ギターヒーロー、人理修復へと旅立つ   作:ヘル・レーベンシュタイン

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今回注意点として、結構強めな言葉が出てきます。苦手な人は注意して読み進めてもらい、厳しければ飛ばしてもらって構いません。ですが、個人的にはすごく大事な場面なので力を入れて書いているつもりです。


第四十二話

 

 静止していた

 

 この大地に存在する、あらゆる生命が

 

 おなじ、ある“一点”を見つめていた

 

 空の先、遥かなる大峡谷(グランド・キャニオン)にて再演される“神話”を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カルナさんとアルジュナさんが、グランド・キャニオンで大激突を繰り広げていた。

 アルジュナさんが放つ弓矢が大地をクレーターだらけにして、カルナさんの放つ炎が大きな岩盤を焼き払い蒸発する。

 

 

 しかし、二人と構わず激突を繰り返す。まさに神話の決戦であり、激しくもどこか美しさを私を感じていた。

 

『シヴァ・テンプル、イシス・テンプル崩壊……!!グランド・キャニオンが地図から消える勢いじゃないか…!!』

 

 ロマンさんの話が本当なら、そのまま繰り広げられたら大地にほとんどが更地になるんじゃ?なんて恐ろしいことを考えてたら……

 

「何を感心しているのです、あの二人は病の熱に浮かされています。止めに行かなくては。」

 

 婦長さんが横からそう言ってきた。

 

『山行って、グランド・キャニオンですよ?どれだけはなれていると……』

「黙らっしゃい、あれほどの重病患者を放っておけますか!」

「あ、あの……その、それは無理だと思います……」

 

 私はつい、口を開いてしまった。

 

「後藤?貴女まで何を……」

「その、恐らくですが止められないし間に合わないと思います。その、カルナさん……私との魔力供給がカットしてるようなので……」

 

 そう、今も尚まるでカルナさんからの手応えが感じていなかった。

 

「それは、どういう……」

『やはりか、実はカルナの霊基が徐々に崩壊を始めているんだ。

理由は二つ、一つはカルナの大英雄ゆえの魔力消費の高さ。供給を切ってしまえば、たちまち残量が枯渇する。

もう一つは戦闘そのものの激しさ、あれだけの大出力の応酬、残量以前に“肉体”が保たない。恐らくは10分程度で限界を迎える。』

「そんな!?ではアルジュナに負けてしまいます!」

「いや、アルジュナも同じということだろう。」

「え?」

 

 ラーマくんがさらに話を続けて行く。

 

「奴もまた“女王(メイブ)”からの魔力供給を絶っているはず。余には霊基の観測などは出来ぬが、互角であるという事実がその証左よ。」

「何のために?」

「決まっている、対等に闘う為よ。」

「………それを病だというのです。」

 

 呆れた顔をしながら婦長さんはそう呟く。確かに病的に二人はこの決戦に拘ってるけど、それは決して軽い気持ちでやってるとは思えない、だって……

 

「で、でも……それが、二人の求めていた願いなんだと思います。」

「………?」

「マスター、もしや」

「………はい、見たんです。カルナさんの記憶、何でお二人がこの戦いを求めていたのか……」

 

 生前の二人が激突した“クルクシェートラの戦い”で多くの犠牲、悲劇が生まれた悲惨な戦争があった。

 王族とはいえ、元は従兄弟同士だった者達の戦いは多くの人間を巻き込み、数多の死を齎した。

 

 そるは二人の子ですら例外無く、カルナさんはアルジュナさんの息子を殺し、そしてアルジュナさんもまた、カルナさんの子を殺した。

 

 決戦が近づく最中、カルナさんは母からアルジュナさんと異父兄弟だと明かされて“血を分けた兄弟で争うべきではない”と言われ、更には不死を与える黄金の鎧をアルジュさん側の神へと奪われた。

 そう、多くの重荷、縛りが彼を縛り次第に追い詰めて行く。もはや対等な勝負とはいえず、それでも彼は戦場へと向かった。

 

 

