ギターヒーロー、人理修復へと旅立つ   作:ヘル・レーベンシュタイン

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オケアノス編、最後です


第三十二話

 

 

「やぁ」

 

 目が醒めて、カルデアに戻ってきた。その瞬間に聞こえたのはダヴィンチちゃんのそんな声と、その綺麗な顔がお出迎えしてくれた。

 

「締まらない退去にになってしまったね、取り敢えず……皆の元へ行こうか、特製の車椅子も用意したよ。」

 

 どうやら私の身体がズタボロなのは予想されていたようで、可愛い猫の頭のついたまさに『特製』の車椅子に乗せてもらえた。

 そして私とダヴィンチちゃん、マシュと清姫ちゃんと一緒に管制室へと入る。すると、そこは……

 

「……………」

「……………」

 

 職員のみんな、全員が暗い顔をし項垂れていた。顔を手で覆ったり、無気力に背もたれにもたれてたりと……そして……

 

(ロマンさん……)

 

 その中で、一際暗い雰囲気に覆っていたのはロマンさんだった。なんで、皆さんそんな風になってて……

 

「あ、あの、みんな……」

「いやーごめんね!大人は全員うちひしがれちゃってるんだ!天才の私以外はね!!特にこいつがひどい!!」

 

 私の声を遮る様に、ダヴィンチちゃんの声が差し込まれた。そして、ダヴィンチちゃんはロマンさんの襟首を掴み、持ち上げる。

 

「あ、ああ二人とも帰ってきたのか……ごめんね、色々と調べることがあって」

「あ……なにか、わかったのですか?」

「良かったことは、一つだけだね。色々バタバタきてしまったが、間違いなくドレイク船長は無事に元の時代に戻ったってことだ。今頃は元の時代で目覚めていることだろう。」

「それなら、本当に良かったです……」

 

 ダヴィンチちゃんのその報告を聞いて、私は少し安心できた。だけど、良かったことが一つだけと言うことなら……

 

「その、他にはあるのですか?」

「あの王の言葉が“本当”だということだ。」

 

 あの、唐突に現れた褐色の人。曰く、ソロモン王の姿が私の脳裏に浮かび上がる。

 

「どう言うことですか?」

「ぼっちちゃんが目覚めるまでに、あらゆる観測値を再精査した。彼の言葉が“嘘”であると証明する為に。

だができなかった、おそらく“本当に”7つの特異点を修正しても“あの男(ソロモン)を倒さない限り”世界は滅んだままなんだ。」

 

 それは、私が冬木の特異点を解決した後にロマンさんか聞いたら話、特異点修復だけじゃ足りない。ソロモン王を倒さなきゃ根本の解決にならないことが決まったと言うことだ。

 

「なら、ソロモン王を倒せばいいんですね?」

「ああ、そこが問題でね。先ずはソロモン王を説明しようか、映像を。」

 

 そう言いながらダヴィンチちゃんが手を挙げれば、映像が現れて古い絵画が映し出される。

 

「ソロモン王は紀元前1011年〜961年の人物で、古代イスラエル王国の三代目の王。イスラエル神殿の建築や様々な政策を行い、古代イスラエルを最も栄えさせた王と言われている。

同時に魔術師としての逸話も多く、英霊として召喚されたなら『魔術師(キャスター)』のサーヴァントになるだろうね。」

「なら、キャスターのサーヴァントとして私たちの前に現れたんですか?」

「………そこなんだ。彼の霊基出力は桁違いだった、サーヴァントという枠で収められない程にね。

現に彼は、我々やマシュが構えていたにもかかわらず、ぼっちちゃんの喉元へと迫った。“大英雄(ヘラクレス)”でさえできなかった事だよ。」

「私は、平気です。」

「だが、大人達は平気じゃなかった。」

 

 私の言葉に、ダヴィンチちゃんは変わらない淡々とした口調で続けていく。

 

「ただでさえ聖杯戦争は常に綱渡りだった、今回で言えば君もマシュも二人とも文字通り死に掛けた。それでもアステリオスとダビデの犠牲、ドレイクの宝具がなければ我々は勝てなかった。

そうまでして成し遂げてきた旅を、無意味と言われ挙句、君が黒幕に命を握られてる時でさえ、何もできなかった。その事実に、凡人達は折れてしまったのさ。」

「………」

「私は天才だから平気だけどね。」

 

 そうか、無意味と断言したソロモンの言ったことが本当でみんな悔しいんだ……私はそう理解した。

 そこでふと、私はさっきから気になることを聞いてみる。

 

「あ……ダヴィンチちゃん。このボタンはなんですか?」

「ブースターだね、飛ぶ様に移動できる仕様になってるんだ。私特製だからね。」

「あ、はい……ありがとうこざいます。」

 

 早速押してみた。すると、起動音がなって車椅子の背後からブースターが噴出され……

 

「先輩ーーー!?」

「アハハハハハ!!」

 

 頭部に激痛、直後に激しい音が鳴り響き私は床へと放り出された。

 

「え、いた……何、痛……は、これ何?今誰かぶつか……誰?

