ギターヒーロー、人理修復へと旅立つ   作:ヘル・レーベンシュタイン

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今回の話が冬木で一番描きたかった話なのですが、同時にまとめるがすごい大変でした……


第五話

 

「!!」

 

 ふと、私は目を覚ました。まるで悪い夢でも見たかのように、荒い呼吸をし、寝汗を拭う。

 目に映るのは日本の私の部屋、灯りのついてない見慣れた空間だ。

 

「……今まで全部、夢、だった、の?」

 

 布団から体を出し、襖を開けて階段を降りて一階に向かう。居間、テレビの前を通り過ぎ、そして窓のカーテンを開ける。

 

「あ、ははは……」

 

 馬鹿だなぁ、私。夢だなんて、何言ってるんだろう……

 

「夢は、こっちだ……」

 

 レフさんが跡形もなく燃え尽きるというのは、こういうことだったんだ。火事なんて比じゃない、全て全て、燃え尽きていって……

 

 

 

 

 

 

「先輩!」

「ッ!ハァ………ハァ……ハァ………ハァ……」

 

 マシュさんの声が聞こえ、私はカルデアのベッドから跳ね起きた。

 

「す、すみません先輩!入室するつもりはなかったのですが、苦しそうな声が聞こえたもので……」

「あ、だ、大丈夫です……なんてことないです、ありがとうございます、マシュさん。」

「……はい。」

 

 不安そうな表情を浮かべるマシュさん、彼女の顔と周囲を見て私は確信する。

 

「……私達、ちゃんとカルデアに戻れたんですね。」

「はい……レフ・ライノールが消えた後、ドクターの指示でレイシフトを敢行。無事に元の時代のカルデアに帰還しました。極度の疲労状態の先輩はその場で昏倒、この部屋まで運ばれて今の状態となりまして。」

「あ、そうだったんですね……迷惑をかけてしまい申し訳ないです……」

「いえそんな……迷惑なんて……」

「それより、所長さんは……」

「はい……察しの通り帰還できませんでした。」

 

 脳裏に浮かび上がるあの光景、蒸発した所長さんの姿は忘れられない。だからこそ、前に進まなきゃ、と思ったけど……

 

「あ、その、マシュさんが来たということは……」

「はい、管制室でドクターがお待ちです。」

「ろ、ロマンさんだけですか?」

「いえ、それなんですが他の職員の無事も確認できたので何人か集まってます。」

 

 良かった、無事な人達もいたんだ……だ、だけどこ、怖い!顔を合わせたくない、社会が怖い!

 

「あ、きょ、今日は人と話しすぎたので遠慮します……」

 

 そう言いながら私は、そのまま毛布の中へと身を潜めた。するとマシュさん毛布を引っ張ってくる。

 

「いや先輩起きたばかりですよね!?お願いですから出てください、皆さん先輩のこと心待ちにしてるんですから!」

 

 

 

 

 

 そして、一悶着の後に私は根負けをしてマシュさんと共に管制室へと向かった。そして扉を開けると……

 

「やぁ」

(す、すごく寛いでるー!?)

「あ、良かったらみかん食べるかい?」

 

周りは瓦礫だらけだけど、その中央にストーブや炬燵を出して団欒としているロマンさん達がいた。

 

「な、なんか凄く寛いでますね……」

「いやはや、緊急時こそゆるふわ……もとい、落ち着きというのは大事だよ?あと空調壊れてるし。それはさておき……改めて生還おめでとう、ぼっちちゃん、マシュ。そしてファースト・オーダー達成お疲れ様。

なし崩し的に全てを押し付けてしまったけど、君たちは冬木の特異点を消滅させ、そして無事に戻ってきてくれた。そのことに心からの尊敬と感謝を送るよ。」

「あ、は、はい……」

 

 ロマンさんが炬燵からで、そしてそんな言葉を送ってくれた。それに対して私は照れ臭く感じるものの……それでも

 

「あ……ですが、所長さんが犠牲に……」

「……そうだね、所長も含めてレフが起こした爆発によってカルデア職員の七割が死亡。君以外のマスター候補も生きているが全員が再起不能だ……管制室などの主要な設備は復旧したものの、完全とは言い難い。人類の未来を守るために作られたカルデアは死に体と言っていい状況だ。」

「七割が死亡……こんな、崩壊してると言っていいんじゃ……」

「レフ一人に酷い有様さ、でも……だからこそ僕らは、死んでいった彼女達に変わって“人類を守る”」

「え、人類を、守る?それって……」

 

 人類の破滅を未然に防ぐ?それならと思ったら……

 

「いや、おそらくレフの言う通り人類の滅びは確定している、何故なら2017年以降の文明の光が消えたままだからだ。冬木の特異点が消滅したにも関わらずにね。」

「そ、そんな……」

 

 私の期待はロマンさんの言葉によって否定された、だがそれだけで終わりではなかった。ロマンさんが手を挙げると、頭上に映像が映し出される。

 

