ギターヒーロー、人理修復へと旅立つ 作:ヘル・レーベンシュタイン
私の視界に、幾つかの鎖が迫る。それを、矢が、槍が、炎が、そして盾が防ぎ迎え撃つ。
数だけならこちらが有利、なのに明らかにこちら側のみんなが私含めて緊張していて、逆にエルキドゥさんは至って落ち着いた素面の顔のまま立ち回っている。
「!」
「!?」
一瞬の隙をついて、鎖がマシュとヘクトールさんを宙で縛り上げる。そして一気に仕留めようとした。
「
直後に私が清姫ちゃんに強化を施し、火炎弾で二人を縛る鎖を焼き払う。
「ナイスですっ、と!」
ヘクトールさんが距離を詰め、槍をエルキドゥさんへと振り下ろす。が、直後に聞こえたのは金属音。見れば、エルキドゥさんの手が刃物になって槍を防いでいた。
(腕が変化!?)
「マジですか…!!」
「やああああ!!」
それでも構わず、マシュが戦線に戻って果敢に攻める。しかしそれでも、刃に変わった手を活かして二人の攻めを優雅に防がれてしまう。
(攻めきれない!戦力的には狂王戦にも引けを取らない筈なのに……これが古代メソポタミア最強の兵器、エルキドゥ!!)
「ならば…!」
硬直状態を崩そうと、アルジュナさんが動いた。
「漲れ!! 我が“
炎を腕に、そして矢に纏わせてエルキドゥさんへ向けて放とうとした。
「凄まじい魔力放出、一級の英霊のようですね。でも……」
そのエルキドゥさんの言葉を聞いた直後、私の体に一気に疲労感が満ちて視界がぐらついた。流石にこれだけの魔力消費は、私に重すぎたんだ……
「マスターも一級とは限らない。」
「!」
(魔力供給を遮断、周囲から魔力を……)
流石にアルジュナさんも攻撃を中断しざるを得なくなり、それは当然……
「仕えるのに慣れてないんですね」
エルキドゥさんからすれば狙い易い隙、その一瞬で距離を詰められガラ空きの体に攻撃が放たれる。が……
「!?」
(え?)
何故かエルキドゥさんは、飛び上がる。おかしい、誰も奇襲なんてしてないのに。
「こっちです、逃げますよ」
「あ、え、は、はい?」
「エルキドゥは私の術にハマってる、その隙に撤退するんだ」
突如黒衣の女の子と、白衣のお兄さんが現れてそう言ってきた。よく分からないけど、ピンチを救ってくれたようで、私は導かれて走りだしたのだった。
そして、私達は森林の中へと導かれる。気がついたら、私だけじゃなくてマシュや他のメンバーも居た。
「いや上手くいった上手くいった、何しろ日陰に立ってあれこれ手伝ってきたカルデアだ。そんなところで終わるのは、全く了承できない。」
白衣のお兄さんが拍手しながら、そんなことを言う。その口調、まるでカルデアを知ってるかの様な……
「これは?皆さん無事で……一体何が?」
「幻術さ、エルキドゥ含めみんなに夢を見せて退避して貰った。命の恩人というやつさ!