 その果てに大きな隙を生んでしまう。それを狙うのは戦士の誇りを捨てる所業だが………その果てにアルジュナさんに撃ち落とされた。

 宿命に決着を、悲劇を生んだ戦争を終わらせるために仕方なかったのかもしれない。しかし、悔恨、慚愧を抱かずにはいられなかったのだろう。

 

 

 だから、闘志は時代が巡っても消えなかった。真の決着を、二人は望んでいた。

 それは呪いであり、病とも言えるのかもしれない。だけど癒えないからこそ、それはきっと

 

(あぁ……笑ってる)

 

 歓喜している、そう思えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二人の拳が激突し、大地が大きく破壊された。ボロボロな体をさらしながらも、二人は倒すべき相手しか見ておらず、どちらも限界を迎えようとしているのが窺えた。

 カルナさんが槍を構える。

 

「この槍に、この肉体に、父と母に誓って勝利を奪う」

 

 それに対してアルジュナさんも弓を構える。

 

「父と母、そして兄弟に勝利を誓おう」

 

 そして

 

「行くぞ」

 

 言葉が重なれば、二人の魔力が爆発するように放たれた。

 

『この魔力……互いに最後!宝具を放つ気か!?』

 

 カルナさんの全身が煌めき、アルジュナさんの開いた手に何かが凝縮されていく。

 

「神々の王の慈悲を知れ」

「ここに我が宿業を解き放とう」

「“日輪よ(ヴァサヴィ)___”」

「“破壊神の(パーシュ)___”」

 

 そして同時に宝具が激突する……

 

【何を 愉しんでやがる?】

(え?)

 

 不意に、そんな声が聞こえて……

 

【“抉り穿つ(ゲイ・)鏖殺の槍(ボルク)”】

 

 気が付いたらカルナさんの身体の真ん中に大きな穴が開き、赤く紅く染まっていた。

 

「____」

 

 私もアルジュナさんも、二人の激突を見届けていた誰もが言葉を失っていた。

 カルナさんの背後に居たのは、クー・フーリンさんだった。

 

「いい感触だ、臓腑はおほか霊核諸共貫いたか。た」

「どうしてクー・フーリンが!?いえ、それよりもカルナさんは……!!」

(致命傷、あれではもう立ち上がることすら……だが、どうしてここに?

これは二人だけの戦いだった、割って入るなど戦士の行いではない。それほどまでに獣だったか貴様は!?)

「クー・フーリン……貴様……!!」

 

 困惑と怒り、それらが入り混じった表情と声をアルジュナさんは漏らしていた。だけど、クー・フーリンさんは鼻を鳴らした様子で……

 

「うるせえ、一騎打ちなんぞ俺が認めたか?

しかもこんな遠くまで来やがって、将の役目を放棄するなら趨勢が決まってからだろうが。後ろから刺されなかっただけでも感謝してな、授かりの英雄。」

「………っ!」

「で、だ……見てんだろう?“カルデア”人類最後のマスターだったか?」

(カルデアを認識してる!?)

 

 思わず心臓が跳ね上がる、どんな感覚でそんなのを認知してるのか不思議でたまらない。

 

(微細な魔力の流れを感じたか、獣の如き直感か、いずれにせよ……)

「どうするマスター?」

「………」

 

 私はどうにか頷き、クー・フーリンさんとの通信越しとは言え対面することにした。そこには冬木で出会った姿とは全く違くて、真っ黒な姿をしていて……

 

「………」

 

 映像先の彼は、心底不愉快そうな顔をしていて……そして……

 

『……なんでテメェなんだ?』

(……え?)

 

胸がトクンと鳴り、そして体がウチから冷えていって不快感に満ちていく。クー・フーリンさんの冷ややかな目線がそれをより強くさせていく。

 

『テメェ、随分と腑抜けた目線をしてやがる。こんな根暗なやつをマスターにするなんぞ、カルデアもセンスねぇな。この手の輩は、一方的な被害者面が一丁前に強い癖に、矢面に立てば他責思考が強くなる。そんな奴を、どうして信用に置けるんだよ?

