ギターヒーロー、人理修復へと旅立つ   作:ヘル・レーベンシュタイン

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第四十四話

 

 

それは、決戦前夜のエジソンとカルナの記憶である。

 

【Ms.後藤の事をよろしく頼んだよ、君には言うまでもないかな?】

【無論だ、だが編成の中身はまだ決まってないぞ?】

【少なくも私もMs.後藤が離れるのは確実さ、何せ私と彼女は大統領と専属ギタリストだからね!】

 

 そう話し、静寂が満ちる。そして……

 

【アルジュナとの闘いは止められんだろうね】

【……】

 

 ポツリと、エジソンが語り始める。

 

【いや、止めたいわけではないのだよ。ただ、君たちが闘えば、その規模はとてつもないはず。だから……】

【わかっている、無関係な者を巻き込むのはオレも奴も本意ではない。どこか人の居ない所で戦うとしよう。】

【……】

【どうした?】

【私は信じている、君の勝利を。だから勝手ながら、更なる頼み事をしたいと思ってね。

 

この大地の特異点、修復さられば全てはなかったことになる。それは兵士の損耗も然り。少し前の私はそれを良しとしていた、しかしMs.後藤……ギターヒーローに敗北した影響だろうか。

 

彼らもまた、今を生きる人間なのだ。それがたとえ1783年、私にとっては過去の時代でも、ね。】

 

 カルナから見た彼は、まるで輝いて見えた。

 

【ならば私たちは、彼らの為にこそ走らなければならない。英霊とはつまり、そういうものなのだから。再び助けを乞いたい、その槍でこの大地に住まう全ての命を救って欲しい!】

 

 それを聞いて、カルナの口が上がった。

 

【やはり似ているな……】

【?】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カルナさんの叫びと共に放たれる槍の一撃、しかし防がれクー・フーリンさんの反撃で大きく弾け飛ぶ。

 やはり勝てない、私ですらそう確信できるほどにボロボロだ。だのに、カルナさんは構わず立ち上がる。

 

(勝てる見込みはない、オレにはもうエジソンの願いは叶えられない……)

 

 だけど彼の目はまだ煌めいている、そしてその方向がどこかに向いてるけど、それは私にはわからない。

 

(だが、それを叶えられる男は知っている!)

 

 そして彼は体を起こし……

 

「アルジュナァァァッ!!!!」

 

 思い出せ、そう言わんばかりの叫びが炸裂した。

 直後、片手しかないはずのあるじんなさんから信じられない矢を腕も口だけで線香の様に放たれる。

 

「………!!」

 

 そして信じられない精密な射撃が、クー・フーリンさんを壁面に縫い付けた。

 

(筋、骨、経、結合部を一矢で射抜かれた!更には治癒のルーンを発動させる魔術回路もまとめて……!!)

「………!私は……」

「見事だ、見事だな……」

 

 そう呟いたカルナさんは、ふと浮かび上がった。

 

「カルナ…!」

「カ、カルナさん?」

 

 そして全身に眩い煌めきが放たれる。

 

「“スーリヤよ”“ご照覧あれ”」

 

 そして穂先に膨大な熱が集まり……

 

「“もはや戦場に呵責なし”“我が父よ許したまえ”“空前絶後……!!”」

 

 太陽のような煌めきが爆ぜ、光線のような一撃がクー・フーリンさんへと放たれる。

 

「“日輪よ(ヴァサヴィ・)死に随え(シャクティ)”」

 

 まさに大地を滅ぼす、核ミサイルが堕ちたような大爆発が発生する。しかし……

 

『カルナの霊基反応、完全に消滅……』

 

 私達にまで危害は及ばず、被害は直撃したクー・フーリンさんのみ。

 

『ですが、宝具クー・フーリンに直撃……構成霊子、9割の焼却を確認。』

 

 体の半身以上が損傷した、痛ましいクー・フーリンさんの姿が映像に映っていた。

 

「次は、テメェか?」

 

 しかし、まだ戦意の損失は見られずアルジュナさんに向けてそう言い放ってた。だけど……

 

『ダメよ、令呪を以って命じます。クーちゃん、私の元へ帰りなさい。』

「ハ……」

 

 横槍の声が差し込まれ、クー・フーリンの姿は一人でに消えていった。

 

