ギターヒーロー、人理修復へと旅立つ   作:ヘル・レーベンシュタイン

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結果的に9月と同時の更新になってしまいました……


第三十一話

 

 

『敵巨大構造体消滅を確認、ならびに聖杯の回収も完了……特異点の修正が始まる。つまり……君たちの勝利だ!!』

「オォォォッ!」

 

 ロマンさんの通信の声で、完全な勝利を確信し私達、特に海賊の人達が大歓喜の声をあげる。

 

「うおおお!!見てたかよ、今の戦い!」

「流石俺達の姉御だぜ!!」

「ぼっち、お前もよく頑張った!立派だったぜ!!」

 

 そう言いながら私の肩に手を伸ばして、手を掴もうとした。思わず私は身を固めるが、しかし私の肩に手があたることがなかった。

 それどころか、海賊の人達がみんな姿が透けていく。

 

「おわああああ!?」

「ああ、そうかい……風が止んだ、修正ってやつだね。この海に終わりが来たんだ。」

 

 その様子を見てた船長さんが、どこか寂しそうにそう語った。だけど一変して声を張り上げる。

 

「だがこれはいい終わりだ、アタシ達の海が戻ってくるよっ!」

「なるほどな、この海ともお前達ともお別れって奴だ!!」

 

 海賊の人達はそう言いながら笑って、触れられない私の肩に何度も手を叩きつけている。

 

「ワハハハ!亡霊達も消えてくぜ!雑兵から消えていくのは常だよな!」

「じゃあなマシュちゃん、ぼっち!船長を助けてくれてありがとうよ!」

 

 そしてもうそろそろの別れを悟ったのか、手を振って海賊の人達がそう言ってくる。それを見てマシュが笑みを浮かべて答える。

 

「そんな……私達こそ、皆さんに会えて良かったです。」

「お………おおぉぉぉ!!たくよぉ、最後に泣かせやがって!

良いか?オレらはいずれ縛り首だが、2人はまともな人間だ!これに懲りたら海賊なんぞに関わるなよー!!」

 

 なんて、物騒さを感じさせながらも海賊の人たちは涙を流しつつも豪快な笑みを私達に見せながら消えていった。

 

「はー、やっとここから帰れるわ!」

 

 次いで現れたのは、頭にオリオンさんを乗せたアルテミスさんだ。

 

「さぁ行きましょうオリオン!愛の逃避行へ!」

「お前ね……もうお別れになるんだぞ、なんか言うことあんだろ!?」

「ええー?きっとまた会えるもの、カルデアに流れた月女神は宙の果てまで待ってるわ!」

 

 と、アルテミスさんは笑みを浮かべながら手を振って消えていった。

 

「訳わかんない事言いながら先にいっちまいやがった……ま、俺もぼっち達と会えて良かったぜ。次は違うナリで会いたいもんだ。」

 

 オリオンさんは私の腕に飛びつき、そう言ってきた。確かに、ぬいぐるみじゃない姿も見てみたい。

 

「んでマシュちゃん?あいつも居ないし、お別れのキスとか……」

(ぬいぐるみでもキスとか伝わるのかな?)

 

 と、オリオンさんが口を近づけようとした瞬間……

「ダーリン逝くわよ?」

『ヒュ……すんませんすんませんすんません……』

 

 と、思わぬアルテミスさんとの再会劇が瞬間的に起こり、2人は去っていった。

 

「……正直、あのアルテミス様と顔を合わせたのは初めてだが、これからどう敬えばいいのだろう……」

「あ、アタランテさん……」

 

 背後から困惑の声が聞こえ、そこにはアタランテさんがいた。

 

「元の姿に戻って……」

「ああ、短い間だが契約してもらって助かった。おかげで目的を果たせた。」

(それって……イアソンさんを……)

「アイツに同情してるなら不要だぞ?」

「えっ?」

 

 私の内心を悟ったのか、アタランテさんは語り始める。

 

「知ってるか?今回のアルゴー号はメディアの魔力で動いてたんだ。彼女が私を喚んだ時もフラフラだったよ」

(あの船をメディアさん1人で……)

「大事にする、大切にする、なんて本気で思いながらそういうことをする、どうしようもない奴なんだ。」

「……でも、それでもアタランテさんはアルゴノーツなんだすね。なら、やっぱりアルゴノーツは凄いんですね。」

「……そうとも」

 