せめて“こいつなら仕方ない”と言う奴なら納得できる、だがテメェだと納得できねェ。』

「____」

『消えろ、俺の前に立つ資格なんざありはしねえ。お前がカルデアのマスターである必要性が感じられねぇ。』

 

 ああ、否定された………それも、私自身のことを。そう確信してしまい、私のうちにある、軸のようなものがぐらりと歪んだ気がする。身体が言葉が出せない、喉が渇いて何もできる気がしない。そして、何一つ言い返せないけどそんな自分を情けなく思って仕方ない。

 だけど……そうだよ、本来なら48人も適性者の居た中で私はたまたま生き残れただけに過ぎない。私は本来、カルデアのマスターになれる必要性なんてなかったんだ。だって、私はギターが弾けるだけの女子高生にすぎなかったんだから。だけど、けど……そんな気持ちで心が揺れている。

 

「………」

 

 周りを見た。マシュが困惑していて、ラーマくん、婦長さんが神妙な顔をしていた。多分、私がどう答えるかを待っている。ましてやあのクー・フーリンさんのあの暴君な感じだ、横から何を言ったところで聞き入れないと見越してるんだと思う。

 だから、私が何か言わないとどうしようもないんだ。だけど、だけど……何も言葉が思いつかない!何を言えば正解なのかわからない!!

 

『……どうした?早く臆病者らしく尻尾巻いて逃げろよ。』

 

 彼の声を聞いて、私は幼い頃の過去が想起した。

 

【かくれんぼする人、この指とーまれ!】

 

 それは、幼稚園で男のが指を掲げながらみんなに声をかけてきた。それを私は遠くから見て、こう思ったんだ。

 

(こんな私が、あの指に手を伸ばしていいのだろうか……)

 

 そうずっと思い悩んでて、私は乗り遅れて、ずっとひとりぼっちだったから……

 おまえに資格はないと言われると、その通りだと思って動くなんて事はできないから……

 

 

 

 

 

 

 

 

 カルデアの管制室で、ダヴィンチは通信ボタンを押して後藤ひとりとの通信を遮った。それを見て、Dr.ロマンは声を張り上げる。

 

「何をしてるんだレオナルド!ぼっちちゃんを助けないといけないだろう!?」

「悪いが、今回はあえて支援をしないでおこう。良い機会だ、クー・フーリン・オルタからの人格否定を、彼女自身で抗ってもらおう。」

「な、そんなことできるわけないだろう!彼女は……」

「コミュ障、ましてや直接的な人格否定なんて初めてならほぼ無理だろう。だけど、ここは一つ彼女に頑張ってもらうしかない。」

「な、なんでそんな…」

「彼女はオケアノスの旅の後に、ソロモンを敵として認めた。それまで彼女はカルデアに巻き込まれる形で、被害者と言えてそれは私たちも否定できなかった。けど、彼女自身が奴を敵として認めたのならば、被害者としての立場は無くなったに等しい。だから、彼女の自立もまたできなければソロモンの正義に抗うことは不可能だろう、私そう考える。」

「………っ!」

 

 彼女がツラツラとそう言い放ち、Dr.ロマンを筆頭にカルデアのもの達は黙ってしまった。その一方、モニターに映る後藤ひとりを見ながら、ダヴィンチは考える。

 

(ぼっちちゃん、なし崩しという形でだが今回敢えて君を助けない。君自身でこの困難を超えてくれ。

だけど、これを無茶振りとは思わない、なぜならこれまで君は否定する者に対して抗うこと自体出来てたのだから。

 

だが、それは他者の困難な悲劇を前にしてからだ。マシュの恐怖、ジル・ド・レェの怒り、イアソンの嘆きなどに直面してから君の覚醒を目の当たりにしてた。それはつまり、誰かの嘆きに応える形だったんだ。

だが、それだけだと足りない。今回の様な直接的な否定は初めてだろうが、それに対して君の嘆きを君自身の意思で争わなければならない!頑張れ、君の意思でこの困難に抗うんだ!)

 

 そう考え、映像先で怯えている後藤ひとりを見据えていた。彼女ならば、この窮地をきっと乗り越えると、そう信じて………

 

 




まだ書ききれない部分があるので、続きを明日投稿する予定です。
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