「僕達は冬木こそが未来を歪めた原因だと考えていた、しかし実際は違った。これを見てほしい、復旧したシバで過去の地球を改めてスキャンした。」

「これって……」

 

 そこに表示された世界地図、その各所に黒い点が七つ刻まれているのが見える。

 

「ここで質問だぼっちちゃん、レフはどうやって人類を滅ぼしたと思う?」

「あ、え?か、か、核ミサイルを連射したとか?」

「ははは、それも確かに驚異的だね。だけどそんな単純でわかりやすいものなら僕達よりも表の政府が早い段階で対応してるよ。正解は聖杯さ、聞いてると思うが聖杯には『あらゆる願いを叶える力』がある。レフはね、その聖杯の力を使って過去の歴史を改竄したんだ。」

「過去の歴史を、変えた?あの、待ってください。過去が変わったことで誰かが生まれなくなる、とかそういうのはイメージできますが人類が滅びる、なんてそんな……」

「君の疑問はもっともだ、多少の過去改変で未来が変わることはない。ましてや人類を滅ぼすなんて結果を導けるはずもない。だがもし、改竄されたのが人類の歴史を決定づける究極の選択点(ターニング・ポイント)だったら?」

「ターニング……ポイント……」

 

【あ!ギターッッ!!】

【お願い!今日だけサポートギターしてくれないかな!】

 

 その時私の脳裏に浮かび上がったのは、初めて公園で虹夏ちゃんと出会いライブハウスに行くことになったあの出来事。もしも私があそこにいて、虹夏ちゃんと出会わなかったら?少なくとも私は、ずっと一人きりだったと思う。そう思うと、過去を変えることがどれだけ大きな被害なのか実感する。ましてや今後の人生に関わるポイントなら尚更だ。

 

「“この戦争が終わらなかったら”“この航海が成功しなかったら”“この発明が間違っていたら”“この国が独立できなかったら”などと『その過去が変わってしまえば人類の歴史が大きく狂ってしまう』と言う時代と場所、それこそが究極の選択点であり、この世界地図に浮かぶ、七つの黒点だ。」

「つまり、レフさんは……」

「ああ、その選択点を改竄した。改竄された歴史は冬木と同じように特異点となり、人類史は土台から崩された。その影響で人類の滅亡が確定してしまった。」

「そんな……そんなことを止める手段があるんですか?」

「……レイシフトだ。」

「!」

 

 それは私とマシュさんが、結果として冬木へと行ったあの現象のことを指してる。

 

「特異点といっただろう?それはつまり、冬木と同じと言うことだ。冬木の聖杯戦争を終わらせたように、それぞれの特異点にレイシフトし、歴史を正しい形に戻せばその特異点は消滅する。それが人類を救う唯一の方法だ。」

「そ、それなら……!」

 

 まだ希望はある、そう思えた。さっきの話なら、七割のスタッフさんが死亡したけどまだ生き残りはいる。それなら、七つの特異点にそれぞれ行けばまだどうにかなるはず。

 

「だが……」

 

 だけど、続けた言葉が私の認識の甘さを痛感させる。

 

「レイシフト出来るのは君だけだ、ぼっちちゃん。」

「………え?」

「レイシフトには特別な資質が必要だ、それこそ世界各国から集めても48人しか見つからないように。マスター候補とはレイシフト適性者のことでもあったんだ。」

 

 そういえば、所長さんとレフさんとのやりとりで素質が必要なことを話していた。なんで私は気づかなかったんだろう……

 

「だが先ほども話した通り、他のマスター候補は再起不能。だから今、レイシフト出来るのは君とサーヴァントであるマシュだけだ……」

 

 つまり、人類史の存続は私とマシュさん、たった二人に掛けられてるに等しい。

 

「………この状況で君に話すのは強制に近い、それでも僕はこう言うしかない。

君達はすでに、2004年の冬木にレイシフトし聖杯を奪還し歴史を正しい形に修正した。

君たちが人類を救いたいのなら、2016年から先の未来を取り戻したいなら……あれと同じことをあと“7度”別の国、別の時代で繰り返してもらうしかない。“たった一人”で、この7つの人類史と戦わなくてはいけない。」

 

 あと7度、私は命を賭けた戦争に出ないといけない事実を告げられた。

 

「マスター適性者48番、後藤ひとり。その覚悟はあるか?君にカルデアの……人類の未来を背負う力はあるか?」

「____」

 

 初めて出会った時は、勝手に部屋に入って好き勝手していたけど、どこかゆるくて優しくて、そして冬木ではサポートしてくれたロマンさん。彼が、私にあと七回死ぬ覚悟を抱けと言っている。あの時なら、とても信じられない光景が私の目の前に映っている。

 当然、そんなもの私が持ち合わせてるわけがない。だから断る、言え、言うんだひとり。他を探してください、私には無理ですって。体を、唇を震わせて私は言葉を放つ。

 

「あ、そ、外って、どうなってるんですか?」

 