お礼とか雨の様に浴びせて欲しい!」
「あ、ありがとうございます!」
「あ、わ、私もみなさんを助けてくれてありがとうございます!」
言われ、私とマシュは二人に向けてペコペコと頭を下げた。だけど同時に、やはり気になる点を聞いた。
「あ、と、ところでお二人は…?」
だけど直後、私の肩に乗ってたフォウさんが降りた。そして木に登り始める。
「
「おや?」
「
「????」
「
すると高い位置から一気にフォウさんが飛びあがり……
「
物凄い飛び蹴りを白衣のお兄さんに炸裂され、お兄さんは吹っ飛ばされた。
「フォウさーん!?」
「い、命の恩人になんてことを!?」
するとフォウさんは華麗に着地し、直後にお兄さんの眼光も煌めいて両者が激突をし始めた。
「この凶獣!長年世話してやった恩も忘れて!!この!この!!」
「あ、あわわ……」
お二人のぽんぽこした喧嘩が繰り広げられ、治るまで見ていることしか私はできなかった。
「いや、ちょっとカオスすぎるな。一旦仕切り直して下さないな。」
それを同じく見ていたヘクトールさんがそう言ってくれた。
流石にスキル“仕切り直し”持ち、本人から聞いて最近知ったことだけど。
そして改めて
「私の名は“マーリン”この娘は“アナ”、共にサーヴァントだ。」
そう自己紹介してくれて、お二人の名前と素性をようやく知ることができた。
「二人で行動していたところ、戦闘を感知してね。助太刀をしたというわけさ。」
「アナさんもありがとうございました、助かりました。」
「……さんは要りません、アナでお願いします。
それと人間は嫌いです、できれば近寄らないで下さい。」
「こ、これは失礼しました。」
「……」
マシュが改めて感謝の言葉を言うものの、アナさんが目線を逸らしながらそう答えて思わず距離をとってしまってる。
その様子を私は見てたものの、それとは別にふと思った。
(なんか、見覚えが……)
そう、アナさんをどこかで見た気がする。確かオケアノス……いや、それよりも昔、冬木、だったような……
【って、ちょっと待ったー!!!】
「!?」
と、振り返っていると急にロマンさんの叫び声が差し込まれてきた。
「え、あ、ど、どうしたんですかロマンさん?」
【そ・い・つ!!そいつ!が!マーリンだっていうのか!?】
「そ、そうだと、さっきの自己紹介を聞く限りは……」
「やぁ、初めまして……ロマニ・アーキマン♪」
私達の会話を割って、マーリンさんがそう言った。すると、通信機越しでロマンさんが冷や汗いっぱいになってるのが伝わってくる。
【あーーーーりーーーーえーーーーなーーーーいーーーー!!!
マーリンが英霊化しているものかだって彼は世界の終わりまで死ねない冠位の魔術師だ現在全てを見渡す千里眼を有しアーサー王伝説においてアーサー王を導いた大魔術師そしてろくでなしそのろくでなしさ故にブリテン島にいられなくなりアヴァロンの塔へと渡り自らを幽閉人類史の終わりまでその行く末を見る為ち生き続ける男がサーヴァントになるわけない!!!】
【司令官代理がおかしくなったぞー!!! 】
突如マシンガントークマシーンと化したロマンさんを見て、ムニエルさんの困惑の叫びが聞こえた。
うん、そりゃそうなる。ロマンさんのマシンガン解説の九割、私は理解できず頭に入らないもの。
【ロマニがダメになったので、会話を引き継ごう。】
そして必然、話の続きをダヴィンチちゃんがしてくれた。
【まずはマーリン、先程の戦闘。そして、今までの“カルデア”への支援に対して感謝を述べよう。】
「え、今までの支援、ですか?」
そう言えば幻術が解けた直後に、確かに本人がカルデアがどうとか言ってたけど……
【文字通り彼は、カルデアの協力者なのさ。彼は人理償却から免れた、カルデア以外の唯一の生命でね。
それゆえに秘密裏に様々な協力をしてくれた。例えば……清姫達をカルデアに送ったのは、彼の仕事だ。】
「!?」
「……!」
「っ!?」
今明かされる衝撃の真実、三者三様な反応が顔から出ている。
「なるほど、道理でこの兄ちゃんを見てると嫌な気分になるわけだ!」
「………」
ヘクトールさんはヘラヘラした笑いを見せつつも明らかに怒りが滲み出ており、アルジュナさんは黙っているけどどこかバツが悪そうな雰囲気をしていた。そして……
「愛の力で、ひとり様の元へと辿り着いたわけではなかったと?あ、あんまりですぅぅぅぅ!!」
この真実に一番を感じていたのは、当然ながら清姫ちゃんだった。
「はははは、皆ひどいリアクションだ。だが、構わずに続けよう。」
と、まるで人の心が無いのかな?と思ってしまいそうなことを言いながら、マーリンさんは話を続けた。
「私は他にも手助けをしているよ、わかりやすいのはそう……ドレイク船長。
