ギターヒーロー、人理修復へと旅立つ   作:ヘル・レーベンシュタイン

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続きです


第三十八話

 

 

 そして、ラーマさんが回復して私たちは再び馬車にのって次の場所へと向かってた。

 

「えっと、まずはジェロニモさん達と合流ですよね?事前に決めてた場所があったはずですが……」

「はい、先程地図で確認したのがここですから……」

 

 そう言いながらマシュが地図を広げた時だった。

 

「ん?」

「雨?」

 

 雫が、広げた地図へと落ちて僅かに濡らしたのだった。そのうち止むだろうと一旦馬車を止めることにした。

 

 

 

 けど……

 

 

「……まだ動けないですね。」

「ですね……」

 

 更に豪雨となり、不安になって私はついそう呟いてしまった。

 

「あ、ジェロニモさんにも確か通信機を渡してましたよね?」

「はい、作戦に進展があれば連絡すると」

 

 そうマシュが答えた時だった。通信機からバイブが発生する。

 

「き、来た!あ、もしもしジェロニモさん!?みなさん無事で……えっ」

 

 それはまさに、文字通り悲報だった。

 

「み、みんなやられたって……」

『暗殺失敗ってことですよ……』

 

 通信先はジェロニモさんではなく、ロビンさんの声だった。

 

『追手が迫ってオレも長くない、だならせめて糧にしてくれ……オレ達がいかに闘い、いかに敗れたのかを……』

 

 

 そうして、ロビンさんの報告という形で語られた。

 

 奇襲は成功したものの、クー・フーリンさんの強さが規格外だったこと。そして、アルジュナさんというもう一騎のサーヴァントが予想外にもいたことで暗殺が完全に失敗したこと。

 

 ジェロニモさんの指示で、ロビンさんは負傷した自分とエリザベートさんを連れて離脱。

 残ったジェロニモさん、ビリーさん、そしてネロさんが抗ったものの……時間が経って戻ってこないということ、つまりそういうことだ。

 

 殺された、もう顔を拝むことはできない。

 

 まとめると、ロビンさんからの報告はこんな感じだった。

 

 

「………通信が切れたか。

“これからどうします?”“マスター?”」

 

 それは、この特異点における敵がクー・フーリンさんと判明した時と同じセリフだった。

 

「……戦争を終わらせます。」

「どうやって?エジソンに降りますかい?」

「それはお断りします、けど……他のやり方も私にはわかりません。」

 

 そう言いながら、私は立ち上がる。

 

「それでも、私は終わらせたいです。ジェロニモさん達の犠牲を無駄のままにしたくないですから。」

「……恩人のクー・フーリンを殺せるかい?」

 

 馬車から降りる、もう雨は上がってる。

 

「倒します、クー・フーリンさんを私達の手で。」

 

 そう呟けば、数日前の野営でジェロニモさんが言ってた言葉を思い出す。

 

【今、この大地は人の手から離れてしまっている。未来を人ではなく、英霊が決めようとしている。

 

ケルトは元より、エジソンの兵士達でさえ自らの意思で戦ってはいない。“英霊(過去)”が未来を決めてはいけない。

たとえ辿る未来がなんであれ、取り戻さなければ……】

 

 そうだ、去っていった人達の意思を受け取って取り戻そう。私は令呪の刻まれた手を、日に重ねながらその言葉を脳裏で反芻する。

 

【この大地は『人間(ひと)』の手に取り戻さなければ】

 

 そうだ、私達(ひと)の手によって……

 

 

 

 

 

 

 

 かくして“反抗者(レジスタンス)”達の戦いは終わりを告げた。

 

 敗北し、心は蹂躙され、されど想いは確かに受け継がれた。

 

 星は巡り、世界はその回転を早める。

 

 戦いは新たな局面を迎え、神話の息吹は更に激しく、この大地をかき乱していくことになる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クー・フーリンを倒すとは、大きく出たな。」

「!!」

 

 瞬間、女性の声が聞こえて私たちはそちらへと向いた。

 

「だがいい目をしている、後藤ひとり。少し手を貸してやろう。」

「え、あ、貴女は?」

 