「逃したか、だがカルナは……そしてアルジュナ。あやつはどうすべきだ?」

「………彼の病は癒やされました。」

 

 ラーマくんの問いに、婦長さんは答える。

 

「ミスター・カルナの献身によって。ならば私たちは先に進むべきです。」

「………はい、私もアルジュナさんとカルナさんを信じようと思います。」

 

 そして、映像先のアルジュナさんを見て。

 

「ありがとうございました。」

 

 そう告げて、私はクー・フーリンさんとメイブさんのいる拠点であるホワイトハウスへと向かい始めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『状況は!?』

『南部戦線、敵最終防衛ラインを突破!ホワイトハウスまで距離10キロ!』

『北部戦線、ヘクトールがエジソン達と合流。ベオウルフを書文が相手してるおかげで、拮抗状態を維持できている!』

 

 私達がホワイトハウスを向かう最中、通信のそんな報告が聞こえてきた。そう、思ったよりスムーズに進めている。

 

(後はクー・フーリンと女王メイブを討てば終わる!頼んだよ、マシュ、ぼっちちゃん!)

 

 そしてついに、私達はメイブさんと対面した。彼女の前には無数のケルト兵と、キメラやソウルイーターなどなど、様々なエネミーが待ち構えている。

 

「ようやく……ようやくここまで来た。ジェロニモ、ビリー、ネロ、スカサハ、カルナ、我が妻シータ……そして、幾千幾万のこの大地に生きる人々。

彼らの献身が我らをここまで導いた、覚悟するがいい女王メイブ!」

 

 ラーマくんの、まさに王様らしい宣誓がホワイトハウスに響いた。それを聞き届けたメイブさんは、微笑んで返す。

 

「長い旅、してきたのね。足掻いて、もがいて、立ち上がって、それでもここまで辿り着いた。

そして今、決意の眼差しで私を睨みつける貴方達。私はね……」

 

 彼女の細い手がゆっくりと上げられ……

 

「そういう人間を踏み潰すのが大好きなの!!」

 

 素早く降ろされ、彼女の前にいる兵士やエネミー達が突撃を始めた。

 

「その邪悪に鉄槌を下す!!」

 

 ラーマくんのその言葉と共に私たちも迎撃を開始した。

 

 数では不利、けどそれでも私たちは止まらない。キメラやソウルイーター、それらを弾き斬り伏せ、兵士たちの突撃を押し退ける。

 徐々にメイブさんとの距離が詰められる。それでも……彼女の背後から巨大が姿を現した。

 

「ドラゴン!?」

 

 それもファブニールに劣らないくらいの大きさだ!

 

「怯むな!!」

 

 驚く私を、背中を押すようにラーマくんが叫ぶ。

 

「何を出そうと片っ端から斬り捨てるのみ!たとえ聖杯があろうが、力ずくで押し通る!!」

 

 幾らか押されたものの、ラーマくんの一撃がドラゴンの首を切り裂いた。

 

『大型竜種撃破!これならいけるぞ!』

 

 そうだ、事実メイブさんの手駒の数は明らかに減っていってた。さっきのドラゴンほどの巨大なエネミーは現れない。

 数は厄介なものの、それでもラーマくんを止めるに至らずついに……

 

「!」

 

 彼の剣が、彼女の体に致命を刻んだのだった。遂に、彼女との決着がついた。

 

「………」

 

 この戦闘で犠牲者はゼロ、まさに理想的な勝利であとはクー・フーリンさんを倒すだけ。なんか……スムーズ過ぎるような感じで一抹の不安がよぎる。私の考えすぎなんだろうけど……

 

「よぉ、酷い有様だな。」

「クーちゃん……」

 

 彼女の敗北後に、完治したクー・フーリンさんが現れた。口から血を垂らしながら、彼女は微笑んでた。瀕死なのに……

 

「回復、したのね……じゃあわたし……間に合ったんだ……」

 

 トクンと、彼女の言葉に心臓が鳴った。

 

「え……間に合っ、た?それって、どういう……」

「フフ………フフフフフ………貴方達知らないのかしら?私の伝説に刻まれた『二十八人の戦士(クラン・カラティン)』を……」

二十八人の戦士(クラン・カラティン)!!」

 

 私は初耳だったけど、マシュは知ってるみたいだ。

 

