ギターヒーロー、人理修復へと旅立つ   作:ヘル・レーベンシュタイン

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第八話

 

 

(何も、出来なかったな……)

 

 夜、みんなが寝静まった時、私はこっそりとテントを抜けて少し周囲を歩いていた。少しは気は紛れるかと思ったけど、どんどんと湧き上がるのは後悔の感情ばかりだった。

 ラ・シャリテに避難民は行った、当然咄嗟に助けたあの子も居たのに、結局ドラゴンの焔に呑まれてしまった。何も、何も結果が出せてない。

 

「……やっぱり、私にカルデアのマスターを務めるなんて……」

「不用心ですよ、後藤さん。」

「☆¥€・☆・×!?」

 

 不意に背後から声が聞こえ、つい自分でもよくわからない声を出してしまった。声の主はジャンヌさんだった。

 

「ジ、ジジジジャンヌさん、なんで……」

「いえ、お恥ずかしながら眠れなかったので……」

(眠れなかった?それって……)

「あ、お母さんのことで、ですか?」

「……もちろん、それもありますが」

 

 どこか錯雑そうな表情で、ジャンヌさんは夜空を見上げながら話を続けた。

 

「こう改めて対面してみると、わからなくなりますね。一体、どっちが本物なのか……」

(そうか、あの黒いジャンヌさんのこと……だけど)

「あ、で、でも……ジャンヌさんは、お母さんの危機を聞いて、すぐに走りましたよね?私は、そんなジャンヌさんが本物だと信じます……」

「……ありがとう、後藤さん。」

 

 私の返答を聞いて、ジャンヌさんの表情に少しだけ笑みが出た。よかった、少し元気が湧いた様で。

 

「戻りましょう、マシュが心配してしまいます。」

「あ、はい…」

 

 そうしてテントへと戻ろうとした時に……

 

「マスター、ジャンヌさん!」

「え、マシュさん?」

 

 茂みからマシュさんが現れ、急いでた様子だ。

 

「近くで戦闘が、民衆が襲われています!」

 

 

 

 

 

 

 

 少し離れた場所にて

 

「ぐぁああああ!」

 

 そこにはフランス兵が集まっており、周囲をワイバーンが囲んでいた。

 

「怯むな!知性がある、背中を見せた者を襲ってくるぞ!」

 

私達はすかさず救援に向かおうとしたが、それよりも早く赤い服を着た女性。そう、マリーさんが優雅な足取りで現れた。

 

「ごめんあそばせ騎士の皆様、ちょっぴり歌うわ。」

 

 直後、マリーさんの歌声が周囲のワイバーンを消滅させていった。凄い、一体どんな力を……

 

「私の声は王権の象徴、かつて王という存在が神の代行であった時代の名残。王が持つ人を統べる力の具現。つまり、私の歌声そのものが武器ということなのだけど、よかったわ……ワイバーンさんにも届くみたい。」

「………」

「ご無事ですか?騎士の皆様。」

「あ、貴方は一体……」

 

 ワイバーンがたった一人の女性によって撃退され、困惑すフランス兵の方達。その様子を見て、私達はマリーさんの方へと駆け出す。だけど、その最中でフランス兵達から騒めきの声が聞こえる。

 

「まぁ、お三方。」

「マリー・アントワネット!アマデウス達は一緒では?」

「彼らはまだテントです。それよりも民が襲われると知って、来てくれたのね!流石は聖女ジャンヌだわ!」

 

 マリーさんが嬉しいそうにジャンヌさんの手を掴み、嬉しそうに微笑む。それを受けながらもジャンヌさんは困惑していた。

 

「や、やめてくださいマリー・アントワネット。何もしてないのに褒められるのはこそばゆい……」

 

 直後、兵士から投げ飛ばされた石がジャンヌさんの頭部に直撃した。

 

「!!」

「ジャンヌ・ダルク、お前のせいだ。お前が蘇ったせいでこの国は滅茶苦茶だ……竜の魔女め、故郷の仇だ!」

「や、やめろお前達!」

 

 一人のリーダーと思われる兵士が静止させようとするが、憎悪に駆られる兵士達はその憎しみを抑える様子を見せない。

 

「死ね!もう一度死ね!死んでお前が殺した人間に詫びろォ!」

「そんな……ジャンヌさんは竜の魔女では無いのに……」

 