 そこには一人、とても美しい女性が佇んでいた。

 

「ランサー、真名はスカサハ。

かつては、クー・フーリンの師匠をしていた女だ。」

「ク、クー・フーリンさんの師匠?」

『スカサハ……影の国の女王まで召喚されているなんて……!!』

 

 影の国?それは何処なんだろうという疑問が浮かんだものの……

 

「フ……着いて来い、お主らの仲間を保護している。」

 

 私たちの仲間を保護している、それが気になってしまい従う事にしたのだった。

 

 

 

 

 そして、東部の国境付近にある民家へと導かれて……

 

「よ」

 

 そこに、ロビンさんとエリザベートさんが無事の姿が確認された。

 

「あ、二人とも……」

 

 安堵と共に声をかけようとしたら、それよりも早く部長さんが二人の周りをキョロキョロとしつつ検査を始めた。

 

「外傷は消えてますが内部に損傷が残っている可能性が詳しく診察するのでまずは貴方全裸に」

「ならねえよ」

 

 婦長さんのマイペースさには困惑するものの、いつもの雰囲気を取り戻せた気がしたので思わず笑いが漏れてしまった。

 

『それにしてもよく無事で、追手がいたと聞いたけど……』

「ちょいと助けが入りまして」

『助け?』

「来たか!!!カルデアの少女!!!」

 

 ロビンさんの返答の直後に、勢いよく扉が開くと同時に大音量のスピーカーの様な大声が聞こえた。

 だけどそれは、聞き覚えのある声で……扉から出てきたのは見慣れた人物と初めて見る人がいた。

 

「あ、あなたは……」

「第四特異点以来か、久しぶりだな!」

「知り合いですか?」

「あ、アーチャーのニコラ・テスラさんです。第四特異点で、敵として出会いまして……」

「へぇ、それで今回は味方と?奇縁に恵まれてますなぁ」

 

 ヘクトールさんは、まさに分かりやすいほど皮肉を込めたセリフを返してきた。

 

『だが心強いよ、ニコラ・テスラはエジソンの好敵手とも言われてた人だからね。

 

現代における電力システムの多くは“交流”電流技術を用いているが、彼はそれを実用化に導いた一人なんだ。

一方でエジソンは“直流”技術を推していて、二人は電力システムの覇権を巡り対立。

 

後に「電流戦争」と呼ばれたその争いに、最終的にテスラは勝利したのさ。』

「え、エジソンさんに勝ったんですか?」

 

 そんな話、テレビや授業ですら一回も聞いた事なかったので驚いてしまって。

 

「かつては世間を騒がせていたが、時を経れば知らぬのも無理はないさ」

『彼のことはわかった、それで隣のもう一人は?』

 

 テスラさんの横に立つ、中華風の衣装を着た男性だ。

 

「ランサー李書文、故あってスカサハに協力している。」

『李書文、中国の伝説的な八極拳の使い手だね。

元々は無名な武術だった八極拳は、彼の武名により世に広まった。同時に彼は“神槍”と呼ばれる程の槍の使い手でもあった。

故にランサーか……!!』

「紹介痛み入る」

(……味方と言うには)

(殺気がダダ漏れだな)

 

 ロマンさんの説明で、とにかく拳と槍が強い人なんだとわかった。実際、李書文さんを見るラーマさんとヘクトールさんから、強く緊張の雰囲気を感じた。

 

「とまあ、この二人に助けられたんですわ。」

「追手のアーチャーにやる気がなかったのもあるがな。」

「あ、お二人が助けてくれたんですね……」

 

 なので私は、震えつつも頭を二人に向かって下げて……

 

「あ、あ、ありがとうございます、テスラさん、李書文さん。お二人を助けてくれて……」

「なんの、これくらいは……」

「………全く、毒気を抜かれてしまったな。」

「気に入ったか?」

「さてな」

『とりあえずは』

 

 間を割って、ロマンさんの声が差し込まれた。

 

『戦力追加ということでいいのかな……?なんにせよ、ありがた』

「すまんが、我らは共に行動するわけではない。今暫く、お主らだけで動いてもらう。」

「え、どういうことでしょうか?」

「まずは現状を説明しよう」

 

