ギターヒーロー、人理修復へと旅立つ   作:ヘル・レーベンシュタイン

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今年の周年はいったいどんなのが待ち受けてるのやら……


第四十六話

 

 雷鳴と共に現れた英雄、アルジュナ。しかし周りからの反応は……

 

「アイツ……!!」

「アルジュナ……!!」

 

 困惑、忌避感と言った冷たいもの。しかし当然だろう、元はクー・フー・リン側のサーヴァントだったのだから。

 

「彼がカルナ君に並ぶ英雄だとは理解している、だが彼はこの大陸において人理の敵だ、信じられるのか?」

「………」

 

 そしてその疑念の代弁するかの様に問いかけるエジソンに、テスラは黙していた。

 

 

 

 

数時間前

 

【とあるレディの頼みでね、君と君が持つ古き遺物が必要だ、共に来てくれるかな?アルジュナ。】

【……旧き遺物ですか、随分な言い草だ。例え八つ当たりでも、取り下げさせたいところですが。】

 

 アルジュナは曲げた腕を、そう言いながらテスラへと見せつけた。

 

【あれほどの戦い、魔力を使い果たすのは当然か。】

【ええ、ですから私にできることは】

【ならば、私の魔力を使え。私はそのために来たのだ。】

【……!?】

 

 アルジュナの顔に困惑が纏う。

 

【今まで戦闘行為は極力避けていてね、今一人を助ける余力は持ち合わせている。】

【……何故そこまで?失礼ながら、貴方がそれほど献身的な人物とは思えない。】

【その通り、この様な献身など私には似合わない。

だが、“人理の敵”になった、その行いは償わねばなるまい?】

【貴方は……?】

【違う時代の話、ここで語るべきではない話だ。だが奇しくも私達には、英雄としての責務を果たす機会を“授けられた”

その様な言い回しは趣味ではないがね、目的もなく消え去るだけならば、その意味を己に問うてからにしたまえ】

 

 

 

 

 

そんなやりとりを経た果てに、アルジュナはこの場に現れた。

 

「……!!」

 

 矢を旋回させ、魔神柱からの猛攻を瞬時に防ぐも彼の額から冷や汗が垂れる。

 

「ちょっ、やられてるじゃない!?」

「檻の出力を上げろ!アルジュナが保ちませんぜ!!」

「やっているが!!肉柱共め、電流で灼かれようが構わずアルジュナを!!」

「小賢しい!!何が自分を滅ぼすものか、本能で理解するか!!」

 

 そう叫びながらエジソン、テスラ共々手から放電しどうにか電気檻の出力を上げ続けている。

 

(決着をつけねばならない男がいた、誰かのために“悪”になれる男、その心に太陽の如き暖かさを宿す男。

そして、何もかも私と違う男。)

 

 しかし魔神柱は止まらず、瞳が輝き炎熱による爆破をアルジュナに齎した。

 

(殺し合うのは必然で?故に私はカルナを射った。戦士(クシャトリヤ)の矜持を捨て、戦争を終結させる機械として……本当にそれだけだったろうか?

いいや、それだけではなかったからこそ、私は奴を追い求めた。英霊になってさえも奴を……カルナを。そうしてまた、悔恨を残した。

 

思えば違う道もあった、轡を並べ、全てが終わった後に雌雄を決するという道筋も。だが、そうしなかった。私は、私の求めた誰かの願いを裏切ってまで……)

 

 アルジュナの体に傷が刻まれる、しかしそれでも息を切らしながらも立っていた。

 

(私にはわからない、奴が最期に私を呼んな理由も、再び微笑んだ理由も、私に託した理由も。

 

だが、償いはしなければならない。

英雄としての矜持を捨て、誰かの願い、誰かの命を、見捨て続けた償いを!!)

 

 そう意を結し、アルジュナが手を翳した。

 

「神性領域拡大」

 

 瞬間、二十八人の戦士(クラン・カラティン)の周囲に無数の球体が現れた。

 

「空間固定」

 

 それが直撃すれば、魔神柱の肉体が削れた。

 

「神罰執行期限設定 魔力収束及び加速に必要な時間を推定。」

 

 再生はされるもそれを上回る速度でどんどん削っていった。

 

「エジソン!!」

「わかっとるわテスラぁ!!」

 

 破滅を阻止すべく魔神柱が触手を伸ばすも、電気檻が出力をあげてそれを未然に防ぐ。

 

消費(カウント)開始(ダウン)

 

 それを言った直後、電気檻から眩い煌めきが爆発する。

 

「なんなの!?」

「わかりませんよ!」

(圧倒的な魔力が檻の中で圧縮されていく!の出力なら確かに“ 二十八人の戦士(クラン・カラティン)”を……だがそれを限定された空間で解放すれば、担い手(アルジュナ)の身すら焼き尽くすことに……)

「覚悟の上です」

 

 ヘクトールのその推測……及び見守る者たちの考えを汲み取った様に、アルジュナはそう呟く。

 

「私は“弓兵(アーチャー)”アルジュナ。

この大地に、人々の嘆きに喚ばれた守護者(サーヴァント)として、今こそ、その責務を果たしてみせよう!!