 マシュさんが、そう心配そうな声をあげる。黒いジャンヌさんが竜の魔女だといっても、おそらく信じてもらえなさそうな気がする。一体どうしたら……そう思っていたら、さらに最悪なことが起こった。

 

「散々な言われようね、聖女様。」

「ッ!」

「こんばんは皆様、寂しい夜ね。」

 

 近くの茂みから、見覚えのある黒色の服を着た女性が現れた。あれは、確か黒いジャンヌさんが呼び出したサーヴァントの一人!まずい、それなら他にも……

 

「テントから他の人達を呼び出そうとしても無駄よ、あちらはあちらで取り込み中でしょうから。」

 

 女性の言う通り、来る気配がない。恐らく向こうでも他のサーヴァントからの攻撃を受けてるのかもしれない。

 なら、一刻も早くこの女性を倒すしか無いけど……

 

(確か、モーツァルトさんの話では全員が戦闘に長けたサーヴァントのはず。マシュさん、マリーさん、ジャンヌさんが居るこちらは数は有利だけど、勝てるのか不安だ……それに。)

 

 背後にいるフランス兵の人たちを見ると、明らかな不信感の視線が刺さる。こんな状況でも、ジャンヌさんを信用できないのだろう。

 

(見てて辛い、ジャンヌさんはみんなを守ろうとしているのに……)

 

 そんな様子を見てか、女性から哀れみを感じさせる声が投げつけられる。

 

「悲しい話ね、この国を救おうと貴方は二度足掻いているというのに。彼らは今度こそ、貴女を敵と見做している。聞かせてジャンヌ・ダルク、貴女は今どんな気分?

死にたい?それとも、憎しみを向ける彼らを殺したい?」

「……普通でしたら、悔しくて絶望に縋るのでしょう。自分が何者かもわからない、不完全な身なら尚更に……」

 

 そうだ、きっと普通の人ならそうなる。だけど……

 

「ですけど……ええ、不完全ついでに壊れているのか、彼らが私を憎むことで、立ち上がることができるのなら、それはそれでいいかと思うのです。そう思えることはきっと、私が何者であるかより、大事なことだと思うので……」

 

 ジャンヌさんは眩しい笑顔を浮かべながら、そう答えていた。ああ、この人はそういう人なんだ。

 

「私は好きよ、その答え……“彼女”は憤るでしょうけど。」

 

 女性の方も敵ながら感心したようで……あぁ、なんて強く、美しい人なんだと心から思う。こんな私より、よっぽどジャンヌさんの様な人の方が向いていると思ってしまう。だけど……いいや、だからこそ負けられないと私は思った。

 

「マシュさん、少しの間だけ私とジャンヌさんを守れますか?」

「マスター?」

 

 背負っていたケースからギターを取り出し、そして演奏の準備をする。そう、今から私は……

 

「ジャンヌさんと“契約”を交わします。」

「はい、了解しました!」

 

 

 

 それは、レイシフトする前にロマンさんから聞いた話。

 

【契約?】

【サーヴァントはとても強力な兵器だが、その分すこぶる燃費が悪い。そんなモノが存在できるのは、常にマスターからの魔力提供を受けてるからだ。】

【そ、そうなのですか?だけど、私はマシュさんにそういう事をしている覚えはないのですが……】

【そこはカルデアのシステムが少し特殊でね、カルデアが発生させた魔力を君の体を通して提供している。だから、魔術の素養のない君もマスターになれてるわけだ。よってつまり、マスター不在のサーヴァントは魔力提供を受けてないから、本来の力を発揮できないってことさ。なので、もしそういうサーヴァントがいたら契約を待ちかけることができるんだ。】

【そうなんですね、マシュさん以外のサーヴァントと契約を……】

【けどオススメしないね、なぜって誰も試したことないし!2騎以上との同時契約なんて、魔力素養がほぼ皆無のキミにどんな負担がかかるかわからないからね。】

【だったらなんで教えたんですか……】

 

 

 

 なんて話を交えていた。あの時は与太話程度の認識だったけど……今となっては事前に聞いておいてよかったと思えた。レイシフト前に詠唱は暗記したし、演奏しながらなら確実にできる自信はある。あとはそれをやるだけ。

 

『無茶だぞぼっちちゃん!理論上できるだけで何か起こるかわからない!』

 

 通信機から発せられるロマンさんの静止の声、普通ならリスクを想定して止めるべきなのは当然の話。ましてや魔術のことなんて何も知らないし、経験の無い私がやるなんて無茶も良いところだ。