 私の問いかけに、アタランテさんは誇らしそうに笑みを浮かべながらそう答えて、消えていった。

 私も叶うのならば、結束バンドのことを誇らしくそう答えたいな。

 

「次は私かしら。」

 

 そう思ってたら、現れたのはエウリュアレさんだ。みれば、足の紋様が消えている。

 

「やっと動ける様になったけど、酷い海だったわまったく……ま、アイツに会えたのは悪くなかったけど。」

「はい……」

 

 それが誰のことを指してるのかは、言うまでもないこと。同時に視界の端に、清姫ちゃんが映り……

 

「でも結局何で私が喚ばれたのかは分からなかったわ……土地かしら?それとも、何かの連鎖で……ま、良いわ。それよりもぼっち、屈みなさい。」

「え、あ、はい、私のですか?」

「そう、ご褒美よ。早くしなさい。」

「あ、はい……」

 

 そして言われた通りに姿勢を低くした瞬間……

 

「チュッ」

「!?」

「!?」

 

 頬に柔らかく、心地よい香りが漂った。なにがおこったのか、わたしにはりかいできなかった……

 

「あの子にしてあげた誠実さを大切にね、きっとソレがあの子じゃない誰かを救うわ!」

 

 と、とんでもないことを置き土産に、そしてその言葉を言い残してエウリュアレさんは消えていった。

 そして、明らかにマシュさんと清姫ちゃんが唖然としている空気感が伝わる。

 

「さ、さすがは麗しの女神……最後の最後でやられてしまいました……!」

「私よりも先に頬を……なんたる不覚…!」

(な、なんで『やられて』しまった?なんで『不覚』なの!?)

「遊んでんじゃないよ、アタシが残ってるってのにさ」

 

 マシュと清姫ちゃんのセリフに困惑した声が聞こえると、直後に船長さんの声が差し込まれた。その顔からは、どこか達成感とかを感じるものの……

 

「さて、何から話そうかね……まぁでも、この格好か?聖杯が色々くれてねぇ!」

『色々……か』

(あ、そうか……ならマシュが話して事も……)

「やはり君は、英霊としての“力”だけじゃなくて……」

「ああ“記憶”もさ。これからアタシが“どういう風に生きるのか”なんとなく知ってる」

「そ、それは……」

(やっぱり!)

 

 マシュの言ってたことが本当なら、偉業を達成できる反面、自分が病気になって終わる事も同時にって事で……

 だのに船長さん、まるで悲壮感が無い。本当は辛いはずなのに。私なら、耐えられる気がしない。

 

「いいのさ“特異点が消えればこの海であったことを”全て忘れる。この記憶もね……残念なのは、アンタ達との世界一周が無理だってわかったこと、それぐらいさ。」

「………でも」

「……悪党の末路なんて、決まってるからね。知ってたって驚かないよ……だって、そうだろ?」

 

 すると船長さんは両手を広げる、まるで自分の夢を語る小さくても希望に溢れた少年少女の様に。

 

「人生ってのは死ぬコトがわかってからが面白い!

必ず死ぬからこそ今を楽しく生きたくなる!

 

おぼろ気だけどわかるよ、きっとアタシ達は死ぬ気で旅して、その果てに、ほんのちょっとこの広い世界の数多くある道の一つを拓いた。

 

馬鹿みたいに騒いで、手酷い後悔をくらって、それでも……どんな風に飲まれても、アタシ達は懲りなかった。

 

それはなんて幸福で、はた迷惑で、アタシが望んだ通りの終わりなんだろう。だから良いんだ、アタシの最期なんて。」

 

 船長さんはそう言いながら船の柱に手を伸ばし、空を見上げながら笑顔をしていた。その姿を見ているマシュは、どこか瞳を輝かせている気がする。直後、マシュの顔に少し影がさす。

 

「はい……でも残念です。」

「?」

「船長との約束守れませんでした、アステリオスさんにも託されたのに……」

「ああ……望みを見つけるってやつかい……いいかい、マシュ。」

「?」

「悪人が善行をなし、善人が悪行をなすこともある。それが人間だ、それがアタシ達だ。

アステリオスがアタシ達を守ったように、イアソンが平和な国を望んだようにね。」

 

