ギターヒーロー、人理修復へと旅立つ 作:ヘル・レーベンシュタイン
第六話
(じ、地味だなぁこの格好……)
今私は、カルデアから支給されたスーツを着ていた。そのデザインは何処となく、小さい頃に見ていた特撮番組の主人公が着ていたものと似ていて、私的には似合っている感じがしない。
すると部屋の扉が開き、似た様なスーツを着用をしていたマシュさんが現れた。
「おはようございます、先輩。よかった、スーツはぴったりな様ですね。」
「あ、はい、おはようございます……」
「行きましょう、本日より人類の存亡をかけた過去への旅。聖杯探索の始まりです。向かうは第一の特異点、西暦1431年、百年戦争の舞台“フランス”」
着替えを終えた私とマシュさんは、改めて管制室へと入った。そこにロマンさんと、良く見られない女性がそこに居た。
「やぁ、サイズはぴったりだった様だね。そのレイシフトスーツ、2人共似合ってるよ。」
「あ、はい……ですが、このままレイシフトしていくのですか?」
地味で恥ずかしい……正直なところあのジャージが恋しくなり始めてた。あの白い制服はまだマシだけど。
「大丈夫、レイシフト先でいつもの服に戻ってるから。それにレイシフトの安全性を上げるためにも着てもらわないとね。」
「安全性、ですか……前回は大丈夫でしたけど……」
「いやいや奇跡みたいなものだよ、冬木に行けたのは。」
けど確かに振り返ってみると、レイシフトは過去へと遡ること。それを生身でやるのは、よくよく考えてみれば生身では危険そうな印象はある。
するとロマンさんが、隣の女性の方へと向いて話を続けた。
「ちょうど良い“カレ”を紹介するよ、そんな危険なレイシフトを成功させるべく今回からカレの手を借りる。
ぼっちちゃん、マシュ、カルデア技術部門のトップ“レオナルド”氏だ。」
「あ、はい……よろしく、お願いします。」
……カレ?どう見ても女の人だのに、ロマンさん呼び方間違えてないかな?それにレオナルドって、どっかで聞いたことある様な……そう奇妙に感じていると、マシュさんからの声が聞こえた。
「先輩、この方“サーヴァント”です!」
「え、さ、サーヴァ……」
「はい、正解♪カルデア技術局“特別”名誉顧問、レオナルドとは仮の姿。私こそルネサンスに誉れ高い万能の発明家、“レオナルド・ダ・ヴィンチ”その人さ!」
「あ、え、え、ええぇ!?だ、ダヴィンチって確か教科書に載ってたあの……」
「うん♪良い反応だ」
曰くダヴィンチさんは、私の反応は想定内だった様で落ち着いた口調で受け答えしていた。だからこそ、私は質問せざるを得なかった。
「あのダヴィンチさんって確か男の人で、それも髭もじゃで……」
「定番の質問だね、だが男だの女だのは重要ではないのさ。その様子だと知ってるだろう?私の描いたモナ・リザを。」
「え、あ、はい……」
モナ・リザと言えば、それこそ今や日本でも知らない人がいないであろうあの女性の絵画。私でも知ってる有名なもので、あれ?そう言えばダヴィンチさんの姿とアレが妙に似てる様な……
「彼女は私にとって理想の美、そして私は“美”を追求する。」
「そう、ぼっちちゃん。カレはね、モナ・リザが好きすぎて“自分の姿をモナ・リザにしてしまった”生粋の変態なのさ。」
「__________」
その刹那、私の脳内で
「??????」
「せ、先輩!?混乱してしまうのはわかりますが、顔面を崩壊させながらコネコネと宇宙創造を始めないでください!」
「アハハハハハ!ロマニから聞いてたが、本当に顔面が崩れるとは面白いね、ぼっちちゃんは!」
「揶揄って楽しんでる場合か、話を戻してくれレオナルド!」
「おっと失敬、それじゃあ改めてレイシフトの話に戻るからぼっちちゃん戻ってくれ。」
「ハッ!?」
私は意識を戻し、再びこれから起きるレイシフトの話へと耳を傾けた。
そして、コフィンという縦長な入れ物へと私とマシュさんは入った。中は狭い空間になってたが通信はできる様で、私は画面越しでダヴィンチさんと話をしていた。
『ぼっちちゃん、ここからはキミが中心になる物語だ。英雄ではなく、ただの人間として星の行く末を定める戦いが、キミに与えられた役割だ。』