 

「告げる」

 

 弦を弾き、同時に詠唱を唱え始める。やれることならやらないといけない。そしてそこに、私ができる最大限のことを乗せる。それはいうまでもなくギターの演奏、これなら気持ちも乗せられる。あとは、私が襲撃される前に済ませるだけだ。

 

(怖い)

 

 目を閉じ、一度呼吸を整えるがそれでも恐怖を拭えない。

 

「なんだあの女、こんな状況で楽器なんてふざけやがって!」

「させると思うの!?」

 

 周囲から聞こえる声、そして突き刺さる殺意。それが私の心を揺らぎさせる。

 

「させないのはこちらです!」

「ならば、ワイバーン!」

「なんの、そうはいきませんわ!」

 

 敵からの攻撃を、マシュさんとマリーさんが防いでくれている。もう少し……

 

「汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に__」

 

 やり切る前に殺されるかもしれない、もしくはそもそも魔術的な力を持たない私が契約を成功させる保証も無い。

 そんな不安が沸々と湧き、それに押しつぶされそうになった時だった。

 

【がんばれ〜!】

(ッ!今のは、私のファンの人の声……)

 

 それはきっと、幻聴だったのかもしれない。だけどそれでも良い、それでも良いんだ!

 そうだよ、敵はあの女性でも不審に思ってる兵士でもない。不安と重圧に押されそうな私自身だ、ならばそれを振り切れ。

 

「聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば_」

 

 ギターから不意に感じる温もり、それに身を委ねてより演奏を加速させる。そう、それは結束バンドの初ライブの時の様に。

 恐怖も重圧もまだ感じる、だけどそれを凌駕する私の感情。その名前は知らない、だけどどんな意味が込められてるかはわかる。私の演奏を、結束バンドのライブを聴いてみんな笑顔になっていく。それが嬉しくて、もっとそんな素敵な光景を見たいと思うから……カルデアのマスターになっても、それは変わらない。だから……

 

「終わりよ、私の杖の一振りでカルデアのマスターを粉砕できる。」

「逃げて下さい!」

 

 マシュさんの悲鳴が鼓膜を振動させる。開いた目に映り、そして感じる脅威。どういうものかは知らないがそれは弾丸の様に私を殺すものだとわかる。

 愚かな私自身、戦うことも救うこともできない。ならばせめて、愚か者らしくギターを奏でて“みんな”の笑顔にしてみせる_!!

 

「我に従え!!ならばこの命運、汝が“旗”に預けよう!!」

 

 その刹那、迫る脅威よりも早くジャンヌさんが私の前に飛び出す。そして旗の一振り、それは朝日の様に美しい光を放った。

 そう、これがオルレアンの聖女。ジャンヌ・ダルクの真の力なのだと理解した。

 

「ルーラーの名に懸け誓いを受けます、貴女を我が主人として認めましょう、後藤ひとり。」

「あ、ジャ、ジャンヌさん……間に合って、よかったです。改めて、よろしくお願いします……」

「感謝を、マスター。身体中に力が漲ります。これならば、あのサーヴァントにも遅れをとることはない。」

 

 私は一気に脱力感に負け、地面に腰を下ろしてしまった。だけど反面、ジャンヌさんは本人が言ってる様に気力に満ち溢れた表情をしている。

 良かった、ようやく窮地から抜け出せそうだ。

 

「そう、そうなのね。信じます、きっと私はこのために遣わされたのだと。

闘いましょう、ジャンヌ・ダルク。我が真名は“マルタ”狂気に侵されし我がクラス“バーサーク・ライダー”!!」

『マルタ?聖女マルタか!?気をつけろ皆、彼女はかつて竜種を祈りだけで屈服させた。』

 

 ロマンさんの声の直後、私たちの地面から地響きが起こる。それはまるで、何かが現れるような前兆で……

 

『つまり彼女はライダーとしての最上位の_“ドラゴン・ライダー”だ!!』

「グォオォォォォ!!」

 

 そして女性、狂気に汚染した聖女マルタさんの背後から巨大の生物が現れた。ロマンさんの話通りならばそれはドラゴン、だけどどこか亀の風貌を感じさせる生物だった。

 だけど、それ抜きしても巨体というだけで私は恐怖を感じた。怖い、生物として自分より大きな存在というのは理屈を無視して恐怖を引き起こす。私の意思を無視して震え出す身体。

 

「大丈夫です、マスター」

 