「し、知ってるんですか?」

「女王メイブが生み出したとされる、集合戦士です。文字通り二十八人の戦士が融合し生まれた、一体の怪物。クー・フーリンと戦い、あと一歩まで追い詰めたとも……」

『確かに切り札とすれば強力だが……今更、敵性体が一体増えたところで……』

『ロマニ!!』

 

 すると、通信先のダヴィンチちゃんの叫びが聞こえてきた。

 

『レオナルド?声をあげて何を……北部戦線ならの映像受信?これ……は……』

『ぼっちちゃん、マシュも映像は見えているね……おそらくこれが、メイブの切り札だ』

 

 共有された映像から映し出されたのは、それはかつてオケアノスでイアソンさんから出てきた肉柱、後に魔神柱と呼ばれたもので、それがまるで何本も伸びてきて、まるで巨大な山を巻き付けれそうなほど枝分かれし、空へと伸びるほどの悍ましい姿がそこにあった。

 

『……解析、出ました。魔神柱総数“二十八”、幻術、精神操作の痕跡はなく、一体一体が第三特異点で顕れた個体と同規模の魔力量です!!』

 

 つまり、幻ではなく本当に実体として現れた絶望に他ならない。

 

『魔神柱の複数召喚……“ 二十八人の戦士(クラン・カラティン)”という枠組みに押し込むことで、可能にしたということか……!!

だがこんな恐ろしい構造、ソロモンですら試そうとしない試みだ!女王メイブ、君は……!!』

「あははははは!!最高……その顔が、見たかった……!!」

 

 私達の狼狽えた顔を見て、メイブさんは血を吐きながらも愉快そうに笑っていた。その顔を、婦長さんが見て……

 

「そうですか、そこまでして貴女は……」

「……逝くのか?」

 

 クー・フーリンさんは、そんな私達を見ることなくメイブさんの前にしゃがみ込んだ。

 

「ええ……褒めてくれる?」

「ああ、女王として自分の国を守る。お前は、まればできる女だよ。」

「嬉しい……その一言が聞きたかった。聖杯を……私の“全て”を貴方に捧げます……さようなら、クー・フーリン……大好きよ」

 

 その言葉の後、メイブさんとクー・フーリンの顔が重なった。そこで何をしたのか、私には分からない。

 ただ、その後にメイブさんが消えたという事実だけしかわからなかった。そして、マシュが呟いた。

 

「……どうして、あの人は邪悪でした……今まで見てきた誰よりも、世界を滅ぼすことを楽しんでいた……でも、これではまるで……」

「彼女は邪悪だった、同時に誰かを愛し誰かに尽くした。」

 

 続けて、婦長さんが語った。

 

「自分自身を擲っても、構わないほどに……」

 

 例え邪悪だったとしても、それをする自由はあるのだと言ってるようだった。そして私は、まだしゃがんだままのクー・フーリンさんを見た。

 

「………クー・フーリン、さん……」

「………寄り道が過ぎるのは、俺の起源かね……」

 

 そう言いながら立ち上がり……

 

「いい女になった瞬間、満足気に消えちまった……」

(……雰囲気が変わった?)

(す、少しだけ冬木の時のクー・フーリンさんっぽくなった様な……)

『纏ってた魔力も弱まっている、彼が王であることを願ったメイブが消滅したせいか……これなら……』

 

 と、ロマンさんの声に耳を傾けていたら、金属音が鳴った。直後、風切音と共に容赦なく私に向けて槍を放とうとして……

 

『ぼっちちゃん!?』

 

 咄嗟にマシュが防いでくれたことでどうにか無傷に済んだ。その余波で、ホワイトハウスの玄関が半壊していた。

 

「弛緩してんじゃねぇよ、ダラダラしてると北部は貰っちまうぞ?」

 

 この発言から分かる様に、クー・フーリンさんの戦意は全く衰えてない。

 

「大体なぁ、女一人が死んだくらいで俺が変わると思ったか?」

 

 むしろより沸る様な、私達が再び構え直してもむしろ受け入れる様に邪悪に口を上げて構えをとる。

 

「来な、小童ども。俺がこの大地の“王”だ」

 

 狂王の肩書きらしく、たった一人で私達を殺さんと殺意を露わにしそう宣言したのだった。

 




北米編も終盤で、最終戦が終えたらもう終盤になるので色々と感慨深くなるなと我ながら思います。
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