え、わー!!嘘、ぼっちちゃん!?」

 

 どうやら私は車椅子の噴出でロマンさんと激突した様だ。ロマンさんも大分痛い思いをしたようだ。そして当然、私も痛い。身体は当然、今強打した頭も痛くて……

 

「君、全身ボロボロで骨折れてんだよ!!何考えてんのー!?」

 

そうだ、ボロボロの私は当然痛いわけであって

 

「お別れは笑顔で」

「え?」

「その言葉……」

 

 それが成せなくて、心が一番痛いんだ。

 

「フランスでモーツァルトさんとジークフリートさんが教えてくれたこと、私すごく好きなんです。」

 

 カルデアに来る前、結束バンドとして四人でロックを続けていた。だけど、永遠に永久不変に続けることなんてできないと考えていた。

 事故、病気、結婚、或いは家族との問題とか色々な現実が訪れて、いつの日にか別れが来るかもしれない。だけどそんなお別れが訪れても、みんな笑顔なら……あの時みたいに、きれいに別れることができたらそれは素敵だと思ったから。

 

「でも、アステリオスの時とダビデさんの時とそうできなくて、だから船長さんとはちゃんとできると思って嬉しかったんです。」

 

 だけど直後に、幻覚とは言え首を刎ねられて……

 

「それを、ソロモン王に邪魔されて……私、すごく悔しくて」

「……」

「私、最初のふゆきではすごく怖くてとまどってばかりで………でも、マシュと、皆さんとできるこの旅は嫌いじゃありません。

 辛いことも、楽しいこともあって、好きな人や尊敬する人もたくさんできました。だけど、そんなことは無意味だとソロモン王は断言してました。」

 

 そのソロモンの言葉を再び思い出せば、私の胸の内に爆発するような感情が生まれる。

 

「許せない……だって何一つ無意味なんかじゃないです!まだ三つだけど、どうでもいい無価値なんてものは一つもなかった!」

「ぼっちちゃん……」

 

 少なくとも私にはそう感じた。鼻から流れる血を拭い、そして体を起こす。

 

「ソロモン王はどうでもいいってきっと考えてるんです、私たちの旅もカルデアの皆さんの努力を。なら、あの人の強さなんて関係ないです、あの忠告が正しいとしても関係ありません、従ってなんてあげません。

だから決めました、ロマンさん。ソロモン王は私の“敵”です。だから……」

 

 ロマンさん、いや……みんなへと私は視線を向ける。

 

「マシュも、ロマンさんも、ダヴィンチちゃんも、清姫ちゃんも、カルデアの皆さん……」

「フォウ!」

「はい、フォウさんも」

 

 そして私は、頭上の蒼く輝くカルデアスを見上げ……

 

「どうか皆さん、力を貸してほしいです。“私達”で辿り着く、七つの聖杯を超えて、“王”の玉座へ。

ソロモン王を、倒す為に!!」

 

 手を伸ばした、必ずその場所へと辿り着くと言う決意と共に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とある海原にで

 

「不思議だねぇ……首を刎ねられる夢を見たかと思えば、何も覚えてねぇのに誰かにちゃんと言葉をかけてあげたかった。

そんな気持ちだけが強く残ってやがる。」

 

 フランシス・ドレイクは、夢から覚めた直後に船の上で水平線を眺めながらそう呟く。だけど直後、口端が上がる。

 

「でも大丈夫か、ソイツはもう立派な海の戦士な気もするしね。胸を張りな、アンタはもう嵐の海に投げ込まれちまった。

逃げることもできない、進むこともできない、泣いたって許しちゃもらえない。そんな中で出来ることは、いつだってただ一つさ。なぁ……アンタは一体、どんな面で、嵐の海を戦い抜くんだい?」

 

 彼女の脳裏には、後藤ひとりと共に駆け抜けた冒険の記憶はない。しかし、彼女は確信してる。記憶に無かろうとも、オケアノスの旅を終えた何者か(後藤ひとり)は決して絶望に打ちひしがれてない。誇り高き顔のまま突き進むのだろうと。

 そして同じく、カルデアスに手を伸ばす後藤ひとりの顔には絶望は無く、強くたくましさを感じさせる微笑みを浮かべていたのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 先輩が、後藤ひとりさんがそんな風に笑うのを私は初めて見ました。

 

 どこかドレイク船長の笑顔を思わせて、きっとそれが、先輩あの海で得たモノ。

 いつも不器用ながら浮かべる笑顔とは少しだけ違っていて、でもそれが人間なのだと私も学びました。

 