 それを抑える様に、ジャンヌさんの手が私に重なった。

 

「皆います、恐れることはありません。さぁ、戦いを始めましょうマスター!」

 

 ジャンヌさんのその声を聞き、頷いて私は立ち上がった。

 目の前に立ちはだかるマルタさん、そして召喚された竜を倒すために。

 

 

 

「マシュ、狙うべきはマルタ一人です!」

「はい!」

 

 マシュさん、ジャンヌさんがマルタさんへと向かう。素人目の私から見ても明らかな無防備の姿、だけどそのままな訳もなく。

 

「ッ!ぐうぅぅう!」

 

 背後の竜から攻撃が放たれた、だけどそれだけしか私には分からなかった。

 何故ならあまりに速い、速すぎる。その巨体からは考えられない程で、私の目ではそもそも捉えることはできなかった。だけどマリーさんの魔力の光が竜の周囲を包んだ。

 

「ならば、私が動きを止めます!その隙にお二人が……」

「舐めてるわね。」

 

 すかさず、マルタさんが杖を振るえばその光を打ち消した。

 

「私が何もしない訳ないでしょ?」

 

そして直後、竜が私へと距離を詰めてきた。マシュ、マリーさんが追いつけず、その巨体故に背後のフランス兵のみんなを巻き込むのは当然の話。

 

「先輩!」

 

 竜の巨腕が私達へと振り下ろされそうとした時、跳躍したジャンヌさんが全力で振り上げられた。

 受けた竜は、まるでアッパーカットを受けたかの様に顔が跳ね上がる。ジャンヌさんの細腕からは、想像できないような光景だ。

 

「す、凄い………あ、ジャンヌさん、ありがとうございます……」

「いえ、ここから立て直しましょう。」

 

 ジャンヌさんは冷静な口調でそう返事し、すかさず指揮官の様にマシュさんとマリーさんに指示を始めていた。

 凄い、さすが軍人経験がある人だ。だけど、問題は……

 

「あ、その、ジャンヌさん。確かあのサーヴァント……マルタさん、でしたっけ?私達3人がかりなのに力が拮抗しているのはおかしい気がするような……」

「えぇ、ルーラーの力を少し取り戻したのでわかったのですが、どうやら“狂化”が付属されています。」

「狂化、ですか?」

 

 なんだか不穏な言葉な気がする、気になってるとマシュさんが捕捉してくれた。

 

「文字通り、英霊の精神を狂気へと堕とす能力です。具体的には、狂化を付属された英霊はおおよそすべての能力が底上げされますが、代償として理性が奪われマスターの言いなりになってしまうのだとか。」

「聖女マルタがこんなことをするとは思えませんでしたが、狂化によるものならば納得がいきました。」

 

 マリーさんが感心した様に言い、そして私は少し悲しく思えた。

 ロマンさんも、確か聖女と言ってた。つまり、本来ならジャンヌさんの様に優しい人だったのだろうに……あまりに非道すぎる。

 

「……それでも。」

 

 そう思ってると、ジャンヌさんが前に出て気高く言葉を紡ぐ。

 

「戦わなければ前に進めぬのなら、倒します!」

「……はい!」

「そう……そうよね。」

 

 ジャンヌさんの気高い声にマシュさんは頷き、そしてマリーさんはジャンヌさんに向けて言葉を続ける。

 

「戦うとはそういうこと、たとえドレスを破ってでもこの国を侵すものに挑まなければならない。覚悟していたつもりだけどやっぱりまだまだ。聖女ジャンヌ・ダルク、迷ってた貴女もとても可愛らしかったけど、今の貴女はとっても素敵!私の憧れた通りの人だった。」

「あ、ありがとう……でも私は聖女などでは……」

 

 マリーさんの賛美の言葉を聞いて、ジャンヌさんは照れ臭そうにしていた。

 

「なら、折角ですので“ジャンヌ”と呼んでも?そして私の事は“マリー”とお呼びになって?私、貴女とお友達になりたいわ!」

「え、えぇ……それは、構いませんが……」

「あ、あの……」

 

 なんだか女子会みたいな雰囲気なり、キャピキャピとした会話に割ろうと思ったけど、そんな眩しい光景に私が混ざれ訳もなく……

 

「ヒギィっ!?」

 

 不意にマルタから攻撃が放たれ、マシュさんがすかさず防いでくれていた。心なしか、背後の竜もなんだか気まずそうな顔をしている気が……

 

