音にするわけにもいかないし。】

【まあな、こればかりはしゃーない。ヘクトールを倒せないかもしれないが、せめて致命傷だけでも……】

【……あっ】

 

 その時、私はふと思い出した。ヘクトールさんは、私の強化を音で判断してた、なら……思い立った私は海賊の人へと声を掛ける。

 

【あ、すみませんそれをください!】

【お、おお?コレをか?まあ、別にいいが……】

【あ、あ、ありがとうございます!】

【………ぼっち?それって……】

 

 貰った“ソレ”を二人に見せると不安そうな顔になるが、私はそれがどう言うものか既に知っている。だから、それを説明すれば……

 

【……そう、それならもしかしたら】

【いけるかも、しれないな。】

 

 そう二人は不敵に笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして……鳴り響く金属音。

 

「見てからじゃ間に合わねぇ……だから“読ませてもらった”ぜ大英雄。」

 

 ヘクトールさんの槍は船長さんの心臓に届かず、オリオンさんの棍棒が進撃を防いでいた。

 

「“三つ星の狩人(トライ・スター)”の心眼、舐めんなよ!!」

「!!」

 

 オリオンさんの叫びが、ヘクトールさんの顔を僅かだけど青ざめさせた。そしてすかさず仕切り直ししようと距離を取る、その瞬間こそ私は待っていた。

 

(敵陣で隙はマズいな、誰が狙ってる?)

 

 直後、轟く雷鳴と共に私はすかさず音を鳴らす。だけど……

 

(これは、アルテミスやアステリオスにやった音じゃねぇ!?)

 

 そう、今回は違う。私はある細工をして演奏している。だけど齎す効果は、本来ならヘクトールさんも知ってるものだ。

 

(クソ、どちらにせよアルテミスかアタランテの強化か?だが二人の位置は把握している、それさえ知ってれば、確実な対処を……)

「“緊急回避(バック・ブリンク)”、“瞬間強化(ブーステッド)”」

「____」

 

 演奏する私の左手には“酒瓶”が握られておりそれをギターの弦に当てながらする演奏、即ち“ボトルネック奏法”だ。その演奏を続けていく最中で、ヘクトールさんの背後に現れたのは“本来動けないはず”のエウリュアレさんだった。

 そう、私のスキル二つをボトルネック奏法という“未知”の音源。そして動けないエウリュアレさんをそれで無理矢理動かすと言う二重の衝撃、それがヘクトールさんの心理を漂白させたのを確信した。なら、その隙を私達は逃さない。

 

「宝具 “女神の視線(アイ・オブ・ザ・エウリュアレ)”」

 

 そして彼女の放った矢が、無防備なヘクトールさんの心臓を穿った。

 私は無心で演奏し続けていて、特にどんなテーマかも考えてない。それでもあえて曲名をつけるなら“三位一体の逆襲譚(トリニティ・ヴェンデッタ)”と名付ける……かもしれない。

 

「がっ……!」

「ぼっちのボトルネックってのを通して、超速回避の応用と超強化を施したのよ。あなたは私達を見なかったけど、私達は貴方から目を離さなかった。私たちは所詮は端役、この決戦の運命に紛れた程度の砂粒に過ぎなかった。だけど貴方を天から堕とすには充分だったみたいね。

アステリオスを殺したあなたを……さようなら、悪役のオジサン。」

「……けっ、やっぱり慣れない悪役はするもんじゃないな。

じゃあな、姫様…….どうか最後まで、良い夢を。」

 

 そう言い残して、ヘクトールさんは姿を消した。

 

「…….ありがとうランサー、最後まで私を間違ってると言わないでくれて。

戦いを終わらせましょう、イアソン様!そして幸せな夢を果てるまでッ!」

 

 メディアさんがそう叫んだ直後、再び海面から光が発生する。

 

(またあの攻撃か!)