 脳裏に浮かぶのはアステリオス、そしてイアソンさんの顔だった。そして船長さんは、指をマシュの胸元へと差しながら更に話を続ける。

 

「つまり、どんな人間も望みを持ってるものさ。もちろんマシュだって……アンタはまだ気付いてないだけ、そんでそのままでいいのさ。」

「……いいのですか?」

「ああ、きっと最後にわかるさ。アンタは何をする為に、最期までその盾を振るうのかってね。」

「……はい、ありがとうございます」

 

 船長さんがマシュの手を掴みながらそう言い、マシュは感動した顔をしながらそう答えた。すると、船長さんの体に光が漏れ始める。

 

「……そろそろ本当にお別れだね……

じゃあな、マシュ、清姫、ぼっち。それと軟弱な学者先生、時代を救った報酬はそうだね……アンタらの旅の終わりに、アタシとの旅は楽しかったって、思い出してくれればそれで良いのさ!」

 

 とびっきりの笑顔を浮かべてそう言う船長さん……この旅で過酷なことは多かったけど、船長さんの見せてくれた景色はすごく印象に残ってて、涙を流す事もあったけど、同じくらい楽しかった事もあった。

 そして、無事にこのざだちあの旅をこんな風に綺麗に終わらせられた。

 

「はい……はい!さようなら船長さん!」

 

 だから、お別れだとしても笑顔のお別れだから私も嬉しくて……

 

「どうか、良い航海を……」

 

 

 

 

 

 

【実に 下らない】

 

 そう思えたのに

 

「__え?」

 

 謎の声が聞こえて、直後に床に何かが落ちる音が聞こえて

 

「星の開拓者か、やはり人間は“時代(トキ)”を重ねるごとに劣化する」

 

 それが船長さんの首で、私達の目の前には手が船長さんの血で染まった褐色の男性が居た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何が起きたのか、わからない

 

『ぼっちちゃん、マシュ!何が起きた!?』

 

 わからない………わからない……

 

『突然、映像が途切れて音声だけに……教えてくれ、なぜ君達の前に突然、新たな霊基反応が検出されたんだ!?』

 

 なんで、なんで……

 

『何故、目の前にあった……ドレイクの世代反応が突然消滅したんだ!?』

 

 なんで急に、船長さんは殺されたの!?

 

「船長ぉっ!!」

 

 明らかに動揺しているマシュが船長さんの元に駆け出そうとしたものの、清姫ちゃんに腕を掴まれて止められる。

 

「き、清姫さん!?」

「駄目です!近い、ては……」

(清姫さんが怯えて……!)

「落ち着くといい、盾の娘。」

 

 唯一この場で一番落ち着いてて、そして元凶の男の人が話し始める。

 

「……上手く騙したものだ、“幻術”とは」

 

 直後、男性の手元に船長さんの首が浮かび、そして花弁となって霧散した。

 

「何が、どうなって……」

『落ち着きたまえ3人とも!結論から言ってドレイクは死んでない、ギリギリの所で退去が間に合ったのさ!』

 

 ダヴィンチちゃんからの通信が聞こえ、どうやら船長さんは無事らしい。それなら良かった、ひとまずは安心だけど……

 

「カルデアか、声だけは届くようだな。幻術の使い手がいるとは聞いてなかったが……まぁ、どうでもいい事だ。フラウロスの失態だろう。」

 

 そう語る男の人の視線が、一瞬だけフォウくんに向いた気がする。それが何を意味するかは私には分からない。

 

『フラウロス、レフの事か……』

(レフのいう『王』とはこの声の主なのか?“フラウロス”に“フォルネウス”……そんな、まさか……)

「貴方は誰なんですか?」

「ひ、ひとり様!?駄目です、私の後ろに……」

「………」

 

 私自身、自分で言った事なのに驚いていた。普段の自分ならありえない事、そう自覚はしてる。

 

「___ああ、そうだったな。」

 

 男の人は少し間を置いて、まるで探してた本を見つけたかのように語りだす。

 

「間に合わせの48番目“後藤ひとり”、私がわからぬのも無理のない話か。」

「………」

「失礼をした、では教授してあげよう。“フラウロス”に“フォルネウス”とは、ある“王”の使い魔の名。使い魔達の総数は七十二体、故に彼等は『七十二柱の魔神』と呼ばれ、王は彼等を使い国を治めた。