「私に与えられた役割……あの、それはどういう?」
『キミの判断が我々を救うということさ、それはそのまま逆の意味も持つけれどね。』
「わ、私が救うなんて、そんな……」
その問いかけを続けることはできず、外からレイシフト開始の合図が聞こえた。
「………」
外ではカルデアのスタッフさん達の声が聞こえて、その一方で私はコフィンの中で待っているだけ。
事前にダヴィンチさんからレイシフトの仕組みをより詳細に聞いたけど、正直良くわからなかったのが本音。ただ、要点としては私を“生きてるか曖昧な状態”にして“分解して過去に照射する”ということ……なんだと思う。
(うん、素人の私が考えても危険だよねこれ……)
あくまで勘だけど、途中で失敗すれば私のバラバラ死体の出来上がりになると思う。そんなリスク、私は背負って今居るんだと思うと凄く怖い。
だけど、ロマンさんやダヴィンチさん、そしてスタッフのみんながこれをミス無く成功させようと必死に励んでいる。なら、私はそれを信じて待つほかない。そして……
「全行程完了!アーキマン司令官、ご指示を!!」
「フー………ここからだ」
ついに準備段階が終わり、私とマシュさんの闘いの舞台へと旅立ちが始まる。
「
グランド・オーダー 実証を開始する!!」
「…………!!」
視界が暗転し、気が付けば森の真ん中へと私とマシュさんは放り出されていた。
「レイシフト完了……どうやら森の中に出た様です、ともあれ無事転移完了です。」
良かった、どうやらレイシフトは成功したようだ。尻餅をしたまま立ち上がれない私に、マシュさんが手を差し出した。
「おケガはありませんか、先輩……」
「フォウ!」
だけど、手を掴もうとした時にマシュさんの肩からあの白い生物が現れた。
「フォウさん!?付いてきてしまったのですか!?」
「あ、フォウさんって名前なんですね……」
「はい……ですが、コフィンにでも紛れ込んだのでしょうか?」
そのままの名前なんだなと思いつつ、一緒に来れたということはレイシフト適性があったんだな、と思うことにした。というかそうじゃないとまず無理だろうし。
しかし、それにしても……
「フォウ……さんは何の生き物、なんでしょうか?」
「職員の誰かが作った魔法生物、というのがドクターの見解です。であればレイシフト適正を持っていることにも納得がいきます。」
なるほどなぁ、と思っているとフォウさんは目の前の生い茂った草原の中へと首を突っ込んで進んでいった。
「な、なんか自由な子ですね……」
「魔力の反応もありませんし大丈夫かと、まず時間軸の確認を……」
直後、通信機から音がした。
「あ、ロマンさんからの通信が……あひゃ!?」
通信機のボタンを押した直後、画面の照射が目の前に伸びてきて思わず驚いてしまった。
『驚いたかい?魔術を併用しての空間通信さ、プロジェクターは場所を選ぶからね。』
それなら事前に教えて欲しかったけど、状況が状況だったので口を噤むことにした。
『それで時間軸の確認といこうか、A.D.1431年、フランスはロレーヌ地方のドン・レミ村。だいぶ田舎だが許容範囲だ。』
「1431年のフランスといえば、百年戦争の只中ですね、確か……」
百年戦争という単語は、どうにも聞き覚えないのでどこかで詳しく聞こう。そう思った直後だった。
「ドフォーーウ!!」
「フォウさんの叫び声!?先に行きますマスター!」
「あ……」
マシュさんは慌てた様子で、声の聞こえた場所へと駆け出した。私も跡をついてくる形で走り、そして追いつく。だが、そこから奇妙なものが目に映った。
「え、なにアレ……」
私……いや、私達の目は上空を向いており、そこには大きな光の輪があった。
『光の輪?いや、衛星軌道上に展開した何らかの魔術式か……?何なんだ、人類の滅亡に関係している何かなのか?』
通信機から聞こえるロマンさんの声、どうやらカルデア側から見ても不明なものらしい。
その一方で視界を下の方に向けると、そこには火の手が上がっている集落があった。
「マシュさん、アレは……」
「……恐らくドン・レミ村です。理由はわかりませんが、何者かが焼き払った後の……」