「戦闘中よ?やる気がないなら、ここで一気に決めさせてもらおうかしら。」

 

 そう言い放った直後、杖と竜に眩い光が放たれる。

 

「魔力反応増大、宝具が来ますマスター!!」

「主が五日目に作りたもうたリヴァイアサン、その仔にして数多の勇者を屠ってみせた凶猛の怪物。

今は私と共にあるタラスク_愛知らぬ哀しき竜……」

 

 巨大の竜、曰くタラクス。マルタさんが手を挙げれば甲羅へと体を潜め中に浮かび上がり白いきらめきを放ち始めた。

 

「さぁタラスク、太陽に等しく滾る熱を操り今ここに

滅びに抗わんとする気高き者に、試練の一撃を与えましょう!!」

 

 その白い輝きは太陽の様で、回転を帯びながらこちらへと迫ろうとしている。そして、マルタさんの掲げていた腕がゆっくりと振り下ろされた。

 

「星の様に__“愛知らぬ哀しき竜よ(タラスク)”」

 

 迫るタラスクの突撃、それをそのまま直撃すれば全滅は避けられない。

 

「マシュさん!」

「はい!所長、力を……真名、偽装登録。宝具展開します!

ロード・カルデアス_!!」

 

 展開されるマシュさんの宝具、それがタラスクの突撃の衝撃を周囲へと逸らしていく。だけど……

 

「ぐ、う、ぅ、ぅう………!!」

「くっ、ロマンさん、マシュさんにもっと魔力を!!」

『やってる、だけど性能的にマシュの宝具ではタラクスを防ぎきれない!』

 

 そんな、これ以上だとマシュさんが……何か手はないか。そう考えていると、背後からジャンヌさんから声を掛けられる。

 

「マスター、ならば私にも宝具使用許可を。私もまた、マシュと同じく防御の類のもの。」

「ッ!なら…今すぐにでも……」

「ですが、後藤さん。耐えられますか?私との契約で負担は増しているのでしょう?」

「あ、はは……バ、バレてましたか。」

『そ、そうだぞ!これ以上の負担は無茶にも程がある、何か他に方法があるはずだからもう少し時間を……』

 

 ロマンさんからの忠告が耳に痛い、実際のところ魔術的な力の無い私には相当キツい選択なのはなんとなくわかる。だけど……

 

【その向こう見ずさを忘れるな?】

 

 冬木でクー・フーリンさんから言われた言葉が、私の背中を押してくれる。

 

「そ、そういうことを恐れるなって教わりましたし、それに……」

 

 一歩踏み出し、私は気を振り絞り口を開く。

 

「ライブに筋書き無し(アドリブ)はつきもの、それをどうにか乗り切る姿をマスター(先輩)としてマシュさん(後輩)に見せないと。」

『キミって奴は……全く、ロックなマスターになったものだな。いいだろう、バックアップは任せろ!何があっても、意味消失は免れてみせる!』

「あ、ありがとうございます、ロマンさん……」

 

 何度も心配かけてしまって、申し訳なくなるな……戻ったら何かお詫びをしないと。

 だけどその前に、まずは……

 

「ジャンヌさん……」

「ごと……いえマスター、敬意を。どうか私をお好きなようにお呼びください。」

「あ、はい、わかりましたジャンヌさ……あ、いえ、ジャンヌちゃん。宝具をお願いします。」

「“主の御業を、ここに__”」

 

その宣言と共に、彼女は私の前へと歩み、マシュさんの背後へと近付く。

 

「ジャンヌさん?」

「マシュ、これよりは私と共に。この窮地を……いえ、このフランスを守る為に。」

「……はい!」

 

 そして、ジャンヌちゃんが旗を掲げれば曇り空を晴らす眩い光が放たれた。

 

「我が旗よ、我が同胞を守りたまえー“我が神は(リュミノジテ)ここにありて(エテルネツル)

 

 その光がタラスクの齎した猛火を振り払い、マルタさんに明確な隙が生まれた。

 そしてそれを、ジャンヌちゃんが見逃す筈もなく空かさず近付き、旗が彼女の身体を貫通させた。

 

『聖女マルタの霊核を貫いた、ぼっちちゃんたちの勝ちだ!』

「よ、良かった……みんな、無事……で……」

 

 ロマンさんのその声を最後に、私の意識が沈んでいった。




今回は諸事情でここで区切らせて頂きます
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