 そんな私の考えとは裏腹に、私から出た言葉はそれだった。ロマンさんは困惑したような顔を浮かべながら、答えてくれた。

 

「………通信は途絶している。外の調査に行ったスタッフは戻ってこない。理由はわからない……人類史が崩れた余波なのか、いずれにせよカルデアの外は滅びている。」

「____」

 

 その残酷な真実を聞いて、私はまるで底の見えない闇の穴に落ちたような感覚が全身に走る。

 そうか……もう家族とも、結束バンドのみんなとも、今まで出会った人達と話すことできなくなったんだ……もう夢を、叶えることはできないんだ。もう結束バンドとして演奏することは出来ないんだ。

 

「だけどカルデアは無事だ!カルデアスの磁場と幾重にも張った論理防壁で、レフにも手を出させないように……」

「私、高校に通いながら、バンドを組んでたんです……」

「ッ!?」

「献血の件の後、すごく心配してるだろうなって思って、電話をしようと、考えてました……冬木のことも、怖かったし、辛かったけど、ここで出会った人たちの話を、伝えようと思ってました……」

 

 目元がじんわりと熱くなり、ポタポタと涙が私の意思を振り切って落ちていく。その都度に胸が崩壊するような痛みを感じる。それほどまでに辛く、絶望的な状況で私にはあまりに重過ぎる現実。周囲から涙を流すような音が聞こえる、よく考えたら私だけでなく間違いなくスタッフさんの家族だっていたんだろう。

 

「でも、みんな……みんな燃えてしまった!私だけが生き残って、私が見殺しにしてしまったも同然だ……!!」

 

 もしも、と考えてしまう。もしも私なんかが生き残るんじゃなくて、もし別の誰かならもっと上手く人類を救うことができたのだと。だけど結果はこれだ、私なんかが生き残って、他の全てが燃えてしまった。ごめんなさい、虹夏ちゃん。スターリーをもっと有名にする夢を叶えてあげられなくて。ごめんなさい、リョウ先輩。もっと一緒に、結束バンドとして活動したかったです。ごめんなさい、喜多ちゃん。一緒に学校登校したり、練習できたり、いろんな所に行けて嬉しかったです。

 結束バンドは私にとって大切な宝であり、たった一つの場所だった。それを守れなかった私は、罪人に等しいのかとしれない。だけど……

 

「覚悟と言われてもわかりません、今までの話も理解できるほど頭だってよくないです。それでも、止まりたくない。このまま全てが滅ぶ結末なんて嫌です、だって私は……」

 

【でもそんな状況をいつも壊してくれたのがぼっちちゃんだったよね、今日のぼっちちゃん私には本当のヒーローに見えたよ】

 

 みんなの思いを、結束バンドの夢を終わらせたくない。例え孤独のまま終わるとしても、私は結束バンドがここに居たのだと殴り書きのようなものでも演奏し続けて世界に刻んでいきたい!

 

「結束バンドのギタリストとして、最高のバンドにすることが夢なのは変わりません!だから私がバンドのみんなの想いを背負って駆け抜けます。それが、私にただ一つできることなら!」

 

 たとえそれが無意味で無価値で、そして絵空事でも“変わってはいけない”私の決意。それが人類史の焼却に立ち向かえる唯一の武器だと信じている。

 

「先輩……!!」

「ありがとう、その言葉でボク達の運命は決定した。」

「ロマンさん……」

 

 私の言葉を聞き届け、ロマンさんは深々と頭を下げてその言葉をくれた。そして体を起こすと……

 

「生き残ったすべてのカルデア職員に告げる、現時刻をもってロマニ・アーキマンが正式に司令官の任に就く!そしてカルデアは前所長オルガマリー・アニムスフィアが予定した通り、人理継続の尊命を全うする!

 

目的は人類史の保護及び奪還、探索対象は各年代と原因と思われる聖遺物“聖杯”だ。我々が戦うべき相手は歴史そのものだ、君の前に立ちはだかるのは多くの英霊・伝説になる。それは挑戦であると同時に、過去に弓を引く冒涜だ。我々は人類を守るために人類史に立ち向かうのだから。けれど生き残るにはそれしかない……いや、未来を取り戻すにはこれしかない。たとえ……どのような結末が待っていようとも、だ。

 

以上の決意を持って、作戦名は“ファースト・オーダー”から改める。これはカルデア最後にして原初の使命、人理守護指定“G・O(グランドオーダー)

魔術世界における最高位の使命を守って、我々は未来を取り戻す!!」

 

 ロマニさんのその宣誓を区切りに、私はカルデアに正式に参戦し未来を取り戻す戦いに身を投じたのだった。

 

 

 そう、これは……ただのギタリストだった私が夢背負って戦い抜く物語の幕開けである。

 

 

 

 

特異点F 炎上汚染都市 冬木

定礎復元

 




これにて冬木特異点は終了です。我ながら無茶な駆け出しだと思ってますが、どうにか終局特異点まで駆け抜けれればなと思い、今後も励んでいこうと思います。
次回からオルレアンのスタートです。
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