『光の輪も、ドン・レミ村が燃やされたことも1431年に起きた記録は無い……』
『歴史はすでに変わり始めている……この状況、想定より遥かに……』
管制室から困惑の雰囲気が帯び始めている、そう私も実感が湧いてきた。だけど……
「ロマンさん、まだ間に合うと思います。指示を、お願いします。」
『____』
もしも本当にフランスが取り返しのつかない手遅れな状況なら、もっと酷い状況のはずだ。ライブでもそうだ、出遅れたりミスしたりしても挽回できる機会はある。だから、ここで立ち止まってるわけにはいかない。
『ああ……まずは情報収集だ。ぼっちちゃん、マシュ、百年戦争のこの地でなにが起きているのか、それを突き止めてくれ!』
そして私達は、この特異点の異変を突き止めるために歩みを進めた。その道中でロマンさんが、特異点の修復のために必要な事を教えてくれた。やはり聖杯が絡んでいる様で、それは必ず回収しなければならない。
『そのために君達が探すべきなのは、この時代のフランスにいなかった“人物”、起こりえなかった“事象”だ。』
この二つを突き止めるために、私とマシュさんはフランスのロレーヌ地方にあるヴォーグルールという場所へと辿り着いた。
(ひどい有様だ……)
「ドン・レミ同様、襲撃を受けた様ですね……」
街の中に入れば、周囲には瀕死の兵士と思われる人物が何人も倒れていた。そんな光景に目を痛めつつ、街を徘徊して様々な聞き込みを行った……主にマシュさんが。そして暫くして……
『情報収集の成果はどうだい?』
「あ、はい……ダヴィンチさん。あの、ロマンさんは?」
『ダヴィンチちゃんと呼びたまえ、彼は休憩中だ。それで、何かわかったかい?』
「あまりにおかしな点が一つ、死亡されたとする人物が蘇ったというのです。」
『名前は?』
そう、マシュさんが民間の人達から聞いた奇妙な話。死んだはずの人物がなぜか蘇っていた。その人物の名は……
「“オルレアンの乙女”聖女ジャンヌ・ダルク」
日本でもよく聞く、聖女が死から蘇っていたのだった。曰く聖女、だのにこのフランスにおいては国王が殺されたり、各都市を襲撃したりなど聖女とはかけ離れた暴挙ばかりが耳に入る。
(悪い情報ばかりが入ってくる……良いことはせいぜい、せめて多くの人たちがここに避難できてたことくらいだ。)
『手に入った情報は他にないかい?』
「あ、えっと、もう一つ……話に聞いたジャンヌさんですが、なんか竜を使役しているようです。」
『ッ!そいつは酷い話だね……』
私の報告に、ダヴィンチさんの声色が険しくなるのを感じた。
「そ、それほど酷いのですか?」
『世界各国の伝説や神話に登場する生物を“幻想種”と呼ぶのだが、竜はその中でも頂点に君臨する。名のある個体であれば、サーヴァントでも太刀打ちできないほどさ。』
「サーヴァントでも、太刀打ちできない……」
え、それってかなり危険なんじゃ?だって今いるサーヴァントはマシュさんだけなのに……マシュさんが簡単にやられるとは思ってないけど。
そう私が考えてる最中、ダヴィンチちゃんの話が続く。
『だけど、本当の問題はそこじゃない。本来の15世紀のフランスには“竜なんて存在しない”ってことさ。つまりジャンヌ・ダルクは竜をこの時代に呼び寄せた、英霊召喚の様に。もしそれが真実なら、彼女が聖杯を所有しているとほぼ確定したことさ。』
「ッ!」
ジャンヌさんが聖杯を本当に所有してるのなら……
「先輩……」
「はい、ジャンヌさんを見つけて聖杯を回収しましょう。」
そう決意し、マシュさんと共にジャンヌさんを探し出す。その行動に移ろうとした時だった。
「
兵士のその声と鐘が鳴り響き渡り、上空から本当にワイバーンがその姿を表した。
直後、一体のワイバーンの口から火が放たれ、鐘を鳴らしていた兵士の方へと放たれ、爆弾でも爆発したかの様な破壊を齎していた。不味い、このままじゃ他の人達にも被害が……
「マ、マシュさん!!」
「はい!戦闘を……」
『ストップ!』
私達がワイバーンとの戦闘を始めようとした時、通信機越しにダヴィンチちゃんから静止の声が届いた。
『残念ながらここでの戦闘を認めるわけにはいかない、2人とも。必要な情報は手に入った、そこから離脱し安全な場所まで避難するんだ。』