彼女が魔術王に殺される直前、幻に置き換えたのは私だとも。」
すると、気が付いたら私もマシュは、マーリンさんの手を握ってた。私自身、無意識の行動で驚いている。
だけど同時に、マーリンさんも目が点となってる顔をしていた。
「ありがとうございます!」
そして、自然と私は口から感謝の言葉が出た。
「せ、船長さんのこともですけど、皆を送ってくれたことも……お、お陰で楽しいです。
カルデアにいるときも、旅をしている時も……です。
だからマーリンさん、これまで支援してくれたこと、ありがとうございます!」
「__ああ、それは何より」
マーリンさんは、読みずらい表情だけどまるで花が咲いた様な微笑みをしながらそう答えてくれた。
【……はぁ、君にはまだ確認したいことがあったが。ぼっちちゃん達が信用してしまった、カルデアも君を本物だと信じるしかない。】
するとロマンさんの声が聞こえ、どうやらメンタルブレイクから復帰した様だ。
「ふふふ、人間らしいじゃないかロマニ・アーキマン。」
【だが確認はなくとも質問はある、何せ我々はこの特異点に来たばかりだ。
ぼっちちゃは何も分かってない!!】
「あぅ……」
そう、ようやく腰は落ち着けたもののこの特異点で何が起きて誰と戦うべきがなど悩みの種がたくさん湧き出てくる。その重圧を今更ながらに感じていた。
「ふははは!千里眼を通して何度か見たけど、やはりこうして間近で崩壊した君のその顔面を見ると、実に愉快な味わいを感じさせるものだなぁ!」
と、マーリンさんに言われるものの、こうして崩れているままではいけないので……
「いいとも、なんでも聞いてくれたまえ」
「あ、はい……」
一度顔を振り、気を立て直してひとまず気になる点を聞いてみた。確か、さっきエルキドゥさんからの奇襲を受け、そして少し前に聞いたロマンさんの話から……
「あ、その、エルキドゥさんがソロモン側なら、ギルガメッシュさんもその、敵と言えるんでしょうか?」
「ほう……」
(なるほど……)
「いい質問だ、特異点を渡り歩いた経験は伊達じゃない。
エルキドゥとギルガメッシュは、共にこの時代における最高戦力。ゆえに彼らが敵であるかどうかで、これからの立ち回りも変わってくる。うん、やはり良い質問だ。」
「え、えへへ……そ、それほどでもぉ」
「先輩、先輩、頬をお餅のように垂れさせては締まりませんよ。」
「あ、はい……」
ここまで褒められるとは思わなかったので、つい照れてしまったけどマシュに言われてすぐに気を引き締めた。
「ではその問いには、こう応えよう。答えは、あの壁の向こうにあると。」
そうマーリンに言われ、まずは私達はその壁の向こうへと進み始めた。
「構えーー!!!」
「おーーー!!!」
崖の上から、マーリンさんの示した壁の方を見下ろせば、そう叫んで魔獣達を攻める兵士の人たちの姿がそのにはあった。
「総延長100kmをゆうに超える城壁、それを破らんとする数千数万を超える魔獣の群れ。
それを防ぐは、この時代を生きる人間達。正真正銘、ただの人間が半年もの間防衛を成し遂げている。」
「半年!そいつは……」
マーリンさんの解説に、ヘクトールさんの驚きと感嘆に満ちた声が出ていた。
「無数の魔獣から人類の生存圏を守る、それがこの壁の正体。そして……ギルガメッシュが敵であるかどうかは、この壁を作り上げたのが“彼である”と言う事実をもって、答えとさせてもらおう。」
「ギルガメッシュ王は人類の味方、朗報ですね先輩!」
マシュの声に私は頷く、これまでのマーリンさんの話を聞いて私もそれを確信した。
「それで、ここからは提案だが私達は今からその“王”に会いに行く。来るかい?」
「あ……はい、もちろんです!」
「では善は急げだ、彼がいる都市はここから……」
「あ、ごめんなさい。」
「うん?」
ではいざ向かおうと思ったら、ふとまだ気になることをマーリンさんに聞くことにした。
「その、最後にまだ聞きたいことがありました。
この壁の名前と、私達が闘う相手を教えて欲しいです。」
「……いいとも。
敵はエルキドゥだけじゃない。君が対峙すべき者達は別にいる。
名を“三女神同盟”
そして君たち共に戦う者たち、この長城の下、四方世界の守り手たらんとする者たちを人々はこう呼ぶ。」
曰く
「絶対魔獣戦線バビロニア」
「カルデアか、知っている。何を求めてここに来たのかもな。」
そうして、マーリンさんに導かれて私達はついにギルガメッシュ王の玉座へと辿り着いた。
「マーリンと共にいたのだ、この地で何が起きているかは聞いておろう」
玉座の王が、私と目線がぶつかる。そして即座に目を伏せて口を開く。
「…その上で告げる、下がれ。
語る必要も、試す必要も感じぬ。」
それだけを告げられて、私達は玉座から外へと出されて終わった。