 人間は凶悪な生き物だと。欲望、目的のために知恵と力を惜しまない。でも、その凶悪さには希望があったのだと。

 叶わないものを叶えると言う希望。不可能を不可能のままにしておかない力が人間にはあるのだと知りました。だから、思えたのです……

 

 

 

 

 

 

 

 

「ドクター」

「マシュ……」

「指示を、先輩の意思は固いようです。」

 

 マシュがそう語りかけると、ドクター・ロマンは戸惑う表情を浮かべるものの、直後に苦笑へと変わる。

 

「……そうだね。ぼっちちゃんは凄いな、ボクみたいなすぐ落ち込む人間とは大違いだ。」

「いえ、先輩はよくすぐ落ち込みますし、反面褒めたらすぐ有頂天になります。そしてレイシフトが決まった時にはマイルーム引きこもってしまいますし、私が引っ張り出してようやく動いてくれます。」

「そ、そういえばそうだったね……」

「ですが、そんな先輩も最初から逃げ出したり放棄したりすることはありませんでした。そして、肝心な時にしっかりと動いてくれて、とても素敵なことを言ってくれる人です。だから私、先輩がそんな人だからこれまでの特異点一緒に旅できたんだと思います。」

「そうだね、僕も同感だ……」

「そしてドクターも、先輩に負けず劣らずチキンでネガティブです。」

「あ、はい……」

「でも、そんなあなたが頑張っているから、みんな頑張れるのだと思います。カルデアが爆破された時に真っ先に行動し、先輩を導いてくれたのはドクターです。そのおかげで今の私たちがある。

きっとここにいる全員は一度、あなたに命を救われている。そう、私は思います。」

「マシュ……」

 

 そうマシュがロマンに語りかけていると、横から清姫が入り込んでくる。

 

「まあ、私は爆破とか知らないので救われた気とかしませんが……それよりも早く指示を。ひとり様の決意を台無しにする気ですか?」

「うっ……」

「ええ、確かに私もあの王には怯えましたが……負けたわけではありませんから。」

 

 清姫は扇を閉じ、そして微笑みながら語る。

 

「ならばまた、立ち上がれば良いのでしょう。懲りないのは大事だと、アーチャー・ダビデも申しておりました。きっと本当ですよ、嘘吐きではありませんでしたから。」

「…そうだね、その通りだ。」

 

 そして、ロマンは立ち上がり全員へと視線を巡らせる。

 

「ありがとう、そして3人には改めておかえりと言わせてくれ。

 

情報の分析を再開するよ、黒幕がわかったのならここからざ作戦の本番だからね。

残る特異点を修正し、未来を焼却させない。

 

あの男、ソロモンが何をしようともね!」

「………はい!」

 

 マシュ、清姫、そしてカルデアのもの達がロマンのその宣言に頷いた。

 直後、ロマンは手を叩き……

 

「よーし、労働再開だ!しばらくは徹夜だぞう!」

「えぇ〜!!」

「ささ、ひとり様!私達は休みましょう。つきっきりで看病いたしますよ♡」

 

 と、カルデアが再始動した様子を見ながらマシュは考える。

 

(あの王の問いかけに対して、私は答えを出すことができなかった。

だけど先輩は、その無意味だと断言する言葉にこそ憤った。

 

私にはぢその問いの答えはわかりません、でもそれでも、信じられると思ったのです。

 

先輩がそう、笑って立ち上がれるのならば…)

 

 

 

 

 

 

 

 場所は変わり、とある楽園にて

 

「いやあ、よかったよかった。私の幻術も捨てたもんじゃない。」

 

 杖を鳴らし、飄々とした口調で男は語る。

 

「とはいえギリギリ、ドレイク自身の運とキャスパリーグの力を借りなければ終わりだった。

それに直接的な手助けはもう難しいね、あとはいつも通り間接的な援助を……」

 

 そしてその瞳を通し、現在のカルデアの様子を見ながら………

 

「……期待してるよ、マスター後藤ひとりくん。」

 

 楽園に咲き誇る花びらが、風に乗って舞う。

 

「英霊では彼の王の元へは辿り着けない、だから君が征くんだ。

時代を築くのはいつだって、その時代に最先端の未来に生きている人間だけだからね」

 

 花の魔術師が、花びらの舞巡る楽園にて微笑みそう呟くのだった。

 

 

 

 

 

 

A.D.1573

第三特異点 封鎖終局四海オケアノス

定礎復元

 

 

 

 




ようやく、オケアノス編完全踏破となりました。いやはや、オルレアンと比較して長くなってしまいました。正直なところ、原作では映像化されてるキャメロットやバビロニアと比べてあまり印象的ではないのですが、漫画版では名シーンが多くて、どうぼっちちゃんらしい活躍をさせようか四苦八苦しましたが、無事終わらせられてホッとしてます。

次は北米編の予定ですが、その前に幕間を挟む予定です。

また次のお話でも、お付き合いいただければ幸いです。
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