「な、なんでですか……」
私達の周りを、現地の人達は悲鳴をあげながら逃げていく。しかしそれを遮り、ダヴィンチちゃんからの冷徹な声が届いてくる。
『ロマニから聞いたと思うが、特異点とは通常の時間軸から切り離された時代だ。聖杯を奪還し修復されれば、そこで起きたことは全て無かったことになる。その時代の人間が何人死んでもなにも問題ないのだよ。だからね、その時代で死んではいけないのは、ぼっちちゃんとマシュだけだ。』
ダヴィンチの話を聞く傍らで、私の視界には泣き叫ぶ子供の姿が映った。その子は私の妹である“ふたり”と似た背丈おり、そしてその子の頭上にワイバーンが……
『レイシフトする前に言った“君の判断が我々を救う”と言った意味を、ちゃんと考えて……』
「っ!」
そして気がついたら私は身を投げ出し、その子を抱え込んでいた。同時にワイバーンの攻撃は、どうやらマシュさんが防いでくれた様だ。
「あ、ありがとうございます、マシュさん!」
「私は大丈夫ですマスター、それよりその子をお願いします!」
私は頷き、その子を抱えたまま走り出した。その最中、ダヴィンチちゃんの声が聞こえてくる。
『ぼっちちゃん、人の話聞いてた?自分の命の重さわかってる?』
「わ、わかってます……私も死にたくありません、絶対に死にたくありません!だ、だけど……」
私がこの子を助けたのは、ふたりと重ねたから?それともただ単に、助けられる命を見捨てることが出来なかったから?それとも死んでいく姿を見たくないから?
答えは出ない、わからない。だけどそれでも何か言葉を出すなら……
「し、死なせたくもないんです……」
『………ハァ』
そう答えると通信機からダヴィンチちゃんの溜息が聞こえた。マズい、怒らせちゃったかな……もしかして強制帰還させられちゃう!?
『オペ子ちゃん、ぼっちちゃんと周囲の魔力反応に注視し……』
『もうやってます』
『はやっ』
『私、元医療スタッフなので、
『……お人好しばかりだなぁ。』
などというやり取りが通信機から聞こえた。良かった、とりあえずカルデアからの同意は得られたみたいだ。
そのまま場所の方へと走り出す、その途中でマシュさんと一体のワイバーンの戦闘が目に映る。
(闘えてる、だけどだいぶ苦戦しているかもしれない……)
やっぱり、一体でも並大抵の強さじゃないんだ。それにまだワイバーンは沢山いる、民間人の避難が済んだら私たちも一度撤退した方がいいかもしれない。
「す、すみません!この子、親とはぐれたみたいなのでお願いします!」
「ああ!」
兵士に子供を引き渡し、周囲を見渡す。激しい混乱状態で、救援も戦力の手が全く足りてないのがヒシヒシと伝わってくる。
「これは当然の報いだ!!」
「ッ!?」
突如、一人の兵士のその叫び声が聞こえた。
「オレたちが聖女様を見捨てたせいだ!あの方は竜の魔女となってオレたちを、この国を根絶やしにするつもりなんだ!」
その兵士は孤立状態でそう叫んでおり、明らかに異常な状態となっていた。
「あの人、気が参ってるんじゃ……」
「放っておけ、居るんだああいう手合いは……」
近くの兵士さんがそう言いながら距離を取り、ひとまずは私もそれに倣って離れようとした。
すると、私の横に一人の女性がその兵士へと近づいていった。
「そこの兵士さん」
「あぁ!?」
直後、その女性が発狂している兵士に向かって平手打ちをした。
「貴方が……どれほど“あの子”のことを知ってるかわかりませんが、人の“娘”のことを好き勝手言わないで!!」
っ!あの人、娘と言った。ということは……
『技術顧問、あの人……』
『あぁ……』
通信機から聞こえた声、ダヴィンチちゃんたちも察したみたい。
「あの子は決して、こんな事をする人間じゃないわ!!」
「ふざ、ふざけんなよこのバ」
だけど、その事実に集中しすぎたのが不味かった。接近してきていたワイバーンに気付くのが遅れ、狂っていた兵士が襲われて一瞬で絶命した。
その返り血が女性に付着してしまう。
「キ………キャアアァァァッ!」
「ッ!」
不味い、このままじゃこの人が今度ワイバーンに襲われてしまう!