 

“シヴァの怒りを以って”“汝の命をここで絶つ”」

 

 そして、眩い光が見守る者たちを、そして魔神柱を覆い尽くす

 

「喰らえーー破壊神の手翳(パーシュパタ)

 

 

 

 

 

 

(明滅する白と黒、暫く繰り返してようやくそれが閃光の瞬きだと気付く。

宝具の使用によって自壊していく私の霊基、何もこんな時まで意識を集中させる必要はないだろうに……

 

 

……結局、お前の気持ちはわからなかった。

だがこの悔しさも、一時のもの。あと数度明滅を繰り返せば、私の意識も……)

 

 そう思った直後、黒白に塗りつぶされたアルジュナの視界が晴れる。そこに二十八人の戦士(クラン・カラティン)の姿は無い。

 広がる大地と空、そして陽の光が迎えてくれた。揺れる草、蠢く動物、見守る戦士たち、そして産声を上げる赤子の声……守るべき者たちが確かにそこにあったのだ。

 

「カルナ…‥私は、今になってようやく……」

 

 悟り、彼の霊基が限界を迎えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 遠くで大きな爆発が聞こえた。

 

『みんな無事だね?北部戦線の“ 二十八人の戦士(クラン・カラティン)”は消滅した!!

あとはクー・フーリンさえ倒せば戦争は終わる!!』

 

 そのロマンさんからの報告を聞いて私は少しだけホッとするも、同時にまだ最後の大きな壁があることを忘れない。

 私達はどうにか、クー・フーリンさんに食らいついてる。

 

「だそうだ、趨勢は決したということだ狂王!!」

「肩で息して強がりにもなってねぇ、聞くと思うのか俺が?

やる事は変わらねぇ、お前たちを殺して次はそいつらだ。」

 

 そう言いながらクー・フーリンさんの姿に変化が現れる。

 

「魔力総量更に増加!狂王の霊基、変質していきます!!」

「なんと禍々しい!!」

 

 マシュの言う通り彼の体が大きくなり、確かにパワーをも大きくなった気がした。

 

「千切れたとて構うものが、“抉り穿つ(ゲイ)”」

 

 握る槍に力が込められた瞬間……

 

「……っ!」

 

 婦長さんが一気に距離を詰め、綺麗なアッパーが入りそれを防ぐ。すかさず横薙ぎが放たれるも、すぐさま離れてマシュの近くに綺麗に着地した。

 

 

「牙を増やし、鎧を纏おうと人体の構造は変わりません。」

「そうかい、だが軽い一撃だ。」

「そして、人である限り病に冒される事はある。」

「………あ?」

 

 首を鳴らしてたクー・フーリンさんの目に鋭さが増す。そして私も、婦長さんが何を言ってるのか気になってしまう。

 

「ふ、婦長さん?」

「今までは伝聞、映像による推量でしたので控えていましたが、直に触診して確信しました。

“あなたは病気です、私はあなたを治療します、あなたを殺してでも”」

 

 曰く、クー・フーリンさんには侵されている病があると。

 

「病気?俺がか?サーヴァントなんだがね?」

「治療には自刃か敗北が必須です、選びなさい。」

「……お前もだいぶ狂ってるな、言ってることが」

「“愉悦を抱けない”」

「___」

 

 クー・フーリンさんの口が止まる。

 

「いえ、正確に言うなら“愉悦を抱かない”」

「愉悦を抱かない?それは、どういう……」

「彼は己を封じているのです、自らを“邪悪な王”と規定し、そうあるために本来もっている人間性を捨てた。極端な言い方、彼は“英雄”というより“王”という“機構(システム)”」

機構(システム)……」

 

 そう呟いた直後、私の能力には青髪の女性の姿が連想された。結束バンドの、個性という概念を愛したベーシストの後ろ姿。

 

「合点が言った……あれほどの武を極めた男が、戦いに何の感情も抱かぬなどおかしなこと。

感情、愉悦を封じた自動機械、それがお主の正体か……」

 

 つまり、本来ならクー・フーリンさんはディルムッドさんやフィンさんの様に戦いに喜びを抱く様な人だったということだ。

 

「見てきた様に話すな、看護師。生前……」

『ぼっち…』

(リョウ……さん?)

 

 クー・フーリンさんと婦長さんが話す最中。私の脳内に彼女の声が、聞こえてきた。

 

『前にも話したよね?私は、前に組んでたバンドと方向性が合わなくて別れたって……だけどさ、もしも……もしもこのクー・フーリンって人みたいに、バンドの歯車として感情を殺して自分の役目に徹することがさ、もしかして……私に求められてたことなのかな?』

「………」

 

 確かに、この特異点でクー・フーリンさんはかなり圧倒的に強かった。強さ、と言う点においてここまで結果を出せてるのだから正解と消えるのかもしれない。

 

『ぼっちは、どう思う?……私の個性を大事にしたいって気持ち、抱くことって間違いだったのかな?

私が私らしくあることは、諦めた方が上手くいったのかな?』

 

 この疑問への正しい答えは私は答えれる気がしない。もしかしたら、婦長さん……ナイチンゲールなら答えられるのかな?と思った。今、そっと聞くのもアリなのしれない。

 だけど、それでも私は敢えて口を閉ざそうと思った。クー・フーリンさんに勝つ、その結果を示したいと思った。

 

(彼へ勝つことが、リョウさんを光へ導ける気がする。)

 

 例えそれが、正解でないとしても。

 

「“機構”として生きる、その“生”に後悔などない。」

 

 すると、部長さんの声が聞こえた。

 

「ただ世界に広めたかった、治療されるという希望、快癒する歓喜、それがあの世界には必要だった!

貴方の闘争に必要性はありますか?未来への展望は?行き着く果てをどこに見定めているのです?」

「……………さてな?」

「ないでしょう、だから貴方は私と違う。

“在り方”は同じでしょう、ですが、“生き方”は違う……故に!

 

私の血は、夢の為に熱く滾る!

貴方の血は、野望の為に冷えて濁る!」

 

 ナイチンゲールの指が、クー・フーリンを指す。

 

「それは病です、治療させなさいクー・フーリン」

「……あんまり突拍子ないんで聞き入っちまったが、俺は殺す、お前は治す、それでいいか?」

「ええ、一向に!」

 

 そう言葉を交えた直後、拳と朱槍が交差した。

 

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