 そういってスカサハさんが、宙に指を動かしたらスマホの地図アプリの様な映像が、映写機の様に天井に映し出された。

 

「あの、これって?」

「ルーンによる映像投射だ、暗殺が失敗して数日色々と動きがあるのでな。現在の両軍の勢力図を表している。

 

暗殺の影響か、意外な事にエジソンが盛り返している。これだけなら良い知らせだが、そうもいかん。

 

メイブめは暗殺の報復として、レジスタンス狩りを始めたのだ。」

「っ!」

 

 それって、一般の人たちも……

 

「元々レジスタンスは、東部に点在していた西部に逃げきれなかった者をジェロニモが保護し始めたのが発端。

 

子供、老人、妊婦、弱き家族を守るため、多くの人間が立ち上がった。彼らは東部の各地で魔術で隠蔽した拠点を作り、ジェロニモもサポートしていた。」

「忘れもせん、クー・フーリンに敗れた余を身を挺して守ったのも彼らだ。」

「メイブはその拠点を探し始めた、隠蔽されてるとはいえ限度がある、実際にすでに一つの拠点が2騎のランサーによって壊滅した。」

「2騎の……」

 

 マシュと私の脳裏に、ラーマくんと初めて会った時に奇襲してきたケルトのサーヴァントを思い出した。

 

(拠点には戦えない人もいたはず、それを戦いを楽しむ人達が……)

「と、止めないともっと被害が……!!」

「無論だ、故に聞けカルデアのマスターよ。

それが、我らが別行動を取る理由だ。

 

書文、テスラ、して私は方々に分かれ拠点を守り東部に潜入する。

 

そしてここからが肝要だが、お主らにはその間にやってほしいことがある。」

 

 

 

 

 

そうして

 

 

 私達はスカサハさんの説明を受け、大統王府の宮殿近くまで来た。

 そして、別れる前にテスラさんから聞いた話を思い出す。

 

【エジソンの謎を解いてほしい】

【謎?】

【まずあの姿、サーヴァントだとしてもおかしい。】

(やっぱあのライオンの頭、普通におかしかったんだ……)

 

 何処か納得を得たものの、まだテスラさんの話は続く。

 

【何より疑問なのは奴の所業だ、大量の兵士を動員するために思想教育や薬剤投与を行なっている。生前のやつの性格は知ってるが、あれはいかにも行き過ぎだ。

見るに耐えん、会えば議論の余地なく殺してしまいそうだ。】

【テスラさん……】

 

 そう語る彼から、何処か寂しさを感じた。

 

【奴は変わり果てた、ならばそうなった理由がある。君たちにはそれを探ってもらいたい。そう……“大統王”の真実を】

 

 

 

 

 

 そして今に至り、私達はエジソンさんの元へと辿り着いた。

 

『そろそろ突入の時間だ』

 

 ロマンさんからの通信が入り、時間になったことが伝えられる。

 

『機械化歩兵蹴散らし、宮殿内に突入、そして一気にエジソンの元まで……』

 

その時だった

 

「真の英雄は眼で殺す」

 

 宮殿から眩い光が発生し、光線が私達の元まで迫った。

 

『ぼっちちゃん!?』

『宮殿外壁にサーヴァント反応!カルナです!!』

 

 幸い私と婦長さんは、マシュの防御で無傷で済んだ。だけど、混乱を呼ぶには充分であり……

 

『気付かれた!?索敵範囲外にいたのに何故……』

『私の発明は、日々進歩していると言うことだよ』

 

 そして、通信機から聞こえた声は聞き覚えがあるものの、通信機からは本来聞こえるはずのない声の主から咲き込まれた。

 

(これは、エジソンさんの声だ!)

『なんて技術力……』

『暗殺失敗の報告は聞いた、今度こそ我々の仲間になってくれると期待したが……無駄だったようだ』

「星よ!」

 

 エレナさんが操る本から光線が放たれ、大砲のように周囲に散らされて破壊を齎す。だけどそれを潜り抜けて、ラーマさんとヘクトールさんが、カルナさんへと迫る。

 

「邪魔!」

 

 それと同時に、エリザベートさんさエレナさんに奇襲を仕掛ける。握る槍の穂先が迫るものの……

 

「見た目は治ったようだけど……」

 

 目に見えない壁が、その進撃を止める。

 

(魔力障壁!)