『やめろぼっちちゃん、近付くな!もう、間に合わない!』
ワイバーンの鋭い牙が、その女性の細い首を狙おうとする。私の無力な手が届かない、ダヴィンチの言う通り間に合わず、その命が失われようとした、その時だった。
「ギエ、ェェェッ!?」
一筋の旗の刺突がワイバーンを貫いた。その旗の持ち主は、マントを羽織っておりその顔と姿は見れない。
だけど、その後ろ姿と圧倒的な力がこの場を救ってくれたのは確かだった。
そして……場所は変わってヴォーグルール郊外。私とマシュさんは、旗の人と一緒にここまで移動していた。
「ここまで来れば安全でしょう。」
この旗の持ち主のおかげで避難が済み、私たちも助かった。
(だけど、誰なんだろう……ワイバーンを一撃で倒したこの人、ただの人間とは思えない。ひとまずついてくる様に言われたから、言われるがまま従ったけど。)
「すみません、言うがままついてきていただいて……」
「い、いえ……」
そして今気付いたけど、この声は女性のものだった。
「故あってあの場で顔と真名を晒すことはできませんでしたが、ここなら他の人もいない……大丈夫でしょう。改めて自己紹介を……」
そう言った直後、女性は顔に覆っていたマントを外しながら言い放った。
「サーヴァント“
「!!」
ジャンヌ・ダルク!?確か聖杯でワイバーンを呼んだ犯人で、私とマシュさんは戦闘態勢に移った。
「お待ちください!」
だけどジャンヌさんは交戦する気はない様で、手を出して静止の意を示していた。
「構えるのは当然ですが、話を聞いてもらえないでしょうか?」
「………?」
話を聞いてほしいとのこと、私もマシュさんも目を合して不思議に思うもののまずは聞いてみることにしてみた。
そして
「ジャンヌ・ダルクが、もう一人?」
「恐らくですが、私が現界したのは数時間前です。なので物理的にもフランスを襲う竜の魔女になれないですし、そんな記憶はありません。あくまで、私の記憶がただしければ……ですが。」
「その、ジャンヌさん、不安げな物言いな感じがするよですが……」
『恐らく彼女の霊基、存在が不安定だからだろうね。』
「ロマンさん」
通信機から聞こえたのは、聞き慣れたロマンさんの声だった。
『休憩終わり、レオナルドが意地悪言ったようだね。』
「い、いえ。ダヴィンチちゃんの言ってたことは正しいです、私が無茶しただけですので……」
『そっか……話を戻そう。聖女ジャンヌ、貴女の能力は軒並み低くなっている、本来持っているスキルや知識も使えないんじゃないか?』
「理由は分かりませんがその通りです、お恥ずかしい話ですが自分が英霊であると言う自覚も薄い。例えるなら、サーヴァントの新人の様な気分です……」
あれほどの力を持っても、それほど弱くなってるんだ……それでも、この人はあそこの人達や
「ジャンヌさん、貴女はこれからどうしようと思ってるのですか?」
「……それだけは決まってます。再びオルレアンを解放し、
「………」
彼女のその返答には、強い意志を感じた。だから、私もその返答に応えようと思い……
「そ、その…‥ジャンヌさん。さっき助けようとしたのはその、お母さ……」
「あ、えっと……すみません、その色々と事情がありまして。」
「いやすみません!わ、私もお母さんのことは大事ですが、その色々と負い目に思うところはあったので、なので……」
「……フフ、そうですか。ともあれ、助けようとしてくれてありがとうございます。」
アタフタと答える私に対して、ジャンヌさんは軽く微笑みながらそう答えてくれた。その顔を見て、少しホッとした。
「あ、えっとそれじゃ私達からも自己紹介を……私は、後藤ひとりです。し、新人のマスターでして……」
「私はマシュ・キリエライト。同じく新人のサーヴァントです。」
「それでなのですが、その、お話しして良かったら私たちと一緒に……」
「ええ、その信用ならは既に、あの砦でワイバーンと戦ったマシュさんの姿。そして、身を挺して母を助けようとした後藤さんの姿を見た時から得ています。」
協力の願いを言おうとしたら、ジャンヌさんは食い気味にそう答えてくれた。そして、手を出しながら……
「こちらこそよろしくお願いします、後藤さん、マシュ。そして良ければ貴女たちのお話も聞かせてもらいますか?」
そう問いかけるジャンヌさんに対し、私は同意をする様にゆっくりと手を掴み返した。
こうして私達はジャンヌさんの協力を得られたのだった。