「メディアぁ!」

(どうしよう、どうしようどうしよう!?次、あの光を喰らったらもう船はもたない……)

 

 と、思った直後に近くから海に潜る音が聞こえた。それは……

 

「マ、マシュ!?」

『無茶だマシュ、やめるんだ!!』

 

 やはりマシュだった。

 

『いくらなんでもゼロ距離なんて、君の体が保たない!』

(起点は先程の攻撃捉えました、スキルと宝具で重ねればある程度は……)

「……酷いな、なんて悪質な成長だ。そんなモノ、守る価値などありはしないだろうに……」

 

 レフのそんな呟きが耳に入り、その最中に私は………

 

 

 

 

 

 

 

 

【ははは、良い曲だねぼっち!そら、踊ろうかアステリオス!】

【う、う?】

【ほら、こんなふうに手を取って……】

 

 それは黒ひげさんとの決戦前の夜、火を囲んで踊っていた時だった。私はギターで曲を奏でており……

 

【楽しいですね、先輩……】

【あ、はい……】

【……ずっと、考えていることがあるんです。】

 

 隣に座ってるマシュが語り掛けていた。

 

【船長は世界一周を成し遂げた偉大な人物です、しかし同時に多くの悪行を成した悪人でもあります。

奴隷を売り、略奪を繰り返し、欲望のまま人を殺めた。ですが私は、嫌いになれないんです。船長は私に海を見せてくれました。とても嬉しくて、きっと私は船長のことを好きになってしまったんです。】

【……はい、私も。】

【だからこそ船長は、この海に居た方がいいんじゃないかって。】

【……え?】

 

 それは、マシュにしては珍しい意見だった気がする。

 

【船長の最期を知ってますか?】

【い、いいえ】

【……病死なんです。53歳の頃に疫病で、それだけでなく錯乱して病床で奇行を繰り返すようになって、そうやって死んでいった。

華々しい船長がそんな風に亡くなるのが、私嫌に思ってしまいまして。世界一周なんかしない方が、船長は幸せになれるんじゃないかなって……】

【……確かに、船長がそんな最期で死ぬのは嫌に感じます。】

【先輩……】

【でも……】

 

 私の脳裏に船長と、そして虹夏ちゃんの顔が浮かび上がる。

 

【マシュと同じように、私も船長さんが好きです。だから幸せになってほしいしですし、それと同じように……好きな人の“夢”も、叶ってほしいと思います】

 

 

 

 

 

 

 もしかして、マシュはあの夜に私が言ったことを思い出して……

 海面からでは見えにくいけど、マシュがスキルと宝具で極光を防いでいると伝わってくる。

 

(私にはまだわからない……何が正しくて、どっちが間違っているのか。

それでも、一つだけわかることがある…….私はこの海でまた、たくさんの好きな人と出会えた。その人たちを、そして先輩を、こんなところで死なせたくないんだ!!)

 

 だけど、それでも限界が近いことがわかる。

 

『だめだマシュ、離脱してくれ!それ以上は……』

(ダメだ、もう令呪で強引に戻すしか……)

「ぼっち!?」

 

 身体に鞭を打つように無理矢理動かし、令呪を起動して弦を弾こうとした。その時だった……

 

「あんがとよマシュ、もう大丈夫さ」

 

 船長さんの声が聞こえ、大きな水柱が発生した。

 

「………何?何故、残っている?」

「プハァ!ハァ…‥い、今のは一体?船自身から魔力障壁が……」

 

 マシュの無事が確認でき、ほっと胸が撫で落ちた。だけどどうやら、マシュにすら不可解なことが起きてるようで……

 

「髭の野郎、こうやって聖杯を使ってたんだね。死ぬ前に聞いときゃよかったよ、でも間に合ったからいいさ。

力を引き出すついでに、色々と引き出しちまったのはアレだけどね。」

『……どういうことだ?ゴールデン・ハインドに流れる魔力総量が桁違いに上がってる……まるで宝具だ……

でもいくら聖杯だからって、人間にこんなこと……』

 

 わかることは船長さんが突如パワーアップしていること。だけどロマンさんの通信を聞くに予想以上らしく、納得しているのは船長さんだけのようだ。

 

『できるさ』

『?』

 

 ……違う、どうやらもう一人いる。

 

『それがどれだけ不可能なことであろうと、彼女の前にはその可能性が拓かれる。』

 

 ダヴィンチちゃんは、この現象を納得しているようだ。

 

「……女、ただの海賊が何故に御柱の焼却式から逃れた?貴様は、何者だ?」

「知らない?そう?じゃあ……アタシの名前を覚えて逝きな」

 

 レフ・ライノールの問い掛けに、船長さん……

 

「テメロッソ・エル・ドラゴ “太陽を落とした女”ってな!!」

 

 フランシス・ドレイクがそう名乗りを挙げたのだった。

 

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