「本調子ではなさそうね」

「エレナ様をお護りしろ!!」

 

 続けて現れた機械化歩兵が現れ、ショットガンを放つもののエリザベートさんは翼を広げて回避する。

 

「この豚ども……!」

「殺すなよ!こいつら人間だからな!」

「わかってるわよ!」

 

 そう言いながら飛行しつつ、槍を振るうもののあくまで打撃だけを繰り返し……戦闘不能にしていく。

 

(駆動系だけ破壊した!?)

「アイツが守ろうとした奴らだものね!」

「みなさん……!」

 

 ロビンさんもエリザベートさんも、やっぱりジェロニモさんの理想を受け継いであるんだと感じ……

 

「今のうちに行きます、二人とも付いて来なさい」

 

 婦長さんの声に頷き、私達は遂に宮殿へと入ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 その道中、何故か行手を阻む敵は一切現れず……

 

 

 

「……私にはわからんよ。」

 

 大統王室の扉を開けて、エジソンさんはそう言った。

 

「君達は敗軍、レジスタンスは負けたのだ。ならば我々の庇護を受け、その上で共にケルトを駆逐する。

それが合理的な判断だ、なのに何故我々と敵対する?」

「敵対などしていません、貴方を診察しに来ただけです」

「診察?訳のわからぬ事を……私は心身ともに健康だよ、その証拠に見るがいい!」

 

 エジソンさんがそう言い放った直後、何処に潜んでいたのか彼を中心に無数の機械化歩兵が現れた。

 

「機械化歩兵!こんなに沢山……!!」

「インダストリ アンド ドミネーション!!」

 

 一人がそう叫べば

 

「インダストリ アンド ドミネーション!!」

「インダストリ アンド ドミネーション!!」

「インダストリ アンド ドミネーション!!」

 

 それをまるで、この世の真理であるように全員が何度も叫び

 

「我らの命を捧げて 大統王をお護りするのだ!」

 

 そしてそれは、思想矯正によるものだとわかってしまう。もしかしたら、私を助けてくれたおじさんも、こうなってたかもしれないと考えると胸が痛んで……

 

「さすれば我ら国家鎮護の英霊となりて 偉大なる座へと召し上げられよう!!」

 

 そして、その光景を見てエジソンさんは誇らしげな笑みを浮かべていた。

 

「わかるかね、この支持率。これが何よりの証拠。

 

私は正しいのだ、私という英霊に瑕疵などあり得ん……!!」

『実物を見ると笑えてくるね、英霊が守るべき人間を盾にするなんて!

万能の天才が断言しよう、彼は“異常”だ!』

 

 ダヴィンチちゃんのその言葉を聞いて、私もマシュも臨戦態勢に入った。

 

「まだ言うか!私は___うぐっ!」

(頭を押さえた?)

 

 エジソンさんが急に、表情を歪めて頭を抑え始めた。

 

「ええいこんな時に……」

「何処か痛みますか?」

「____」

 

それは婦長そんの問い掛けだった。

 

「ええ、頭が痛むのですね。“頭痛”と一口に言っても、その原因は様々です。

ストレスや疲労、脳に異常をきたしているかもしれません。

 

であるのならば『治療』が必要です。

 

診せなさい、ミスタ・エジソン。貴方の『異常』は私が取り除きます。」

「“正常”だと言っている!」

「頑なな人はそう言うものです」

 

 まさに獅子の咆哮のような拒絶の声に、婦長さんは鉄のように硬い意志で返答している。

 

「後藤、マシュ。患者を治療するために、まずは鎮静させます。協力を。」

「は、はい!」

「了解!」

「では行きましょう、この大地を癒す一手として、この大戦を終わらせる新たなる一歩として“大統王”エジソンの『病』を治します!!」

 

 こうして、私達とエジソンさんの激突が始まったのだった。

 

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