王の名は“ソロモン”旧くは古代イスラエルの第三代王、今は魔神を従え人類を滅ぼすもの。」

『そん、な……』

 

 通信越しのロマンさんの声、それは絶句していることが伝わる。そうか、私たちの目の前にいる男の人は、ソロモンっていう王様なのだと流石の私と理解した。

 

「ソロモン王……!」

「人類を滅ぼすものと言いましたね!マシュ、盾を!この男が人類滅亡の黒幕ならば、ひとり様を殺す気の筈!」

「怯えるな竜の娘よ、私は戦いに来たわけじゃない。」

 

 戦闘の構えを取ろうとするマシュと清姫ちゃん、それを収めるようにソロモンという人は清姫ちゃんの背後を取りながらいう。まるで、1人だけ時間の流れが違うかのように。

 清姫ちゃんは、顔を青ざめながら硬直してしまっている。

 

「賢明だ、下手に動かぬのは正しい。振り返って炎を吹けば、己が主人も巻き込むところだからな。

そもそもだ、私はお前達を敵と認識していない。」

「な……」

 

 私達を敵と認識してない……とのこと。船長さんを殺そうとしておきながら、この人は……

 

 

『ドレイクを殺そうとしたとは思えないセリフだね……』

「気まぐれだよ、だから下手に動くなと言ってる。」

(ぼっちちゃん達を殺さないのも気まぐれということか……)

「だったら、何しに来たんですか?」

『ちょっ、ぼっちちゃん!?』

 

 マシュ、清姫ちゃん、果てには通信先のダヴィンチちゃんすら言葉と行動だけで圧倒しているソロモン……と名乗る人。

 

「…………」

 

 ヘラクレスさんに圧倒されたあの時、それすらも超える恐怖と緊張感。普段の私だったら目線を逸らしてすぐに何処かは逃げ出したくなるだろうけど、不思議と何故か私はその人の視線とぶつかり合っていた。

 

「___それは、私の台詞だな。」

 

 だけどなんとなくわかってきた、それは……

 

「お前達こそ“何を”している?」

「え?」

「特異点を修正して、どうする?」

 

 この人こそが、私の本当の“敵”だからだ。

 

「7つの特異点を修正すれば、人類の滅亡を防げると本気で思っているのか?

思い違いだ、7つ越えようが私を倒さねば“意味が無い”」

「意味が……ない?」

 

 マシュの声が震えている、何故なら私たちの今までの旅の無意味さを示しているからだ。ショックを受けて当然と言える……だけど

 

「それとも、なんだ……お前達は……まさか……」

 

 ソロモンが私に歩み寄ってくる……だけど目を閉じるな。目の前の敵を見失えば全て終わりだ。

 

「私を倒せると、思っているのか?」

「せんぱ___」

「ひとり様!!」

 

 そして過去最高の至近距離で睨みながら、ソロモンがそう語ってくる。そして、その異形な瞳が私の視線と交差する。怖い、だけど決して逸らさない。

 

「特に貴様だ、後藤ひとり。貴様は己を証明できたと思うか?ヘクトールとの交戦を見たが、あの程度では私の脅威ですらない。

それを踏まえても、貴様が掻き鳴らすその音に、人理を救う価値があると本気で信じているのか?」

「………」

 

 視線を逸らすな、私の想いが揺らいだら全てを奪われる。

 

「……慈悲と忠告だ、幼き人間よ」

 

 そう言ってソロモンは、嘲笑うかのような表情をし、直後に私から視線を移して私を含めたカルデア全体へと語りかける。

 

「何故戦う?

 

いずれ終わる命、もう終わった命と知って

 

なぜ、まだ生き続けようと縋る?

 

お前たちの未来には、何一つ救いがないと気付きながら

 

 

…………分かっているだろう?

 

 

全てを棄て、無意味に死に、その未来を閉じよ

それが残されたお前達にとって、最も楽な生き方だ

 

 

特異点攻略など好きにしろ、手出しはせん

 

 

 

だがこの言葉を聞き入れぬ限り

 

 

 

末路は一つだ

 

 

灰すら残らぬまで燃え尽きよ、それが貴様らの未来である」

 

 

 

 そして私達は、曰くソロモンの忠告を最後にオケアノスの海原からカルデアへと戻ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

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